【サンフレッチェ広島月次レビュー】2026年8月

はしがき

毎度お世話になってます。2026年8月のサンフレッチェ広島月次レビューをお届けします。

急に何と思われたかもしれないんですが、今シーズンはレビューを月ごとにまとめて出す方針にしてみようかな、と思っている次第です。百年構想リーグでは仕事が忙しかったり生活がバタバタしていたこともあってレビューをお休みしていたのですが、サンフレッチェ広島がどういう取り組みをしているかはやはり記録しておきたいな~という気持ちでした。

一方で、これまでのように毎試合レビューを書くやり方だと速報性や訴求力の点で動画の下位互換にしかならないな~ということも考えていました。また、後から見て振り返りやすいことが文字の利点だと思いますが、毎試合書くやり方だと記事が多くなって読みづらく、大して振り返りやすいものになっていない気もしていました。
それならばある程度期間を決めてその期間分の試合結果やトピックをまとめて記載しておく方が、後から見たときに何をやっていたかが分かりやすくなるのでは、という考えです。

というわけなので、しばらくは月一回の更新になるかと思います。その分、その月に取り組んでいたことを中心にしっかり取り上げていければと思いますのでよろしくお願いします。

 

〇2026.08.08 明治安田J1リーグ第1節 vsジェフユナイテッド千葉@Eピース

・広島の動向
序盤にセットプレーから先制できた広島。千葉は広島のボール保持に対して引き気味に構えたため、最終ラインがかなり自由にボールを持つことができた。サイドに振って早いクロスを中心に、時折中央に縦パスを刺す形で敵陣への侵入を試みていく。また、特に左シャドーの前田を大外に流し、中野が内側レーンに入っていくポジションチェンジが見られた。百年構想リーグの終盤でやっていた中村のWG化に近い形で、特徴から言っても大外に張る役を前田がやるのは違和感がない。ただし、コンビネーションで中央に入っていく形は作れず、ここはこれからといったところ。この方針だとWBは中盤でのプレーに適性のある新井の方がいいのかもしれない。

後半は前田に代えてアレーを投入し、彼のポストプレーを軸にした前進が多く見られるようになった。77分の加藤のシュートシーンのようにアレーが下りてきてボールをはたき、その背後に加藤や鈴木が飛び出していく形はシンプルながら対応しづらそうであった。この戦術をやるなら大内のキック精度が必要な気がするが、大迫が戻ってきた今どうするのかは難しいところ。39分のエリソンのシュートが止まらなかったりと、シュートストップについて大内はもう一声ほしい部分があるのは確かだ。

 

・千葉について

とにかく広島のボール保持に対して全然規制をかけられなかったのが苦しかった。ボールを持つと4バック可変や中盤で局所的に数的優位を作るなどプレス回避の手段は複数仕込まれていたので、前進してから押し込む展開を作りたかった。プレス回避に人数を割いた分前線はエリソンに頼まざるを得なくなり、広島の保持に対して奪い返す手段も乏しかったことでなかなかチャンスを作れない展開となってしまった。

 

 

〇2026.08.15 明治安田J1リーグ第2節 vs浦和レッズ@埼玉スタジアム

 

・広島の動向

千葉戦の後半と同じスタメンで入った広島は、千葉戦と同様にアレーのポストプレーを軸とした前進を試みていく。また、浦和は3トップが広島のCB、SBが広島のWBまでプレスに出てくるので、シャドーがSBの背後に入って前進の起点となる動きも盛んに見られた。スキッベさんの時から前進のターゲットとしていたエリアだが、ここにグラウンダーのパスでボールを届けられるあたりに成長を感じる。特に浦和の右サイド、ボザの背後は何度も鈴木が起点にしており、ボザが戻ってきたら今度は大外でフリーになっている東に展開というシーンが何度もあった。

先制点はこの試合の狙いが顕著に出たシーンで、ボザの裏で鈴木が起点を作り、逆サイドに振って出てきた長沼の背後を川辺が使い、川辺からのクロスがボザのいない大外の鈴木に合うという、徹頭徹尾SBの背後を使い続ける形になっていた。

また、SBを前に釣り出して背後を狙うだけではなく、幅をとった選手がSBを外に釣り出してその間を狙う形も兼ね備えていたのは良かった。41分に中野が背後を狙ったシーンが最もわかりやすい形であり、塩谷の勝ち越しゴールはこのスペースをCBの塩谷が狙っていくというのがより対応を難しくさせたように思う。

 ボール非保持でも浦和のビルドアップをマンツーマンプレスとCBの対人性能で潰し続けた広島。なんでも追い掛け回すわけではなく、ミドルゾーンに構えつつ人も捕まえる姿勢でパスコースの封鎖と背後のケアをうまく両立している印象があった。後半にも流れを手放さず、セットプレーとカウンターから追加点を挙げ4-1で勝利。充実を感じさせる連勝スタートとなった。

 

・浦和について

SBを大胆に前に出すハイプレスを敢行していたが、そのプレスが間に合っていなかったことで広島に簡単に前進を許す形になってしまっていた。また、SBとCBの間が空いた場合に中盤の選手がそのスペースをカバーする仕組みになっていなかったのも厳しさを感じさせる。個人的にはハイプレスが間に合わないことよりもこっちの方が気になった。ハイプレスはコンセプトなので続けるとしても、SBが釣り出されたスペースを放置していい理由はないのでここはアンカーを下げるなり5バックにするなりして埋める仕組みを作った方がよさそうだ。後半からは5バックの雰囲気も感じられたが、もう少しスペースを埋める意識は必要になりそう。

ボール保持もこれからといった趣だが、笹や安居がボールを引き取る工夫を見せたりWGの裏抜けで広島のDHを釣って中盤を空けたりと少しずつ改善はみられていた。ただ後半は中盤の位置が高すぎてパスが引っかかったらすぐにカウンターを食らう形になっていたので、この辺もバランスを模索していくことになるのだろう。

 

〇2026.08.22 明治安田J1リーグ第3節 vs川崎フロンターレ@Eピース

・広島の動向

人数を合わせてハイプレスに来る川崎に対して蹴っ飛ばさざるを得ない展開からスタートすることになったこの日の広島はなかなかボールをつなげない展開が続く。プレスをかけに行っても驚異的な収まりの良さを見せるロマニッチを軸にはがされ、出てきたCBの背後を突かれてピンチを作られてしまう。

