#33 【2024J1第34節 湘南ベルマーレ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になってます!今回は湘南戦。代表ウィーク明けの一戦と言いつつこれが終わるとまた来週はお休み。過密日程はきついが日程が空くとそれはそれで気持ちの持って生き方が難しそうなシーズン終盤です。スタメンは以下。

広島はここに来て加藤のトップに回帰。松本をシャドーに上げて中盤に中島を起用した。連勝中の湘南は前節からスタメン変更なし。福田と鈴木章は9得点8得点の2トップ。FWが引き抜かれてもすぐ出てくるのが地味にすごい。

背後を取る動きで+1を活かす

序盤は広島がボールを保持する展開。広島はトルガイと中島のポジション交換を軸に崩しにかかるが、湘南のプレスを正面から受けてボールを手放さざるを得ない場面も散見された。おそらく広島のWBが下がってきたところに湘南のWBもついてきて、背後への選択肢も提示できていなかったためだろう。ただWBを下げるだけでは陣形が後ろに重くなり、高い位置でボールを奪われるリスクが増すだけになってしまう。

というわけで20分ごろの中断を境に広島は交通整理を行う。WBが下がっていったスペースにシャドーを流して、湘南のWBの背後を使えるようにした。

これによってCBがボールを持った時にサイドの高い位置に出すという選択が生まれ、広島はビルドアップの出口を見つけた格好だった。そして、シャドーに相手がついてくれば中央にスペースが生まれるわけで、そこを中島や川辺が活用する動きも多く見られた。

3-4-2-1で相手の5バックに対してどのようにズレを作るか、という問題については直近の日本vsオーストラリアでも見られたところで、日本代表はDHの守田を最終ラインに落としてビルドアップの安定を優先させた結果、中央の田中を動かせず+1として攻撃に参加できる選手が不在。シャドーとWBのポジションチェンジで何とかするしかないという状況が生じてしまっていた。後半からは守田をサイドに流したりCBがフォローに入ったりで解決を試みていたが、それでも大分苦しんでいた。

今シーズン後半の広島は相手のずらし方について回答を持っているのが強みで、DHの列上げや1トップ2シャドーのスライド(トルガイ、加藤、松本がサイドに1列ずつずれていくやつ)がそれにあたる。得点シーンも加藤がサイドに流れて川辺を+1として活用したことで湘南を押し下げ、空いた逆サイドを使うことができた。
一方で、後述するがこの試合ではそのやり方の難しい部分も出てくることになった。

中盤の数的優位を活かした湘南のボール保持

前半はやや苦しい時間を過ごすことになった湘南だったが、この試合に向けて仕込んできたことはしっかりと見える内容だったように思う。自陣からのビルドアップと押し込んでからの崩しの両方で、中盤3センターの広島DHに対する数的優位を活用する姿勢が見て取れた。

ビルドアップの局面ではアンカーの田中に対して中島が出てくるため、小野瀬と平岡のどちらかはフリーになれる。広島はCBが出て行ってマークする決まりごとになっていたと思うが、川辺がどちらにつくかによって判断を変える必要があって難しい。さらに湘南はCBやDHの出て行ったところにCFを動かしたり、DHにマークされているIHがいきなり裏抜けしたりと広島の陣形を動かすチャレンジを多く行っていた。

また、広島陣内に押し込んでからはIHの積極的な飛び出しで広島のDHを最終ラインに吸収させ、バイタルが空いたところに遅れて選手が入ってくるという動きを多用していた。逆転ゴールのシーンなどはまさにその形で、広島のDHが結構簡単に最終ラインに吸収されるという弱点をしっかりと活用したものだった。
湘南の特徴が広島の弱点とかみ合ったという形ではあると思うが、特にボール保持で広島を研究してきていることが伝わる内容だったと感じる。

間延びによって明らかになる弱点

後半からは湘南がスペースへのロングボールを増やしたように見え、それに伴ってか次第にオープンな展開になっていく。こうなった時に気になるのは広島のトランジション時のポジショニングだ。

広島はボール保持時には+1として、非保持時にはアンカー番としてDHを片方上げるのが常態化しており、結果的に中盤の底をDH1人で守り、その後ろに3バックという4人でカウンターのケアをすることになっていた。ここで、2トップを前に残しつつIHとWBが素早く攻撃参加してくる湘南のカウンターに対して後手を踏む形になったというのが先ほど述べたDHを上げる方法の難しい部分だと考えている。特に川辺が上がった時に中盤を守るのは18歳で技巧派の中島になってしまうが、これはあまりに厳しい配役だろう。せめて川辺を上げて中島を残す形、あるいは川辺の相方を塩谷か松本にするのが最低ラインではないだろうか。

日本代表の話を思い出すと、+1を作れなかった理由はビルドアップの安定化に守田、中盤の守りに田中を動員してDHの2枠を使い切ってしまったからである。逆にリスク管理のために2人を使ったことで、非常に不運な失点こそあったもののオーストラリアの攻撃をほぼ完璧に抑えきっていた。
ロングボール攻勢にあって自分たちの時間を作れなかったクロアチア戦やイラン戦の反省を生かし、保持で時間を作りカウンターにもしっかり備えることを選択した結果、崩しに割く人数が足りなくなったという経緯だ。

この試合の広島は逆で、崩しに人数をかけたため押し込んだ時には優位を取れるが、常に後方でリスクを抱えることになっている。3バックの強さで何とかしのいでいるが、相手を動かせる総力のある湘南相手、中盤の守備を中島に任せたことが重なって後半に立ちいかなくなってしまったということだろう(荒木の負傷も影響したかもしれない)。

シーズン残り4試合というところで、極めて重要な課題を突き付けられた一戦だった。

雑感・次節に向けて

広島としては痛すぎる0ポイントだが、神戸と町田も足踏みしていたのが不幸中の幸い。次節の京都も3センターがベースで、アタッカーの質で言えば湘南にも勝るところがある。後半戦に限れば残りの対戦カードの中で最も勝ち点を積んでいるチームで、勢いの面でも難しい試合になるだろう。
この試合で出た宿題をしっかり整理して臨めるか、優勝に値するチームであることを示せるか重要な一戦となりそうだ。

湘南は勢いを感じさせる勝ち方で3連勝。勝ち点41で残留への道も確かなものとなってきた。スタイルを維持したうえで相手の弱点を的確に突く戦いができているのは素晴らしい、今見て損しないチームの一つだと感じた。

それではまた次回。