#26 【2022J1第26節 サンフレッチェ広島×ガンバ大阪】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はガンバ戦。広島にとっては連戦を終えて久々に休養十分でのゲームです。なんでもオフが3日あったとかなかったとか。
一方のガンバは前節清水戦の敗戦を受けて片野坂監督を解任。後任には最近招聘したばかりの松田浩コーチが昇格となりました。残り10試合、残留に向けて落とせない中での初陣です。スタメンは以下。

広島は今週加入したばかりのソティリウがいきなりスタメン。久々に3-1-4-2採用となりました。右WBには前節決勝ゴールの藤井に代わって茶島が入っています。ベンチにもいなかったのでアクシデントかもしれません。
一方のガンバは松田監督の代名詞ともいえる4-4-2。夏の新加入組であるアラーノや食野もスタメンに名を連ねました。広島的にはパトリックとペレイラという顔ぶれに懐かしさを覚えるところです。

8人で守る難しさ

さて、試合は開始早々にガンバがロングボールから2トップの推進力を活かす形で先制。長いボールを蹴ってパトリックを野津田や森島と競らせるのはなるほど、という感じでした。

先制点が入ったからというよりはもともとそういうゲームプランだったのでしょうが、ガンバは広島の3バックとアンカーをほとんど放置して4-4-2で引き気味に構えます。

ガンバは4-4のブロックを形成していましたが左と右でやや対応が違いました。左サイドはWBにボールが出た場合SHの食野が出て行ってSBを動かさないようにしていたのですが、右SHのファンアラーノはCBまで出ていき、結果としてSBの高尾が柏に対してプレッシャーをかけに行くことになります。
その結果空いたスペースにIHの満田が飛び出していくシーンが何度か見られました。広島の1点目なんかはまさにこの形でしたね。また、広島はIHの飛び出しに限らずWBやFWがガンバのSBCB間を狙うシーンが多く見られました。そしてガンバはSBとCBの間に侵入された場合はDHが下がってスペースを消すのではなくCBが出てきて潰す!という仕組みになっていたかと思いますが、そこで潰しきれないと1点目とか5点目とかみたいになってしまうということですね。

広島は満田だけでなく森島も逆サイドでSBの裏を狙う動きをやっていましたので、両サイドでこのパターンを狙っていたのだと思います。しかし、ガンバの守備方法が両サイドで異なり、広島の狙いがハマりやすかったのがアラーノと高尾のサイドだったのかなーと思います。

アラーノと高尾が前に出ていく守備方法もありだと思うんですが、2トップが広島のビルドアップ隊を放置しているという状況とかみ合ってないという印象でした。2トップがCBとアンカーを放置しているので、CBにプレッシャーをかけても逆サイドに蹴られたりアンカーを経由してWBにパスをつけられたりして脱出されてしまいます。

この試合では広島のCBやアンカーから逆サイドへのサイドチェンジが多く見られるのですが、それも2トップによるプレッシャーがかかっていないことが原因だと考えられます。また、ガンバの4-4ブロックはかなりスライドが速く、ボールと逆サイドにはかなりスペースがあったこともサイドチェンジが決まりやすかった原因でしょう。
このゲームを通してガンバは広島のビルドアップを制限することはできず、広島はかなり好きなように前進することができていました。

この試合の広島の得点はスーパーゴールが多かったですが、シュートが理不尽だっただけでそこに至る道筋はかなりしっかりデザインされていたように思います。ガンバのSHSBが前に出てくることを利用してSBCB間に侵入して得た1, 4, 5得点目と、アンカーがフリーなことを活かしたサイドチェンジから挙げた2点目と3点目。いずれもデザインされたボール前進を結果に結びつけた素晴らしい5得点でした。

茶島の起用は旋回のため?

割と容易にボールを前進できる広島はガンバの守備をどのように崩すかという課題に直面しますが、ここで見られた工夫がサイドの旋回です。役割交換とも言えるでしょうか。

28分辺りに見られたのが綺麗だったんですが、森島がボールをもらいに下がったタイミングでWBの茶島がシャドーの位置に入り、CBの野上がWBの位置に入ってきました。ここから茶島に縦パスが入って前進しましたが、大外で野上がフリーだったので使っても良かったなーというシーンです。
森島、茶島、野上はいずれも複数のポジションでプレーできるのでこういった役割の交換が可能なわけですね。WBに藤井がいると単独での突破は期待できますが、彼は大外から動かせないのでどうしても相手のマークがはっきりした状態からの勝負になります。ここに中盤でもプレーできる選手がいると役割を交換して相手のマークを外しやすくなるという訳です。もちろん各選手が複数のポジションでそれぞれ求められる役割(裏抜けとか、引いてボールを受けるとか、ネガトラ準備とか)を理解する必要があるので難易度は高いんですが、うまく機能すれば相手としてはかなり守りづらい攻撃になります。
左サイドでも佐々木が柏を追い越して行ったり満田がサイドに開いたりと崩しのバリエーションが増えていますので、ぜひこういったチャレンジは続けていってほしいですね。

収支はマイナスなのか

さて、この試合ではガンバはほぼ8人で守って2トップはカウンターに専念するというやり方を採用したわけですが、5-2で敗れる結果となりました。やはり現代サッカーでは相手に自由なビルドアップを許すと守り切るのは難しいんだなということが感じられましたね。広島の5得点は出来過ぎですが、広島に限らずJ1の多くのチームは8人の4-4で守るチームからであれば複数得点取れると思います。

とはいえ、だからガンバのこの方針が間違いとは言い切れないのが難しいところ。現にガンバの攻撃陣は2得点と結果を出しています。この試合でも3点目を取れるチャンスがあり、そこが決まっていれば現実的に逃げ切りもあったと思います。
パトリックを中心としたロングボールによる前進も相手が広島の対人が強いCBだったから苦しかっただけで、今後はもっとボールを納められる場面も増えていくことでしょう。
リーグでは指折りのタレントを揃えるFW陣を揃えているチームですから、彼らをカウンターと陣地回復に専念させるというプランは十分成り立つ可能性もあります。相手との力関係も踏まえてFWにどの程度の守備タスクを課すのかがキーポイントとなってくるでしょう。4-4-2を得意とする松田監督の手腕に期待です。

それではまた次回。