#25 【2024J1第26節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

毎度お世話になってます!今回はセレッソ戦。中断期間を挟んで3連勝中の広島、6位のセレッソとの上位対決となりました。スタメンは以下。

ピースマッチということで折り鶴をあしらった2ndユニフォームを着用した広島は、3年ぶりに復帰した川辺がトルガイに替わってさっそく先発起用。
セレッソはスコアレスで終えた前節の町田戦と同じ11人を送り出してきた。

左の内と外を使い分ける広島

序盤は広島がボールを持って敵陣に迫る場面が目立つ展開となった。カギを握ったのはやはり左サイドの連携。

川辺と塩谷がセレッソの2DHを引き付け、松本がその脇で受けるというのは広島が最近好んで使っている形。10分には荒木から松本へパスが通って脱出に成功した。またこの試合では右SBの西尾が松本まで絞って対応することもあったが、その場合には東が高い位置を取っており、15分のシーンのように直接長いボールを入れることでチャンスに繋げることができていた。松本と東の2人が空いたスペースをしっかりと認識して使えるため、相手の動きを見て空いたところから前進することができていた。
なお、右サイドは中野を上げてみたり新井が中に入っていってみたり色々チャレンジをしていたが、この試合ではあまり見られなかった。カウンターのリスクもあるので慎重に入ったということかもしれない。

序盤はうまく行っていた広島のビルドアップであるが、次第に東への長いボール一辺倒になっていった印象もあり、飲水タイム明けにはセレッソが保持率を上げたこともあってトーンダウンしていくこととなる。

省エネ気味な広島のプレスとブロック守備の対応について

飲水タイム明けからセレッソの保持が増えたことについては、広島のプレスの姿勢で説明ができるかもしれない。

広島のプレスといえばWBを相手のSBまで上げるマンツーマンだが、この試合では西尾に対してシャドーの松本がプレスをかけるシーンが目立った。一方でWBの東は柴山について行くなど、やや変則的なプレスのかけ方をしていた。
トップの加藤は横パスのコースを切りながらCBに寄せていき、川辺がアンカーの田中を消すことでセレッソのビルドアップをサイドに誘導して奪おうという形である。従来のWBを上げるプレッシングに比べると常識的なやり方に思える。
ただしセレッソは後方で数的優位を確保できているほか、柴山や奥埜が降りる動きに対しては東も塩谷もそこまではついてこないため比較的ボールを受けやすい状況になっていた。

広島はWBを上げないことで後方に人を残しやすくし、プレスにかける運動量を減らそうとしているように見えたがその分ビルドアップ隊にかかる圧力は減っており、セレッソはそれをうまく使ってボールを運んでいたというのが飲水タイム以降の印象である。

そうしてセレッソが押し込む時間が増えたときに気になったのが広島守備ブロックの大外への対応だ。

40分に西尾がクロスを上げて荒木がクリアしたシーンでは、WBの東がルーカスを監視するため中に入っており、西尾がフリーになってクロスを上げている。松本が戻ればいいのかもしれないが、せっかく5バックという幅を守りやすい陣形なのに中盤を使ってしまうのか?と思ってしまう。仮に西尾に対して東が出て行ったとして佐々木と東の間を松本が埋めるというのが広島の守備のやり方だと思うが、5バックである以上ここは最終ラインのスライドで解決してほしいと思った。

このシーンだけでなく、セレッソがサイドの高い位置を取った際に大外をオーバーラップした選手がフリーになるシーンはかなり多かった。最終ラインがスライドしないにしても、せめて大外の選手はWBが見る形にした方がまだ陣形のバランスを保ちやすいのではないかと思う。

一進一退の中勝負を分けた松本のアイデア

後半も一進一退という展開だったが、広島の先制ゴールのシーンでは松本のアイデアが光った。

シャドーの加藤が外に流れてトップの井上は中央にいる、さらにシャドーのトルガイが降りてきて中盤に人は足りているというこれ以外ないというタイミングでの列上げで越道からボールを引き出して見せた。
加藤がトップの時はシャドーの外流れに対して加藤が内側に寄ってくるのが常なのでDHが飛び出しても意味が薄いが、トップが中央に留まるのであれば空いた内側をDHが使うことができる。
広島の特徴として語られやすいDHの突撃だが、やみくもに使うのではなくきちんと場所が空いているタイミングで使うことで効果的にボールを引き出せる。ここ数試合保持に振る姿勢が見えている広島にとって再現を狙いたいシーンだった。

雑感・次節に向けて

トルガイの初ゴールから6分後、ロングボールのこぼれ球から鳥海を出し抜いた井上がトルガイに繋いで2点目が決まって勝負あり。広島は4連勝で3位浮上となった。トルガイが違いを見せられたこと、保持でうまく形を作れたこともポジティブだが、負傷者の多いFW陣にあって井上が可能性を見せられたことも大きいだろう。長いボールにも体を張って競り合い、CFらしくボールを引き出す動きもできる。この日は2アシストと結果もついてきたし、中島同様ここから出番が増えていくのではないだろうか。

一度は潰えたかに見えたリーグ優勝への希望が再び見えてきた状況で、ここからしばらく上位対決はない。勝ち点を積み上げつつここ数試合の安定したゲーム運びを磨いて行ってほしい。

セレッソはまたしても広島から勝利を奪うことができず。ビルドアップ時の技術は高いだけに、やはりゴール前のフィニッシャーがレオセアラしかいないことは気になる点だった。ロースコアで運んで少ないチャンスを決めるのが狙いかもしれないが、得点力のあるチーム相手にはより繊細な試合運びが求められると言えるだろう。

それではまた次回。