ただ、このプレスに対して降りるアレーとシャドーの存在で川崎のボランチを足止めして中島、川辺がボールを受けるスペースを作れていたのは良かったように思う。中島や川辺を起点にボールを散らすことができれば、ここ2試合で見せていた内と外の使い分けで相手守備陣を揺さぶれるようになる。大外のWBがフリーになればそこからのクロス、大外をケアしてSBが出てくればシャドーやボランチが明けたスペースに入ってくる。ここの使い分けは一貫して意識できており、今季の広島の強みと言っていい部分だろう。
ただし、大外からのクロスの火力がそこまででもないのは気になる点。先制点にはつながったものの、特にアレーがいなくなってからの大外クロスはほとんど可能性を感じなかった。突破力のあるWGがいるわけでもないので、サイドで時間をもらえた場合にどうやって脅威を与えていくかは気になるところだ。

また、終盤に披露した4バックシステムがそれなりに機能していたのも特筆すべき点だろう。特にSBが高い位置をとることで相手のWGを押し込み、中央からの前進がやりやすくなる効果があった。サイドに速い選手がいないのでサイドに展開した後もうひと手間かけないとチャンスにつながりにくいという点はあるものの、相手の陣形を広げる効果は3-4-2-1の形よりも期待できそうであった。

・川崎について

まずはロマニッチのパフォーマンスが印象的だった。荒木のコンディションが万全ではなさそうとはいえ、彼を背負ってポストプレーを安定させられるCFはJ1でも稀有な存在。ここが収まることで川崎は広島のプレスに対して明確な逃げ道を持てていた。また、インサイドのWGが中盤の内側レーンに降りてくることで広島CBの監視から逃れつつボランチに対して数的優位を作る動きも多く見られた。ここでWGが受けられればカバーに来たWBも引き付けて大外を使うことが可能になる。川崎は複数の逃がしどころを作ることで広島のプレスを空転させることができていた。
広島が前の2試合で相手を圧倒するパフォーマンスが出せていたのはCBが潰せていたからであることが明らかになったとも言える。

一方で、失点シーンを筆頭に撤退守備については怪しさが見える。SBとCBの距離が空くところについては中盤が粘り強く埋めていたのだが、シンプルに大外から人数をかけられる展開に対してWGが間に合わなくなりがち。この試合で言えば広島のCBが攻撃参加してきたタイミングで伊藤やマルシーニョが間に合わずそのままクロスにつなげられる場面が多かった。まあ伊藤やマルシーニョに守備時4-4-2のSH役を完ぺきにこなしてもらうのは苦しいだろうし、火力の高さを考慮して差し引きプラスになるだろうという考えだったかもしれない。

 

〇2026.08.28 明治安田J1リーグ第4節 vsガンバ大阪@吹田スタジアム

・広島の動向

川崎戦よりはバックラインに時間がもらえるので、いつも通り繋いでいこうとする広島。しかしボールをWBに入れるとガンバはSB裏のスペースにCBが素早くスライド、フォローに入る広島のボランチにもマークがしっかりついてくる。結果的に1トップ2シャドーに直接縦パスを入れるシーンが増えるのだが、ここの数本の繋ぎがなかなか合わない。特に前線からボランチに落としてからそのあとがずれる印象だった。この辺はそもそも相手を広げられていなかったり、裏への動きが少なかったり、フォローに入るボランチの距離が近すぎたりと様々な要因があったように思う。こういった縦パスが合わないとボールを中央の低い位置で失うことになるので、そこから危険なカウンターを食らっていた。

悪いことにここでカウンターの起点となるジェバリの立ち位置が抜群で、常に広島のボランチの背後かつCBにつかまらない位置でボールを収めていた。ここで広島守備陣を引き付けてからフォローに来たアタッカーに渡す動きが抜群にうまく、周囲のアタッカーも迷いなく動き出せていた。

広島も自陣からの繋ぎで時間を作って抵抗は見せていたが、ジェバリの足が止まる後半の飲水タイムまでは結構苦しい状況だったように思う。逆にそこからはヒュメットジェバリの足が止まったこと、4-2-3-1への変更でガンバのWGを押し下げられるようになったことで中央からの前進が容易になった。そこにボールを引き取って運べる新井が入ったことで広島は一気にスムーズに敵陣に侵入できるようになる。

中盤までフリーでボールを運べるし、その先の縦パスにも制限がかからないため、縦パスからサイドへの展開を中心に攻撃を継続。加藤のヘッドや鮎川の抜け出しなどチャンスはあったが、ガンバが何とか切り抜けてスコアレスドロー決着となった。

・ガンバについて

先述の通り素早いスライドとジェバリを起点とした精度の高いカウンターで主導権を握れていたように思う。

また、ガンバの保持局面でもジェバリの存在感は抜群。ガンバの2CB+2ボランチに対して広島は1トップ2シャドーとボランチを動員してプレスをかけに行くが、ジェバリはここで残ったボランチが管理しきれない場所に入ってきたりボールを逃がしたりといったプレーが目立った。人数的に噛み合ってはいるがスペースがあるのでジェバリのプレー選択肢が広く、広島はボランチ1人では管理しきれていない状態だった。ここに川崎戦と同じように内側に入ってくるWGもいるため、ボール保持については安定感があった。前節まではジェバリが不在だったようなので、ここからが本領発揮となりそうだ。

 

〇今月の感想

前評判の高いシーズンだったが、それを裏切らないだけの結果と内容は見せられていたように思う。百年構想リーグで根付いたショートパスによるビルドアップの意識はそのままに、中村がいないことで大外攻撃の火力が下がった分はアレーを中心としたレイオフからの前進で揺さぶることで補っていた。ただし、アレーが起点になることで大外からクロスを上げる際にアレーが入ってくるのが間に合わず、クロスがそこまで有効な攻撃になっていないことが多い点は気になる。川崎戦で繰り出していたようなハーフスペース突撃を織り交ぜていくことは重要になるだろう。
また、一次キャンプから取り組んでいると噂だった4バックがオプションとして予想以上に機能しているのも収穫だ。川崎戦でもガンバ戦でも相手のWGを押し下げて2CB+ボランチのビルドアップに余裕をもたらす効果が得られていた。塩谷、ジュソン、山崎のコンディションが不安定な状況なので、CBの枚数を減らせる4バックは開始から採用するオプションになっても不思議はない。

