#12【2025J1第13節 サンフレッチェ広島×アルビレックス新潟】

はしがき

毎度お世話になってます!今回は新潟戦。広島にとっては4連敗となった試合でした。今回は結果がついてきていない状況ということで試合の振り返りをしつつも、現状のまずいところと今後どうしていくのだろうかというところの考察を中心にやっていこうと思います。
という訳で新潟戦のスタメンは以下。


広島は敗れた前節から変更なし。井上潮音のDHに川辺のシャドーを継続。ベンチに仙波と茶島、前田が入っておりここは顔ぶれが変わっている。
新潟は4-4-2の形で前節からの変更は舞行龍、橋本、新井、小野、笠井の5人。中2日ということで割とフレッシュなメンバーで臨んできた。

高い位置で奪えるうちはいいが

前半の広島は新潟のビルドアップ隊にプレスを仕掛けて高い位置でボールを奪い、ポケットを使って攻撃を繰り出していた。

14:12のシーンでは菅が藤原を引き出したところでジャメがポケットに入っていって新井を引き付け、一度菅に戻したところでさらに田中が星を引き連れてポケットに入っていったところでバイタルを空け、そこに入ってきた川辺がフリーでシュートを打つところまでたどり着いた。
開始早々にはジャメが突撃する場面が別にあったり、SBとCBの間に人を入り込ませる崩しを積極的に使っていた。ここはジャメと加藤を2トップ気味に起用しているメリットというか、片方に人を流してももう片方をゴール前に残しておけるので積極的にサイドに人を流しての崩しができるという点でこの起用のいいところが出ていたと思う。
ただし30分頃からか、広島のプレスが効かなくなってボールを奪えなくなったことと、WBの立ち位置が変わったことでビルドアップが上手くいかなくなっているように見えた。

この辺りの時間帯から後半にかけて広島はWBを高い位置に上げていたが、そこに対してボールを届ける手段がなかったので、新潟のプレスによって簡単に前後が分断される状況に追い込まれていた。結果的に新潟守備陣が待ち構えているところにロングボールを放り込むしかなくなり、効果的な前進ができなくなっていった。
これまで広島はWBを下げてそこを起点にビルドアップするか、出てきたSBやWBの背後に人を流して前進する形ばかりやっていたのでこれは新しい試みだったと思う。正直この試合で攻め手がなくなっていた要因は半分くらいこれだと思うが、後述するように適切なサポートがあればビルドアップのルートを増やせる試みだと思うのでこれにめげずに実装を頑張ってほしいところだ。

トップを流してずらす新潟

一方で新潟のボール保持での狙いは最初から割とはっきりしており、広島の右サイドでミスマッチを作ることでボールを前進させる形を繰り返し狙っていた。

主に小野が塩谷の前に流れてくることで塩谷の奥村に対する迎撃を抑制する形が多かった。ここから奥村を中村に受け渡すと橋本がフリーになるのでそこを使ったり、田中が奥村を監視しようとすると笠井や小野が中盤に降りてくるなど、広島が人についてくる様子を探りながら空いているスペースを狙ってボールをつないできていた。
GK吉満の正確なキックや1トップの笠井が荒木相手にもそれなりに空中戦で勝てることもあり、時間が経つにつれて広島は自陣まで侵入される機会が増えていく。
先述のような拙攻が後半の間続いたこともあり、広島はほとんどゴールに迫れないままプレスを剥がされる場面が増えていき、85分に守備陣が決壊。その後もほとんど有効な形を作れないままタイムアップのホイッスルを聞くことになってしまった。

さてここからどうしましょうのコーナー

というわけで、まあ内容が悪いのは明らかだったのでここからどうするかについて考えていきたい。この試合での課題は大きく2つで、①序盤を除きボール保持でほとんどゴールに迫れなかったことと、②効かないハイプレスを続けて体力を消耗したことであると考えている。

ボール保持の課題・どうやって前線にボールを届けるか?

