#11【2023J1第12節 サンフレッチェ広島×アビスパ福岡】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は福岡戦。好調なシーズン序盤を過ごしている両チーム、4位と5位の直接対決となりました。スタメンは以下。

広島は前節から越道→ピエロスの変更で、この試合は3-1-4-2でスタートしました。福岡は4-4-2で変わらず、CBの三國とCFの佐藤の2人が前節からの変更となっています。

広島を引き込む福岡の保持

さて、試合開始直後から福岡がボールを保持してゲームを進める展開が目立つことになりました。

福岡の保持で目立った特徴はSBの立ち位置の低さです。これにより広島のWBを高い位置まで引き出すことができ、その背後に入ってくるSHにボールを届ける形で前進していきます。特に左サイドのルキアンがこの受け方をよくやっていました。

これに対して広島のCBが潰しに出ていくと、その背後を2トップが取りに行くという形もデザインされていました。そのケアは野津田がやるので中央が空くことになり、ボールを受けたSHの脱出ルートになっていました。

CBが動かされた時にそのスペースを野津田がケアするというのはいつもやっている事なのですが、この試合の広島は3-1-4-2で入ったので野津田が中央からいなくなってしまうことによる影響は大きかったですね。

また、背後を気にして広島のWBが下がると福岡のSBはフリーになります。広島はこれに対して誰が行くのかが曖昧になっていました。時間の経過とともにIHが出ていくようになった気がしますが、そうなると降りてくる山岸や絞ってくるSHによって中央が数的不利になりがちであり、これをどう解決するかも難しかったです。

広島のハイプレスはWBが豪快に前に出ていくのが特徴なので、福岡としてはその背後を突くというのは理に適った戦略だったと思います。
広島はWB前進プレスを外された後の対応がぼんやりしていたのが気になりました。いつもの1トップ2シャドーなら森島満田の二度追いで解決したかもしれませんが、この試合の2トップには二度追いのタスクは課されていないように見えました。WBが出ていけない時に相手のSBをどうするのか、というのはこの試合で見えた課題です。

広島の保持を成り立たせない2トップの献身

また、福岡は非保持においても広島のやり方をしっかり分析して対策を立てていました。

広島の最終ラインがボールを持った際、福岡は2トップが両サイドのCBまでプレスに行く様子が目立ちました。これにより福岡のSHは広島のWBに、福岡のSBは流れてくる広島のCFに対応できるようになり、広島はボールの出所を失っていきました。また、WBにボールが入った際に野津田が中央のパスコースを作りに行くのはおなじみの光景ですが、福岡の2トップはここに対しても精力的にプレスバックを行うことで広島に息をつかせませんでした。

もちろんプレスが間に合わずにSHとSBが前に釣り出されることもあるのですが、その場合にも全体がスライドしてしっかりと対応します。最終的には奈良と三國の対人性能を活かしてロングボールを跳ね返していました。広島はナッシムとピエロスに長いボールを入れても収めてくれるだろうと考えていた節がありそうですが、ここの対人は終始福岡に分があったと感じます。

ただし、このやり方は山岸と佐藤の2トップにかなり負担を強いるので長くは持たないのが欠点となります。35分頃には福岡2トップのプレスバックから逃れた野津田が中央でボールを持つシーンが見られました。
福岡としては2トップに負担のかかるやり方を採用する以上前半でリードするのは至上命題だったと思われるので、30分の山岸の得点で求めていた成果は得られたと言えるでしょう。

安定を取り戻す広島と勢いを失う福岡

後半から広島はナッシム→エゼキエウ、野津田→志知の2枚替えを敢行。東と川村をDHとした3-4-2-1に戻す。

後半の広島は保持を安定させる場面が多く見られました。2DHにすることでWBがボールを持った際にDHがサポートに行きやすくなったのかなと思います。同時に、前半から飛ばしていた福岡の2トップのプレスバックも間に合いにくくなっていきます。福岡ベンチも2トップの息切れは想定していたようで、先発だった佐藤は57分に早くも交替となりました。

また、2DHにしたことの効果としてボールを失った後のネガトラで中央が空きにくくなったのということも挙げられます。前半に再三見られたトランジションでの中央を経由した逆サイド展開が減っていました。

こうしてボール保持の時間を増やした広島はいつものようにHS周辺を狙った崩しを見せていきます。それでも福岡はブロック守備もお手の物なので崩しに苦労するところ。クリーンなチャンスは決して多くなかったですが、それだけに後半最初のチャンスで追いつけたのは大きかったと思います。

さらに72分にはセットプレーから逆転。押し込む時間が増えればセットプレーも増えるわけで、福岡からの点の取り方としては逆転ゴールの方が本来狙っていた形かもしれません。

雑感・次節に向けて

試合は広島がカウンターから川村が初ゴールを挙げ、出来過ぎの3ゴールで逆転勝利。ここ数試合の点の取れなさを払しょくする爽快な勝利でした。ピエロスと川村に初ゴールが生まれたのは明るい材料ながら、前半のパフォーマンスは不安材料でしょう。

押し込んでなんぼの3-1-4-2で相手に背後を突かれ続けてプレッシングが機能停止し、2トップへの放り込みも効かずといいところなしでした。福岡が飛ばして入ってきたことを差し引いても、相手の対策に抵抗できないことが見えてしまいました。次節以降の神戸、名古屋もこの試合の福岡と同じかそれ以上に組織だった振る舞いを見せてくることが想定されるので、相手の対策も想定してしっかりと対応を準備しておく必要があります。

一方の福岡はリードを活かせず逆転負け。前半のハイパフォーマンスは見事だっただけに、後半開始早々の失点が痛かったです。もともと後半押し込まれることはある程度想定していたでしょうし、押し込まれてからの被決定機もそこまで多くなかっただけに、後半の立ち上がりを凌ぎ切れなかった事実が重くのしかかることになってしまいました。

それではまた次回。