#27 【2022J1第27節 セレッソ大阪×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素はお世話になっております。今節はセレッソ戦。リーグ4連勝×3連勝の好調同士の対戦です。セレッソは6月の広島戦以来負けなしでリベンジチャンス、広島は勝てば8月全勝ということで、お互いに夏を最高の形で締めくくりたいところです。スタメンは以下。

セレッソは相変わらずの442。FWが豊富な印象がありますが上門と加藤のセットとなりました。広島は3-4-2-1に回帰。2試合連続ゴール中と好調の松本が先発で起用されています。

落ち着かないし逃げられない

キックオフ直後から目立ったのはセレッソの激しいプレス。広島の3バックとアンカーにGKを加えたビルドアップ隊に対し、2トップと2SHが最前線まで出てきて自由を与えません。

SHが広島の左右のCBまで出て行って時間を奪い、WBに対してはSBが縦にスライドして出ていきます。後方ではシャドーやCFとCBが同数になりますが、そこはヨニッチや西尾の対人能力で潰すという方針です。見覚えのある方針と思われるでしょうが、広島が普段やってることと非常によく似ています。リスクはありますが、前線で奪えれば大きなチャンスにつながるやり方ですね。

広島はここまで強いプレッシャーをかけられることは想定していなかったのか、無理に繋ぎに行ってボールを失う場面が多く見られました。また、前線への逃げ道としてナッシムへのロングボールを使っていましたが孤立していて跳ね返されることが多く、効果的な前進手段とはなっていませんでした。
今シーズンの広島はビルドアップについて、最終ラインからGKを含めて丁寧につなぐという意識は持ち続けていると感じます。しかし、立ち位置を整備したりCBが持ち上がったりといったモダンなビルドアップを実装しているわけではなく、どちらかというと人を降ろして物量作戦で保持を落ち着かせているという色が強いですね。そこに人数をかけたプレッシングを行うことで破壊する、というのはなるほどなーと唸りました。

広島のプレスを見切るセレッソ

一方でセレッソがボールを持った際には広島がかなり高い位置までプレッシャーをかけに行くのですが、セレッソは広島のプレスに対してボール前進の回答をしっかり用意してきました。

広島は1トップ2シャドーのプレスに呼応してDHがセレッソのDHを捕まえに前に出てくるのですが、その裏に2トップが降りてきてボールを受けるシーンが多く見られました。広島の左右のCBは結構前まで潰しに出てくるのですが中央の荒木はスペースを気にしてか捕まえに出ていかないシーンも多く、そこでフリーになった加藤、上門がボールを受けて逆サイドに展開する場面が多く見られました。

また、左右のCBがSHを潰しに出てくればその裏にFWを走らせる形も持っています。

出てくるCBの裏を突くのは対広島としては定石と言ってもいいやり方ですが、これを降りてきたトップに刺すのと使い分けられるのが素晴らしかったですね。松田、山中という両SBの出し手としてのクオリティの高さが光る前進だったと思います。

また、広島の選手がマークを離しているとキムジンヒョンから直接パスをつながれることもあり、広島はプレスに行けば外され、行かないと繋がれてしまい苦しい状況でした。飲水タイムまで広島はシュートなしと苦しい状況でしたが、なんとかしのいでいました。

展開を味方につけた広島

飲水タイム後から広島は脱出にシャドーを使う場面が増えていきます。ナッシムにロングボール蹴る時に近くに陣取ってこぼれ球を拾ったり、ライン間で縦パスを受ける位置取りを増やしていきます。飲水タイム後すぐにこうした工夫が得点につながったのは良かったですね。
荒木の縦パスを受けた満田が起点となり、サイドに展開してセレッソのバックラインを揺さぶって大外の茶島でフィニッシュ。442攻略のお手本みたいなゴールでした。茶島はヘディング強いとは言えませんが、SBの外側から入ってくることでマーカーがアタッカーの為田になり、うまく振り切ることができました。ファーサイドで待って山中を釣った森島の位置取りも光るナイスゴールでした。

前半押されながらもリードして折り返すことに成功した広島。後半はプレス脱出と前進阻害について明確な対策を用意してセレッソに対抗します。

プレス脱出についてはSBが前に出てきたスペースにシャドーを流すという動きが多く見られるようになります。SBが前に出ていってCBはナッシムと1vs1という状況なのでシャドーは比較的フリーで抜け出しやすくなります。DFが前に出てくる裏を突くというのは前半のセレッソが広島に対してやってきたことの意趣返し。広島式プレスには対広島の脱出法で対抗ということでしょうか。自分たちがやられて嫌なことをそのままぶつけて脱出することができていました。

また、セレッソのビルドアップ対策はシンプル。リードしているという状況を活かして引き気味に構え、候補のスペースを消すことでセレッソが前進に使っていたスペースを消していきます。

後半の広島は1トップ2シャドーがCBへプレッシャーをかけずにDHを監視。広島のDHと合わせて中央で数的優位を作り、中央からの前進を許しません。CBは放置しておいてSBにボールが入ったらシャドーが出ていく形をとることでセレッソのSHはWBが監視する形となり、広島のCBは前に出ていく必要がなくなります。これによってセレッソのもうひとつの前進ルートであるCBの裏も消すことに成功しました。
リードしている展開を活かして引くことで、「前に出たDHの裏」「SHを潰しに出てきた左右のCBの裏」というセレッソの2つの前進ルートを消すことができました。逆にセレッソは前進ルートを広島がプレスに出てくること前提に設計していた影響か後半はなかなかゴールに迫ることができず。途中出場のパトリッキのスピードや清武の技術でも打開できず、山中や奥埜、清武からのセットプレーも対セットプレーで抜群の強さを誇る広島に跳ね返され厳しい展開となります。

広島はセレッソを自陣に引き込んでから効果的なカウンターを連発することに成功。終盤に松本とピエロスが追加点を挙げ、終わってみれば3-0のスコアで勝利を収めました。

まとめ・次節に向けて

セレッソの準備の綿密さと広島の対応力の高さが印象的な試合となりました。シュート数でもDAZN集計では前半がセレッソ9広島3に対して後半はセレッソ4広島10と完全に形勢が入れ替わっていることが分かります。

セレッソとしては普段のアグレッシブな広島への対策はばっちりだったものの、後半に試合を落ち着かされてからの応手が効かなかったのが痛かったですね。そして何よりあの前半でリードできなかったことでしょうか。勝ち筋は十分にあったのにそれを活かせない悔しいゲームとなりました。

一方の広島は見事な修正力で対応し勝利したものの、前半の出来は要反省。特にこの試合の前半を見てハイプレスで広島のビルドアップを破壊しに来るチームは増えるんじゃないでしょうか。次節対戦相手の清水は前回対戦時にこの試合のセレッソと似た感じのプレス回避をやってきており、プレッシングについてもセレッソから学んでくる可能性は十分にあると思います。
この試合で前半リードして折り返せたのは相当運が良かったと思うので、次節以降はしっかり対プレッシングのプランを用意しておきたいところ。立ち位置の調整やCBの持ち上がりで意地でも剥がすのか、長いボールの蹴り先を決めておくのか、試合開始から何らかの答えを見せてくれるといいなと思っています。

それではまた次回。