#レビュー 【2022天皇杯決勝 ヴァンフォーレ甲府×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。天皇杯決勝、甲府戦のレビューです。いろいろなドラマのある試合でしたが、お互いの狙い的にはどうだったのか見ていきたいと思います。

ちなみにプレビューはこちらです。

syukan13noblog.hatenablog.com


で、スタメンは以下。

お互いに3-4-2-1でのスタート。甲府は4-3-3もできるという話はプレビューでやりましたが、やはりここ数試合でやっている3-4-2-1できましたね。
メンバーとしては甲府は報道通り宮崎がケガでベンチ外、代わりには鳥海が入りました。広島は1トップにナッシムを予想していましたが、普通に間に合ったようでドウグラスが入りました。

広島の予習をしてきた甲府

さて、甲府はボール保持に特徴のあるチームという話でしたが、序盤は広島のプレスを受けながらも長いボールを織り交ぜながら果敢にボールをつないでくる姿が見られました。特に起点となっていたのはやはり広島のDHの背後です。

甲府の保持で懸念していた「須貝を誰が見るか問題」については満田がしっかりスライドしてついて行っており、そこまで大きくズレを作られることはなかったように思います。
一方でここまでの広島にとって共通の課題であるDHの背後を狙われる点については甲府もしっかり予習済み。1トップの三平が裏へ抜ける動きで荒木を引っ張り、その下にシャドーの長谷川と鳥海が入ってくる場面が多く見られました。逆に三平が下がって収め、長谷川鳥海が裏抜けするパターンもあり。この3人が背後とライン間をうまく使い分けることで広島の最終ラインが対応しにくい状況を作っていました。
また、この日は野津田が強度負けする場面が目立ち、対面のDHへのプレスが遅れて背後のスペースに縦パスを刺されたり、サイドまで出ていったのに潰せきれずそのまま中央を横断されるなど、らしくない場面が多く見られました。

ピッチを広く使う甲府の保持に苦しんだ広島は26分にCKから失点。ここは一回目のCKなだけにデザインプレーはもっと警戒したかったですね。今期たびたび見せているナイーブな一面が出てしまいました。

いつもの姿を思い出せない広島

一方で広島のボール保持についてですが、リーグ戦の最近数試合を見た感じでは甲府はボール非保持時に撤退を優先する傾向が強く、広島はボールを保持して進められるだろうと考えていました。

しかし蓋を開けてみれば甲府はしっかりプレッシャーをかけて広島のビルドアップを制限し、広島は前半30分を過ぎるまでシュートも打てない展開となりました。もっともこれには広島のボール前進が機能不全に陥っていたというのも要因だと感じました。

広島はCBがボールを持った時にWBが下がってきて近寄ることでサイドの高い位置にスペースを作り、そこにシャドーやWBが出てきて崩すという方法をよくやるんですが、この日は前半30分過ぎまでCB→WB→シャドーという大外からのボール前進がほとんど見られませんでした。
中央で待っているシャドーに縦パスを入れて失う、ドウグラスに長いボールを入れて失う、という場面が目立ちましたね。かろうじてCBから背後への長いボールが何回かあったくらいでした。

この辺りは決勝ということで安全に行きたいという意識はあったのだと思います。ここ数戦絶好調だったドウグラスが前線にいたので彼にボールを収めてもらって安全に時間を作ろうという狙いだったのかもしれませんが、さすがにそればかりでは潰されてしまいます。

サイドからの前進で相手を動かすという手段を見せてこそドウグラスへの長いボールも生きるわけで、相手を動かそうとするまでに30分以上かかったのはこの試合の最大の反省点と言えるでしょう。

逆にサイドで奥行きを作って相手を動かせるようになってからは、40分の川村のクロスなど良い場面を作れていました。自分たちのやってきたことをしっかり出せれば十分得点の可能性があることを感じられる前半ラスト10分だったと思います。

40分、川村のクロス

カオスを生むエゼキエウと調整役のナッシム

後半に入ってからは1枚カードをもらっていた森島と今一つ持ち味を出せなかったドウグラスに替わり、エゼキエウとナッシムを投入。
サイドの奥行きを作りづらくなっていた前半だったので、サイドに流れて起点を作れるナッシムの投入は納得できますね。また、エゼキエウは自由に2列目を動き回るので、それに合わせて立ち位置を調整できるという点でもナッシムは適任だったと思います。

森島と比較すると自由に動くエゼキエウは制御しにくいところもあるのですが、ナッシムの存在でなんとかバランスを取りながら前に進めていたと思います。
終盤には松本、野上、ピエロスも投入して圧力を強め、85分に左サイドでエゼキエウと川村の連携からゴールをこじ開けました。甲府の5-4-1が堅い中で動かし続け、よく同点に持っていったと思います。

試合の終わりに、次のファイナルに寄せて

しかし同点ゴールのシーンでエゼキエウが負傷。満身創痍の広島は延長ではジェラを投入して塩谷をトップに置く苦肉の策に。それでも押し込めましたが満田のPKなどチャンスを活かせず、もつれこんだPK戦では残念ながら川村が貧乏くじを引くことになってしまいました。

PKを外してしまった満田や川村、止められなかった大迫を責める道理は一つもありません。誰もが言っていることですが、彼らがいなければ決勝に来られていないのですから。この程度で信頼が揺らごうはずがないのです。

この試合で最も悔やむべきは保持で自分たちのやってきたことを忘れてしまったことでしょう。常に相手の背後にチャンスがある、そのことを忘れたまま35分間過ごしたのがこの試合の敗着だったのではないでしょうか。

普通であればタイトルをとってこの悔しさを晴らすには年単位の時間が必要なのですが、今年は幸運にも今週の土曜日にその機会があります。
相手のセレッソは今年3回勝った相手。だからといって楽な相手ではないことは誰もが知っていますが、同時にこれまでの対戦で経験したことが助けてくれるはずです。セレッソはどうやって前進してくるのか、どうやってプレスをかけてくるのか、それをどうやって跳ねのけたのか。それを活かした試合が見られることを期待したいと思います。

それではまた次回。