#17 【J1第18節 アビスパ福岡×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもお世話になっております。今回は福岡戦です。夏の連戦でお互いに中2日ということで、選手たちのコンディションが気になるところです。スタメンは以下。

広島は天皇杯からサントス→松本の1人のみの変更。勝っているチームは変えないという判断でしょうか。一方の福岡はなじみの4-4-2でなくミラーとなる3-4-2-1。天皇杯からメンバーも大幅に変更して万全の態勢で臨みます。

サントスがいないときの崩し方

久しぶりに3-4-2-1を採用した広島はサントスが不在となります。福岡は引いてくることが予想されるのでサントスによる裏抜けが効きづらいとの判断なのか天皇杯で2ゴールを挙げた松本を起用したかったのかは分かりませんが、結果的に広島はショートパスによる前進が増えることになります。

ショートパスの前進でビルドアップの出口となったのは2シャドー、特に森島のところでした。広島は野津田が中盤でフリーダムに動いて福岡の2DHを引き付けて中盤にスペースを作り、2シャドーがそこに入ってきます。福岡は広島と配置をかみ合わせては来ましたが前から来る姿勢はあまりなく、特に左右のCBはポジションをキープすることが多かったためシャドーはフリーになれることが度々ありましたね。

また、ショートパスで前進した後も福岡の堅い守備ブロックを崩す必要があるわけで、そこでは3-4-2-1ならではの工夫が見られました。

DH出張の是非

10分の東のシュートシーンなどが典型ですが、松本がサイドに流れたのをトリガーに東が中央に入ったり森島がサイドに流れたりと、WB・DH・シャドーの3人が役割を交換するような動きで相手のマークを外して崩しにかかる動きが見られました。
こうした列とレーンの移動を同時に伴う動きをすると守備側は近くにいる選手について行くか受け渡すかの判断を迷いやすく、フリーな選手を作りやすくなりますね。東はDHで先発していたこともあるくらいなので中央に入っても問題なくプレーできるわけで、ここは中盤もできる東をWBで起用している大きな利点だと思います。逆にサイドでの突破を武器にしている藤井がいる右サイドではこういうポジション交換はほとんど見られませんでした。

一方、この崩しの弱点としては中央から人がいなくなってしまうタイミングがあることです。
ビルドアップ時に野津田が自由に動き回るのに加えて松本がコンビネーションの起点としてサイドまで出張していくと、ボールを奪われたときに中央で相手のカウンターに備える選手がいなくなってしまいます。より計画的にポジションチェンジを行うならこのトランジション時の備えも含めて設計する必要がありますが、広島はまだそこまでは実践できていないようで、中央にできたスペースを突かれて一気に前線のフアンマまで運ばれてしまうケースが何度か見られましたね。

前半の広島はこうした崩しによってだけではなく非保持で相手をサイドに追い込んだ際にもDHが過剰にサイドに寄ってしまうことがあり、それでボールを奪えることもありましたが失点シーンのように外されて一気にクロスまで行かれてしまうこともありました。リスクを冒してボールを奪いに行くか、まずはスペースを埋めて安全に守るかの選択で、この辺りのバランスは難しいところですね。

福岡のプレスによる広島の意識変化

1-1で折り返した後半、広島はベンカリファに替えてドウグラスヴィエイラを投入。福岡は交替こそありませんでしたが、戦い方に変化を施してきます。

福岡は1トップ2シャドーが広島のビルドアップ隊に高い位置からプレッシャーをかけるようになり、それに伴ってCBの奈良と宮が広島のシャドーまで潰しに出てくるようになります。広島は序盤こそこの激しいプレスに苦しめられますが、次第にシャドーや1トップのヴィエイラが前に出てきたCBの裏を取る形が増え、長いボールでの前進が増えていきました。勝ち越しのシーンなどはその典型で、森島が高い位置まで出てきた奈良をギリギリまで引き付けてパスを出すことで背後にスペースを作り出すことに成功しました。
福岡のプレスに対して受け身になって全体が下がっていくのではなく、しっかりとその背後を突くという対応にスムーズに移行できたのは素晴らしかったです。磐田戦など、過去の試合での反省が生きていることを感じられますね。

また、後半は前進した後に松本が高い位置まで飛び出していくシーンが減っているのも見て取れました。長いボールで直接前進できるので松本が飛び出さなくてもチャンスを作れるというのもあるかもしれませんが、前半にカウンターを何度か浴びたことを受けて中央に留まるように役割を変えたという側面もあると思います。後半の広島は危険なカウンターを受ける場面を確実に減らしていました。

