#29 【J1第31節 FC東京×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はアウェイFC東京戦。2019年を最後に勝ちがなく、スキッベ体制になってからも3戦連続1-2負けと地味に相性の悪い相手です。スタメンは以下。

東京は4-2-3-1。前節中盤で起用されていた小泉がSBに下がり、松木が先発に入っています。また、右WGには俵積田に代わって仲川が起用されました。

広島は3-4-2-1で、DHは再び満田と川村のセットに戻しました。シャドーにはエゼキエウが起用されています。

中盤の数的優位で起点づくり

さて、この試合は両チームとも中盤のミスマッチを利用して前進を試みていました。

東京は2CB+2DHの形になるため、広島の前線3人がプレスをかけようとすると人数が足りず、満田か川村のどちらかはヘルプに出ていくことになります。そこでDHを引き出してできた背後のスペースを使って前進していました。また、前線は3vs3の数的同数なので当然背後へのボールも多用してきます。ただしここは広島のCBの強さが光りましたね。特にアダイウトンのところはもう少し勝てる計算だったのではないかと思いますが、塩谷と時には中野がきっちり監視していた印象です。マークを外してしまうと失点シーンのようになってしまうわけですからね。

一方の広島は中盤に4人いるので、東京がプレスをかけようとすると満田か川村が中盤の底で余ることになります。実際は川村と満田が縦関係になってフリーになった方がボールを受け、そこからサイドに展開する形を繰り返していました。加藤のヘディングシュートのシーンなど、WBにボールが入ると早めにクロスを上げてゴールに迫ろうという意識も感じられましたね。

サイドからの脱出方法は

キックオフから時間が経って両チームのプレス方法が見え、脱出ルートが明らかになっていくと、そこから先の前進方法も見えるようになってきました。

広島はシャドーをサイドに流す展開が多く見られました。こうすることで東京のSBは前に出られず、WBはフリーでボールを前線に供給することができます。特に左サイドの東はフリーでボールを受ける局面が何度も見られました。キック精度の高い東がWBに起用されたのはここで時間をもらえることを見越してのことだったかもしれませんね。
一方で、東のサイドは非保持では東京の前進ルートとして利用されている側面もありました。

広島は前からプレスをかけて東京のSBまで追い込んだ際に寄せきれず、WGやDHに展開されて脱出する場面を多く作られていました。狙い通りSBまで追い込んでWBとシャドーで挟んだはずがボールを奪えていなかったため、展開された先で数的不利となりピンチに繋がります。佐々木のマークから逃れるように引いてきた仲川がボールを受けたり、中央の松木が慌ててカバーに来た満田を剥がしたりと、SBの脱出を起点に一気にボールを運ばれるシーンが目立ちましたね。佳史扶のシュートがバーを直撃したシーンなどもこの形でした。

両チームともがそれぞれのプレスに対してそれぞれに脱出ルートを見つける、互角の形で試合を折り返します。

コンセプトは強度と背後

後半になっても両チームの配置などはそれほど変わらなかったように思います。強いて言えば東京の3トップのサポートに対して広島のCBがついて行くようになったか?という感じ。加藤の先制ゴールのシーンでは仲川に対して佐々木が結構高い位置まで追いかけていました。

ただ、時間が進むにつれて広島がゴールに迫る場面が増えていきましたね。これは単純に広島の選手たちの方は強度がよく持続していてセカンドボールを拾えているという印象で、特にCB陣は圧巻でした。
また、WBからのアーリークロスを始め執拗に背後を狙い続けることで相手を消耗させ、陣形を間延びさせているようにも感じました。陣形を引き延ばすことはマンツーマンで守る広島にとってもリスクで、実際に失点シーンのような場面もできています。それでもトータルで見れば優位に持ってこれるという自信があるからこそ、プレスに出ていって強度勝負に持ち込んでいるのかなと感じる後半でした。

雑感・次節に向けて

リスタートで隙を逃さなかった東京が一時同点とするも、前プレを得点に結びつけた広島が勝利。連勝こそないものの好調をキープしています。強度と背後狙いのコンセプトはそのままに保持が安定してきており、より強みを発揮できているように映りますね。

一方でこの試合でも終盤までカードを切らなかったように交替策の少なさはやや不安かもしれません。リードした展開でスタメン組が揃ってハイパフォーマンスだったという事情はありますが、今後過密日程は避けられない状況になってきており、強度の維持に交替策の充実は不可欠でしょう。とりわけ好パフォーマンスの目立つCB陣はそれだけ替えが効かなくなってきており、ここにどう取り組むかは今季~来季序盤のテーマになってきそうに思います。

東京は後半になるにつれ保持で脱出できなくなっていったのが気になりました。3トップの裏抜けが止められ始めた段階でいったんボールを回し。試合を落ち着にいく選択はあっても良かったかもしれないですね。

それではまた次回。