#13 【2024J1第15節 京都サンガ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になります!今回は京都戦。京都は4連敗中、広島は6試合勝ちなしとどちらも中々に厳しい状況。スタメンは以下。

京都は3-4-2-1で豊川と山崎がスタメンに復帰したほか、佐藤やクソンユン、松田が前節から入れ替わってスタメン。
広島も前節から大幅入れ替えで松本泰をシャドーに移してDHに野津田が初先発。WBも両方入れ替えるなど5人の変更となった。

バランスを崩してしまった京都の保持

ここ2試合連続で立ち上がりに失点を喫していた広島だったが、この試合は川村が先制ゴールを奪ってリードする形で試合を進めることができた。先制点のシーンを始め、京都の保持は広島がカウンターを仕掛けやすい要素が揃っていたように思う。

そもそもこの試合の両チームは配置が噛み合っているので非保持側がプレスをかけやすいという話なのだが、それに加えてこの試合では京都が保持時に前後分断気味になっており、ビルドアップ隊がもろにプレスを受ける場面が多く見られた。
京都は保持時3-2-5のような配置を取るが、前線で山崎が降りてそのスペースに原が入っていき、豊川と川崎が周囲で待機してロングボールの準備をしているように見えた。一方で後方では3バックがショートパスの出しどころを探しているような振る舞いを見せており、前方と後方でやりたいことが揃っていないように見えた。
結果として京都は出しどころが金子しかなくなり、そこを狙われて生まれたのが先制点だった。

時間が経つにつれて豊川やWBが降りてくるなど少しずつビルドアップの出口ができ始めたが、その頃にはすでに3点差がついており試合がほぼ終わっていたというのが悲しいポイントだった。

松本泰シャドー起用による中盤の強化

もっとも、広島が中盤を制圧していたのは京都の保持にだけ原因があるわけではなかった。広島はこれまでDHに置いていた松本泰をシャドーで先発させたが、これがうまく作用していたと思う。

右サイドにボールがある時によく見られたのが、大橋をトップに上げて松本が中盤に入って3-5-2に近い配置になる形。これでロングボールを蹴ってポストプレーから前進できればよし、跳ね返されても中盤で数的優位なのでセカンドボールを確保しやすいという設計になっていた。また、この配置だと川村や野津田がサイドにフォローに出ていったとしても中盤に人が残るので、WBを介したショートパスによるビルドアップも狙いやすくなる。
なお、左サイドにボールがある時は普段通りWBを下げて相手のWBの裏に松本を走らせるという感じに見えた。右サイドに比べると威力は下がるが、ピエロスを流してくるなどで対応できそうではある。

さらに自陣で守ることになった時のポジショニングも良く、ボールが逆サイドにある時にはハーフスペースに陣取ってカウンターの起点となるシーンが何度も見られた。

34:50のシーンなどがそうだが、ボールと逆のSHである松本が少し高めの位置を取ることでカウンターの起点になることができる。この試合の松本はボールが逆サイドにある時は中途半端な位置を取っておいて攻め込まれたら中央まで戻る、ボールを奪ったらカウンターのためハーフスペースを駆け上がる、京都が最終ラインにボールを戻したらプレスに出ていくというように複雑なタスクをこなしていた。
京都のビルドアップが前後分断気味だったことを差し引いても、広島の安定感は松本によってもたらされたものが大きいと思う。

個人的にはこの試合を見るまで松本のシャドー起用はあまり良いとは思っておらず、彼の持ち味である飛び出しを活かすためにはDHで起用してシャドーの選手が空けたところを使う方法が最適と考えていた。
しかしこの試合では優れたポジショニングの感覚で広島のバランス維持に大きく貢献しており、それでいて周囲とポジションを入れ替えての飛び出しも見せるなど素晴らしい活躍をしていた。選手の適性を見極めてタスクを振り分ける監督という仕事の難しさを感じる試合でもあった。

雑感・試合を終えて

前半に3-0となり、後半10分に松本が追加点を挙げたことで試合はほぼ終わってしまった感があった。広島は越道をシャドーに入れたり、満田と加藤のコンディションを確認したりと実験模様。越道のシャドーについてはどうせシャドーをサイドに流すのだからという理屈なのかもしれないが、短い時間ではインパクトを与えられなかったという印象。加藤は大橋のタスクをほぼそのままできるとして、満田は松本がシャドーに定着すると難しいシーズンを過ごすことになるかもしれないと感じた。

京都はやはり保持時のちぐはぐさが印象的だった。後半は4バックにしてサイドの数的優位をベースに前進するシーンもあったので戦略を間違えただけかもしれないが、それにしても意思統一できていなさそうなのは気になるところ。監督の進退も騒がしい状況だが、まずは方針の整理が重要になりそうだ。

それではまた次回。