じわじわと敵陣でのプレー機会を増やした広島はヴィエイラの裏抜けとPKで2点を奪って勝利。福岡の出方をつぶさに観察し、即座に対応する姿勢が光りました。C大阪戦、横浜FC戦、福岡戦とほぼ同じメンバーで戦っているだけに、好調を維持できるかは選手たちのコンディション次第でしょうか。試合の翌日を休みにするなどマネジメントには気を使っている様子は見えますが、どこまで強度を維持できるでしょうか。

一方の福岡はリーグ戦では連続となる3失点。得点が少ないチームなだけにまずは持ち前の堅守を立て直したいところですが、この試合のように複数の並びを使い分けていくのか、原点の4-4-2を突き詰めるのかの選択が問われそうですね。

それではまた次回。

#16 【J1第17節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

平素は大変お世話になっております。今節はセレッソ大阪戦。3週間ぶりのリーグ戦再開にして、J1折り返しの一戦です。まあ広島は1試合少ないのですが。スタメンは以下。

広島はいつもの3-1-4-2で、左WBに東が起用されています。一方のセレッソは4-2-3-1。左SBに本職CBの西尾が起用されているのが面白いですね。ベンチに山中も舩木もいないのでやむなしという事情なのかもしれませんが。

絞ってくるSHへの対応

さて、この試合ではセレッソはGKのキムジンヒョンを積極的に組み込んだビルドアップを披露してきました。CBの鳥海、ヨニッチと合わせて3バックのような形を形成し、SBを高い位置に押し上げてきました。
ただ、広島はこれに対してはしっかり準備をしてきていたようで、2トップのうちの1人がCBへのパスコースを切りながらGKに寄せていき、SBはWBやIHが監視することでパスコースを塞いでいました。

そこで問題になるのがセレッソのSHのポジショニングです。

セレッソのSHはサイドの高い位置からハーフスペースの低い位置に降りてきます。広島はWBがSBの監視のために出て行っており、IHとアンカーはセレッソの中盤を監視しているのでこのSHを捕まえるのは難しいように見えました。唯一捕まえられそうなCBの塩谷、佐々木はSHを捕まえるか迷っているように見え、そこをついてセレッソが前進していくシーンは序盤何度か見られました。

しかし、20分頃から広島はCBの塩谷が為田を捕まえに出て行くようになります。

これでショートパスによるビルドアップはかなり制限できるようになったという印象でした。広島の2トップはこの日ヨニッチへのコースを切る場面が目立ったので、セレッソの攻撃を誘導して塩谷を前に出して奪うという狙いが共有されたのかなーと感じました。

もちろんこれで塩谷の背後のスペースは空いてしまうわけで、長いボールでそこを使われると33分のブルーノメンデスの決定機のようなシーンもできてしまいます。しかし、ほとんどのロングボールは広島のCB陣の強さで対処できる範疇であり、総合的に見ればショートパスによるビルドアップを阻害できるメリットの方が勝っていたように思います。

大外から進む広島

序盤の広島はボール保持でも苦戦を強いられました。3バックに対して2トップ+SHによるプレッシャーをかけられることで中央へのパスコースが封鎖され、残ったWBへのパスにはSBが素早くアプローチに出てきます。

中央へのパスコースは抜かりなくスライドしてくるDHによって塞がれており、SBの素早いアプローチと合わせて中央へのパスコースはほとんどありませんでした。
そこで広島は出てきたSBの裏を突いて前進を試みます。

3-1-4-2にしてから度々行っていた2トップのサイド流れだけではなく、この試合ではIHがWBの前に陣取ることで前進ルートを確保する動きも見られ、大外からの前進はかなり強く意識されていたように思います。セレッソのSBは広島のWBへのアプローチが早いとはいえ、大外のパスコースを完全に消すことは難しく、広島は何度もサイドの奥深くに侵入できていました。

ここからゴールに直接迫っていくのはなかなか難しいですが、サイドだろうと敵陣深くまで前進できれば失ってもトランジションでの強みを生かして高い位置で回収できるので、これは広島の狙いとしては良かったのではないかなと感じました。

序盤は保持非保持ともにセレッソ優勢に見えましたが、時間が経つにつれて回答を見つけていった広島優勢に傾いて行ったというのが前半の所感になるでしょう。

3センターの難しさ

スコアレスで折り返したこのゲーム、後半に入って先にスコアを動かしたのはセレッソでした。54分に為田のクロスからブルーノメンデスが合わせて先制。後半開始直後にも同じようなクロスから毎熊が決定機を迎えており、ここは今の3-1-4-2で守る難しさが出たかなと感じます。

