#32【2025J1第35節 横浜F・マリノスvsサンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になってます!今回は横浜FM戦。広島はルヴァン決勝を控えながらもリーグ戦も優勝の可能性が残り少しでも上を目指したいところ。横浜FMは前節快勝で残留に向け光明が差したもののまだまだ油断はできない状況となります。スタメンは以下。

横浜FMは前節の浦和戦から渡辺→ジャンクルードの1人のみ変更。ミッドウィークの蔚山戦を落とした広島は前節から中野新井→越道菅の両WBを変更して臨んだ。

ブロックを敷く横浜FMの守備原則

この試合は開始早々から広島が325でボール保持、横浜は442で構えるという図式が明確となった。

横浜は谷村が背中で川辺へのパスコースを消しつつ山崎とジュソンを監視、植中もその横で佐々木を監視しつつサポートという形。両WGの対応は割と対照的で、井上は佐々木へプレスに出て行くこともあったがクルークスはもっぱら下がって菅への対応を意識していた。

広島は下がってきたWBでSBをつり出すことでSBの背後から脱出できることは時々あるものの、あとはDHが消されているためロングボール放り込むしかない、という状況だった。ここは横浜の守備がしっかり整備されており、広島としては引き続きボール前進ルートがないという課題を突きつけられた形となった。横浜側もどうやって前進するかという問題はあるものの、ショートカウンターから点も取れたのでひとまずは棚上げできるという状況で試合が進んでいく。

塩谷の列落ちの意味は

さて、広島は23:53に塩谷が列落ちを開始。これに呼応して加藤とジェルマンがたびたび降りてくるようになり、これによって横浜の2トップは背中で中盤へのパスコースを消すのが難しくなる。川辺は消せていたが降りてくる加藤やジェルマンまでは捕まえきれなくなり、いったん加藤ジェルマンに当ててから落とすことで川辺塩谷がボールを持つ展開が増えるようになっていく。得点を奪ったとはいえ横浜FMのプレス強度はそこまで落ちておらず、前進ルートが見出せない中で最終ラインを増やすことでボール保持を安定化させる塩谷の動きはだいぶチームを助けたと思う。塩谷に呼応して降りてきた加藤とジェルマンも素晴らしい。

ただし塩谷を下ろしてさらにシャドーも下ろすので後ろに重い形にはなっており、この形で打破しようとするとトップとWBの動き出しやボールを持った後のクオリティが必要になってくる。この試合ではそこは全然うまくいっておらず、特に菅と越道は純粋なWGでもないわけで、単騎突破してクロスやシュートにつなげることには苦労しているようだった。別に菅や越道が力不足というわけではなく、このロールでチャンスにつなげるとなるとリーグ上位クラスのWGが必要になるという話だと思う。それこそクルークスぐらいのクオリティが必要だろう。

とはいえ徐々にサイドにボールが渡る機会が増え、サイドからの崩しが見られるようになる。終了間際の菅のカットインシュートなんかは完全にこの文脈で、川辺を浮かせたところからサイドチェンジが通ってという形だった。また、2510にジェルマンがSBとCBの間に入っていったシーンも佐々木からボールが通っていれば大チャンスだった。ということで、広島としては苦しみながらも少しずつ横浜の4-4-2をばらせているかな?という感触を感じつつ後半に入っていくことになる。

大外攻撃を追加して翻弄するも……

後半からは中野中村田中が登場。まずは中野への長いボールでSBを釣り出してその背後から脱出を狙うが、ここはスライドしてきたCBにつぶされている。で、しばらくすると横浜はCBをスライドさせて対応してくることがしっかり決まっていて、大外はマークしきれなさそうなのが見えてきた。

というわけで方針転換し、中野がフリーになったら大外へのアーリークロスやサイドチェンジを連発。大外の中村がクロスに合わせたシーンや、幻となったゴールシーンは完全に大外を狙った形であった。前半に相手を揺さぶっていた流れから明確な勝ち筋と言えるところまでたどり着いたと思うし、横浜が対応できていたかというとかなり怪しいという印象。ひっくりかえせる可能性も十分ある展開であった。

しかし、77分に荒木を投入して最前線に置いたことで何をやるのかの方針がぼやけてしまったと感じた。横浜も逃げ切りを考える時間帯で前線に高い人を入れたいのは分かるのだが、放り込みに行くのか今までのサイドからの崩しを継続するのかどっちつかずになってしまった印象だ。おそらくベンチの意図としてはもう放り込みに切り替えろだと思うのだが、明らかにピッチ内に伝わっていなかったので、まあ練習はしていなかったのだろう。

ザッケローニがW杯で吉田を上げて以来この問題を感じることはたびたびあるが、個人的に日本のチームで終盤急にCBを上げるのが上手くいった記憶があまりない。スキッべさんも何度かやっていたが、そこまで効果を発揮しないまま終わっている印象なので、しっかり意思統一しておくことが重要なのだろう。

雑感・試合を終えて

広島はまたしても得点が奪えず、リーグタイトルはほぼ完全に消滅という結果に。ただ、対4バックの攻略をどうやろうとしているかは見える内容で面白かった。浦和川崎と4バックの相手が続くので、この路線で見たいと思える取り組みが見られたのは良かったと思う。終わり方だけ最悪だったものの、何をやろうとしているか見える内容だったことには光明を感じた。柏戦はとにかく結果を取りに行くとして、残りのリーグ戦でボール保持の課題についての解決策を見たいところだ。

横浜はチーム状況と試合内容からすると最高の結果を手にしたといえるだろう。特に自陣に押し込まれてどうやって点を取るか見えづらい展開だったと思うが、その中で早い時間に先制し、セットプレーから効率的に加点できたのは幸いだった。正直勝ち筋がこれしかない内容に見えたので賭けに勝ったという感じにも見えるが、賭けをやってでも3ポイント欲しい状況であることは確かで、賭けに出られる状況を整えてしっかり遂行したチームの底力を感じるゲームだった。

それではまた次回。