#14 【2022J1第14節 サンフレッチェ広島×京都サンガ】

はしがき

平素よりお世話になっております。今節の相手は京都。2010シーズン以来のJ1ながらここまで勝ち点17で健闘中。リーグ戦はここ数試合勝ち星がないですが、プレー強度とウタカを中心とする攻撃でJ1でも十分にやれることを示しています。

DAZNでは紫ダービーと銘打たれていました。スタイルも似ているしダービーと言えなくもないかも。
そんな試合のスタメンは以下。

広島はここ数試合と同様に外国人2トップを起用した3-1-4-2を選択。京都も前節と同じ11人で4-1-2-3を組んできました。
強度を持ち味とする両チーム、ビルドアップ隊とプレッシング隊の配置がかみ合っているのが印象的です。

中盤の素早いサポート

さて、試合は開始早々に満田のゴールで広島が先制すると、その後も広島が京都のDFラインの背後を付いて決定機を多く作りました。
こうなった要因は広島のビルドアップが整備されていたことと、フィジカル能力に勝る2トップがいたことが原因だったと思います。

広島は3バックからWBを経由してアンカーにボールを渡す形が多く見られました。京都はWGがアンカーへのパスコースを消しながらプレスに出てきますが、アンカーを直接捕まえる選手はいなかったのでWBを経由すればボールを渡すことができます。ここ数試合の広島はサイドにボールが入った時のサポートが素早く、サイドに追い込まれてボールを失うということが少なくなっていますね。
この試合でも京都の思惑通りサイドに追い込まれたと思ったところを中央の野津田や森島に渡して回避する場面が多く見られました。京都も中盤にIHがいるのですが、広島のIHが気になって野津田のところまで出てこられなかったのかなと思います。

2トップの優位性

京都も手をこまねいていたわけではなく、24分ごろに曺監督が2DHに変更するよう指示を出しているのが見て取れます。

これによって広島のアンカーとIHに対してトップ下と2DHをかみ合わせられるようになります。盤面上は広島のビルドアップを阻害できそうに見えますが、前半の段階ではそこまで状況が好転したようには見えませんでした。
もちろんピッチ上での修正なのでなかなかすぐには切り替えられないということもあるでしょうが、大きな要因は広島の2トップと京都の2CBのマッチアップにあると感じました。

京都は広島のWBに対してSBが出てくるというアグレッシブなプレッシャーを仕掛けてきますが、これによってSBの背後には大きなスペースができます。必然的に広島の2トップと京都のCBが広いスペースで2vs2となります。

ただでさえフィジカル自慢の2トップですので、広いスペースで対峙するのはかなり困難。シンプルに長いボールで裏に抜けだしたり、2トップの片方が降りてきてワンツーしたり、加えてIHが飛び出してくることも。広島は京都のDFライン裏の広大なスペースを存分に活用して2点を奪うことができました。

IHを出すことのメリット

一方の京都もビルドアップ時にはアンカーを浮かせることで出口を見つけ出せていました。

京都のSBがボールを持った際、広島は基本的にIHを前に出してプレッシャーをかけます。これによって後方では数的優位を確保できますが、中盤では数的不利が生じます。そのため京都はアンカーやIHを経由して前進することができますね。

ただし2CBだけ残して前に出ていく京都とは異なり、広島のプレッシャーを剥がしても後方に5バックが残っていてスペースは広くありません。そのためプレスを剥がせば即チャンスにつながるというほどではなく、最終的にはウタカの突破力に頼る場面が多くなっていました。

そもそも前半の京都は広島に押し込まれてクリーンな前進の機会はあまり得られていなかったので、広島が5バックを残していたこともありチャンスはかなり限定されていました。
そんな中でもカウンターから1点を奪って1点差で折り返すことができたのは京都にとっては大きかったはず。逆転への希望をつなげた京都はハーフタイムにさらなる修正を行います。

京都の3バックによる対応

京都はハーフタイムに3枚替えして3-4-2-1へ。アピアタウィア、井上、麻田の3人で広島の2トップを抑えにかかります。

この変更により最終ラインで数的優位を保ったまま広島に対してプレッシャーを仕掛けることができます。広島のWBに対してはWBを前に出すことで対応し、背後のスペースを空けづらく。プレッシャーに出ていくときは中盤の選手を1人使って野津田もきっちりマークします。

これによって広島は前半よりも格段にビルドアップの出口を見つけにくくなりました。後半は広島のロングボールが京都のCBに回収される場面が増えましたが、前半と比較して勝算の薄いロングボールを蹴らされることになったのが原因だったと思います。

一方で、京都は3バックについては慣れてないのかな、と思う場面もちらほら。攻撃についてはカウンターかWBの突破というシンプルなものが中心でしたし(それでも白井の突破は十分脅威でしたが)、失点シーンではWBの白井が柏について行って大きなスペースを空けてしまいました。

ハーフタイムの短い時間で広島のボール保持に対して的確な修正を施した曺監督の采配はお見事でしたが、それが直接スコアに反映されるわけではないのがサッカーの面白いところ。京都からすれば前半は内容の差とは裏腹に幸運にも1点差で終えることができましたが、後半は互角だったのに不運にも1点差をつけられてしまったという印象ではないでしょうか。

3バックでのビルドアップをどうする?

一方の広島は柏戦に続き、3バックでビルドアップしてくる相手への対処に手間取る後半となりました。
3-1-4-2のまま対応しようとしますがサントスを含んだ2トップで京都の3バックを止めるのは難しく、途中からベンカリファと森島の役割を入れ替えるような形で対応します。

ベンカリファと森島の2シャドーで3バックを監視しておき、中盤に下げたサントスと野津田の2枚で相手のDHを監視しようとしますが、柏戦と同じく開いたCBに逃げられる場面が見られました。
この試合ではリードしていたので5-4-1で引いて凌ぎ切ったものの、この先の試合を考えると3バックの相手の前進を止める方法は確立しておきたいところ。3バックに対して3トップをぶつけるのが最も手っ取り早いですが、サントスを含めた1トップ2シャドーでそれができるかは微妙ですし、オールコートマンツーマンのような形になればリスクも上がります。

ここ数試合はボール保持への意識を強めている感もありますので保持の時間を増やして対応するという手もあり、今後どのように進化していくのか注目したいですね。

それではまた次回。