#28 【J1第30節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はC大阪戦。代表ウィーク明けで久々の試合となります。ルヴァンカップ決勝から1年が経ち、加藤は古巣対戦となります。スタメンは以下。

広島はピエロスとマルコスがコンディション不良とのことで、トップにドウグラス、シャドーに満田を起用して野津田と川村のDHセット。3連敗中と苦しいセレッソはヨニッチが久々の先発、中盤は奥埜香川上門のテクニシャンタイプで固めています。なお、DAZNでは4-4-2表記でしたが実情としては4-3-3が近いだろうということで4-3-3にしています。

CBのピン止めに一工夫

さて、序盤からセレッソがボールを保持して広島がプレッシャーをかけるというこのカードではおなじみの展開で試合が進みます。広島の対4-3-3では2CBとアンカーを1トップ2シャドーで監視し、SBにはWBが出ていくというやり方が常ですが、この日はWBがなかなか前に出てこない場面が目立ちました。
その理由はセレッソのWGとIHのポジショニングにあります。

セレッソはIHが広島のCBの前に立ち、WGが広島のWBの前に立つような位置取りをしていました。こうすることで本来セレッソのWGを監視するはずのCBと本来SBまで出ていくはずのWBが足止めされ、セレッソのSBはフリーになることができます。逆にこの場合広島のDHは対面の選手がいなくなっていますね。

こうしてフリーになったSBから前進するという場面が何度かありました。19分のカピシャーバの決定機なんかはまさにこの形ですね。

さらに、最終ラインがボールを持った際に逆サイドのSBが中央に入ってきてDHみたいな振る舞いをするという方法も実装されていました。広島のWBはセレッソのWGを監視しているか、WBを見ていたとしても中央まで入っていくことは想定しておらず、ここも非常にフリーになりやすい場面でした。
この時はセレッソのIHは広島のDHと対面するように立っているわけで、セレッソはこうしたポジショニングによる相手の動かし方が絶妙でした。

広島の非保持はかなり人意識が強いですが、完全なマンツーマンというわけでもありません。そういうわけで、対面の相手があまりにも遠くに行ったり、逆に自分の正面に別の選手がやってきたりといった移動に対して混乱が生じやすくなります。セレッソはそうした傾向をよく観察して前進ルートを計画してきてるなーと感じましたね。

噛み合わせればこっちのもの

30分頃まではセレッソの保持をつかみきれずシュートを打てなかった広島ですが、徐々に配置を噛み合わせてボールを奪えるようになっていきます。

配置の噛み合わせにあたっては、やはりWBがしっかり前に出ていけるようになったのが大きかったですね。というより、WBはSBまで出さないと話にならない、後ろはなんとか帳尻を合わせる!という感じで対応しているように見えました。また、GKのキムジンヒョンを放置しておくと高精度のロングボールが飛んでくるので、そこはシャドーが二度追いすることで時間とスペースを奪うという作戦に出ていましたね。

広島が配置を噛み合わせてのプレスを開始したことで、セレッソの方もロングボールが増え、間延びした展開となっていきます。こうなるとセレッソは中盤の底に香川しかいないデメリットが目立つようになり、広島がチャンスを増やしていきます。一方で柴山や新井を投入したセレッソにも決定機は複数ありました。

最終的には両チームのGKが存在感を示し、試合はスコアレスドロー。上位対決はお互いに勝ち点1を分け合う結果となりました。

雑感・次節に向けて

広島としては苦しい前半を何とかしのぎ、プレスが本領発揮するようになってからはやや優勢に試合を進められました。一方で後半にも被決定機はあり、ドローに文句を言える内容ではないでしょう。スキッベ監督もインタビューで話していましたが、これまでのセレッソ戦もあれだけ勝てているのが不思議なくらいの内容でしたので、0-0という結果は受け入れられるものだと思います。

気になった点はプレスが外されるのもそうですが、保持がほぼ無策のままボールを手放していた点でしょうか。もともと最終ラインからのビルドアップにこだわるチームではないですが、この試合はあまりにも中央から進もうとする意識が希薄だったと思います。WBを経由してシャドーの裏抜けかドウグラスへのロングボールがほとんどで、効果的な前進はほとんど見られませんでした。
DHにパスを入れて中央に視線を集めるとか、WBを高い位置に上げてCBに時間とスペースを与えるとか、もうちょっとやりようはあると思います。プレスがハマらない時の解決策が「何とかして噛み合わせてプレスをハメる」だとどうしてもきつい場面はあるでしょうし、そういった時に違う切り口から打開できるカードを持っていてほしいなと思います。

セレッソは立ち位置の調整による保持は素晴らしかったものの、強度勝負になってからはやや苦戦を強いられました。思い切ったプレスを仕掛けてくるチームに対して向き合うだけでなく、シンプルに背後を狙う意識があった方が怖いかなと思いました。まあ人選も含めて両立は難しいのだと思いますが!

それではまた次回。