#12 【2024J1第14節 サンフレッチェ広島×鹿島アントラーズ】

こんにちは!今回はミッドウィークの鹿島戦です。今回も常態でお届けします。今後この形にしていくかも。

スタメンは以下。

広島は川村と大橋が復帰して越道の左サイドは継続。鹿島は中2日ながら前節からの変更はなし。

広島のプレスを熟知した鹿島のビルドアップ

セットプレーから植田のゴールで幕を開けた試合は、鹿島がビルドアップで準備してきたものを見せる展開となった。GKの早川を組み込んだビルドアップ隊は自陣深くに広く位置取り、広島のプレスを間延びさせることに成功。おもに早川が時間を得られるので、そこからは中央への早い縦パスやサイドに開いた師岡への長いボールで前進を繰り返した。

2点目のPK奪取に繋がった形はまさに鹿島の狙い通り。もちろんここでは人数が足りていて越道のスライディングは軽率だったが、ここまでの運ばれ方もまた淡白だった。

鹿島のビルドアップはとにかく上記2つの形を徹底し、逆に中央に浮き球のロングボールは蹴らないことを意識しているようだった。現にプレスがはまった時に鈴木へロングボールを蹴られた場合は荒木がほとんどはね返しており、ここの優位性はしっかり取れていた。

この試合で広島が自由なボール前進を許していたのは出どころをほとんど制限できないまま速い縦パスとサイドへの大きな展開の両方を喰らっていたからと考えるのが妥当だろう。いつもより広い範囲のカバーを要求されたCB陣は過負荷状態となっており、対応しきれていなかった。

教訓を生かせない保持

プレスがかからないなら保持で主導権を取り戻したいところだが、保持の状況は名古屋戦よりも悪くなっているように感じた。

鹿島の非保持戦略は名古屋とほぼ同じ。荒木は放置してサイドに誘導し、佐々木と塩谷にボールが出た瞬間にSHとSBを上げてプレス。パスの出どころを塞いで中央で回収するか、ロングボールを関川と植田で弾き返す算段だった。

これに対して広島はWBを下ろしてSBを釣り出してその裏にシャドーを走らせる形で対応を試みた。しかし、そもそもサイドからビルドアップすることを読まれていたためCBのスライドやDHの戻りで容易に対応されていたという印象。また長いボールでの前進が多くなるので跳ね返された時に中盤でボールを奪えるかが鍵になるが、川村と東がここの強度で負けてしまい回収できず。攻撃が単発に終わってしまうという問題もあった。

プレスがかからない上に攻撃が単発で終わるので敵陣に押し込む時間が取れず、広島は2点ビハインドもやむなしと思える内容のまま前半を終えることになった。

WBを上げて選択肢を増やす

後半からは満田と東に替えてマルコスと松本泰を投入。同時に左サイドの仕組みを少し変えたように見えた。

2点ビハインドとなったあたりから鹿島のプレスが控えめになり、佐々木が落ち着いてボールを持つ機会が増えていた。そのタイミングで越道を高い位置に上げて相手のライン間スペースを広げ、マルコスのサポートや松本の裏抜けが実行しやすい状況を作ることが出来ていた。

この辺のアプローチは可能性を感じるものだった。越道は逆足WBなのでサイドの高い位置ならカットインも期待でき、ハーフスペース裏抜けを囮にすることも可能。もちろん仕掛けてクロスもあり、相手に選択肢を多く突きつけることが出来る。

ただしそのためには越道を高い位置に上げてた状態で佐々木をフリーにしなければならず、荒木が放置されている現状ではなかなか難しそうなのもまた事実。

佐々木を上げてSBのようににしてみるなど立ち位置を調整することは考えられるが、にしても荒木が今より遠くにパスを通せるようになる必要はある。とはいえ鹿島も植田関川の2CBであれだけのクオリティでビルドアップをやっているわけで、この辺は上達に期待したいところだ。

雑感・次節に向けて

広島としては保持で完全に後手を踏んだのが気になったところ。特に荒木のところは中央を塞いで放置すればオッケーという対策が完全にバレている感があり、サイドからのビルドアップ一辺倒になってしまっていた。おそらく早い時間で2失点しなくとも厳しい展開になっていただろう。
また、名古屋戦では前半のうちに施せていた修正ができなくなっていたのも不安だ。後半からはうまく敵陣で時間を作る形に修正できていたことから監督・コーチ陣での共有はされているはずなので、ピッチ内で早めに対応していきたいところ。というか最初からWBを上げてシャドーをライン間に位置させる形でもいい気がする。

鹿島は会心の内容での勝利。最終ラインからの縦パスを多用したことで1失点というコストは支払ったが、それでもリターンは十分だろう。サイドに開く師岡を始め、鈴木が広島のCBを動かさないような立ち位置を取れるのが〇。順位予想では毎年信頼して高めの位置に置いている鹿島だが、保持での進化を感じられる今年は優勝争いもあるかもしれないと感じた。

それではまた次回。