#15 【2022J1第16節 サンフレッチェ広島×名古屋グランパス】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は名古屋戦です。

広島はガンバ戦がコロナの影響でなくなっており、名古屋は中2日でのゲームとお互いに厳しい台所事情の一戦となりました。そんな試合のスタメンは以下。

広島は森島が不在となり替わって柴崎が先発。名古屋は前節退場となったチアゴの替わりに藤井陽也、宮原に替わりレオシルバが先発。お互いに前節からの入れ替えは最小限のスタートとなりました。

2トップで深さを作る広島

試合は序盤から広島がボールを保持しながら進める展開になりました。
名古屋は高い位置からは広島の最終ラインにプレッシャーをかけて来ず、ミドルゾーンに入ってきたところで1トップ2シャドーが3バックにプレッシャーをかける方針。これにより広島はある程度までは容易に前進できていました。

ただし中央でボールを受けようとするアンカーやIHは名古屋の中盤にしっかりとマークされており、なかなか侵入できない状況でした。

そこで広島は2トップのサントスとベンカリファをサイドに流し、左右のCBから長いボールで起点を作る形を多用していました。ロジカルに陣形を崩して前進、とはいきませんでしたが、今の広島の強みを存分に活かした前進方法だったと思います。

また、高い位置で起点を作ってしまえばそこからボールを失ってもトランジションで勝てるのが広島の強み。2トップがボールを失えば中盤の3人を中心に即時奪回で敵陣に押し込めます。そういう意味ではこの試合の広島はストーミング感があったと言えるかもしれません。敵陣でのボール保持ではWBやCBの裏を使って崩しに行くのはいつも通りでしたけれども。

名古屋はサイドに追い込んでから中央に誘導して奪う予定だったのかもしれませんが、広島がなかなか中央から侵入を試みなかったため自陣に釘付けにされる展開になってしまいました。また、ボールを奪えても前線への押上げが遅く、カウンターの威力があまり出せませんでした。

中央のスペースから進む名古屋

一方の名古屋はボールを持つとレオシルバをアンカーにして3-1-4-2のような形に。広島は名古屋の3バックに対して2トップ+IHでプレッシャーをかけに行きます。

しかし、名古屋はアンカーのレオシルバがIHの裏のスペースでフリーになれるのを活かして広島のプレッシャーを回避してきましたね。稲垣と仙頭の2人が広島のアンカーとIHを引き付けておき、WBを経由してレオシルバへとつなぐ形はこの日何度も見られました。
広島がそれを嫌ってIHを中盤に留まらせれば、3バック+アンカーの4人 vs 広島の2トップとなるため、パスコースを複数作って容易に前進できます。

この日の広島は試合全体を通して名古屋のアンカー経由でのビルドアップを阻害できていませんでした。ここ数試合採用している3-1-4-2は相手を敵陣に押し込んでいる時の破壊力は高いですが、相手にボールを持たれる展開になった時どのようにビルドアップを阻害するかについては課題が多いという印象です。

ただ、名古屋は名古屋で広島のプレスを回避した後の手立てに乏しい部分がありました。カウンターの時と同様にボールを受ける選手のアクションに乏しく、出しどころを探している間に広島の選手が帰陣してきてスペースを埋められてしまう展開に。ここでも広島のトランジションの速さが生きていました。

名古屋としては広島のプレスを外したら素早く前線にボールを送る、35分辺りに見られた形をもっと増やしたかったところですが、この辺りはコンディションの影響もあったのかもしれませんね。

打ち手に乏しかった後半

後半に入って名古屋は石田を投入。スピードを生かしたカウンターに光明を見出そうとしますが、広島が押す展開は変わらずでした。トランジションから得たFKを野津田が叩き込んで先制すると、走れる永井を投入して名古屋のビルドアップを制限しに行きます。
しかしサントスがいなくなったからか前線で起点を作りづらくなり、アディショナルタイムには押し込まれましたが何とか守り切って勝利となりました。
永井は献身的にプレッシングに走れる選手ですが、単独でボールを納めるという部分についてはサントスやベンカリファと比べるとどうしても厳しい部分があります。サントスは前線での守備にやや不安がありますが、ボールが収まるというメリットも大きく、彼を起用する方がトータルでプラスが大きいと判断して先発起用されているのではないかと感じる展開でした。

一方の名古屋は後半はサイドから逆サイド大外へのクロスを増やしていることが見て取れました。確かに広島の3CBはクロス対応がかなり強いのでその外側、特に柏のところを狙うのは理に適っています。しかし前線にいるのが石田仙頭マテウスではターゲットマンとしてはやや苦しいところ。クロスを増やすのとセットで酒井が早めに出てきていたら面白かったかなと感じました。

それではまた次回。