守備についてはセットプレーからの2失点のみで、安定していると言ってよさそうだ。ボールを持つことで相手の攻撃機会を減らしたり、体力を節約したりできているという面もあるだろう。ただし、川崎戦では左右のCBの背後、ガンバ戦ではボランチの背後とビルドアップの逃げ道となるスペースを用意されていたのは注意すべき点だ。ボールを持っているとき、プレスをかけるときに空いたスペースをどう管理するかについては注目していきたいところだ。

とはいえ主力のコンディションに苦しむ中で全体的には順調といってよい出来。9月は連戦やアジア大会による中島の不在もあるため層の厚さが問われるが、クシニイェンギの加入もあったことだし層の厚さを見せて乗り切りたいところだ。

〇気になった選手

・大内一生

大迫の移籍騒動により開幕スタメンを飾り、そのままリーグ戦4試合でゴールマウスを守り抜いた。ビルドアップを重視する今の方針において、安定したボールさばきと正確なフィードは大きな武器。毎試合一度はWBやトップに見事なロブパスを通している。ビルドアップ隊はGKがいるので常に数的優位とは言うものの、GKが安定してボールを扱えないと成立しない理屈なので、その点において本当に貴重な人材だ。

シュートストップやハイボール処理においても今のところ大きなミスはないが、おや?というシーンが1つ2つないわけでもない。優勝を争うようなチームとの対戦はしばらく先になりそうだが、そのあたりでは本分であるゴールキーピングの真価が問われそうだ。

・鮎川峻

百年構想リーグでは難しい時間を過ごしたが、浅野前田の不在もあって天皇杯でチャンスをつかむ。そこで結果を出してガンバ戦でもプレータイムを得ると、相手に退場者を出させる危険な動きを見せた。シャドーで起用するのかと思っていたらトップに入ったので驚いたが、常にCBの間で動き続けて抜け出しを狙うスタイルは相手のCBの注意を引くためシャドーに時間を与えることができ、確かにトップに配置するのが適切に思える。アレーとイェンギがいる中で先発から出てくるイメージは正直あまりできないが、押し込んだ展開の中で相手を崩すもう一押しが欲しい時に優先度の高い選択になりそう。そのためには今後も短い時間で結果を出すことが求められる。

#3 【明治安田J1百年構想リーグ第7節 名古屋グランパス×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になってます!もう清水戦の当日ですがミッドウィークの名古屋戦やっておきます。スタメンは以下。

お互いに3-4-2-1のミラーで、広島は佐々木と塩谷、ジャーメインがG大阪戦から入れ替わって先発。名古屋はピサノ、甲田、木村の3人が変更。なお、原は開始早々に負傷して野上に交代となった。

対照的な出来のボール保持

今季からペトロヴィッチ監督が指揮を執る名古屋のボール保持はご存じミシャ式。DHを最終ラインに降ろして4バックにするというのが従来のイメージだが、この試合ではDHを下ろす代わりに3バックの誰かが位置を上げるなど、モダンな3-2-5ともとれるような振る舞いが印象的だった。

稲垣が最終ラインに降りると中盤に残った森島がボールの中継地点となり、野上や高嶺が位置を上げることで3-2-5のような形をとる。このほかにも藤井や高嶺が直接ボールを持ちあがってくるパターンやシャドーの木村やヴィニシウスが下りてボールを受けるパターンもあった。

広島のプレス隊はこうした名古屋のビルドアップを潰しきるだけのプレス強度を出せておらず、特にCBの持ち運びや森島の配球を制限できていないことで苦しい状況に陥っている印象だった。

一方、広島のボール保持では完全にかみ合っている相手の配置に対してうまくずらすことができず。昨年4月ごろの連敗をほうふつとさせるようにボール前進に苦労していた。

名古屋のDH、CBは広島のDH、シャドーをしっかり監視しているため3バックからはWBにボールを出すしかなく、そこからシャドー、DHに展開することもできないためボールを失う場面が多々あった。そこからWBがボールを受けるために下がり、シャドーも降りてくるが捕まっていて……という風にどんどん全体が押し下げられていき、自陣に閉じ込められていたという印象である。

ミラーマッチだと全員捕まっていて脱出できないというのはあるあるなので、ここはDHやシャドーがもう少し大胆に列やレーンを移動する動きが欲しかったかもしれない。前半の最後の方にはDHが最終ラインの脇に降りていることがあったが、こういった動きがあると一息つけるだろう。また、塩谷と中野が高い位置をとっているときもあったので、そこにDHやシャドーを流すのもよさそうだ。もちろん、それでも相手がどこまでもついてくる場合もある。その場合は相手がついてくることを前提にスペースを空ける動きが必要になってくる。

ビルドアップの意識は高まったものの、こういう感じで相手を観察して対応を考えるような対応についてはまだまだこれからということだろう。中島やトルガイをはじめこういうことを個人でできる選手もいるので、彼らが伝道師となってくれると嬉しいところだ。

奇策に見えて理にかなった4バック導入

前半は名古屋がボール持っているときにずらされて、広島がボールを持っているときはずらせないというひたすら苦しい展開だった。後半の修正としては小原や鈴木、前田のようにポジション移動で配置をずらせる選手をシャドーに入れるかなと思っていたが、ガウル監督は4バックへの配置変更を決断した。
個人的には盲点だったが非常に理にかなった決断だと言える。まず、ボール保持時には配置のずれを活かして加速する場面が見られた。

名古屋の2DHに対して広島は2DHとトップ下がいるので、単純に誰かが余る計算になる。46分のシーンでは、塩谷松本川辺の3人に加えてSHの鈴木も中央に入ってきており、彼のポストプレーからフリーになった松本を介してサイドに展開していた。中盤で数的優位を得られたことでロングボールのこぼれ球を回収しやすくなり、しばらくの間主導権を握れた面はありそうだ。

 

また、ボール非保持では4バックにしたことでむしろ相手とかみ合っている場面もあった。名古屋はDHを下ろして4バックにするところまでは割とオートマチックにやるので、その結果4-4-2的な並びとかみ合ってしまうことが多くなる。

前半なら山岸が流れてCBをピン止めしたうえで木村が下りればフリーでボールを受けられたが、後半はDHが自然に下りてくるシャドーを迎撃することができる。並びを変えることによって、前半よりも配置を噛み合わせてのプレスが行いやすくなり、ビルドアップの阻害も上手くいっていたという印象だった。

個人的な記憶としては2012年、まだミシャ式の色が残っていた広島に対する対策として4-4-2のマンツーマンが採用されていたことを思い出した。ホーム柏戦とかそうだった気がする。