①については序盤にハイプレスでボールを奪えたときにしか前線にボールを運べていないという問題がある。逆に言えばボールを高い位置まで運べばサイドでの繋ぎからフィニッシュにたどり着いている場面はあるので、ハイプレスでのボール奪取以外でどう前線にボールを届けるかが課題ということになる。

ここについてはWBの立ち位置で2通りのビルドアップルートを確保できると考えている。まず従来のWBを下げるやり方だが、これは先ほども述べた通りWBを下げてビルドアップの起点とするか、あるいは釣り出した相手の背後を突くやり方だ。浦和戦や名古屋戦でもある程度は機能しているやり方で、新潟戦でも例えば71分の形などがこれに当たる。

ここでは菅にボールが入ったときに加藤が藤原の裏に入ることで藤原のスライドを止めたため菅が時間とスペースを得られた。さらにゲリアも加藤に釣られてサイドに出てきてしまったためジャメが縦パスを受けられた。新潟の最終ラインはサイドにスライドしてきているためジャメがターンするなり田中に落とすなりして逆サイドに展開できればチャンスだが、残念ながら戻ってきた新井に閉じられてボールを失う形になった。
もちろん新井の穴の塞ぎ方が上手かったというのはあるのだが、このシーンでは田中も菅からのボールを受けに高い位置へ出て行ってしまっているためサポートの態勢を作れなかったというのも原因としてありそうだ。対4-4-2ではWBにボールが入った際に前線とDHの2枚がサポートに入ることで相手のDHに対して数的優位を作れるので、ここはDHは低い位置でサポートに入りたい。低い位置にいれば前線にボールが入ったときにお年を受けて逆サイドに展開する選択肢もある。

というように、WBにボールを入れて以降どのように前進していくかが定まっていなさそうな雰囲気があるので、ここはきっちりと実装したい。

また、この試合で見られたWBを上げる方法についても、適切なサポートがあれば強力な前進ルートになる可能性がある。77分の左サイドなどはその片鱗を感じさせた。

新潟の2トップの脇まで持ち上がってきた佐々木が中村とのパス交換で小見と星を引き付け、高い位置に入った東にパスを出して3人目で入ってきた中村が突破を狙ったという形。少しパスがずれてしまい、目ざとくカバーに入ってきていた新井に回収されたがこれが中村に繋がって左サイドを突破できていれば大チャンスだった。
この試合でWBを上げて立ち行かなくなったのはボールを持っているCBとWBの距離が遠くなってパスをつなげないからで、このシーンでは佐々木がボールを持ちあがることで高い位置にいるWBにパスを通しやすくすることで崩しの起点となることに成功している。この位置にCBが自力で持ち上がっても良いが、例えばDHの1人が最終ラインに降りたときにCBを押し出すようにして高い位置に上げることも可能だろう。また、DHがWBとCBの間に入るようにサイドに流れてきてつなぎ役を担っても良い。
おそらく中島やトルガイが発揮していたクリエイティブな要素とはこういうところで、パスをつなぐために必要な位置を自力で察して入って来れるのが彼らの能力の一つなのだと考えている。
彼らがいない現状では誰かがそれをやるようにチームでデザインするしかなく、新潟戦の後半では塩谷や佐々木がその役を担うことになった(交替で入ってきた東や茶島は積極的に高い位置を取っていたので、佐々木や塩谷の立ち位置も含めてベンチから指示を受けていたのかもしれない)。次節は試合開始からこういった役割を担う選手が現れることに期待したい。
非保持の課題・ハイプレスが効かない時にどうするか
また、この試合では非保持でハイプレスが効かず体力を消耗するばかりとなってしまったが、これについてはシンプルに前線から追い回す頻度を下げても良いだろう。特に新潟やセレッソ、柏のように足元の技術に優れるGKと整備された立ち位置でビルドアップしてくるチームを90分追いかけ回すのは恐らく不可能だ。というかそもそもそれが無理だからハイプレスの時間を減らしても主導権が握れるように保持に取り組み始めたという認識なので、保持ができてないからといってハイプレス一辺倒に戻っても仕方ない。
幸いにも既に鹿島戦でミドルブロックからのロングカウンターで結果を出しており、ある程度指針は立ちやすい。


ここまで広島は5試合連続で失点しているが、被ゴール期待値はどの試合も1前後であり、決して守備が崩壊して決定機を量産されているわけではない。CBとGKはむしろハイパフォーマンスを維持しているため、そこの優位性を活かす道としてプレスラインを下げて被カウンターを減らすというやり方には一考の余地があると思う。
もちろんロングカウンターをそう簡単に仕込めるわけでもないとは思うが、保持の仕込みに時間がかかるのならハイプレス以外に主導権を渡さない方法が欲しいところで、ミドルブロックは最も現実的な手段ではないだろうか。

おわりに

長くなってしまったが、今後どういう方針で戦っていくのが良いかいろいろと思いを巡らせてみた。4連敗ということで中々難しい状況ではあるが、トライ&エラーを高速で積み重ねている部分もあり今後の糧になりそうとは感じる。
12試合で17ポイントということで決して多くはないが、今すぐに残留争いを意識するようなレベルでもないので、ここからの成長に期待して見守りたい。

それではまた次回。