#27 【2024J1第28節 サンフレッチェ広島×柏レイソル】

はしがき

どうもお世話になってます!今回は柏戦。広島にとっては30年ぶりの6連勝がかかる一戦だそうです。スタメンは以下。

広島は前節と同じメンバー。4-4-2の柏はDHに手塚に代わって戸嶋の1人変更となった。

 

アジリティを活かした柏の攻撃

試合は序盤からお互いのボール保持にプレスをかけあう互角の展開。柏は日立台の対戦時と同様に保持時はSHを絞らせてSBを上げる設計になっていたが、マテウスヴィオは大外に開いている場面も多かった。サヴィオの運ぶ能力はかなり信頼されているようで、ある程度自由なポジションを取ってボールを受けてから独力で前進し、SBを絡めてクロスに繋げるという方針に見えた。

また、柏は自陣からのカウンターがしっかり設計されており、何度かチャンスに繋がる形を作っていた。

広島はボール保持して押し込んだ際に川辺を高い位置まで上げる傾向があり、中盤後方が塩谷だけになる。ここに小屋松やサヴィオといったアジリティのある選手を配置し、こぼれ球を回収してドリブルで塩谷を剥がすことでカウンターのチャンスに繋げていた。別にこれは塩谷が悪いという訳ではなく、広島の構造上防ぎづらい形だったと思う。
DHを上げることが多いという広島の保持をしっかり観察して準備してきているなーと感じる形であった。

 

噛み合わせてプレスに対処する?

一方で、広島の保持に対して柏は強度の高いプレスを見せた。2トップに加えてSHが列を上げてCBにプレスをかけ、SBが連動してWBまで出ていく。

これ自体はよくある形だが、柏のプレスは強度が高く、何度かボールを失ってピンチになっていた。9分のようにプレスを逆に利用してチャンスを作り出す場面もあったのでこのまま行くのかなーと思っていたが、徐々に塩谷が最終ラインに降りて4バックになる形が増えていった。

4バックにすると柏の4-4-2とかみ合ってしまうので意味がないのでは?と思っていたが、こうすることで川辺+2シャドーで柏の2DHに対して数的優位を確保でき、川辺に出て行くかどうかの判断を迫ることができる。出てくれば2シャドーがその背後でボールを受けられるという寸法だ。

本来受け渡しの判断をするのはサイドの2人でDHは広島のDHを見ていればよかったはずが、中盤でマークの受け渡しをするかどうかの判断が生じてしまい、全員が連動することが難しくなる。これを狙って広島が4バック化を行ったのかどうかは分からないが、4バック化によって広島のボール保持は安定感を増し、少しずつ広島がボールを持つ時間が増えていった。

変幻自在度を増していく広島のボール保持

ボール保持の時間を増やした広島は、サイドでのポジションチェンジを増やしながら柏の4-4-2を攻略にかかる。
選手がポジションを入れ替えることで本来マークについていた選手がついて行くかの判断を迫られ、それを連続することで大きなずれを作り出せる。最近の広島はこれによってバランスを崩さずに相手のマークを外すことができており、それが出ていたのが2点目のシーンだった。

ここでは東が中盤に下がり、佐々木がサイドに移動することで島村のマークをずらし、そこで判断に迷った白井の背後から松本が抜け出すという形であった。広島のポケット突撃に対して柏はDHが根性でついて行く!というよりはパスコースを塞ぐ、そもそも走らせないという対応をしているように見えたので、このシーンのようにサイドでずらしてパスコースを作れたのは良かった。

また、1点目のシーンのようにCBが突撃していくのもバリエーションの一つだろう。前節の森島に引き続きサヴィオも中野を離してしまったが、この形だと相手の2列目の選手がついて行くという判断をするのは非常に難しい。
WBがボールを持って顔を上げたら前線の選手は背後を狙う、というのも今の広島の原則の一つだと思うが、そこにポジションチェンジを合わせた素晴らしい攻撃だった。後ろのカバーもしっかり残っていてカウンターに対処できそうなのもグッド。

雑感・次節に向けて

見事なボール保持で2点を奪った広島はその後もカウンターからチャンスを作っており、82分に加藤を止めた古賀の退場によって数的優位も得て終了。30年ぶりとなる6連勝を達成した。

広島としてはボール保持で流れを引き寄せるというここ最近の流れを汲んだ試合ができていたのが素晴らしい。特に前半の柏のプレスは直近の対戦相手の中でも強度が高く苦しめられている印象だったので、失点することなくそれをいなせたのは素晴らしかった。
押し込んだ後の攻撃はポジションチェンジを多用しており、特定のパターンを見出すのが難しくなっている。現代の保持型チームは局面ごとに選手の立ち位置が変わっていてパターン化するのが難しいのだが、今シーズンの広島でそれが見られるのは驚きだ。ポケットの突撃やサイドからのクロスで背後を狙うといった原則はあると思うので、どうやってそれを実現しているか、リスク管理はできていたか等、一つ一つの場面にフォーカスした見方をしていくのがいいかもしれない。

柏はプレッシングやカウンターから流れを掴もうとしたがだんだん勢いを失っていく形に。保持でのサイド攻撃が軒並み跳ね返されていたのも厳しかったように思う。前半にプレッシングから先制するか、後半に細谷の一発で追いついておくのが勝ち筋だっただろうか。細谷を前進の手段として使うのではなく、荒木と直接勝負できるようなボールをもう少し入れても面白かったかもしれない。

それではまた次回。