ただ、セットプレーで失点してからは名古屋が落ち着きを取り戻した感があった。和泉が入ってきたこともあってか広島の中盤3人に対して2DHと2シャドーで数的優位を作る動きができるようになり、ビルドアップの出口を探しやすくなった。

広島のボール保持でも4バックの配置に慣れてない感は強く、時間の経過に従って前半のように全体が下がってきてしまう様子も見られた。終盤のパワープレーだけでなく、もう少し主体的にロングボールによる攻撃を混ぜてみても良かったかもしれない。

雑感・試合を終えて

広島は連戦の疲労と相手の可変に面食らったところもあり、パフォーマンス的には厳しい試合だった。ボール保持が上手くいかないのはともかく元々の持ち味であるプレスはもう少し強度が欲しかったが、過密日程や戦術過渡期の難しさはあるかもしれない。

その中でも4バックへの修正には唸らされるところがあり、ガウル監督の引き出しの多さには驚いた。過密日程の中で良いパフォーマンスを出すのはどんなチームでも難しいが、この監督の下なら誰が出ていても良い内容のサッカーが実現できるのではないかという期待を感じる一戦でもあった。とはいえセットプレーで2失点していたら勝てる試合も勝てないので、そのあたりは頑張っていただきたいところ。

名古屋はボール保持非保持ともにやりたいことをしっかり実現できていた。ここ2年ほど名古屋は広島との相性が良いが、その数試合の中でも群を抜いて良い内容だったと思う。2-1の勝利は妥当な結果だろう。

ミシャ式がうまくアップデートされてバランスの取れたものになっており、その難しい戦術の中で元々高い能力を持つ選手たちが輝きを放っているのは見ていて気持ちの良い光景だった。前節神戸に0-3だったりと不安定さはありそうだが、上位争いするチームとしてのポテンシャルは十分に感じられる一戦だったのではないだろうか。

それではまた次回。

#2 【明治安田J1百年構想リーグ第3節 セレッソ大阪×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になってます!今回はセレッソ戦。ここまで無失点の堅守かつ、これまでとは違ってボール保持の意識が高いチームとあってガウル広島の違った一面が見られそうなカードです。スタメンは以下。

広島はACLEで復帰した荒木がスタメンで山崎がボランチにスライド。セレッソはキムジンヒョンが負傷中でGKに中村航輔。CBを畠中から田中駿太に変更し、ボランチに香川が入るというボール保持を意識した感のあるスタメンとなった。

中央を切ってサイドで奪う

序盤から広島とセレッソともにボールを持ちたがる展開。セレッソのボール保持に対して、広島は積極的に最終ラインにプレスをかけていった。

鈴木と川辺、山崎がボランチをケアしつつサイドに誘導、CB、SBに出たところをシャドーやWBで追い込んで長いボール蹴らせて回収という算段であった。ターゲットの櫻川には荒木がついていることもあり、広島のプレス成功率は高かった。

セレッソはトップ下の柴山を下ろして数的優位の確保を試みていたが、中村航輔が縦パス入れるのに不慣れなのもあったかあまり中央に打開ルートを見出だせず、サイドに追い込まれることが増えていった印象。キムジンヒョンがいればまた違ったルートを見出せたような気がする。とはいえ百年構想リーグを投資の期間と位置づけることは可能だし、ここから伸ばしていく部分だろう。

スライドの隙を狙う広島

一方広島のボール保持では4バックのセレッソがスライドでカバーしきれないエリアを狙うパターンが多かった。

ビルドアップではサイドに展開した時にWBでセレッソのSBを釣り出し、その背後にシャドーが侵入していく。

ここを狙うこと自体はスキッべさんの時もやっていたが、当時はWBが降りてSBを釣り出したと同時にボールと人を送り込むようなイメージだった。

一方、この試合ではボールが出るよりも前にSBの背後に人を立たせておいて駆け引きの材料として使っていた印象がある。ここにCBがスライドしてくればCFやシャドーがボールを受けられるし、ボランチがそれをカバーすれば中央でヘルプに来る川辺や山崎がフリーになる。結果的にSBの背後が空くことが多かったが、各ポジションの選手が立ち位置を意識してプレーすることで相手のカバーしきれないエリアを作り出せていたように思う。

左サイドでは小原が降りる代わりに東が大外、川辺が内側から飛び出していくようなポジションの入れ替えもあり、より守りづらい攻め方を構築できていたと思う。

この辺は所謂5レーンで攻撃を整備していそうだなと感じる部分であった。カウンターの時も各選手が同じレーンに重ならないような立ち位置を取っており、効果的にシュートまでたどり着けていたと思う。

また、前進したあと崩しの最終局面でも大外狙いの傾向はよく見られた。サイドからクロスを上げる時にはセレッソの陣形はボールサイドにスライドしているため、逆サイドのWBはフリーになりやすい。ここにクロスを放り込んで合わせる形はよく狙っていた。

前半の中野のボレー、後半の東のボレー、こぼれ球という形だが東の決勝点もSBがカバーできないエリアから生まれた。昨年までもよく見られた形ではあるが、ボール前進のルートが確立されているとエリア内に入ってくる人数も増やせるので大外狙いがより効果的になってきている感じがする。

中盤に人を増やして脱出

押し込みながら無得点だった広島だが、後半頭にジャーメインの凄まじいシュートが決まり先制。これを受けてセレッソは横山と登里を投入して偽SBの要素もプラス。広島は人数の増えたセレッソの中盤を少しずつ捕まえられなくなっていく。

登里が中に入ってくることで中盤が降りてくる柴山も合わせて4人になり、これをボランチとトップで管理するのは厳しいものがある。1トップが鈴木から木下、ボランチが川辺から松本になったのもスペース管理が求められる状況とは噛み合ってなかったように感じた。

自陣への撤退やボールを握って時間を消費することに不慣れな広島は、ボールが持てなくなると昨年までのようなロングボールによる単発の攻めが増えてしまう。90分頃のように相手を押し込めれば時間を消費できるが、その展開で残り時間を使い切ることができずロングスローから同点弾を浴びる。

