#27 【J1第29節 サンフレッチェ広島×名古屋グランパス】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は名古屋戦。広島は連勝ストップしたものの、勝てば順位の入れ替わる上位対決です。名古屋は最近勝利がありませんが、上位に足踏みが多い中で何とか食い下がりたいところ。スタメンは以下の通りです。

広島は佐々木が戦列復帰し、マルコスもスタメンに復帰。それに伴って満田がDH起用、野津田がベンチスタートになりました。
一方の名古屋は3-1-4-2。中盤で起用されていた内田に代わって古巣対戦の野上がWBに起用されています。

ミスマッチを許さないリスク上等の広島

さて、強度に定評のある両チームの対戦ですが、この試合は序盤からショートパスによるビルドアップが多く見られました。

名古屋がよくやっていたのはWBが高い位置を取ってIHの和泉をサイドに降ろし、広島のDHを釣り出してから空いた中央を進んでいく形です。中盤は名古屋が3vs2の数的優位なので、広島のDHが和泉についてくれば稲垣か森島のどちらが空き、ついてこなければフリーなのでそれはそれでOKという形です。また、2トップの前田も降りてきて間受けを狙う場面がしばしばありました。

これに対して広島は佐々木か塩谷を前に出して対応するという形で対応しているようでした。図では中盤でフリーになった森島に対して佐々木が出てきて対応しています。これは序盤に何度か見られた形ですね。塩谷も前田を潰しに行ってる場面がありました。

広島としてはDHやCBが前に出るリスクを負ってでも名古屋が作るミスマッチを解消してプレスをかけたいという意図でしょう。実際この形で高い位置で奪って素早く前進できる場面もありましたが、14分の前田のシュートシーンなど、DHやCBが出ていったスペースを使われて危ない場面になることもありました。この試合の名古屋は広島の選手が出ていったスペースを前田やユンカーが直接使うことでゴールに迫っており、森島がアクセントになる場面はそんなに多くなかった印象でしたね。

ミスマッチ解消より防御を優先していた名古屋

一方広島がボールを保持した際には、左右のCBが名古屋の2トップ脇から前進していく場面が多く見られました。

塩谷と佐々木はボールを受けると積極的に持ち上がっていき、名古屋の2トップのラインを超えていきます。ここに対して名古屋のIHが出てくることはあったのですが、残りの中盤は深追いせずDFラインの前を固めることを優先していました。結果的に広島は満田と川村をフリーにでき、中盤までは大した苦労なく前進できていたと思います。
一方、名古屋の5バック+センターの2人が待ち構えているため、中盤より前のエリアに侵入していくのは容易ではありませんでした。名古屋は5バックで5レーンを埋めているためシャドーが背後のスペースを狙うことも難しい状況にあり、広島は大外からのクロスを中心にした攻撃を続けることになりました。それでも川村や中野のミドルでゴールを脅かしていたのは勢いを感じさせましたが、まずは決壊を防ぐという名古屋の狙いは一定の成果を見せていたと思います。

噛み合わせてクオリティ勝負へ

しかし、名古屋は後半の頭から前田と森島に替えて永井と内田を投入。並びを3-4-2-1にして広島と噛み合わせてきました。これにより、試合はトランジションを中心とした個々のクオリティ勝負の様相を呈してきます。そんな中で生まれた名古屋の先制点はまさにクオリティの産物。中盤でのパス交換から一気に加速し、永井とユンカーの速さで広島のDF陣を置き去りにすることに成功しました。

これで前半にも増して守備を固めるというプランが分かりやすくなった名古屋でしたが、その狙いを打ち砕いたのも個々のクオリティでした。広島は交替で入った選手たちが揃いも揃って大当たり。ドウグラスとエゼキエウはカウンターの起点として前進からフィニッシュワークまでこなし、越道は高精度のクロスを供給し続けました。名古屋も中島、ターレスとパワーのある選手が入ったものの中島は荒木とのフィジカル勝負で力を発揮できず、ターレスの推進力もWB起用で位置が低かったため割引に感じました。

雑感・試合を終えて

結局交代で入った選手が全得点に絡む活躍を見せた広島が15分で3得点を重ねて逆転勝利。ホームゲームは4連勝となりました。決していつもよりチャンスが多い展開ではなかったものの、選手交代を活かして勝ち切ったのはお見事。前節の反省なのか、フィニッシャーとして期待の持てる加藤を前線に残しておいたのも吉と出ました。
ただやはり前半のうちに保持で相手を動かす努力は見たいのが正直なところ。WBに入ったときの裏抜けとかもうちょいあってもいいんじゃないかなと思います。

一方の名古屋はこれでリーグ戦6試合勝ちなしに。しっかりと固めてスペースのある展開で一刺しという勝ち筋は明確で強いですが、90分維持できないのが困りものでしょうか。来週にはルヴァンの準決勝が待っているだけに、何とか手札を増やしていきたいという印象です。

それではまた次回。