#25 【J1第27節 サンフレッチェ広島×ヴィッセル神戸】

はしがき

毎度お世話になっております。代表ウィークの中断も明けて、今節は神戸戦。残り4試合となったエディオンスタジアムに首位の神戸を迎え撃つことになりました。
スタメンは以下。

広島は川村が出場停止で、入れ替わるように出場停止明けの野津田が復帰。トップにはドウグラスが入っています。
神戸は4-3-3で、武藤がスタメンに復帰しています。というかなんで前節がベンチスタートだったんですかね。そして新加入のマタがさっそくベンチに入っています。

トランジションならお手の物

さて、試合は開始早々から志知が運ぶドリブルを2連発して前進するなど広島がゴールに迫る展開が続くと、7分にはその志知のゴールで広島が先制します。先制してからも流れは変わらず広島が神戸ゴールに迫るシーンを多く作り出していました。
と言ってもこの試合は保持で押し込んでいたわけではなく、むしろ広島がショートパスによるビルドアップから決定機にたどり着いたシーンはほとんどなかったように思います。先述した志知のドリブルからの2回くらいではないでしょうか。

ではどうやって決定機を作り出していたかというと、自陣でボールを奪ってからのカウンターですね。

広島は1トップ2シャドーで最終ラインを監視しつつ、シャドーのSBへのプレスが間に合わない場合はWBが出ていくというプレッシングを行っていました。中盤の数的不利はシャドーがアンカーを監視したりCBが迎撃に出ていったりで対処していましたね。特に加藤や塩谷は臨機応変に対応していたと思います。

で、このプレスに対して神戸はロングボールを積極的に使うことを選択してきます。ターゲットとなるのは主に武藤と大迫で、ここで競りあったボールのこぼれ球をIHの川崎や山口が回収するという狙いだったと思われます。

ところが、ターゲットとして計算していた大迫と武藤のところで予想外にボールが収まらず、佐々木と荒木に跳ね返されてしまう事態が続出していました。ここは広島の最終ラインのハイパフォーマンスを褒めるべきところでしょう。もちろん野津田や満田、志知がサポートしていた部分もあると思いますが、まず荒木と佐々木が純粋な競り負けがほとんどなかったのがこの試合の大きなポイントだったと思います。

荒木と佐々木がボールを跳ね返すとどうなるかと言えば、高い位置を取った神戸のIHの裏にボールがこぼれることになります。広島はこのボールを2DHと2シャドーで回収し、空いている中盤を通過して直線的に神戸のゴールに迫るシーンを繰り返し作っていました。神戸はCBの山川と本多が潰しに出てくることも少なかったため実質的に中盤は大崎一人になり、広島のカウンターを阻害することは難しい状態でした。

また、広島はここ数試合カウンターでゴールに迫る際の動きもかなり整備されていますね。ドウグラスがペナ幅で背後に抜ける動きを繰り返し、そこにパスを出したり空いたスペースを使ったりとカウンターでより直線的にゴールに迫れる仕組みが確立できているように思います。
そんなわけでトランジションから何度もチャンスを作っていた広島は、30分にカウンターから加藤のゴールでリードを広げます。このシーンでは相手より早く切り替えて高い位置まで走っていた中野のランニングが光りましたね。

落ち着かせることはできたけど

2-0となった後の神戸は川崎や山口がサイドに降りてボールを落ち着かせる動きが見られるようになりました。一気に前進して広いスペースを攻略することはできないものの、ひとまずカウンターを喰らい続ける流れは脱却することに成功します。

また、後半からは3-4-2-1に変更し、広島と並びをかみ合わせてきました。

3-4-2-1にすると完全に配置が噛み合う訳ですが、そこで神戸は大迫を降ろして代わりに武藤を最前線に出すような可変を繰り返し行ってきました。
これによって荒木が前に出ていけず、大迫が降りていった先にいる広島のDHはそれぞれ大崎や山口をマークしているので、大迫は時間とスペースを得やすいという流れでした。

こうしてボールを落ち着けた神戸ですが、2点ビハインドの状況は変わりません。広島側としても2点リードでゲームが落ち着くなら歓迎とミドルブロックを敷いてカウンターに備える形をとったため、膠着状態のまま時間が過ぎていきます。
終盤にはマタを投入して4-2-3-1に戻しますが、決定的な変化を生み出すことはできず。

広島が危なげなく2-0で逃げ切ることとなりました。

雑感・次節に向けて

広島は強みであるトランジションを活かして会心の勝利となりました。この試合は何と言っても佐々木と荒木が大迫と武藤に仕事をさせなかったことが大きかったですね。ここで勝てることにより、前進に備えていた神戸のIHが空けたスペースを逆用して一気にカウンターを仕掛けることができました。もちろん素早い切り替えでカウンターを仕掛けたWBを始め前線のメンバーの功績も大きかったです。

一方の神戸は、分の悪いロングボールによる前進に30分間こだわり続けたことで手痛い代償を払うことになってしまいました。広島の2得点はいずれも神戸の守備がやや淡泊に感じましたが、カウンターを喰らって人数が少ない状態で守ることになればゴール前でのスペースの取捨選択はより厳しいものとなるわけで、やむなしといったところでしょう。
16分のように3センターによる数的優位を活かした形や、2失点後に見せたIHの列落ちのようなショートパスによる前進を織り交ぜて広島のプレスを躊躇させることができていれば、もっと違った展開があったかもしれません。

今節は上位陣に足踏みとなったチームが多く、神戸は首位キープ、広島は首位まで8ポイント差となりました。優勝を狙うとなると以前厳しい数字ですが、ACL圏までは2ポイント差とかなり現実味が出てきています。
ここ数試合好調な保持とこの試合で見せたトランジションからの速攻を両立し、勢いを維持していきたいところですね。

それではまた次回。