逃げ切り失敗でPK戦かと思われたものの、直後に大外のスペースを突く形で東が勝ち越しゴール。慌ただしい終盤を制した広島が勝ち点3を手にした。

雑感・試合を終えて

広島としてはセレッソ相手にもボールを握って試合を進められたということで自信になりそうな内容だった。ボール保持を志向する相手に対してはこれまで通りハイプレスで阻止し、自分たちは相手のプレスをいなしてボール保持の時間を増やすという展開を実現できており、これまでのように速い攻め一辺倒でない展開の作り方ができたのは大きな成果だろう。
また、山崎のボランチ起用というテストをやりながら結果を取れたのも良かった。今の戦力的にCBとボランチは人数がやや足りないので、山崎が両方できるようになることは大きな意味がある。この試合は不安定な部分もあったが、今後も続けていく価値のある取り組みだろうと感じる。また、終盤の試合運びは苦しい部分もあったが、アジリティに優れる横山に対しては新井と中野のダブルチームで対応するなど、試合の閉じ方として今後に活かせそうな部分も見られた。

セレッソは戦力流出やけが人の影響もあり、ボール保持のクオリティを上げている最中のように見えた。登里を入れることで保持のオプションを増やすことはできていたが、SBとしては対人能力が気になるところでなかなか難しい。そうはいっても今のところボールを持ってなんぼのチームだと思うので、まずはハイプレスに負けずボール前進できるようにしたいところだ。

それではまた次回。

#1 【明治安田J1百年構想リーグ第1節 V・ファーレン長崎×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもご無沙汰しております。百年構想リーグも不定期かもしれませんがレビューを書いていきますのでよろしくお願いします。

広島は4年続いたスキッベ体制が終了し、38歳の若い指揮官、バルトシュ・ガウルを招へい。前体制ではハイプレスとロングボール中心でしたが、ショートパスによるビルドアップや低めの位置でブロックを敷くやり方も導入しようとしているようです。

一方の長崎は2018年以来8年ぶり2度目のJ1昇格。ここ数年スタジアムや戦力に積極的な投資をしている様子が見られ、J1に勝るとも劣らない戦力を有しての参戦となりました。そんな開幕戦のスタメンは以下。

お互いに3-4-2-1のミラー。広島は荒木と佐々木の不在に伴って山崎とジュソンをスタメン起用。復帰した小原、新加入の鈴木が起用された前線はフレッシュな顔ぶれとなった。

長崎も新加入の長谷川とサンタナがさっそく起用されてJ1仕様といった前線に。ほかにも岩崎、山口、翁長、進藤らJ1経験者が揃うスタメンとなった。

ずらしてくる相手への対応は慣れたもの

立ち上がりはロングボールの蹴り合いでスタートしたが、徐々に長崎がボールを握るシーンが増えてくる。長崎は長谷川が下りてきてビルドアップの起点となり、一方で松本天夢は高い位置に出るシーンが多かった。マンツー気味の広島は松本天夢に松本泰志がついていく一方で降りていく長谷川に対して塩谷が出ていかなかったため、長崎は中盤で数的優位に。14分の前進など、この中盤での数的優位を起点にボールを前進させるシーンが目立った。

しかしこういった事例への対応は慣れたものなのが広島。20分頃には長谷川に対して塩谷が迎撃に出ていく決断をし、長崎にショートパスでのビルドアップを許さない。こうなると長崎は岩崎やサンタナを塩谷が出て行った背後に走らせる形を狙うことになるが、ここは山崎やジュソン、あるいは中野が粘り強く対応していた。荒木や佐々木がいないため対人性能については不安視された部分だったが、ここで簡単に負けなかったのが試合を有利に進められた大きな要因だろう。

ただ、24分に岩崎が抜け出しかけたシーンなど縦スライドする際に空いたスペースをどう管理するかが怪しい場面は何度かあったので、長崎としてはそこをもう少し執拗に狙うと面白かったかもしれない。

CBが時間をもらえるならば

裏へのボールが通じず徐々にペースダウンした長崎に対し、広島がボールを持つ時間が増えていく。長崎は自陣に撤退する際に右シャドーのマテウスジェズスが前に残って5-3-2のような陣形になるため、広島は3CBのうち誰かがフリーでボールを持つことができる。27分にジュソンが高い位置に出て行ったのを皮切りに、サイドを変えて長崎の中盤3人を振り回しつつCBが持ち上がって前進の起点となっていた。


また、この試合では小原や川辺がサイドに流れてボールを引き出し、空いたスペースに中野が入ってくる形を多用。相手がいないサイドにボールを引き出す役を一人置いて前進の起点とし、その選手がいないスペースに代わりの誰かが入ってくるという設計はポジショナルプレーの片鱗を感じさせた。得点シーンはまさにこの試合のいいところが出た形で、持ち上がった塩谷から中に入ってきた中野への縦パスが通って生まれた。長崎はこの5-3-2でももうちょっと守れるか、もしくはもうちょっとジェズス起点のカウンターを繰り出せると踏んでいたのではと思うが、ここは広島の守備強度とキャンプで仕込んできた保持のクオリティが上回ったという形だった。

試合の進め方には伸びしろあり

長崎は後半からピトゥカを投入し、長谷川とともに後方からのボール出しを強化。岩崎や交代で入った笠柳、キャンベルらサイドアタッカーによる攻略を狙おうという構えだった。しかし逆に広島が縦に速い攻撃から立て続けに2得点。正直この2点は広島のクオリティが上回ったという印象で試合の流れとはそんなに関係なかった気がするが、こういうところで差がつくのもまたサッカーなのだろう。
点差がついた広島は小原と加藤を引っ込めて昨季の主力であるジャーメインと中村を投入。サイドでのボール引き出し役は川辺や塩谷がやっていたものの、さすがに3点差がついて終盤に差し掛かるとリスク管理もあってポジションを守る場面が増えたように感じた。こうなるとボールを落ち着けられなくなって前線への直線的なパスが増えることになるが、その形は読みやすく長崎DF陣に跳ね返される展開が続く。 おそらくは交代で入ったトルガイあたりにボールを引き出してほしかったのだろうが、左サイドは人を再度に流すことはやってなかったので急にはできなかったのかもしれない。非保持においては70~80分あたりはプレスに出ていく意識が中途半端に残っており、失点シーンは大きく開けた背後のスペースを使われる形となってしまった。このあたりの時間の過ごし方はまだこれからという印象だ。とはいえ失点後はきちんと引いてスペースを消しており、まずまず守ることができていた。1失点で今後につながる授業料を得られたなら安いものだろう。

