#13 【2022J1第13節 浦和レッズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は金曜日に行われた浦和戦。雨の中でのゲームでした。スタメンは以下。

広島は前節鹿島戦に引き続き野津田アンカーの3-1-4-2。ベンカリファとサントスの2トップも変わらずです。
一方の浦和は4-2-3-1。リーグ戦4試合連続の引き分け中ということで何とか勝ち点3が欲しいところです。

アンカーを入れ替える浦和

立ち上がりにボールを保持したのは浦和。2CBとDHのうち一人を中心にボールを回し、広島のプレッシングを回避していきます。浦和が4バックなので広島は配置をかみ合わせることができる……と言いたいところでしたが、この試合の広島は浦和のSBに対してIHが出ていって5-2-3のようにして戦うという方針になっていました。
CBを前に出さなくても良くなるのでこれ自体は良いのですが、これによって中央からのビルドアップを阻害できなくなる場面が多く見受けられました。

広島はIHのうち一人がサイドに出ていくため瞬間的に中盤が2人になります。ここに浦和の2DHと小泉が入ってくるため中盤が3vs2の数的不利に。そこで平野や伊藤を捕まえきれず、中央からの前進を許す場面が目立ちました。
幸いここから直接加速されてゴールに迫られるという場面は少なかったものの、前線からのプレッシャーとしてあまりうまくいってはなかったと思います。

こうした状況を受け、広島はVARがチェックを行った後くらいからベンカリファがアンカー役を監視して5-3-1-1のようになっている場面が見受けられました。
これによってアンカーを経由した前進を許す場面は減ったように見えましたが、それでも浦和はアンカー役を入れ替えてマークを外したり角度を変えながらアンカーのボールを入れたりと工夫を凝らしており、ボール保持時の振る舞いが浸透していることをうかがわせました。

また、浦和はある程度前進した後は広島のIHがスライドしきれないスペースを使ってシュートまで持ち込む場面を何度か作りました(10分のシャルクのシュートなど)。広島としては3-1-4-2はある程度前線でボールを奪えることが前提になっており、それができないことで自陣での守備でボロが出たという感じでしょうか。とはいえこの試合のIHのタスク量からすると自陣深い位置でスライドしろというのも酷な話で、前線で奪えないことの方が問題かなーと思います。

10分 シャルクのシュートシーン

FWMF間を取れる広島のボール前進

一方、広島のボール前進も上々の出来だったと言えるでしょう。鹿島戦と同様に相手のSBが出てきたときにその裏で起点を作るという動きもあったのですが、それ以上に中央を使ったボール前進が効いていました。

浦和は2トップやSHは割と前にプレッシャーをかけに来ますが、2DHはそこまで前に出てきませんでした。広島のIHが前の方に立っていて引き付けていたのもありますし、スペースを守る意識が高かったというのもあるでしょう。
広島としては浦和のこの特徴を利用してサイドからアンカーの野津田を経由して前進できていました。

もちろん浦和のプレッシャーに追い込まれることもありましたが、大迫を使って回避したり2トップへの長いボールを使ったりしていました。
大迫を組み込んだビルドアップが着々と形になっているのは素晴らしいですね。

前半から見どころの多い試合でしたが、両チームの強度が高かったこと以外にお互いのビルドアップのクオリティが高く綺麗に前進できていたことが大きかったと思います。

欧州の風を感じる広島の修正

さて、後半から広島はベンカリファに替えて松本を投入し、3-4-2-1に並びを変更します。
前半から満田森島をサイドにスライドさせることが多く、さらに引いた時中盤が空いてしまうという問題があったので、それならと中盤を分厚くした格好ですね。1トップになることでFWをサイドに流しての前進はしにくくなりますが、この試合ではそこまで見られなかったので大丈夫だろうという判断でしょう。

これによって広島は5-2-3みたいな感じで守る状況が増えます。

中央へのパスコースを遮断し、サイドに誘導して守っていました。これまでの広島は敵陣で人への意識がかなり強い守り方でしたが、これはかなりゾーン志向の強い守り方に感じました。プレミアやW杯欧州予選等で見覚えのある守り方で、ここ数年の広島からはちょっと想像しづらい変化でした。スキッベ監督はじめスタッフ陣が世界のトレンドを取り入れていることが現れているように思います。

後半の広島はカウンターによる被決定機こそ増えていたものの、浦和のボール保持からクリーンな前進を許す場面は減っていたように思います。

また、松本の投入はボール保持時にも効いていたと思います。松本はサイドにボールが出たタイミングで中央のスペースに顔を出すのが抜群に上手く、この試合の浦和が中央を空けやすいこともあって彼の特徴は存分に出ていました(69分松本のミドルシュート、79分柏の決定機など)。
磐田戦で多く見せたハーフスペースへの抜け出しや鹿島戦でアンカーに入った時の守備など、彼の持ち味が発揮される場面がどんどん増えているのは喜ばしいですね。彼が中盤で輝けるようになれば塩谷をCBで起用できるようになるなどバリエーションが増えるので、今後も期待したいと思います。

今後に向けて

0-0で終わったゲームですが、戦術的にはとても見どころの多い試合でした。改善の余地があるとすれば両チームともフィニッシュの部分でしょうか。
浦和は綺麗な前進ができてもミドルシュートで終わる場面が多く、相手を崩していくコンビネーションというかパターンに乏しいのが課題でしょうか。アタッカー陣の質はJでも随一なだけに単独でもチャンスは作り出せますが、より確率の高い決定機を再現良く作り出すところが課題といった印象です。
一方の広島はサントスの振る舞いが気になるところ。中央にいてたくさんシュートを打ってくれる分には全然良いのですが、1トップの時にサイドに流れてくるのはカウンターの起点になりかねないので微妙だと思います。彼の動きを制御できれば得点も増えるんじゃないかなーと思っているのですが……彼の自由さも含めて、揺らぎというか不確実性に期待して起用されているところもあるかもしれませんね。爆発に期待したいところです。

それではまた次回。