【サンフレッチェ広島月次レビュー】2026年8月

はしがき

毎度お世話になってます。2026年8月のサンフレッチェ広島月次レビューをお届けします。

急に何と思われたかもしれないんですが、今シーズンはレビューを月ごとにまとめて出す方針にしてみようかな、と思っている次第です。百年構想リーグでは仕事が忙しかったり生活がバタバタしていたこともあってレビューをお休みしていたのですが、サンフレッチェ広島がどういう取り組みをしているかはやはり記録しておきたいな~という気持ちでした。

一方で、これまでのように毎試合レビューを書くやり方だと速報性や訴求力の点で動画の下位互換にしかならないな~ということも考えていました。また、後から見て振り返りやすいことが文字の利点だと思いますが、毎試合書くやり方だと記事が多くなって読みづらく、大して振り返りやすいものになっていない気もしていました。
それならばある程度期間を決めてその期間分の試合結果やトピックをまとめて記載しておく方が、後から見たときに何をやっていたかが分かりやすくなるのでは、という考えです。

というわけなので、しばらくは月一回の更新になるかと思います。その分、その月に取り組んでいたことを中心にしっかり取り上げていければと思いますのでよろしくお願いします。

 

〇2026.08.08 明治安田J1リーグ第1節 vsジェフユナイテッド千葉@Eピース

・広島の動向
序盤にセットプレーから先制できた広島。千葉は広島のボール保持に対して引き気味に構えたため、最終ラインがかなり自由にボールを持つことができた。サイドに振って早いクロスを中心に、時折中央に縦パスを刺す形で敵陣への侵入を試みていく。また、特に左シャドーの前田を大外に流し、中野が内側レーンに入っていくポジションチェンジが見られた。百年構想リーグの終盤でやっていた中村のWG化に近い形で、特徴から言っても大外に張る役を前田がやるのは違和感がない。ただし、コンビネーションで中央に入っていく形は作れず、ここはこれからといったところ。この方針だとWBは中盤でのプレーに適性のある新井の方がいいのかもしれない。

後半は前田に代えてアレーを投入し、彼のポストプレーを軸にした前進が多く見られるようになった。77分の加藤のシュートシーンのようにアレーが下りてきてボールをはたき、その背後に加藤や鈴木が飛び出していく形はシンプルながら対応しづらそうであった。この戦術をやるなら大内のキック精度が必要な気がするが、大迫が戻ってきた今どうするのかは難しいところ。39分のエリソンのシュートが止まらなかったりと、シュートストップについて大内はもう一声ほしい部分があるのは確かだ。

 

・千葉について

とにかく広島のボール保持に対して全然規制をかけられなかったのが苦しかった。ボールを持つと4バック可変や中盤で局所的に数的優位を作るなどプレス回避の手段は複数仕込まれていたので、前進してから押し込む展開を作りたかった。プレス回避に人数を割いた分前線はエリソンに頼まざるを得なくなり、広島の保持に対して奪い返す手段も乏しかったことでなかなかチャンスを作れない展開となってしまった。

 

 

〇2026.08.15 明治安田J1リーグ第2節 vs浦和レッズ@埼玉スタジアム

 

・広島の動向

千葉戦の後半と同じスタメンで入った広島は、千葉戦と同様にアレーのポストプレーを軸とした前進を試みていく。また、浦和は3トップが広島のCB、SBが広島のWBまでプレスに出てくるので、シャドーがSBの背後に入って前進の起点となる動きも盛んに見られた。スキッベさんの時から前進のターゲットとしていたエリアだが、ここにグラウンダーのパスでボールを届けられるあたりに成長を感じる。特に浦和の右サイド、ボザの背後は何度も鈴木が起点にしており、ボザが戻ってきたら今度は大外でフリーになっている東に展開というシーンが何度もあった。

先制点はこの試合の狙いが顕著に出たシーンで、ボザの裏で鈴木が起点を作り、逆サイドに振って出てきた長沼の背後を川辺が使い、川辺からのクロスがボザのいない大外の鈴木に合うという、徹頭徹尾SBの背後を使い続ける形になっていた。

また、SBを前に釣り出して背後を狙うだけではなく、幅をとった選手がSBを外に釣り出してその間を狙う形も兼ね備えていたのは良かった。41分に中野が背後を狙ったシーンが最もわかりやすい形であり、塩谷の勝ち越しゴールはこのスペースをCBの塩谷が狙っていくというのがより対応を難しくさせたように思う。

 ボール非保持でも浦和のビルドアップをマンツーマンプレスとCBの対人性能で潰し続けた広島。なんでも追い掛け回すわけではなく、ミドルゾーンに構えつつ人も捕まえる姿勢でパスコースの封鎖と背後のケアをうまく両立している印象があった。後半にも流れを手放さず、セットプレーとカウンターから追加点を挙げ4-1で勝利。充実を感じさせる連勝スタートとなった。

 