雑感・試合を終えて

というわけでガウル体制初陣の広島が開幕戦で勝利を飾った。正直ここまでショートパスによるビルドアップを志向するようになるとは思わなかった。去年ならロングボールに頼っていた局面でも蹴らずに執拗にやり直しており、ボランチやシャドーがビルドアップの出口になる動きも多かった。
左サイド攻撃のバリエーションの少なさやプレスに出る際のリスク管理など怪しい部分もあったが、とても就任後1か月とは思えないほど監督の考えが浸透しているように感じた。特にシャドーで先発した小原の変わりようは驚き。昨年までのドリブル小僧というイメージから一変し、サイドに流れてボールを引き出したかと思えばハーフスペースを縦に抜けてシュートまで持ち込むなどビルドアップ隊と前線をつなぐモダンなアタッカーに転身を遂げていた。この試合で出たシャドーの中でほかに同様の役割をこなせていた選手はいなかったように見えたので、今後数か月は彼が攻撃のキーマンとなるのかもしれない。
また縦に速く攻めることも忘れずに早い攻撃で2点を奪い取っており、昨シーズンまでの良いところを生かしつつ新監督のエッセンスを加える、森保体制初年度の2012シーズンのようなバランスの良さが感じられた。長崎は比較的プレスが緩く最終ラインに時間を与えてくれるチームだったので、今後もっとプレッシャーをかけてくるチームや、ボール保持にこだわるチームと当たった際にどのようなふるまいを見せるのかには注目したい。
長崎は立ち上がりこそボール保持でいいところを見せたものの、プレスを受けてロングボールに頼らざるを得なくなってからは沈黙の時間が長かった。特に自陣に引いたときに1stラインのプレスが少なく、8人で守る形になっていたのが苦しかったと感じた。8人で凌ぐだけの最終ラインの強度か、多少攻め込まれても収支が合うくらいのカウンターを繰り出せないとこの路線は厳しい気がする。相手が広島だったからどちらも通じなかったのか、それともJ1相手にこの路線は無理があるのかは今後数試合で見極めていく必要があるだろう。降格がないので長めに見極めに使ってもいいわけだが。
サイドアタッカーが粒揃いでピトゥカや長谷川といったボール出しに長けたタレントもいるので、相手を引き出して背後を狙う疑似カウンターみたいなことをもうちょっとやっても面白そうな気がする。

それではまた次回。

【2025サンフレッチェ広島シーズンレビュー】

はしがき

毎度お世話になってます!2025シーズンも終了したということで今年もシーズンレビューをお届けしたいと思います。

まずは今季の成績を確認してみましょう。

リーグ戦:20勝8分10敗勝ち点68(4位) 46得点(8位)28失点(1位)

ルヴァンカップ:優勝

天皇杯:ベスト4敗退

ACLE:3勝2分1敗勝ち点11(3位)6得点3失点

リーグ戦は昨年と同じ勝ち点ながら4位と順位を下げたものの、ルヴァンは優勝で天皇杯はベスト4と昨年よりも好成績。ACLEもリーグステージ抜けの可能性は高そうで、全体的な成績としては昨年よりも良いように見えます。スタッツとして気になるのは得点の減少で、昨年は72得点とリーグトップの得点力を誇りましたが、今季は46得点で1試合平均1点ちょっとと物足りない数字。逆に失点28は驚異的な少なさで、これが今季の成績を支えていると言えるでしょう。

リーグ戦の勝ち点推移をグラフにするとこんな感じ。

4月の4連敗とその直後の5連敗が印象的でしょうか。その後は大きな連敗や連勝はなく、全体的に緩やかに勝ち点が伸びていったという印象です。昨シーズンは4月と最終盤に伸び悩みがあり夏は強かったというシーズンだったので、それと比べると浮き沈みの少ないシーズンに見えますね。

そのあたりも考慮しつつ、今シーズン気になったトピックについて振り返っていきたいと思います。

ボール保持への取り組み

序盤はボール保持の整備に取り組む姿勢が見えた。トルガイと中島のどちらか、あるいは両方を起用し、彼らが中盤に降りたりサイドに流れたりすることでボールを引き出してから前進というシーンがたびたび見られた。

シャドーをサイドに流すビルドアップ



ただ横浜FC戦でトルガイが長期離脱、中島も鹿島戦で負傷して離脱となり、保持の核を担うはずの2人を早々に失うことになってしまった。前田や井上潮音をボール循環役として起用するものの短期間での仕込みは難しく、試合を追うごとに相手をずらせなくなっていく。川辺をトップ下に置くなど試行錯誤するも、4月には4連敗を喫して上位に水を空けられる展開となった。

 

3-4-1-2に変更したアウェイ浦和戦

そうした流れを経て徐々に長いボールを多用するこれまでのシーズン同様の前身を指向するようになっていく。4連敗を止めたホーム福岡戦の加藤のゴールなどは象徴的かもしれない。相手の背後を積極的に狙うこれまでの戦い方に戻したことで戦績を安定させることはできたように思うが、過密日程を乗り切るには負担の大きいやり方ではあっただろう。

シーズン終盤にはトルガイを中盤で起用して相手を押し込みつつ戦う展開もあったが、そのようなゲームでもトルガイが交代するとテンポが上がっていくなど、最後までボール保持については属人的なやり方を出なかったという印象だ。

こうしてなかなか試合を落ち着けられず長いボールを使った前進に頼り、ボールをゴール前に運ぶまでの間にアタッカーが疲弊することでチャンスを決められない展開が増えたのではと考えている。その最たる例がジャーメインで、fotmobによるとゴール期待値は京都のエリアスと同程度にあるにもかかわらず得点数は4と寂しい数字になっている(エリアスは18)。もちろん単に試合から消えているだけではこうはならない。ポストプレーやサイド奥への裏抜け、さらにプレスやブロックへの参加など多くのタスクを献身的にこなしていた。これらは大いにチームを助けていたが、その結果疲弊してチャンスを決められなかったとすればチームが期待する役割とは少しズレているだろう。安定したボール前進ができるようになり、ジャーメインをはじめとしたアタッカー陣の負担を軽くすることで得点増に繋がるのではないかと思う。

非保持

上述した通り得点数が伸びないなか、チームの成績を支えたのが非保持のクオリティだろう。もともとの強みであるハイプレスに加え、今季はホーム鹿島戦などしっかりとブロックを作ってカウンターで戦うような展開がたびたび見られた。

ホーム鹿島戦はミドルブロックからのカウンターが奏功した


ルヴァン決勝でも3点リードとはいえ引いてうまく時間を消費する戦い方を成功させており、こちらの方面では戦い方の幅は広がっていたと感じる。プレスについても田中聡や川辺が広いプレーエリアを活かして素早くプレスバックし、最終ラインを助ける場面も多かった。佐々木や塩谷は相変わらず高いパフォーマンスだったがそれでも純粋な1vs1での勝率は下がってきているように感じるので、そこをプレスバックでカバーできていたのは素晴らしかったと思う。荒木は跳ね返しの強さやボール出しの精度に磨きがかかり、大迫も安定感とスーパーセーブを両立する絶対的な存在となるなど、総じて守備の安定感はシーズン通して高いレベルにあったと感じた。

