#12【2023J1第13節 ヴィッセル神戸×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は神戸戦。首位の神戸×3ポイント差で1試合未消化の広島ということで実質首位攻防戦。注目の一戦となりました。スタメンは以下。

広島は前節からピエロスとケガの満田が外れ、越道と志知がスタメンになっています。神戸は前節からトゥーレル、斎藤の2人が変更。DAZNでは4-3-3表記になっていましたが、佐々木大樹はトップ下と表現する方がしっくり来る立ち位置だったので4-2-3-1表記にしています。

規律正しい神戸の非保持

神戸の非保持で印象的だったのはSBのWBへのハイプレスと佐々木のプレスバックです。この2つにより広島にサイドでも中央でもボールの落ちつけ所を作らせない設計になっていました。

広島はこれに対してシャドーがSBの裏を取りに行く形で対応します。が、神戸は全体がしっかりスライドしてくるので、SBの裏を取れたとしてもサイドの奥で詰まることが多くなってしまいました。
保持で落ち着くという意味では例えばシャドーはSBの前に立ってWBをフリーにしたり、CBSB間を抜けてDHやCBを動かし、中央にパスコースを作れると良かったかなと思います。

大迫と武藤を活かすボール前進

一方で神戸の保持は長いボールが中心。広島のWBを引き付けておいて武藤や大迫に蹴る場面が目立ちました。これは先週福岡がやってきたのと似たような形ですね。

  1. サイドの広いスペースでCBと1vs1でやり合うわけなので、対人が強い大迫、武藤を活かすには絶好のシチュエーションです。特に武藤は凄まじく、広島で最もこうした1vs1に強いであろう佐々木がかなり苦労していました。
    広島は生命線であるハイプレスが裏返され続け、なかなかプレーエリアを押し上げられず苦しい展開となります。

クロスの質と位置取りは

広島の保持では、サイド攻撃時の役割分担とクロスの質が気になりました。
例えば神戸の先制点は広島のクロスの跳ね返りから生まれています。

東が高い位置でフリーになってニアにクロスを入れるところまでは良かったですが、これをニアで弾き返されたあと汰木と佐々木で一気に陣地回復を許してしまいました。
ここでは野津田のカバー範囲が広すぎることでカウンターを防げなかったと思います。広島はサイド攻撃でWBもファーに待たせるので、DHまでゴール前に入っていく必要はないんじゃないかと思います。このシーンで言えば川村ですね。

逆に神戸はこのシーンでこぼれ球を拾った汰木のように、ボールサイドと逆側のSHがボールを回収するシーンが目立ちました。広島は保持時にDHが縦関係になってその脇が空きがちなので、このSHがボールを持てば一気に前進できる可能性があります。
中央に絞って少し高めの位置を取り、帰陣にもカウンターにも備えるのは4-4ブロックにおけるSHのセオリーと言えます。武藤にも言えることですが、彼らのようなアタッカーが毎回しっかりこのセオリーを実行できているのは凄いですね。

また、広島のクロスで言えばボールの質も気になるところです。技術的なミスはともかく、滞空時間の長いボールを蹴って前川にキャッチされるシーンが多かったのは気になりました。
ファーのWBに合わせるクロスが多いのでそれをミスしているだけなら良いのですが、中央のドウグラスやナッシムの高さを活かそうとして高いボールを蹴っているとしたら望み薄かなと思います。彼らはずば抜けてヘディングが強いわけではないので、J1レベルのCBだとおそらく得点には繋がりにくいでしょう。

クロス攻撃で良かったのは74分の鮎川のヘディングのシーンですね。

川村がSBCBと間に立って山口を動かし、そのスペースで受けた森島がGKが出られない速いクロスを送ります。
最終ラインと駆け引きしてフリーになった鮎川が合わせたが前川の正面でした。
サイドでの立ち位置と質のいいクロス、そしてFWの動き直しが生み出した決定機であり、こういう形で相手を動かしてからのクロスを狙っていきたいところです。

雑感・次節に向けて

試合は終盤にカウンターから武藤が追加点を決めて神戸が2-0で勝利。個人能力の高さもさることながら、それを最大限に発揮させる規律を持ったソリッドなチームでした。ここまで首位につけているのも納得の強さです。

広島は福岡戦よりは悪くない感触で進められていたと思いますがゴール前での質が不足し連勝ストップ。福岡戦に続きかなりしっかり対策されている感はありますが、立ち位置の取り方やクロスの質など細部にこだわりながらやっていく必要がありそうです。

それではまた次回。