#13【2025J1第14節 サンフレッチェ広島×アビスパ福岡】

はしがき

毎度お世話になってます!今回は福岡戦。4連敗中の広島vs3試合勝ちなしの福岡という両チームとも3ポイントが欲しいチーム状況での一戦となります。
広島にとっては前節の新潟と対照的にスキッベ体制では負けなしと相性の良い相手です。スタメンは以下。

お互いに3-4-2-1のミラーで広島は井上潮と菅を外して前田と東がスタメンに。川辺をDHに戻して3-4-2-1への回帰となった。福岡は前節から田代、橋本、金森、紺野の4人が変更。広島からレンタル中の志知は契約上出場できないということで、代わりに上島が左CBとして起用された。

ポジショニングでつながりを作る前田

この試合も序盤から広島がボールを保持し、最終ラインからのビルドアップを試みる展開となった。前節と異なったのは前線までにボールを届ける手立てがあったことだ。

18:40などが分かりやすいが、右サイドはWBの中村が高い位置を取って対面の岩崎を押し下げ、そこでできたスペースに前田が降りてくる形を使用。前節噴出したビルドアップ隊と前線が分断される問題に対して回答を仕込んできたことを示した。前田はここだけでなく田中と川辺がサイドに寄っている場合に3人目の中盤として現れてボールを引き取るシーンも多々あり、序盤のビルドアップの起点となっていた。
広島は押し込んでしまえばクロスの連打やトランジション強度で優位を取れる一方で、そこまで前進する方法がロングボールとハイプレスしかないというのが課題だった。そこでこのように地上からショートパスによるビルドアップを開拓できればより体力を残した状態で有利な押し込みフェーズに到達できるわけで、ここの方法論を確立できたことは大きいと思う。このスペースはある程度相手の陣形によらず使えると思うので、前田だけでなくCBが上がったりDHが流れたりといったバリエーションも見たいところだ。

なお、左サイドの方は東を下げて加藤と田中、川辺でサポートするという従来の方法でビルドアップをしていたが、こちらは捕まり気味でなかなか有効な前進ができていなかった。加藤の負担を減らしてフィニッシュワークに使う体力を残しつつ、パス精度の高い東を起用することで前進の可能性を上げようという魂胆だったのかもしれないが、3-4-2-1ミラーだとそのままではずらすのはなかなか難しいという感じだった。とはいえ前半途中からはジャーメインへのロングボールが前進ルートとして選択されることが増えたためあまり問題にはなっていなかったという印象である。

可変に対応する広島のプレス

一方の福岡はボール保持にあたっては片方のCBを上げることでズレを作り出そうとしていたが、ここはあまりうまくいっていなかった。

福岡は序盤に岩崎を上げながら上島が高い位置を取ることで広島のプレスをずらして前進しようとしていた。しかし前田が対面の上島について下がることを選択したことでこのずれは無効化。それなら安藤が持ち上がったり松岡や見木で相手を動かしていきたいところだったが、ジャーメインと加藤で管理しつつ、松岡や見木が余った時には田中と川辺が出てくるためなかなかうまくいかなかった。
広島のDHを釣り出すところまで行けばロングボールでの脱出も図れそうだが、ここは荒木がウェリントンに対して高い勝率を維持し、思い通りに前進させなかった。

福岡は後半から前嶋と名古、さらにその後秋野とザヘディを入れるなど中盤で位置を入れ替えながらボールを保持する道を模索するが、落ち着いてボールを持てるようになったのは広島が先制後プレスラインを下げてからであった。

ミドルブロックという手札と改善点

先制した広島は中野と菅をWBに入れると珍しく明確にプレスラインを下げ、鹿島戦のようにハーフライン付近をプレス開始地点に設定したミドルブロックを組み始める。過去の試合ではリードしようともハイプレスというアイデンティティを捨てないイメージがあったが、より柔軟に対応する方がいいと方針を変えたのか、あるいはこの日はそれだけ結果を求める試合だということなのかもしれない。

ここ数試合で問題となっていたシャドーが戻ってこない問題についてもしっかり5-4-1のSHとして守備ブロックに参加しており、自陣に人数を用意して守ることができていた。また、DHがプレスに出て行った際はその背後のスペースをCBが出て行くことでケアし、CBの背後はWBが絞って埋めるという設計になっていた。先制後ではないが62:35などはこの形で福岡のビルドアップを阻害できている。5-4-1ミドルブロックかくあるべしというメカニズムで、中央の危険なスペースを優先して閉じることができていたと言えるだろう。

ただし中盤のスライドやCBの迎撃を逆用される場面もちょくちょくあり、PK献上の82:02のシーンなどがそれを利用してチャンスまでつなげられた場面である。

ここでは直前に出て行った川辺が中盤のラインに戻るまでと田中がスライドする間に秋野へのパスコースが空き、ここに荒木も塩谷も出ていけなかったことでライン間でのパス交換を許し、サイドへの展開から重見にシュートを打たれることになった。
中盤が出て行ってもその背後をCBが埋められるのが5-4-1の強みだが、CBが出て行けない立ち位置でボールを受けられてしまうとこのようにライン間から突破されてしまう。
まずは中盤のスライドでパスコースを空けないことと、CBが迎撃態勢をとりWBも常にその際のカバーに備えておくことが重要になるだろう。

雑感・次節に向けて

広島にとっては待ち望んだ5試合ぶりの勝利。直接得点に繋がったのはロングボールとトランジションというこれまで強みとしてきた部分だったが、前半に見せたショートパスによるビルドアップと後半のミドルブロックによって、同点にされてからも再度攻めに出て行くパワーが残っていたという見方もできるので、スコアが動いたタイミングでしっかり意思統一して戦い方を変えられた点は非常にポジティブだと思う。
もちろん練度には改善の余地もあるが、ハイプレスで取れないなら撤退するとか、ボールを押し付けられても前進ルートを見つけられるなど相手に合わせてさまざまな方針を一定以上のクオリティで見せられることは非常に大事だと思う。
連敗中の学びを活かせたのがこの福岡戦で、この方針を維持できれば連敗による遅れも十分巻き返すことが可能だろう。

福岡はこれで4試合勝ちなしとなった。CBを上げてのビルドアップや中盤のポジションチェンジによる崩しなど金監督らしさは既にかなり浸透しているように見えたが、まだ若いチームで調子に波がある部分はあるかもしれない。
そうした苦しい時に堅守やセットプレーの強さといった長谷部監督時代の財産が助けてくれると結果にもつながってくるのかもしれない。

それではまた次回。