#15 【2024J1第17節 サンフレッチェ広島×ジュビロ磐田】

はしがき

お世話になってます!今回は磐田戦。代表ウィーク前最後のリーグ戦ですね。スタメンは以下。

広島は荒木の出場停止に伴って中野センターで前節DHだった塩谷を右CBへ。DHには松本泰を下げてきて、ピエロスがスタメンに復帰する形となった。京都→セレッソとうまくいっていた松本泰シャドーを替えたのは意外だったが、ポジションというより個人のパフォーマンスを評価してのことなのか、あるいはセレッソ戦の評価はそこまでなのかもしれない。
磐田は逆転勝利を収めた湘南戦から植村→西久保の変更のみで、並びは4-2-3-1。

互いに予想済みのセカンドボール争い

立ち上がりから磐田の姿勢は明確で、広島のプレスを引き込んでからペイショットにロングボールを蹴ってそのセカンドを狙うという形を多用していた。

CBに対してトップとシャドー、SBに対してWBを動員する広島のプレスに対して磐田は最終ラインでの繋ぎでプレスを呼び込み、広島が前に出てきたタイミングでペイショットにロングボール。そのセカンドをトップ下の山田とレオゴメス/上原が回収に行き、フリックに備えて背後には松本や平川が抜けるという形が徹底されていた。
ただでさえペイショットへのロングボールは強みなところ、この日広島は荒木が出場停止とあって磐田としては個々は絶好の狙いどころと見定めた形だろう。

一方で広島もこの狙いそのものは想定していたようでスムーズに対応していた。中野はペイショットに必ずついて行って自由にプレーさせていなかったし、セカンドボールを狙う山田に対しては川村が同じスペースにかなり厳しく寄せていた。佐々木と塩谷もSHの裏抜けにアラートに対応しており、簡単に前進させていなかった。

お互いにそれなりの手ごたえを感じていた状況ということで、磐田の保持時はもっぱらこの形が続くことになった。ただ広島にとってはリスクをかけて前に出ていったところを裏返される形が続くわけで、回数が増えるほど広島が不利になっていく展開のように感じた。現に磐田はシュートこそ少ないが前進する回数はそれなりに確保できていた訳だし。

構えられた時のアクションは

一方広島の保持では、磐田は京都やセレッソとは異なり自陣で構えることを選択していた。

広島は保持時にシャドーをサイドに流すことで相手のSHとSBに対して数的優位を作る形を多用する。この日の磐田はSHが広島のCBに対してプレスに出てこないため、流れてくるシャドーはSB、WBはSHが担当するという形になっていた。前線の山田とペイショットもさほどプレスには来ずDHへのパスコース封鎖を優先するため、塩谷と佐々木は時間とスペースを得られていた。

ただ、この日の広島はCBがフリーでボールを持った際にそこからの前進手段はやや乏しかったと言えるだろう。シャドーが流れてWBが降りるというアクションをして手詰まりになっているからか、そこからの動き直しがなかなか見られず。サイドチェンジを繰り返して大外のWBからクロスという終着点が多かった。

相手に構えられた場合のアクションとしては11分に見せた新井の抜け出しなどがヒントになるだろう。

ここではシャドーの大橋がSBの松原の守備範囲でライン間に入る意思を見せたことで松原を引き出すことができ、そこで平川の視野外で高い位置を取った新井がスピードを持ってサイドの高い位置に侵入できた。
広島のビルドアップは相手のプレスを引き込んでその背後に長いボールという形が多いが、相手がミドルブロックを敷いてくる形だとなかなかそれだけでは前進できない。このシーンのように敵陣でも相手を動かすアクションを起こし、それに周囲が連動できることが必要になってくるだろう。

逆に言えば磐田は広島が構えられた際の手札に乏しいことを見抜いてうまく自分たちに有利な展開に持っていったと言える。
磐田は保持においても非保持においても広島の強みを出させないためのプランを持っており、そのプランにのっとってうまく広島を抑え込めている前半だった。

だからこそ、前半にビルドアップミスから失点したのは痛恨の極みだった。ロングボールを使うにあたって低い位置でのパス交換をフリに使うのはまったく正しいと思うし25分にはそれで中央から前進できているので、上原が低い位置で受けること自体は間違っていなかったと思うが、広島のプレスが上回ることとなった。また、視野の外から距離を詰める松本泰の寄せ方も良かった。

オープンな展開は広島の土俵

ビハインドとなった磐田は自陣で構えていても仕方がないのでSHとSBを前に押し出してプレスに出てくるが、そうなると広島はいつもやっているビルドアップのルートを活かしやすくなってくる。また、この日はピエロスをサイドに流してロングボールの的にすることもやっていた。

ピエロスをサイドに流してロングボールに競り合い、松本や新井がセカンドを狙うというのがよく見られた形。シャドーに大橋を起用しているので彼が中央に移ればサイドに過剰に人が集まることもなく、バランスを保ったままこの形を実現できる。
また、磐田のSBとSHが前に出てくることでDHが広島のDHとシャドーを2人みなければならなくなり、どちらかにパスコースができるという形もあった。
70分頃に立て続けにこの2つの形があるなど、後半は広島のボール前進がスムーズになって言った印象だった。

雑感・試合を終えて

やはり先制点が勝負の大きな分かれ目になった試合だったように思う。あれがなければ磐田はミドルブロックを継続でき、微有利くらいのまま試合は進んでいっただろう。2点目のクロス→ヘディングなどもそうだが、広島のクオリティの高さが勝利をもたらしたと感じる試合だった。
磐田は16位だが残留争いからは少し離れた位置で、昇格組としてJ1勢と十分に渡り合えていることをこの試合でも示したと思う。

広島としてはロングボールへの対応は集中して行えていたと思うが、相手に構えられた時の手札はもう少し欲しいという印象だった。サイドへの長いボールだけでなく、ライン間への縦パスを使った崩しができるとこういう試合が楽になるだろう。

それではまた次回。