・浦和について

SBを大胆に前に出すハイプレスを敢行していたが、そのプレスが間に合っていなかったことで広島に簡単に前進を許す形になってしまっていた。また、SBとCBの間が空いた場合に中盤の選手がそのスペースをカバーする仕組みになっていなかったのも厳しさを感じさせる。個人的にはハイプレスが間に合わないことよりもこっちの方が気になった。ハイプレスはコンセプトなので続けるとしても、SBが釣り出されたスペースを放置していい理由はないのでここはアンカーを下げるなり5バックにするなりして埋める仕組みを作った方がよさそうだ。後半からは5バックの雰囲気も感じられたが、もう少しスペースを埋める意識は必要になりそう。

ボール保持もこれからといった趣だが、笹や安居がボールを引き取る工夫を見せたりWGの裏抜けで広島のDHを釣って中盤を空けたりと少しずつ改善はみられていた。ただ後半は中盤の位置が高すぎてパスが引っかかったらすぐにカウンターを食らう形になっていたので、この辺もバランスを模索していくことになるのだろう。

 

〇2026.08.22 明治安田J1リーグ第3節 vs川崎フロンターレ@Eピース

・広島の動向

人数を合わせてハイプレスに来る川崎に対して蹴っ飛ばさざるを得ない展開からスタートすることになったこの日の広島はなかなかボールをつなげない展開が続く。プレスをかけに行っても驚異的な収まりの良さを見せるロマニッチを軸にはがされ、出てきたCBの背後を突かれてピンチを作られてしまう。

ただ、このプレスに対して降りるアレーとシャドーの存在で川崎のボランチを足止めして中島、川辺がボールを受けるスペースを作れていたのは良かったように思う。中島や川辺を起点にボールを散らすことができれば、ここ2試合で見せていた内と外の使い分けで相手守備陣を揺さぶれるようになる。大外のWBがフリーになればそこからのクロス、大外をケアしてSBが出てくればシャドーやボランチが明けたスペースに入ってくる。ここの使い分けは一貫して意識できており、今季の広島の強みと言っていい部分だろう。
ただし、大外からのクロスの火力がそこまででもないのは気になる点。先制点にはつながったものの、特にアレーがいなくなってからの大外クロスはほとんど可能性を感じなかった。突破力のあるWGがいるわけでもないので、サイドで時間をもらえた場合にどうやって脅威を与えていくかは気になるところだ。

また、終盤に披露した4バックシステムがそれなりに機能していたのも特筆すべき点だろう。特にSBが高い位置をとることで相手のWGを押し込み、中央からの前進がやりやすくなる効果があった。サイドに速い選手がいないのでサイドに展開した後もうひと手間かけないとチャンスにつながりにくいという点はあるものの、相手の陣形を広げる効果は3-4-2-1の形よりも期待できそうであった。

・川崎について

まずはロマニッチのパフォーマンスが印象的だった。荒木のコンディションが万全ではなさそうとはいえ、彼を背負ってポストプレーを安定させられるCFはJ1でも稀有な存在。ここが収まることで川崎は広島のプレスに対して明確な逃げ道を持てていた。また、インサイドのWGが中盤の内側レーンに降りてくることで広島CBの監視から逃れつつボランチに対して数的優位を作る動きも多く見られた。ここでWGが受けられればカバーに来たWBも引き付けて大外を使うことが可能になる。川崎は複数の逃がしどころを作ることで広島のプレスを空転させることができていた。
広島が前の2試合で相手を圧倒するパフォーマンスが出せていたのはCBが潰せていたからであることが明らかになったとも言える。

一方で、失点シーンを筆頭に撤退守備については怪しさが見える。SBとCBの距離が空くところについては中盤が粘り強く埋めていたのだが、シンプルに大外から人数をかけられる展開に対してWGが間に合わなくなりがち。この試合で言えば広島のCBが攻撃参加してきたタイミングで伊藤やマルシーニョが間に合わずそのままクロスにつなげられる場面が多かった。まあ伊藤やマルシーニョに守備時4-4-2のSH役を完ぺきにこなしてもらうのは苦しいだろうし、火力の高さを考慮して差し引きプラスになるだろうという考えだったかもしれない。

 

〇2026.08.28 明治安田J1リーグ第4節 vsガンバ大阪@吹田スタジアム

・広島の動向

川崎戦よりはバックラインに時間がもらえるので、いつも通り繋いでいこうとする広島。しかしボールをWBに入れるとガンバはSB裏のスペースにCBが素早くスライド、フォローに入る広島のボランチにもマークがしっかりついてくる。結果的に1トップ2シャドーに直接縦パスを入れるシーンが増えるのだが、ここの数本の繋ぎがなかなか合わない。特に前線からボランチに落としてからそのあとがずれる印象だった。この辺はそもそも相手を広げられていなかったり、裏への動きが少なかったり、フォローに入るボランチの距離が近すぎたりと様々な要因があったように思う。こういった縦パスが合わないとボールを中央の低い位置で失うことになるので、そこから危険なカウンターを食らっていた。

