#10 【2020J1第14節 コンサドーレ札幌×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今節は札幌戦。7試合勝ちなしvs4試合勝ちなしという、厳しい状況どうしの戦いです。互いに浮上へのきっかけを掴みたい一戦、スタメンは以下の通りです。

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お互いに3-4-2-1の並びとなりました。広島は川辺青山のDHコンビに戻し、ハイネルを右WBで起用しました。一方の札幌は攻撃のキーマンであるチャナティップが不在。ジェイがワントップ、駒井と懐かしのアンデルソン・ロペスがシャドーに入りました。

前後分断のリスク

さて、前半は札幌がボール保持率62%を記録し、ゲームを支配していましたね。札幌はいわゆるミシャ式を取り入れていましたが、その方法はかつて広島が行っていたそれとはやや違うように映りました。

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札幌はDHの宮澤を左サイドの底に降ろし、キック精度の高い福森を左サイドに張らせていました。また、もう一人のDHである荒野も最終ライン近くまで降りていって、3+1のような形のビルドアップを行っていました。これに対して広島はペレイラヴィエイラの2人が前に残るような形になり、それに加えて札幌のDHに青山や川辺がついて行くことで対応を図っていました。

しかし札幌最終ラインに菅野と荒野を加えたビルドアップ隊のパスコースを消すことはできておらず、ジェイに縦パスを入れられる場面が目立ちました。ジェイに縦パスが入った場合は荒木が対応に出るのですが、その時に佐々木と野上はカバーを意識して札幌のシャドーに対して思い切って出ていくことができません。結果的にシャドーのロペスや駒井が広島のDHがいなくなった中盤でフリーになり、裏に抜けるWBにスルーパスを供給する場面が多くありました。

こうなってしまうと広島はピンチを作られるばかりでなく、ボールを奪えても位置が低く、前に残っているツインタワーとの距離が遠いため陣地回復をアバウトなロングボールに頼るしかなくなってしまいます。そうして出した苦し紛れのロングボールは制度を欠きやすく、札幌に回収されてしまうという負のスパイラルに陥っているように見えました。

撤退による圧縮

このままではダメだということで、広島は飲水タイムを過ぎたあたりからDHを前に出してのプレスをやめ、さらにドウグラスヴィエイラも下げて5-4-1で撤退するようになります。

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ビルドアップ隊へのプレスを放棄することでDHを戻せるようになり、ジェイにボールが入ってもシャドーをCBとDHで囲んでボールを奪えるようになります。この形になってからはシャドーに直接パスが入ることもありましたが、その際はきちんと野上、佐々木が出ていって潰すという5バックらしい守り方ができていたように思います。

後ろに重い形なのでカウンターは繰り出しづらいですが、カウンターができていなかったのは元からなので変化なし。ピンチを作られていた形から脱してゲームを少しずつ落ち着かせることができました。

前後分断はお互いさま

さて、後半の立ち上がりには広島がボールを保持する姿勢を見せるのですが、この際札幌にも前半での広島と同じようなことが起きていました。

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広島のDHがボールを持つと荒野、宮澤の両DHが奪いに出てくるため、サイドのCBやWBからシャドーにボールを入れることができます。特に右サイドでこの傾向があり、これはWBにサイドの高い位置でボールを持てる茶島が入ったのも大きかったのではないでしょうか。広島の先制点も茶島からヴィエイラへのパスが起点となっていました。

正直広島が効果的に攻撃できていたのは後半の立ち上がりの10分くらいだけだったのですが、そこで先制できたのは大きかったと思います。

札幌としては前半自分たちが利用していた弱点を逆に突かれた形となりました。攻勢に転じようにも広島はしっかり引いてウィークポイントを消している状況。4枚替えでフレッシュな選手を入れて打開を図りますが、攻撃の構造そのものに大きな変化はなく、広島のブロックを破ることはできませんでした。逆にカウンターから追加点を奪った広島が2-0で勝利。久しぶりの勝ち点3を手にしました。

試合を終えて

広島は前半うまくいかなかったものの、いったん引いて立て直し、後半の開始とともに攻め込んで先制点を奪うという試合運びは見事でした。ただ守備の危うさは相変わらずで、前半に失点していれば全く違う試合となっていたことでしょう。まだまだ油断は禁物です。

一方の札幌はこれで8試合勝ちなし。決定機の数では広島を上回っていたように思いますが、前節のPKといい決まらないときはとことん決まらないものですね。ポテンシャルの高い選手が多いだけに勢いに乗れば強いはず。今の悪い流れをどう打開するかがカギではないでしょうか。

それではまた次回。