セットプレー

今季はセットプレーからの得点が46得点中22点と半分近く。ちなみに昨年は72得点中26点なので昨年の方が得点自体は多い。(Football Lab 調べ)セットプレー以外の得点が減ったというほうが正確かもしれない。とはいえ今期はルヴァン決勝で見せたようなGKをブロックして荒木を突っ込ませる形や逆にファーの荒木が折り返して合わせる形など、欧州のトレンドを取り入れた強い形をしっかり実現できていたと感じる。この辺りはウマルコーチが仕込んでいたようで、タイトルへの熱意を感じる部分だった。

ルヴァン決勝で見せたロングスロー

また、中野のロングスローもすっかりお馴染みとなった。個人的にはそんなに成功してないと思うのだが、ルヴァンであれだけうまくいったのを見せられると否定もできない。とはいえ何回も投げてると飛距離も落ちるので、先制点が欲しい重要な試合の序盤とか試合終了間際のようなここぞという場面で使うのが良いのではと感じる。

終わりに、スキッベ体制総括

スキッべ体制最終年は守備やセットプレーの強化でタイトルは獲得したものの課題であった保持のところは未達と言える出来。昨年はボール保持で相手をゆさぶれている時期に勝ち点を重ねたのでリーグ制覇のためにもそこを磨いて欲しかったが、トルガイ中島の離脱によって従来のプレッシングとロングボールを活かしつつプレスバックとセットプレーを整備することで一発勝負に強い方向にシフトチェンジしたのかなと感じた。カップ戦は優勝とベスト4だがリーグ戦は優勝争いから遅れ続けたというのも戦い方に合った結果のように感じる。

就任当初から強度を高く保ってハイプレスを仕掛け、縦に早く攻めるという方針はほとんどぶれておらず、その軸があることで選手たちはプレーしやすかったと思う。2022と2023シーズンはまだ思い切ったハイプレスに相手が慣れていなかったこともあり、リーグの先端を走る存在になっていた。一方で24シーズンからは相手がハイプレスに付き合ってくれなくなったことでロングボールとハイクロスに依存していった部分もあり、そこで思うような結果を出せなかった。ハイプレスと縦に速い攻撃という軸はぶれなかったが、それが通らない時にどう適応していくか、とりわけボールを持って試合を進めるという部分についてはあまりうまく実装できなかったなという印象だ。

また、スキッベ監督は選手のプロ意識の高さを前提に休みを多く与える、練習中にも非常にポジティブな声掛けが多いなどそのマネジメント手法もたびたび話題になっていた。INSIDE動画で見えるチームの雰囲気も非常に暖かく、これも今までの広島の雰囲気によく合っていたものだったと思う。

ユース出身選手の退団が相次いでおり広島の育成に対する不安も感じるところはあるが、個人的にはここ2年程トップチームの戦術がフィジカル的な優位性が重要となるもので、そこで勝てない選手がなかなか出番を得られないのが原因ではないかと思っている。ということで、新監督に決定したガウル氏には若手の起用はもちろん、フィジカル的な優位がそこまでない選手たちをどのように戦術に組み込んでいくかも注目したいところだ。

それではまた次回。

#35【2025J1第38節 サンフレッチェ広島×湘南ベルマーレ】

はしがき

毎度お世話になってます!ついに2025年も最終節、湘南戦のレビューです。

連勝中の広島は勝てば3位の可能性ありという状況の中、降格が決まったものの同じく連勝中の湘南をホームに迎えました。

スタメンは以下。

広島は越道のWB、トルガイのDHを含め前節と同じ11人でスタート。湘南は古巣戦の松本大弥が出場停止で鈴木雄斗、小野瀬→池田で前節から2人変更となった。

刺し合いでの有利不利は

試合は序盤からお互いに縦に速い攻撃で刺し合う展開となった。広島はWBを下げて相手のWBを引き出してからその背後にシャドーを流し、CFと逆シャドーがフィニッシャーを目指す形。

スキッべ体制ではおなじみの前進ルートだが、スコアレスで進行してボールを持つ時間がそこまで増えなかったこともあり川崎戦よりも速い攻撃が増えている印象があった。


一方の湘南はアンカーが広島のDHを片方釣り出せるため、その背後を使った前進が多く見られた。IHがハーフスペースの高い位置に侵入したり、鈴木と二田の2トップが降りてきたり。いずれもCBの迎撃で潰せそうだが、そこは前に残ったCBがズレてきて迎撃を躊躇させており、スペース確保の方法がよく練られていたと思う。


ゴールに迫るシーンが多く目まぐるしい前半だったが、どちらかというと湘南の狙い通りにゲームが進んでいた印象だ。広島は機動力でやや劣るトルガイをDHに起用しており、中盤のスペースが空く展開はやや不利に見えた。この前進ルートを多用するなら川辺と田中を中盤に並べた方が隙がなかったように思う。前節はトルガイを起用してボール保持に振ったのかなと感じたが、もしかすると序盤に失点したため自然とボールを持つ時間が増えただけかもしれないと思った。

マークを外せていても

そういった点が指摘されたのか、後半からは広島のビルドアップ隊がボールを落ち着ける場面が増えていった。
その中で目立ったのが塩谷が高い位置をとる陣形であった。


3バックのうち塩谷がサイドに開いて高めの位置を取ることでSBのようになり、広島の最終ラインが大迫を含めて4バックのようになるシーンが見られた。3-5-2の湘南は相手のSB位置を監視するのが難しく、2トップが見ることにすると消耗が激しいし、かといってIHが出ていけば中盤が空いてしまう。というわけで広島としてはSBの位置に人を配置することは理にかなっていた。
この日問題だったのはここにボールが出てこなかったところである。大迫や荒木がボールを持っても塩谷までの距離が遠いからか、パスを通すのを躊躇っているように感じた。ここは速いパスを狙ったりドリブルで運んで押し上げるなどしてなんとかパスを通して欲しかった。こうなると単にCBが1枚消されているだけになってしまい、湘南は2トップで荒木佐々木の2CBを見れば良いことになる。失点シーンはこの状況でボールを運ぼうと前に出た佐々木がボールを失い、最終ラインが手薄な状態でカウンターを受けたことによるものだった。


