#17 【2024J1第13節 横浜F・マリノス×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもお世話になってます!過密日程は見る方も大変だ。今節は延期されていた13節横浜FM戦です。スタメンは以下。

マリノスは宮市に替わって井上が先発。広島は川村と野津田が移籍のためチーム離脱、荒木は怪我で佐々木は出場停止のスクランブル。CBに東を起用してWBに志知、DHには満田を起用してきた。

保持の機能不全が招いたWGの仕掛け

試合は序盤に広島が先制したこともあってか、ややマリノスがボールを握る展開で進んでいく。これに対する広島のプレスはいつも通り1トップ2シャドーでCBとアンカーを監視し、SBにはWBを前に出していく形となる。

序盤は広島がプレッシングから押し込む形を作っており、これに対するマリノスの応手はまずはWGを使うこと。SBからの外循環もあり、SBを中央に絞らせてパスコースを作る動きもあり。マテウスと井上の推進力を活かす形をとった。特にマテウスは調子が良さそうで、対面がCB本職でない東ということもあり積極的な仕掛けが見られた。
序盤に広島のプレスが刺さっていたところをWGの仕掛けで少しずつ間延びさせていき、マテウスのところから同点ゴールを奪えたのはマリノスにとっては狙い通りだったろう。

試合はその後もマリノスペースで進んでいったが、マリノスがボールを保持する展開を作った原因の一端には広島の保持の機能不全があるように感じた。

広島は低い位置に下がってきたWBにボールを渡してそこからシャドーの裏抜けやDHのサポートで前進していくことが多いが、この試合でDHに入った満田は26:07で見られたようにこのサポート意識がやや希薄で、早めに高い位置へ出て行ってしまっていた。このため特に左サイドからの前進が裏抜けやロングボール頼りになってしまい、なかなか安定したボール前進ができなかった。前節は川村がこれを当たり前のようにこなしてスムーズな保持を実現していただけに、ここは川村の不在を強く感じるシーンだった。
前半終了時のデータで広島の攻撃は半分近くが右サイドからのものだったが、これは右が良かったというより左が機能していなかったという方が正確だろう。右DHに入った松本泰はまずはビルドアップのサポート、高い位置に出ていくのは前進してからというのを守っていたため、右サイドは比較的安定した保持ができていた。

左サイドの保持で早めにボールを捨ててしまうのでボールを持つ時間が少なくなり、その分マリノス保持の機会が増える、そうなるとプレスを剥がされる回数も増えてCBやDHがカバーに走らないといけなくなる、という流れである。最終的に退場という形で割を食ったのは満田だったのは巡り合わせという感じだった。
早めに高い位置に出ていくのが戦術上の指示だったのかは気になるところ。後半に入ってからは割と保持時のサポート意識が高くなったように見えたが、退場が早かったため真相は闇の中。2枚の警告はいずれもネガトラで危ないところを埋めた際のものだったほか、非保持では気の利く働きを見せていたと思うので今後DHとして出続けるかどうかは保持時の振る舞いにかかっているだろう。

数的不利のなかで得られたものもある

試合の話ではなくて恐縮だが、早めの時間に退場者が出た試合ではその後を見直すモチベーションが下がってしまうというのが筆者の常だ。数的優位側がボールを持ち、不利側は撤退して耐えながらワンチャンスを狙うという展開は揺るがなく、陣形のバリエーションも多くない。そして大抵は数的優位側が勝つことになる。そうした中で言えば、満田が退場した後の広島はできることをすべてやったという形でむしろ好印象だった。


満田のいなくなったDHに松本大を入れて補充するのは当然としても、やや守備に不安のあった志知を下げて新井と東のダブルチームマテウスに対応し、宮市に対してフレッシュな越道に対応させる。前線には献身的に走れる加藤と大橋を残すことで強度を落とさないようにし、大橋は実際に勝ち越しゴールを奪って見せた。
特に越道の非保持対応が素晴らしかったのは収穫だろう。残念ながら数的不利での崩しに対応できなかったところはあるが、対人守備で宮市を止められるレベルならばスタートから起用しやすくなり、そうなれば東をDHに回すという選択肢も生まれる。今後を考えても確かな収穫だったと言えるだろう。

これだけの頑張りに対して勝ち点というご褒美が得られなかったのは残念だが、これ以上できることはなかったと言っても良いだろう。私見としては数的不利だった40分間の振る舞いは100点満点でもいいのではないかと思っている。

雑感・次節に向けて

マリノスは3試合ぶりの勝利で連敗脱出。一時はヒヤリとしたが、前半のプレス回避からの押し込みや後半の出力はアタッキングフットボールの面目躍如といったところだろう。一方やはり気になるのは後方の脆さで、この試合の2失点もやや淡泊といった印象はぬぐえない。今期ここまでの失点などを見ておそらくどのチームもポープ含めた最終ラインは狙い目と認識していると思うので、ここを跳ね返せるパフォーマンスを見せる選手がいるかが後半戦の浮沈のカギを握りそうだ。

一方の広島は特に保持で川村の不在を強く感じさせる内容だった。野津田もいない中でだれが保持のかじ取りをしていくのか、前節でのパフォーマンスは完成形と言ってもいい高次元のものだったために、ここからの立て直しは今シーズン第二の難所となりそうである。

それではまた次回。