悪いことにここでカウンターの起点となるジェバリの立ち位置が抜群で、常に広島のボランチの背後かつCBにつかまらない位置でボールを収めていた。ここで広島守備陣を引き付けてからフォローに来たアタッカーに渡す動きが抜群にうまく、周囲のアタッカーも迷いなく動き出せていた。

広島も自陣からの繋ぎで時間を作って抵抗は見せていたが、ジェバリの足が止まる後半の飲水タイムまでは結構苦しい状況だったように思う。逆にそこからはヒュメットジェバリの足が止まったこと、4-2-3-1への変更でガンバのWGを押し下げられるようになったことで中央からの前進が容易になった。そこにボールを引き取って運べる新井が入ったことで広島は一気にスムーズに敵陣に侵入できるようになる。

中盤までフリーでボールを運べるし、その先の縦パスにも制限がかからないため、縦パスからサイドへの展開を中心に攻撃を継続。加藤のヘッドや鮎川の抜け出しなどチャンスはあったが、ガンバが何とか切り抜けてスコアレスドロー決着となった。

・ガンバについて

先述の通り素早いスライドとジェバリを起点とした精度の高いカウンターで主導権を握れていたように思う。

また、ガンバの保持局面でもジェバリの存在感は抜群。ガンバの2CB+2ボランチに対して広島は1トップ2シャドーとボランチを動員してプレスをかけに行くが、ジェバリはここで残ったボランチが管理しきれない場所に入ってきたりボールを逃がしたりといったプレーが目立った。人数的に噛み合ってはいるがスペースがあるのでジェバリのプレー選択肢が広く、広島はボランチ1人では管理しきれていない状態だった。ここに川崎戦と同じように内側に入ってくるWGもいるため、ボール保持については安定感があった。前節まではジェバリが不在だったようなので、ここからが本領発揮となりそうだ。

 

〇今月の感想

前評判の高いシーズンだったが、それを裏切らないだけの結果と内容は見せられていたように思う。百年構想リーグで根付いたショートパスによるビルドアップの意識はそのままに、中村がいないことで大外攻撃の火力が下がった分はアレーを中心としたレイオフからの前進で揺さぶることで補っていた。ただし、アレーが起点になることで大外からクロスを上げる際にアレーが入ってくるのが間に合わず、クロスがそこまで有効な攻撃になっていないことが多い点は気になる。川崎戦で繰り出していたようなハーフスペース突撃を織り交ぜていくことは重要になるだろう。
また、一次キャンプから取り組んでいると噂だった4バックがオプションとして予想以上に機能しているのも収穫だ。川崎戦でもガンバ戦でも相手のWGを押し下げて2CB+ボランチのビルドアップに余裕をもたらす効果が得られていた。塩谷、ジュソン、山崎のコンディションが不安定な状況なので、CBの枚数を減らせる4バックは開始から採用するオプションになっても不思議はない。

守備についてはセットプレーからの2失点のみで、安定していると言ってよさそうだ。ボールを持つことで相手の攻撃機会を減らしたり、体力を節約したりできているという面もあるだろう。ただし、川崎戦では左右のCBの背後、ガンバ戦ではボランチの背後とビルドアップの逃げ道となるスペースを用意されていたのは注意すべき点だ。ボールを持っているとき、プレスをかけるときに空いたスペースをどう管理するかについては注目していきたいところだ。

とはいえ主力のコンディションに苦しむ中で全体的には順調といってよい出来。9月は連戦やアジア大会による中島の不在もあるため層の厚さが問われるが、クシニイェンギの加入もあったことだし層の厚さを見せて乗り切りたいところだ。

〇気になった選手

・大内一生

大迫の移籍騒動により開幕スタメンを飾り、そのままリーグ戦4試合でゴールマウスを守り抜いた。ビルドアップを重視する今の方針において、安定したボールさばきと正確なフィードは大きな武器。毎試合一度はWBやトップに見事なロブパスを通している。ビルドアップ隊はGKがいるので常に数的優位とは言うものの、GKが安定してボールを扱えないと成立しない理屈なので、その点において本当に貴重な人材だ。

シュートストップやハイボール処理においても今のところ大きなミスはないが、おや?というシーンが1つ2つないわけでもない。優勝を争うようなチームとの対戦はしばらく先になりそうだが、そのあたりでは本分であるゴールキーピングの真価が問われそうだ。

・鮎川峻

百年構想リーグでは難しい時間を過ごしたが、浅野前田の不在もあって天皇杯でチャンスをつかむ。そこで結果を出してガンバ戦でもプレータイムを得ると、相手に退場者を出させる危険な動きを見せた。シャドーで起用するのかと思っていたらトップに入ったので驚いたが、常にCBの間で動き続けて抜け出しを狙うスタイルは相手のCBの注意を引くためシャドーに時間を与えることができ、確かにトップに配置するのが適切に思える。アレーとイェンギがいる中で先発から出てくるイメージは正直あまりできないが、押し込んだ展開の中で相手を崩すもう一押しが欲しい時に優先度の高い選択になりそう。そのためには今後も短い時間で結果を出すことが求められる。