#22 【2024J1第23節 サンフレッチェ広島×アビスパ福岡】

はしがき

毎度お世話になってます!次節前日ですが福岡戦やっておきます。スタメンは以下。

お互いに3-4-2-1のミラーマッチ。広島は荒木の復帰に伴って中野を右CBに、塩谷をDHにスライド。塩谷の相方は初先発となる中島が務めることに。
福岡はグローリも田代も井上もいない状況で、本職ではなさそうな亀川と森山がバックラインの左右に入る。森山は初先発。

DHの背後に狙いを定める福岡

試合序盤は激しい雨が降っていたこともありお互いにロングボールが多くなったが、雨が弱まるにつれて福岡の立てていたプランが見えてくるようになった。

福岡はDHの前と松岡で広島のDHを釣り出し、その背後に1トップ2シャドーが入ってくる形でビルドアップの出口になろうとしていた。
ただ実際には広島の両DHが前、松岡を捕まえるかどうか中途半端だったため、福岡はDHも1トップ2シャドーもボールを受けられる状況になっていたと言える。広島は1トップ2シャドーのプレスが遅れていて3バックにボールを持たれているわDHが出て行くか行かないか分からないので3バックも出て行けないわで福岡のビルドアップを全く制限できていなかった。
福岡も広島の中盤を剥がしてから一発でゴールに迫らないとその後押し込み続けられるわけでもなかったので決定機はそこまで多くなかったが、それにしても広島の非保持での振る舞いはどうしたいのかが見えてこなかった。

3-1ビルドは孤立のもと

また、広島は保持においても有効な手立てを見つけられない45分を過ごしていた。問題となっていたのはいつものボール保持時の配置である。

広島は最終ラインがボールを持った際に中島がシャドーの位置まで上がってしまうので、中央へのパスコースが塩谷のみとなってしまう。これは中島が悪いという訳ではなく、誰がDHに入ってもこういう振る舞いなのでチームの規律がそうなっているのだろう。WBにボールを渡してもDHがいないとそこへのフォローができず、そこから繋がらない。一応東が低い位置に降りて行ってパスコースを作る動きはしていたが、東が受けたとしてもロングボールを蹴る展開が多いのは変わらなかったように思う。

また、この試合は3バックの中央を荒木がやっていたが、プレス耐性がさほど高くないため佐藤に寄せられると割と簡単に蹴ってしまっていたのも繋がらなさに拍車をかけていた。

こうして、前半の広島はボールを保持できず福岡の前進も阻害できておらず、苦しい戦いを強いられていた。

タスクの明確化で解決を図る松本泰志

こうした状況を受けて、広島は後半から中島に替わって松本泰志が登場。①非保持で福岡のDHに強くプレッシャーを与える、②保持で3バックからのパスコースを作るという2つのタスクを与えられた彼が登場することで、後半の広島はバランスを取り戻していった。

①についてはとにかく背後が空いてもいいから前と松岡を捕まえるという姿勢が徹底されていたように思う。それで背後の紺野や重見に通されてもそこは3バックで潰すという風にしっかりタスクの割り振りを行っていた。これによって前半のような中途半端な形ではなく、パスが出たところに対してアプローチする人を明確に決めて対応できるようになっていた。

②について、松本泰も高い位置を取ることは多いのだが、その前に一度ボールを受けてから出て行くため、福岡のプレスを外した状態でビルドアップ隊がパスコースを探せるようになる。63分のシーンなど、最終ラインからのボールを引き取って東に渡してからの攻撃参加であり、きちんと前進に貢献してから前に出ていることが分かる。個人的にはここも飛び出していく必要はない気がするが、それでもただ前方にいるだけよりはよほど良い。このようにボール前進に積極的に関わっていくくらいが今の広島にはちょうど良いと感じるシーンだった。

また、大橋と満田の左右を入れ替えたのも印象的。前半から右サイドはシンプルなビルドアップが多くロングボールを蹴る頻度も高かったため、よりボールを収まる大橋をこちらに置いた方が効果的ということだろう。

こうした工夫により福岡を少しずつ自分たちのペースに引き込んでいった広島。大橋のゴールは個人のクオリティで押し切った感じだったが、後半に主導権を取れたのは修正がもたらした必然であると言っていいだろう。

雑感・次節に向けて

福岡がボール保持に振った戦い方をしてきたのは方針転換なのかケガ人の影響なのかは不明だが、各選手がそれぞれ役割を理解している振る舞いは好印象。一方で、強度が求められる展開になるとパワー不足が目立つことになった。後半にザヘディを投入するのはそういう意味では理に適っていただろうが、やはり単独で戦況を変えるのはなかなか難しい。ボール保持ができることと元の戦い方に戻すことはまた別の難しさがあるのだろうと感じた。

広島は前半で相当怪しかったが後半にやるべきことを整理して巻き返したのがお見事。福岡がやったボール保持は広島にやってほしかったが、保持して来る相手に対してプレス基準の整理で対応するというのも必要なことなので、目の前の課題に向き合って結果を出したのは100%ポジティブだ。80分以降は押し込んで進められたためピンチもほとんどなし。安心して見られる終盤の戦い方を経験できたのは大きいと言えそうだ。

それではまた次回。