#1【2022J1第1節 サンフレッチェ広島×サガン鳥栖】

はしがき

毎度お世話になっております。2022シーズン開幕しましたね。
サンフレッチェ広島はミヒャエル・スキッベ新監督を迎え、新体制でスタートとなりました。よりアグレッシブなサッカーを目指すということで、そのチャレンジの行方を見守っていけたらなーと思います。
今シーズンこそ目指すは全試合更新ということで……一つよろしくお願いします。

さて、開幕戦の相手は鳥栖。金監督退任、さらに選手が20人近く入れ替わるという激動のオフを過ごし、どのような出方をしてくるか読めない相手です。

昨シーズンの主力がほぼ全員残っている広島はキャンプで前線から奪いに行く意識を強めたと聞きますが、果たして完成度はどれほどのものか。ということでスタメンは以下。

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お互いに3-4-2-1のミラー。広島は中盤以降の安定感が目立つ一方で前線の3人は大卒ルーキーの仙波を筆頭に若く、機動力重視感のあるチョイス。
鳥栖は新加入5人という、編成からすれば当然ながらフレッシュな面々となりました。

 

列落ちの意味は

2月中旬のEスタでの開催ということで、当日は雪模様。ピッチコンディションが悪い中、序盤は長いボールのの蹴り合いに終始します。
最終ラインの強度を持ち、即時奪回の意識付けを行ってきた広島がやや優勢かなーくらいでしたが、お互いがピッチコンディションに慣れた20分過ぎから状況の違いが見え始めました。

広島は青山を最終ラインに落としてビルドアップを図りますが、CBの距離が近く鳥栖のプレッシング隊に簡単に捕まってしまいます。ボールを受けに来ようとWBが降りてくる動きもあったのですが、それがかえって鳥栖のプレスの網を狭めることになってしまい、広島の脱出ルートは狭いスペースで受けるシャドーへの縦パスかちびっこ3人へのロングボールという成算の薄いものとなっていました。

一方の鳥栖ボランチの福田を最終ラインに落とすのは共通していましたが、それだけではなかったのがお見事。

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福田が降りて最終ラインが4枚になった際には両サイドのCBがサイドまで大きく開いて幅を確保。WBとシャドーは高い位置を取ることでビルドアップ隊にスペースを与えつつ広島のWBとDHをピン止めし、プレスに追撃できないようにしていました。

これによって広島の1トップ2シャドー対鳥栖の3CB+2DHという構図が完成。広島の1トップ2シャドーはプレスのスイッチをどこで入れればいいのか分からないまま鳥栖が安全にボールを運べる状況となります。
特に仙波は近くの福田について行って良いか迷い続けている感じで、デビュー戦にして難しい状況に置かれていました。右サイドの浅野は藤井とタイミングを合わせて出ていける場面もありましたが、ジエゴに剥がされて裏を取られる場面もありうまくいっていたとは言いづらいところ。もしかすると降りるDHと逆サイドは比較的プレスを浴びやすいことまで考えてジエゴみたいな尖った選手を採用しているのかもしれませんね……

さらに30分くらいからは鳥栖のGK朴一圭が福田の代わりにCB化するようになってさらにボール前進しやすくなり、鳥栖が押し込んで攻め続ける展開に。敵陣に侵入してからの鳥栖はあんまり選手ごとの役割を固定せず、サイドの選手がそれぞれにポジションを交換しながらアタッキングサードへの侵入を試みていました。
特に大外の選手がボールを持った際には内側の選手が必ず裏に抜ける動きをしていたのが印象的。広島のDH、CBについていくかどうかの2択を迫りつつ大外の選手に選択肢を与える動きですね。

得点こそ奪えなかったものの、ボールを握って相手を押し込むという鳥栖の狙いはほぼ達せられていたと言って良いでしょう。その理由はDHの列落ちを単なる数的優位の確保だけでなく、ボールを前進させるためのルートとスペース確保のために使えていたこと。広島は失点こそしなかったもののやりたいことをできないまま試合を折り返すことになります。

ハーフタイムの迅速な修正

前半はやりたいことがほとんど出せていない!ということで広島は修正を施します。

1トップの鮎川は最後方のファンソッコと朴を追いかけながら片方のサイドに追い込み、サイドのCBに対してはシャドーが待ち構えます。さらに前半は自陣に押し込められていた塩谷と青山を鳥栖のDHまで出すことにします。これによって鳥栖のビルドアップ隊の出しどころをふさいできました。

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後方は数的同数に近い状態になりますが、対人に強いCBがいるのでそこで勝負ということでしょう。この試合に限らず、広島は最終的に同数をCBの強さで解決できるという強みがあります。プレッシングを基本方針にしているのもそこが理由なのではないでしょうか。

これで鳥栖のビルドアップ隊から時間とスペースを奪うことに成功。裏への長いボールでWBに裏を取られるリスクはあるものの、中盤でボールを奪える機会は増えました。70分頃に塩谷ががら空きのゴールにシュートを打った場面などはまさに狙い通りだったのではないでしょうか。外れたけど。

終盤とこれからの課題

こうしてボールを持てる時間が増えた広島は柴崎を投入してボールを落ち着けたり、サントスを投入してゴール前の迫力を増していきます。サントスは保持時の裏抜け、非保持時の二度追いと必要なタスクをしっかりこなしてくれていたのが好印象。チーム単位でタスクをしっかり落とし込めていることが感じられて良かったです。
鳥栖くらい整備されたビルドアップをしてくるチームがそんなにあるとは思えませんが、もう何試合か見てみると現在の立ち位置が分かるんじゃないでしょうか。

ただ、ボールを持った時の設計には難ありという印象。柴崎と柏を集めて打開するような既視感のある手法に頼っていました。この辺はキャンプでもそんなに仕込んでないと思うので、今後どうしていくかですね。現状は柴崎や森島みたいなボールを落ち着けられる選手に任せるか、裏抜け一発くらいしかないかなあと思います。終始押し込まれて見せ場の少なかった柏ですが、押し込んだ時に力を発揮できるため残されていたのかもしれません。

 

一方の鳥栖もボール前進が難しくなった状況を打開するには至らず。チャンスは終盤に広島の中盤が出てきて裏を取ったシーンくらいだったでしょうか。噛み合わせでずらせなくなった時に質で殴ることが難しく、そこを突きつけられた格好です。この試合では飯野の突破くらいだったでしょうか。垣田も頑張っていましたが、広島のCB陣は背負って時間を作るにはやや厳しい相手だったように思います。
多く選手を引き抜かれましたが、一番大きいのは酒井や山下といったCFがいなくなったことかもしれません。

とはいえ前半に見せたボール前進の仕組みはかなり整備されており、希望を感じさせました。メンツが大きく変わったことでスタイルが失われる!という心配はあまりしなくてもよさそうですね。

今後が楽しみな両チームの対戦でした。それではまた次回。