#11 【2022J1第11節 サンフレッチェ広島×柏レイソル】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今回は柏戦。ゴールデンウィークということで僕も久々にエディスタに行きました。付き合ってくれた友人に感謝。

思い返してみたところエディスタに行くのは初優勝した2012シーズン以来なので10年ぶりでした。まあ広島に住んでないからね……

前回参戦がこれなので本当にちょうど10年ぶり

移動制限のない連休ということで観客数も1万人超えと上々でした。そんな柏戦、スタメンは以下。

広島はいつも通りの3-4-2-1。野津田と塩谷がスタメンに復帰しました。柏は3-1-4-2に見えました。序盤は中村と椎橋の2DHで3-4-2-1っぽかったのですが、徐々に3-1-4-2にシフトしていったのでこのように表記しています。

プレス対策を仕込んできた柏

さて、この試合でも広島は前線からのプレッシングを敢行します。アンカーの椎橋をサントスがマークしつつ、森島と満田の2シャドーで柏の3バックにプレッシャーをかけるというのが狙いに見えました。これで柏のビルドアップをサイドに誘導して奪うという算段だったかと思いますが、柏はしっかり対策を施してきました。

WBの選手が高い位置を取ることで広島のWBを押し下げ、その空いたスペースに左右のCBが進出してくるという方法です。札幌戦でルーカスフェルナンデスがやってきたやつですね。
ここに進出できれば2トップにくさびを入れるなり広島の中盤がスライドしてきたところの逆を取って横断するなりいろいろできます。

また、これを嫌って広島のWBとCBが縦にスライドしてきた場合は前に出てきたCBの裏が空くのでそこに長いボールを蹴って2トップを走らせます。アンジェロッティと細谷はキープ力があるためこの形でも十分前進できる可能性はありますね。

このように柏は広島の対応を観察しながら後出しで前進ルートを選択するだけの準備をしっかりと行ってきました。こうなった以上柏の前進ルートを完全に遮断するのは難しいので、広島が狙うべきは素早いプレッシングで柏のビルドアップ隊から時間とスペースを奪うこと。ボールホルダーに圧力をかけ続けて判断ミスを誘い、高い位置でボールを奪うというのが目指すべき展開のように思います。

その観点で不満だったのがWBのプレッシング強度です。柏のボール前進はサイドに開いたCBからのボールが生命線なので、広島のWBが縦へのパスコースを遮断しつつ素早くプレスをかけられればボールを奪える可能性は上がります。
しかしこのゲームでは広島のWBはボールホルダーに寄せていくものの距離が遠く、自由なパスを許してしまうという場面が何度もありました。
縦に長いボールを蹴らせてしまうだけでなく、WBとCBのワンツーで剥がされてしまう場面もあり、柏のビルドアップ隊は比較的自由にプレーできていたと思います。

こうした状況が続き、後半になると上がってきた柏のCBについて広島のシャドーは下がる場面が増えていきます。そうなるとCBには誰がプレスに行くのか、アンカーは誰が消すのか等が曖昧になってしまいますね。

それが最も顕著に出た場面の一つが同点ゴールのシーン。森島が高橋について下がったことでCBがフリーになり、そこにサントスがプレッシャーをかけに行ったことでアンカーの椎橋がフリーとなり、2トップまでのパスコースが空いてしまいました。
小屋松を野上が捕まえる形にはなっていたので野津田が出ていければ良かったですが、野津田が本来捕まえる選手ではないので瞬時に判断するのは厳しいものがあったでしょう。そこを逃さなかった椎橋の判断が光るゴールでした。
前半から再三前に出てきた広島の裏を取り続けることで広島のプレッシングを躊躇させ、空いた中盤を使う。柏が前半からやり続けてきたことが実った得点でした。

サイドの攻略方法

一方広島のボール保持についてはこれまで見られたのと同じような問題が見て取れました。

3バックから野津田塩谷へうまくボールを渡せたときは良いのですが、中央へのコースがふさがれたときにサイドのWBとシャドーが両方ボールを受けに下がってきてしまうことが多々ありました。こうなるとパスコースがないので裏に蹴るか、WBに当てて中央へ振り向きざまのパスを送るくらいしか手がありません。
この状況から裏へのロングボールでサントスへ、というシーンもありましたがその後どのようにボールと人をゴール前に送り込むかの設計まではされていないように見えました。このあたりは柏との設計の差を感じましたね。

また、87分の失点はサイドでのパスミスを奪われてそのままカウンターでやられたものですが、このシーンもWBとCBにプレッシャーがかかった状態でした(シャドーの浅野は気づいて裏に走ろうとしていますが……)。サイドからの前進ルートのなさが失点を招いたとまでは言えませんが、柏のように高い位置でCBをフリーにできていればサイドでのミスが即ピンチに繋がりにくくなったのかもしれません。

ちなみにサイドからの前進という意味では柴崎の投入に可能性を感じました。

相手のWB裏に走ることでCBをサイドに引き出し、WBやDHの追い越しを促します。また、CBが潰しに出られなくなるので中央へのパスコースも空けることができますね。左利きの野津田や東と組むとクロスが上げやすくなるのでさらにグッド。ある程度高い位置まで運んでからでないと効果を発揮しませんが、福岡戦やこの柏戦のような得点の欲しいタイミングでは今後も目にすることになるのではないかと思います。

今後に向けて

広島としては強みのプレッシングが空転し、ビルドアップでもなかなか活路を見出せない苦しい試合でした。勝ち点1取れれば御の字のところでミスからの失点で敗れましたが、まあ文句は言えないでしょう。プレッシングでは強度と意思統一が足りず、ビルドアップでは立ち位置で相手を動かすという設計が足りず。まだまだ課題がたくさんあることに気づけましたね。

柏は連敗をストップして自信になる一勝。この試合だけ見るとなんで3連敗してたのか分からないくらいちゃんとしたチームでした。森海渡という新星も現れて点を取れる選手が豊富にそろっており、今後も上位争いに加わっていけるだけのポテンシャルを感じました。

それではまた次回。

あと何回来られるだろうか