#19 【J1第20節 サンフレッチェ広島×鹿島アントラーズ】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は鹿島戦。広島は目下3連敗中で立て直しを図りたいところですが、体調不良者が続出で前日練習が中止になる緊急事態。監督不在の中、勝ち点の同じ鹿島相手に連敗ストップをかけて戦うことになりました。スタメンは以下。

広島は佐々木荒木住吉の3バックが揃って不在で、さらに川村もいないという状況。さすがに前節までトライしていた4-1-4-1を続けている場合ではなく、志知松本大中野の急造3バックでこの試合に臨みます。
一方の鹿島は右サイドの広瀬と名古、トップ下の土居の3人が新たに先発となりました。

互いに苦しむプレス隊

さて試合は開始早々に鹿島がセットプレーから先制しますが、それとは関係なくしばらくの間は両チームとも前からのプレスに取り組んでいました。ただし、両チームとも高い位置でボールを奪うまでには至らないことが多かったです。

鹿島の方はトップとWGの3人を広島の3バックにぶつけ、トップ下の土居が野津田を消す形で広島のビルドアップを制限にかかります。樋口とピトゥカの2DHが中盤のスペースも消していましたが、中盤のハーフスペースやSBの裏が空いてしまうことが多く、そこから脱出される場面が目立ちました。
画像のように森島が逆サイドから出張してくることもありましたし、エゼキエウやナッシムがSBの裏に入ってボールを収めることもありました。

一方の広島も要所でプレスをかけようとしていましたが、空転する場面が目立ちます。

この日の広島は序盤の右サイドの追い込み方がやや特殊で、シャドーの森島がSBの安西に、WBの越道がインサイドの仲間について行くというプレスのかけ方をしていました。もしかすると安西が内側、仲間が外側でプレーすることもあるけどそれに惑わされないように、ということなのかもしれません。なおこの追い方は茶島の登場とともに終了し、普通に茶島が安西、中野が仲間の監視を担当するようになります。

しかしこの試合での鹿島のビルドアップの軸は中央にあり、3センターのように振舞うピトゥカ樋口土居の3人を広島の2DHで監視する必要が出てきてしまいます。広島は降りていくピトゥカを捕まえきれず、ボールを前線に運ばれるシーンをたびたび作られていました。
ちなみにここでピトゥカを捕まえきれていなかったのか、そもそもあまり捕まえる気がなかったのかは微妙なところです。この試合での東と野津田は全体的にプレスに出ていくのをやや自重しているように感じました。こうすると前線で奪えるシーンは減りますが、中央を一気に通過されるケースを減らすことはできます。DHを動かさずにプレスをかけることができればそれに越したことはないので、この辺のバランスは模索していってほしいですね。

しばらくプレスのかからない時間を過ごした両チームでしたが、1点リードしていることもあって徐々に鹿島が自陣で構える時間が増えていきます。

保持で特徴を見せた急造3バック

こうした展開の中、想定外ともいえる強みを見せたのが広島の急造3バック、特に中野と松本大弥でした。

この試合で松本が見せた特徴が、「WBに直接パスを通せること」。図のようにCBの中央から直接WBにパスを通すことで、プレスに来ようかと構えている鹿島のWGを置き去りにしてSBを釣り出すことができます。するとCBとSBの間が空くのでそこにシャドーが入り込めるわけですね。ここがフリーならここにパスを通せば良し、DHが下がって埋めるならサポートに来る東や野津田がフリーになるのでそこに出せばOKというやつです。
実際にはCBとSBの間にはいる森島をピトゥカが下がってケアすることが多く、その結果東がフリーになることが多かったですね。

また、中野の特徴は「高い位置までボールを運べること」。相手がプレスに来ないならドリブルで運び、WBやDHを高い位置まで押し上げられます。35分頃に中野がボールを持っているところに東が降りて近づいてきたシーンがあったんですが、中野に「俺が運ぶからいい」と言わんばかりに制止されていました。運べるなら自分が運んだ方がいいと分かってプレーしていることの証左ですね。

こうした最終ラインの気の利いたプレーにより、広島は後半途中まで安定したビルドアップのルートを構築できていました。前進した後に東や森島がナッシムとワンツーで中央突破しようとして防がれ続けているのは気になりましたが。

鈴木や垣田とのマッチアップに苦しみながらもなんとか決壊は防ぎ、保持で新たな可能性を示したこの日の3バックの働きは素晴らしいものだったと思います。

雑感・次節に向けて

広島が同点に追いついてからは鹿島が中央に人を集めて保持の意識を強めたことで広島のプレスハマらない問題が再燃。失点こそしませんでしたが何度か危険なかわされ方をしていました。
また保持の部分ではドウグラス投入とともにロングボールの割合を増やしてゴールに迫ろうとしますが、昌子と植田の前ではなかなかボールキープできず狙いは不発に終わりました。ここは前半からうまくいっていた保持に取り組み続けてほしかったなーと思います。

鹿島が先制しながらも後半20分くらいまでは広島優勢、その後鹿島が盛り返すも点は取れずというところで、両チームともまあ納得といえば納得の1ポイントではないでしょうか。

広島はアクシデントを力に変えたという意味では充実感のある試合だったと思います。ここ数試合停滞感のあった保持に光明が見えたのは大きいですね。プレスに関しては回避方法が確立されつつあるので、別の強みが身に付きそうなのは嬉しいところ。特に最終ラインの選手起用は今後に注目したいと思います。

それではまた次回。