#29 【2024J1第30節 鹿島アントラーズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素は大変お世話になってます!今回は鹿島戦。広島にとっては厳しい連戦中での上位対決となります。
なお、新しい試みとしてこのレビューの要点はツイートにまとめています。忙しい人はこっち見てね。

という訳でスタメンは以下。

広島は前節の東京戦からは塩谷ゴンサロの2人変更。直近のG大阪戦は結構メンバー変えていたのでそこからだと5人変更となった。
鹿島は前節から3週間空きで変更は仲間→知念の1枚だけ。3バックを練習しているとの噂もあったようだがとりあえずは4-2-3-1からのスタートとなった。

前に出る川辺を活かす保持

序盤はどちらかと言えば広島がボールを持つ展開。スキッベ監督からもっと前に出て行ってほしい的なことを言われていた川辺はボール保持時はほとんどシャドーの位置取りで裏抜けを増やしていた。逆転ゴールのシーンなどはまさにその形。

ただひたすら突撃しているのではなく加藤や松本が降りてボールを引き出しに行くのに呼応して飛び出していくので、鹿島としては受け渡しが難しくなっていた。ネガトラという意味では塩谷が1人で真ん中を守ることになるので大丈夫かという気はするが、抜け出しの成功しやすさは上がっているように思う。

また、この試合が初先発となったゴンサロはきちんと広島の保持に適応できているという印象を受けた。ファーで待ってクロスの終着点になれるのはもちろんだが、サイドにボールがある時にはシャドーと一緒にサイドに寄ってボールサイド3レーンを使う、という最近の広島の特徴にも違和感なく溶け込んでいた。
トルガイに続き初ゴールまで時間もかからなかったし、頼もしい存在になってくれそうである。

保持面で注文があるとすれば右サイドからの展開だ。この試合の鹿島はミドルゾーンに構えて中野に対して師岡が出て行くというプレスを採用していたが、松本がサイドに流れてくることで安西がスライドできず新井が終始フリーになっていた。

ただここからの展開はバリエーションに乏しく、松本の裏に出すか中野が大きいサイドチェンジを蹴るか、くらいだった。ゴンサロに斜めのパスを刺してみるとかDHがフォローに入って展開とか、ここを起点に鹿島のブロックを揺さぶる姿勢は欲しかったかもしれない。

中盤を空けて侵入を狙う鹿島

一方、鹿島がボールを持った際には広島のDHを動かしてそこからの前進を狙っていた。

鹿島は鈴木優磨が降りてきて攻撃の起点となるのだが、ここに川辺や塩谷が寄せていくと空いた知念が引き取ってそのままスピードアップ!という狙いを持っていた。鈴木優磨は空中戦ではなかなか荒木に勝てなかったが、降りて荒木のマークを外しつつ起点としての仕事をこなしていくあたりはさすがだった。
また、押し込んだ際には柴崎が前に出て行くことで塩谷を最終ラインに吸収させており、総じて広島の中盤を動かして空いたところを使おうという意識が見られた。

広島は最終ラインが5人なのに中盤から人を降ろして守ろうとするので結果的に中盤が空いてしまうという癖があり、鹿島はそこをしっかり狙ってきたというところ。今シーズンはこのままいくにしても、最終ラインが5人もいるのだから積極的に後ろが引き受けていくという守り方をしてもいいと思う。

三竿フリーマン化とオープン合戦

ビハインドで前半を折り返した鹿島は後半から三竿を右CBに下ろした3バックに変更。前半に全然プレスがかかっていなかったのでその対応ということで、50分くらいからは広島のボール保持の時間を削ることに成功していたように思う。
と思ったら58分にターレスと樋口を入れてまた4バックに近くなるのだが、ゲームの流れとしては広島が保持できない展開が続いたのが不思議なところ。

最終的には鹿島は安西を上げて東をピン留めしておき、その周りを三竿がうろうろする、みたいな配置になっていた。

この試合の広島はおそらくゴンサロの守備負担を減らすためかサイドの高い位置までWBが出て行くというプレスを採用していたので、東が出られない状態でサイドでボールを持つ三竿を止めるのは難しい。そこでDHが出て行くと鈴木が降りて来たり名古知念ターレスは背後を狙ってきたりで危険な展開になってしまう。
というわけで松本や加藤が頑張って追いかけるというシーンがたびたび見られたが、疲労もあって長続きせず、鹿島にボールを握られる展開が続いた。

広島の対応としてはプレスに行けないなら下がって固めてしまうとか、あるいは何とか保持の時間を取り戻すとか試合を落ち着けるための策が必要だったように思う。
鹿島がラッシュを仕掛けてきているような状態だったので難しかったとは思うが、非保持の立ち位置的には4-4-2に近いので、前半同様サイドから時間を作っていくことができれば違った展開を望めたかもしれない。

雑感・次節に向けて

後半の押し込まれっぷりを見れば2-2というスコアは文句を言えるものではないだろう。終盤にフレッシュな満田がカウンターからチャンスを作ったとはいえ、どちらかと言えばよく耐えた部類ではないかと思う。
反省点としてはやはり後半の過ごし方になるだろう。鹿島のラッシュをまともに受けて前線に蹴り返すしかできない状況になってしまったのはつらかった。日程が苦しいというのはもちろんそうなのだが、今すぐどうにかなる問題でもないのでその中でどう過ごすかは考えていく必要がある。

すべての試合、すべての時間でハイプレスを続けていくのは無理なので、やはり試合を落ち着かせて体力の消耗を抑えつつ時間を過ごしていく術を身に着けていく必要があると考える。苦しい日程の中で優勝争いに臨む残り8試合、優勝の可能性はこの部分に大きく左右されるのではないだろうか。

それではまた次回。