#26 【J1第28節 京都サンガ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はアウェイ京都戦ですね。ここ5試合で4勝1分けと好調の広島、奇跡の逆転優勝のためには是が非でも3ポイントが必要になってきます。一方の京都は残留はほぼ安全圏となり、上位進出を目指した戦いになってきたというところでしょうか。
そんな試合のスタメンは以下。

広島はマルコスをベンチスタートにして野津田と川村のDHでスタート。腰を痛めたという佐々木のところには東が起用されています。
一方の京都はイヨハが契約上出場できないためCBは麻田とアピアタウィアのセット。豊川と福岡も前節から変わって先発に名を連ねています。

ロングボール以外のプレス回避は

さて、ゲームは序盤からお互いに高い位置からのプレスを実行し、ロングボールでそれを回避していくという展開。様子見のロングボールから試合の展開が落ち着いてくると、少しずつ両チームのプレス回避方法が見えてくるようになります。

広島がよくやっていたのは、まずWBで京都のSBを釣り出してからその裏のシャドーに縦パス入れるやつですね。序盤に東が連続でやっていましたが、この時のようにうまくいけばいきなりシャドーとCBが1vs1の状況を作れます。
一方で、この方法だとCBとWBが低い位置に降りてくるので相手のプレスに捕まった時のリスクは高くなります。また、京都は何度か裏を取られてもひるまずにプレスを仕掛けてきており、東や志知が出しどころを失って長いボールを蹴らざるを得ない場面も見られました。うまくいけば一気にゴールに迫れますが、押し込む展開を維持するのはやや難しい前進方法というところでしょうか。

また、これとは別に大迫がボールを持った際に野津田や川村がピッチ中央に降りてきてフリーで受ける場面も目立ちました。これは中盤の数的優位を活かした形で、荒木もこの形があるのをわかっているので少しサイドにポジションを取っていたのかもしれません。

一方の京都は、ポジションチェンジを多用した前進を仕掛けてきました。

まずSBが高い位置を取って広島のWBを押し下げておき、そこにIHが斜めに降りてきてビルドアップの出口となります。広島のシャドーは京都のCBかアンカーを監視しているのでこのIHまで出ていく展開にはなりづらく、本来対面のDHもレーンと列を同時に移動はしづらいので、広島としてはこのIHは非常に捕まえにくそうでした。また、アンカーの金子もすぐサポートに来ていたので、IHに入った後のパスコースも作りやすかったと思います。

で、ここから縦パスが入ると本来のマークと違うので広島のファーストディフェンダーが決まりづらくなり、どうしても遅れてアプローチすることになります。また、京都の右サイドは豊川と山崎のポジションチェンジもあるのでなおさら捕まえにくく、この辺りのパス交換でサイドの奥に侵入していく場面は何度もありました。

このように広島のプレスを外す準備をしっかりしてきた京都は、序盤こそ強度を押し出してくる広島に危ないシーンを作られていたものの、前半の終わりが近づくにつれて少しずつ保持率を高めてペースを握っていったように見えました。

高い位置に侵入する保持攻撃を!

プレス回避のところでも書いたのですが、この日の広島の保持攻撃で気になったのはWBの位置の低さです。また、WBがボールを持っても十分なフォロー体制が整っていないという印象もありました。

広島の保持ではCBとSBの間を取るのが一つの目標で、そのためにWBがボールを持ったらシャドーが裏に抜けていくという動きが効果的です。しかし、この試合ではシャドーが裏抜けせず、WBがそのままアーリークロスを上げている場面が多くありました。

もちろんチャンスだと思えば早めにクロスという選択肢があってもいいのですが、単純なクロスだとなかなか相手を動かせません。シャドーが背後に抜けることでフリーでポケットを取れればよし、そうでなくても相手のIHを動かし、それによってWBのカットインやDHのフォローを活かす、というように相手を動かす攻撃が見られなかったのは残念なポイントでした。

5バックで中央堅め

後半の立ち上がりにはスローインから広島陣内に侵入した京都が豊川のゴールで先制します。東はCB起用でもパス精度や高さで存在感を示していましたが、このシーンでは連携不足感が見えてしまいましたね。

先制した京都は後半途中から金子を最終ラインに下げた5-4-1のような格好で守るようになります。
この試合の広島はゴールへの最短距離を進むような選択をすることが多く、特にカウンターの時は中央3レーンでDFラインの背後を狙う場面が目立ちました。このスタイルだからこそシャドーにエゼキエウとマルコスを置くという交替になったのかもしれませんが、京都の5バック化によって中央は封鎖され、素早く前進して最終ラインの背後を狙おうとしても中央レーンで3CBに阻まれてしまうという状況が続きました。

こうなると広島は大外からクロスを入れるしかなくなり、高さのないエゼキエウとマルコスのシャドー起用が仇となってしまいます。京都の5バック化は広島の攻撃の狙いを見切った機敏な修正だったと言えるでしょう。

雑感・試合を終えて

試合は1-0で逃げ切った京都が勝利。保持で広島のプレスを空転させて流れをつかみ、セットプレーで持っていく巧みな試合運びが光りました。前半の序盤に見せたサインプレーなどもそうですが、準備してきたことがしっかりと出たことがうかがえます。シュート数は少ないながらも会心の勝利なのではないでしょうか。

一方の広島はこれで6試合ぶりの敗戦。佐々木が不在で~というよりも、前節までに見せていた丁寧な保持による押し込みを忘れてしまっているのがもったいないな~という感じでした。
京都との試合は確かにロングボールが多くなりがちですが、それ以外にどうやって相手を動かすか、というところを忘れずにやっていく必要があるというのが教訓ですね。

それではまた次回。