#24 【J1第26節 サガン鳥栖×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は鳥栖戦です。鳥栖は残留争いこそ遠いものの8月は勝ちなしと苦戦中。広島は前節連勝が止まったものの負けなしは継続中で、勢いを維持したいところです。スタメンは以下。

鳥栖は4-2-3-1のままですが、中盤より前をガラリと入れ替えてきました。それでも残っている長沼と河原には信頼を感じます。
広島は野津田が出場停止から帰ってきたもののDHは川村と満田のセットで継続。さらにアジア大会の代表に選出された山崎がCBの中央でスタメンに抜擢されています。

 

WGの立ち位置でずらしにかかる鳥栖

さて、この試合も広島はWBを相手のSBまで上げてプレスに出ていきます。広島のマンツープレスに対してよく見られる手立てはGKを使ってボールを落ち着かせたりDHの裏に長いボールを送り込むことですが、この試合の鳥栖は右WGの長沼を中心に立ち位置でプレスを外しに来ていました。

よく見られたのが長沼がDHと同じくらいの高さまで降りてくるパターンです。ここまで降りてしまうと対面の佐々木もついていくか迷うところで、しばしばマークから逃れた長沼はここでフリーになることができていました。長沼は内側を降りていくだけでなく、志知の背後の大外レーンに入ってくるパターンなどもあり、佐々木としては毎回どう対応するか判断が難しかったことと思います。

また、長沼に佐々木がついて行くとその背後にスペースが空いてしまうので、そこに西川や富樫が流れてきて受けるシーンもできていました。13分のシーンなんかは分かりやすいですね。

こんな感じで、鳥栖は基本的に長沼のところで相手をずらして前進する仕組みを作りに来ていました。長沼は広島時代にもポジショニングセンスに光るものが見られましたが、その能力を活かして鳥栖で中心になっているのは嬉しいですね。
なんで移籍しちゃったんだよ、と当時は思いましたが、この試合を見ていると鳥栖の右SHは広島のどこよりも彼の能力が生かせるポジションだと感じました。

こうして広島のプレスに対抗する策は持っていた鳥栖ですが、ゴールに迫る機会が多かったかと言えばそうではありませんでした。
単純に広島の守備陣が対人に強かったのもあるんですが、鳥栖の方はゴールへ直結する選択肢を選んでこないのが理由かな?と感じました。
プレスをかいくぐったらいったんボールを落ち着かせて、サイドに展開してからクロスという攻撃が多かった印象です。最短距離でゴールに向かっていかないので広島が帰陣する時間を与えてしまい、跳ね返されることが多かったのではないでしょうか。

そして、この試合の広島と鳥栖で明確に差があったのがまさにこの部分だと思います。

高い位置からまっすぐゴールへ

ここ数試合WBが高い位置を取る傾向のある広島ですが、この試合でもその方針は継続。特に高い位置を取っていたのは右WBの中野で、SBの菊池と空中戦をする機会が何度も見られました。先制点もここの競り合いからでしたね。菊池は160 cmなので中野が競れば勝てる可能性は非常に高く、スカウティングの段階から狙っていたものと思います。

また、中野だけでなく右CBの塩谷も高い位置を取る場面が多かったですね。岩崎を置き去りにしてサイドを前進し、ピエロスや加藤目がけてスルーパスをよく狙っていました。この試合の広島は右サイドの選手が高い位置を取ってプレスを外し、そのままゴール前のピエロスや加藤へスルーパスを送るという一連の流れを徹底していました。ここがスムーズに設計されていたのがこの試合の広島がチャンスを多く作れた要因でしょう。

そして、陰でその立役者となっていたのが山崎ですね。彼が最終ラインから速いパスを供給できるので、その分塩谷も中野も高い位置を取ることができます。また、17分のシーンのように相手がプレスに来てもワンツーなどの小技で外せるのも魅力的。不安視されていた最終ラインでの対人も上出来で、ここまで荒木のものだった3バックの中央争いに本格的に名乗りを挙げた形になりました。

雑感・次節に向けて

広島は山崎の起用とともに保持が冴えわたり、右サイドを起点に2得点で完勝。ここ数試合の勢いの良さそのままに充実の内容でした。もっとも単にチームの雰囲気が明るいというだけでなく、内容に明確な改善が見られるのがいいですよね。次は首位・神戸との一戦ということで、ここまでうまくいっている保持の良さを出しつつ鋭いカウンターに対処できるかに注目です。

鳥栖はビルドアップに光るものを見せながらもシュートが少なく無得点。保持型チームにありがちなフィニッシュの迫力不足が感じられました。クロスから富樫のヘッドなど可能性を感じる場面もあるのですが、なんとも歯がゆい部分ですね。

それではまた次回。