佐々木が失ったことよりもそもそも塩谷経由で前進すべきなのでは、また塩谷がいない状況なら佐々木が上がるのはリスキーだし、佐々木が上がった時は誰かがカバーに戻ってあげるということも必要だ。チーム全体でどこから前進するのか、奪われた時にどのように人を配置するかが共有されていないという感覚を抱く時間だった。
失点後も広島のビルドアップ機能不全は続き、満足に前進できない時間が続く。そんな展開の中、獲得したセットプレーで輝きを放ったのが菅。ジェルマンの同点弾と佐々木のPKゲットを立て続けに演出し、投入されてから10分で逆転成功に導いた。なかなか点が取れないところを終盤のセットプレー連打でこじ開けるという今シーズン何度目かの勝ち方を見せた広島が最終戦を劇的な逆転勝利で飾った。

雑感・試合を終えて

広島は今シーズン何度かあった終盤のセットプレーで逆転する形が最終節でも出て勝利。トルガイがいるのに速い攻撃で刺し合いになってしまうところや後方に人が居なくなってビルドアップできなくなるところなど、課題も据え置きでまさに今季が凝縮された90分だったように思う。

多少の不利ならセットプレーのパワーで打開できるところは頼もしいが、来季はそもそも不利にならないゲーム運びが求められるところだ。

湘南は広島をしっかり分析して攻めのルートを見つけ出していたが、最後に力押しに屈する形に。とはいえ内容はよく、ここまでの連勝と合わせて悪くない形で来季に繋げられるのではないだろうか。

それではまた次回。

#34【2025J1第37節 川崎フロンターレvsサンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になってます!せっかく勝ったのに浦和戦をサボってしまいましたが、川崎戦はやっておこうと思います。広島はスキッベ監督の退任が発表されてACLEを含めて残り3試合。川崎も引退する車屋や安藤、退団するチョンソンリョン、ジェジエウのホーム最終戦ということで、お互いに勝って華を添えたいところです。スタメンは以下。

川崎は4-2-3-1で前節からウレモヴィッチ→車屋、橘田→山本の2人変更。

広島は3-4-2-1で前節から東→越道、木下→トルガイの2人変更となった。

速く攻める川崎、前進ルートを複数持つ広島

試合序盤から広島はボールをつなぐ意思を見せる。中盤のトルガイがボールを落ち着かせる役割を担い、川崎にプレスを浴びたときは荒木から中野へのロングボールで裏返しに行く。

中野と佐々木旭のマッチアップなのでどうかなと思ったが、ここがかなり競り勝てていたため広島にとっては非常に助かっていた。プレスにかかりそうになっても右奥に蹴っ飛ばせば前進はできるので、最終ラインも落ち着いてボールを持てる。

また、中盤での数的優位もあるので田中聡やトルガイがフリーになってボールを引き出せることもしばしば。同点に追いつくまではここで前を向いて中央突破を模索するシーンもよくあった。総じてロングボールとショートパスによる前進をうまく使い分けており、川崎にボールの奪いどころの的を絞らせなかったという印象。

一方川崎がボールを持った時は広島がプレスに出てくるので、前線への縦パスを起点にした速い攻撃を意識しているようだった。

先制点のシーンはそれが実った形で、縦パスを受けたエリソンが素早く脇坂にはたくことで潰しに出てきた荒木と挟みに来た田中聡を外し、大外の伊藤にフリーでボールを届けることができた。

ただ、広島が最終ラインにプレスをかけるので後ろで落ち着いてボールを持てないこと、CB陣が迷いなく迎撃に出てくることもあり、縦パスを落として背後に抜けるという形を繰り出せたのは数えるほどだった。

狙いがきちんと見えたクロスと縦パスの形

広島の保持については、この試合では狙って繰り出されていると感じる攻撃が得点に繋がったのも印象的だった。まずは同点ゴールに繋がったファーサイドへのクロス。

サイドから逆足で巻いてくるクロスをファーサイドに蹴ってSBの奥で合わせるようなイメージだ。同点ゴールのシーンの他に58分にも中村がここに入り込んでくるシーンがあった。これまでならWBが使っていたスペースかもしれないが、この日はシャドーがここに入るパターンも試していた。WBを大外に上げるのはリスクもあるので、4バック相手ならこの形で大外を取りに行くのも十分有効なのだろう。

また、SBをWBで引き出してその背後をシャドーが使う形も何度があり、中村の逆転ゴールに繋がった。

これまでの広島はWBから直接SBにボールを出すことが多く、この形はスライドしてきたCBに潰されて終わりになりがちであった。この日も相手がジェジエウなのでその懸念はあったが、ジャメへの縦パスを経由することでジェジエウがサイドにスライドする猶予を与えず、シャドーをフリーにすることが出来ていた。

列を飛ばしてジャメに縦パスを入れるのは中盤がマークされている時のビルドアップルートとしても有効で、この形があることでトルガイや田中聡がフリーになりやすいという側面もあったように思う。また、越道が高い位置での仕掛けと低い位置での出し手という両方の役割をこなせることも好印象。この日の広島がボール保持で川崎をうまく振り回せていたのは単にトルガイのコンディションが良いというだけでなく、様々な形の前進方法を組み込めていたことが大きいだろう。

雑感・試合を終えて

川崎は後半から家長を入れてサイドに人を集めることでボールを持つ時間は増やせたが、サイドを突破した後にどのようにゴールまで迫るかには苦労しているようだった。エリソンがクロスに合わせた時大外で2人フリーというシーンがあったが、このシーンのように逆サイドに入ってくる人を確保できると良いのかもしれないが、家長を逆サイドに出張させるとそれは難しくなる。ゲームを作る人と決める人をどうバランスよく配置するか、に葛藤しているのかなという印象を受けた。

広島は先制点こそ食らったものの相手をしっかり押し込んで逆転勝利。見ている側としてもまあそのうち点は取れるだろうという感触はあった。これまでは押し込んでいてもクロスを上げ続けるだけみたいな試合も多かったが、この日はゴールに迫るパターンが多彩だったのでそれだけ川崎も対応しづらかったのではないだろうか。これがもっと早めに出せていればという気もするが、日程に余裕が出てくるシーズン終盤にこういう光景が見られるのはあるあるかもしれない。越道のハイパフォーマンスなど来季に繋がる要素もあり、満足度の高い一戦となった。

それではまた次回。