#20 【J1第21節 サンフレッチェ広島×横浜FC】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は横浜FC戦。両チームともにミッドウィークの天皇杯を落とし、悪い流れを断ち切りたい一戦です。スタメンは以下。

広島は体調不良だった3バックと川村が復帰。1トップはナッシムの出場停止とドウグラスのコンディション不良を受けて棚田が初先発となります。
横浜FCは敗れた川崎戦から小川→伊藤の1人のみの変更で、両チーム3-4-2-1のミラーとなりました。

後ろ重心の保持では揺さぶれない

この試合の横浜FCは5-2-3でブロックを作り、広島のビルドアップをサイドに追いやってショートカウンターを狙っていました。離脱者が戻ってきている広島はいつものようにWBや野津田が低い位置に降りてボールを保持しようとしますが、うまく前進することができませんでした。

広島のWBが下がってきたとしても、横浜FCはシャドーがスライドして対応することができます。また、野津田が下がってボールを引き出すことはボール保持の安定にはつながりますが、横浜FCの前線が作り出す五角形より先への前進という意味ではあまり効果はありません。
結果として序盤の広島はWBからシャドー、トップに縦パスを入れようとして潰されるか、ビルドアップミスを奪われてショートカウンターを浴びるという展開になっていました。

このままではダメだということで、15分頃から広島のシャドーが移動を始めます。

前半によく見られたのはシャドーが大外に開いて相手のWBを低い位置でピン止めし、ボールを受けたWBがその先に持ち上がっていくというパターンです。この形によってWBは時間とスペースを得られるので、パスの供給役として機能しやすくなります。

ですが、この形だとシャドーが大外レーンに釘付けなので、WBからパスを出す先が棚田しかないという状況になりがちでした。いつもであれば高い位置に侵入してくる川村がこの日の前半は自重気味だったのも影響していたと思います。川村が野津田と同じ高さにいること自体は横浜FCの五角形の中にパスコースを作るために必要なので問題ないと思うのですが。


そういうわけで、広島はボールを持てるようになってもその先の展開を描きづらい状態のまま前半を終えることになります。

逃げるシャドーを出口に

後半に入ると、広島のビルドアップにまた別の変化が見られるようになります。具体的にはCBとWBを高い位置まで進出させることが増えてきました。

前半にシャドーで行っていたWBのピン止めをWBで行うようになり、ボールを持ちあがるのはCBの仕事になったという格好ですね。そして、パスを出す先として横浜FCのDH横に逃げてきたシャドーが選ばれるようになっていきます。横浜FCのCBはそんなに前に出てこないので、広島のシャドーは内側レーンを降りることでCBからもDHからも逃れて前を向くことができていました。


ここを起点として加速できるようになったことで、1トップの棚田の機動力も活きるようになったのが印象的でした。

棚田は体の強さこそありませんがスペースでボールを受けてからの反転が素早く、相手を外してシュートまで持っていくことができます。時間とスペースがある状態でボールを届ければスムーズにシュートに持っていけるので、前半からビルドアップのルートが確立されていればより持ち味が生きたと思います。チームが後半のようなボールの動かし方をできるようになっていけば今後出番が増えていくかもしれませんね。


ビルドアップが安定して押し込めるようになったタイミングでピエロスと越道を投入し、保持の選択肢を広げられたのも良かったと思います。チーム全体で「ここからはハイクロスを積極的に使っていこう」という意思が共有されているように感じました。得点にこそ繋がりませんでしたが、後半の試合運びそのものは良かったと思います。

もったいない失点に見る守備の変化

さて、サッカーとは分からないもので、横浜FCは後半に一度だけ得た敵陣での保持の機会を得点に繋げました。サイドを突破されてクロスを大外の林に合わせられた形ですが、この時の守備陣形がいつもと違うかな?と感じました。

いつもならサイドにボールを展開されたときにWBと一緒にシャドーやDHが下がって対応しているかなという場面なのですが、このシーンではCBの佐々木がスライドして対応していました。

もちろんシャドーやDHが間に合ってなくてしかたなく出ていった可能性もあるのですが、このシーン以外にもCBがスライドしている場面が何回かあったので、守り方を変えているのかもしれません。前半に川村が中央に残っていたことも含めて、DHをむやみに動かさないようにしているのかもしれませんね。保持される機会が多い試合だともうすこし分かりやすいと思うので、どうなるか見てみよう案件ですね。


なお、CBをサイドに出すと失点シーンのように大外が空きやすくなるので、そこまでボールを届けさせないことが重要になります。そもそもクロスを上げさせないとか、中央で跳ね返すとかですね。CBをスライドさせるとDHは中央に残せるので、何とか中央で跳ね返したかったところです。

雑感・次節に向けて

終盤に先制点を奪った横浜FCが逃げ切るかと思われた試合でしたが、柏の頭脳プレーから同点ゴールが生まれてドロー決着。両者にとってもったいない勝ち点1と言えそうです。

広島は3-4-2-1に回帰しましたが、ビルドアップや守り方など細かい試行錯誤をいろいろやっていることが見て取れました。タイトルは厳しいシーズンになりそうですが、バランスのとれた良いサッカーに近づきつつあるような気がします。

横浜FCはリードするところまではプラン通りだっただけに、特に悔やまれる勝ち点1となりそうです。ただ前半に見せた5-2-3のミドルプレスがしっかり機能したのは収穫ではないでしょうか。現実的には残留が目標となりそうですが、非保持が多い展開で勝ち点を計算できるのは大きいと感じますね。
それではまた次回。