#30 【J1第33節 サンフレッチェ広島×ガンバ大阪】

はしがき

毎度お世話になっております。札幌戦を飛ばしてしまいまして、今回はガンバ戦。3位をめざす広島ですが、クラブ関係者にとってはエディオンスタジアム終戦という意味合いの方が意識されていたかもしれません。一方のガンバは引き分け以上で残留とこちらもなんとか勝ち点を確保したい状況です。スタメンは以下。

広島は荒木とドウグラスがスタメン復帰、エディオンスタジアムとともに歩んできた青山が今季初先発となりました。ベンチには今季限りで引退の林に加えて柏、柴崎のベテラン勢も顔を揃えています。
一方のガンバは3-4-2-1でスタート。苦しい状況もあってか3バックで守備の安定を図っているということでしょうか。前節からは福岡、石毛に代わって佐藤、ダワンが起用されています。

ミラーで際立つずらし方

試合は序盤からガンバが5-2-3で構えたため広島の3-4-2-1とはがっちり噛み合う形となりました。保持で相手をどうずらすかに苦労してきた広島にとっては難しい展開かと思われましたが、この試合では一味違いました。

開始早々の2得点の起点となった左サイドでは、東が中央へ入っていく動きが印象的でした。佐々木あるいは自らが縦パスをドウグラスや加藤につけて、その落としを中に入っていって受けに行く動きですね。
ドウグラスや加藤がサイドに流れていくのと入れ替わりで東が中に入っていくのでその分スペースがあり、ボールを受けた後の選択肢が多くなりやすいのがいいところです。また、DHを突撃させるのと違ってボールを奪われたとしても中央が手薄になりにくいためリスクヘッジもできているのが素晴らしいですね。

列を上下する動きならともかくレーンを移動する動きはかなりマークを受け渡しづらいというのは広島もよく知っているところ。実際ガンバもなかなかこのレーン変更はつかまえきれておらず、広島があっという間の2得点で大きなアドバンテージを得ます。

司令塔で輝く青山

ポジションチェンジにより華麗な崩しを見せていた左サイドに比べると右サイドはおとなしめでしたが、時間の経過とともに塩谷を高い位置に押し出す動きがみられるようになってきました。

このとき青山が最終ラインに降りることで食野あたりの目を引き付け、塩谷がフリーになりやすくなっていたのがグッドでした。青山の列落ち自体は以前からよくやっていたことだと思いますが、それに呼応して塩谷を上げていたのが良かったですね。以前は青山が降りて4バックになる以外の変化は特になく手詰まりがちでしたが、この試合では青山が落ち着いてボールを持てるほか、攻撃力の高い塩谷を高い位置に押し出すというメリットをしっかり生み出せていました。

また、高い位置にボールを運んだあとはしっかりとサイドのフォローに入れるのも青山の良さでしたね。

6分の加藤のシュートシーンでは、満田が裏抜けしてダワンを動かしたところにすかさず入ってきて中野からパスを受け、加藤へのクロスに繋げています。このようにWBに入ったときに中央にパスコースがなくて詰まるというシーンは今季結構あったので、ここがスムーズに脱出できるのは素晴らしかったです。

これまでの青山は前線への飛び出しや列落ちなど定位置を離れすぎてしまうことが多く、それによって保持がやりにくくなったりカウンターのリスクが増えたりといった印象がありました。しかしこの日は動きすぎずに配給役に徹し、3点目のシーンのように要所で強度も発揮するという、アンカーとして理想に近い働きをしていたと思います。

この日の先発に関しては前々から決まっていたようで記念出場という意味合いはあったでしょうが、パフォーマンスとしてはまぎれもなくチームの中核を担っていました。この先も広島の中盤で攻撃のタクトをふるってほしいと思えるだけのものをピッチで見せてくれたと思います。

保持に振ったものの……

2点のビハインドで後半を迎えたガンバはボール保持の意向を強めてきます。具体的には右サイドの半田と佐藤を上げて4バックのような形にしてきました。広島が塩谷を上げていたのと同じようなずらし方ですね。これによって右サイドから広島のプレスをかいくぐれる場面が増えていきます。

ただ、こうした場面が増えてくるころには広島が加藤のゴールで3-0としていた後であり、広島としては無理して前から追わずにミドルゾーンで構えていればよかったため大きなチャンスにはつながっていきませんでした。
結局ガンバが大きなチャンスを迎えたのは前半にカウンターでゴールに迫ったシーンくらいとなってしまいました。広島同様に相手をずらす方法は持っていたので、前半からここに取り組んでいればもっと違った展開もあったかもしれません。

雑感・次節に向けて

後半の早い時間にリードを広げた広島は余裕を持って林、柴崎、柏に出番を与えることに成功。エディオンスタジアム終戦の空気をかみしめつつ、危なげなく3-0で勝利。他会場の結果により3位に浮上しました。一方のガンバも残留が決定して一安心。苦しいながらも最低限の成果は手にしたと言えるでしょうか。

広島としては保持が改善傾向にあるのが頼もしい限り。東と青山の移動を軸に据えた前進は整備されており、楽しく見られました。この試合では強度で勝てるマッチアップも多かったので、そこが互角の相手とぶつかった時にどうなるかがポイントでしょうか。そういう意味では福岡戦の出来には注目したいところですね。

一方のガンバは慎重な入りが裏目に出る結果になってしまいました。配置をかみ合わせることである程度全員を捕まえられるという算段だったと思うのですが、列とレーンの移動を織り交ぜた広島の保持に振り回されてしまう形に。

なまじ対面の選手がいるのでどこまでついて行くか細かい判断が必要になり、さらに広島の強度に終始押されてしまったのも誤算かもしれません。やはり吹田での対戦時のように主体的に配置をずらして相手を動かしていく方があっているチームなのではないかなと感じました。

それではまた次回。