#21 【2024J1第22節 サンフレッチェ広島×ヴィッセル神戸】

はしがき

毎度どうも!今回は神戸戦。広島は久々の1週間オフを経ての上位対決です。スタメンは以下。

広島は前節からドウグラス→ピエロスの変更で、前節の失点後と同様に満田をDHに入れる形を採用した。
神戸は4-1-2-3で酒井→初瀬の1人変更のみ。広島とはよく噛み合う形の並びとなる。

統率の取れていた広島とミドルブロックの練度

大迫と武藤というリーグ屈指のアタッカーを擁する神戸だが、広島は恐れることなく前線からのプレスを選択していく。ただし、最近の試合と比較するとプレス時の振る舞いはしっかり決まっているという印象を受けた。

神戸の最終ラインまでプレスに出ていく場合は加藤が扇原を抑え、ピエロスと大橋でCBへのコースを切りながら前川へプレスをかけていくという形をとる。特に加藤が扇原を抑えるところは徹底されており、ここを起点にプレスを外されるシーンはほとんどなかった。
また、ロングボールのこぼれ球が相手に渡ったり、大迫が流れてきてボールを収められた場合にはミドルブロックを組む形に移行する。いったんブロックを組むと大迫の流れる動きに中野はついて行かないし、上記のプレス準備ができる状況になるまでは簡単にプレスに出て行かないという基準を全員が持っているように感じた。
神戸相手に陣形が整わないままプレスに行くと外されて大迫と武藤に暴れられてしまうので、できるだけ整った陣形を維持しようという狙いだと思うが、個人的には賛成。非保持の振る舞いはプレッシングだけではないし、陣形が整わないのにプレスに出て行くのは体力も消耗するしリスクも高い(特に神戸が相手なら)。

ただ、神戸の先制点のシーンは広島のミドルブロックの練度の低さを突かれた形となってしまった。山口に対してDHの満田が出て行ったところをその背後の大迫にパスを通され、武藤への展開からクロスを大迫に合わせられた。神戸のクオリティの高さを賞賛すべき得点ではあるが、満田と中野のアプローチが少しずつ遅れており、山口と大迫にプレーする時間を与えてしまった。
満田や中野個人の問題ではなく、彼らが背後を気にせずボールにアプローチできるように後ろの選手たちが少しずつカバーするポジションを取るようにしたい。ブロックを組んで守ることはこれまであまり取り組んできていないが、より上位の相手と伍するのであれば状況に応じて使い分けられることが必須。このチャレンジは続けていってほしい。

左の狙いはバッチリだがサポートが欲しい

一方広島の保持で起点となったのは左サイド。東がボールを持った際に加藤がサイドに流れることで山川を釣り出し、空いたところでピエロスにボールを出すという形を一貫して狙っていた。

得点シーンで東から通ったパスは16分にしてこの試合3回目のチャレンジであり、明らかに仕込んできた形だった。
この形は良かったのだがどうやって東までボールを届けるかが課題で、武藤はプレス時に佐々木から東へのパスコースを切ることを強く意識しており、佐々木が出しどころに困る場面が多かった。本来ここでDHがサポートに入ってパスコースを作り出すのだが、満田と松本はどちらかが高い位置に出張して3-1の形になっていることが多く、最終ラインへのサポートの意識は希薄だった。

先制点のシーンは武藤にコースを切られながらも満田がフォローに入って見事に新井まで展開した所から得点に繋がっている訳なので、この感覚は忘れないでほしいところ。DHはまずは3-2の形で相手の1stラインを超えてから前線に出て行く形にすることでボール前進と崩しを両立できるはずだ。

マーク担当の変更が招くズレ

後半の開始から広島のプレスの構造にやや変化が見られた。前半は本多までプレスに出ていた新井が広瀬の監視に下がるようになり、塩谷が大迫の対応のためか最終ラインに残るようになった。


ただ、この形によって本多がフリーとなるためそこを起点にプレスを脱出される場面が多発。1トップ2シャドーの振る舞いは前半と変わっていないように見えたので、この変更はチーム全体で共有されてはいなさそうだった。右サイドで話し合って引き気味に構えることにしたのか大迫が流れてくることで塩谷が動けなくなったのか。両方のような気もする。

折しもセットプレーからの失点によってプレスの意識が強くなった広島はこのスペースを起点に解体されていくことに。前半から見られたDHの前傾姿勢も強まっていき、保持ではサイドの狭いスペースからの前進しかできない状況が続くことになった。
3失点目は神戸のクオリティを褒めた方がいいような気もするが、ビハインドの時間にチャンスの一つも作れていなかった方が問題だろう。前半に見られた秩序を失っていった広島はエゼキエウの負傷交代で完全に白旗。今季4度目の3失点で4敗目となった。

雑感・次節に向けて

広島は前半の戦いぶりは悪くなかったように思う。ブロック守備の立ち位置や保持におけるDHのサポートなど練度の低さを感じさせる部分はあったが、これまで目立たなかったビルドアップやブロック守備に手を入れようとしている部分は好印象。上位進出のためには得意なことだけでなく全方位型のチームになる必要があるのが現代サッカーなので、必要なアプローチだと思う。
後半にバラバラになってしまったことは残念だったが、チーム全員が同じ方向を向いて複数の局面に対応できるようになれば、さらなる飛躍が望めると思う。

神戸は流石のクオリティで上位対決を連勝。武藤と大迫という主軸が稼働できていることは大きいだろうが、ほかのメンバーも柔軟に局面に対応できるところを見せており、着実に全方位型の強豪への道を歩んでいるという印象を受けた。

それではまた次回。