2つのシーンはどちらも広島がボールを奪ってIHが前に出ていこうかというタイミングで奪い返された場面でした。広島のIHは攻撃に出ていくことを想定して前に出て行っているので戻りが遅れ、カットインした為田にプレッシャーをかける選手がいなくなってしまいました。

ここでIHがいないのは広島のポジトラの速さの証左だと思いますし、そもそもカウンター仕掛けようとしたところを奪い返されたんだからどんな並びでもきついやろという話ではあるのですが、中盤に3人しかいないことでスペースが空きやすいのはあるんじゃないかなーと感じます。

撤退を選んだセレッソだが……

先制点を手にしたセレッソですが、前半から広島に押し込まれる展開は継続しており、徐々に自陣から脱出できなくなっていきます。

SBの裏を取られ続けるのを避けるためか70分頃には為田を最終ラインに、清武を左SHに下げる様子が見られはじめ、76分には為田に替えて進藤を投入し完全に5-4-1に切り替えます。

しかし5バックにしたことで広島はCBやWBが時間をもらえるようになり、セレッソを押し込む展開は継続。綺麗に崩すことは難しくなったものの、2トップへのシンプルなクロスでもトランジションで上回れることと合わせて十分な脅威になっていました。

そんな中77分に野津田のゴラッソが炸裂して同点に追いつくと、82分にはクロスのこぼれ球をつないでドウグラスヴィエイラがPKを獲得して見事逆転。

その後は再び4-4-2に変更して前に出てきたセレッソを振り切り、見事逆転勝利を収めました。

セレッソとしては5バックに変更しても押し込まれる問題を解決できなかったので状況を打開できなかったのが誤算でしょうか。逆転は少し不運なところもありましたが5-4-1で逃げ切るのは難しかったんじゃないかなーという感想でした。

一方の広島はお見事な逆転勝利。後半の畳みかけも良かったですが、個人的にはハーフタイムを待たず前半の間に保持非保持ともに解決策を探し当てていったのが好印象でした。ずっとハイパフォーマンスを維持してきた野津田とこれまで苦しんできたドウグラスに結果が出たというのも今後に弾みがつきそうですね。

それではまた次回。

#15 【2022J1第16節 サンフレッチェ広島×名古屋グランパス】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は名古屋戦です。

広島はガンバ戦がコロナの影響でなくなっており、名古屋は中2日でのゲームとお互いに厳しい台所事情の一戦となりました。そんな試合のスタメンは以下。

広島は森島が不在となり替わって柴崎が先発。名古屋は前節退場となったチアゴの替わりに藤井陽也、宮原に替わりレオシルバが先発。お互いに前節からの入れ替えは最小限のスタートとなりました。

2トップで深さを作る広島

試合は序盤から広島がボールを保持しながら進める展開になりました。
名古屋は高い位置からは広島の最終ラインにプレッシャーをかけて来ず、ミドルゾーンに入ってきたところで1トップ2シャドーが3バックにプレッシャーをかける方針。これにより広島はある程度までは容易に前進できていました。

ただし中央でボールを受けようとするアンカーやIHは名古屋の中盤にしっかりとマークされており、なかなか侵入できない状況でした。

そこで広島は2トップのサントスとベンカリファをサイドに流し、左右のCBから長いボールで起点を作る形を多用していました。ロジカルに陣形を崩して前進、とはいきませんでしたが、今の広島の強みを存分に活かした前進方法だったと思います。

また、高い位置で起点を作ってしまえばそこからボールを失ってもトランジションで勝てるのが広島の強み。2トップがボールを失えば中盤の3人を中心に即時奪回で敵陣に押し込めます。そういう意味ではこの試合の広島はストーミング感があったと言えるかもしれません。敵陣でのボール保持ではWBやCBの裏を使って崩しに行くのはいつも通りでしたけれども。

名古屋はサイドに追い込んでから中央に誘導して奪う予定だったのかもしれませんが、広島がなかなか中央から侵入を試みなかったため自陣に釘付けにされる展開になってしまいました。また、ボールを奪えても前線への押上げが遅く、カウンターの威力があまり出せませんでした。

中央のスペースから進む名古屋

一方の名古屋はボールを持つとレオシルバをアンカーにして3-1-4-2のような形に。広島は名古屋の3バックに対して2トップ+IHでプレッシャーをかけに行きます。

しかし、名古屋はアンカーのレオシルバがIHの裏のスペースでフリーになれるのを活かして広島のプレッシャーを回避してきましたね。稲垣と仙頭の2人が広島のアンカーとIHを引き付けておき、WBを経由してレオシルバへとつなぐ形はこの日何度も見られました。
広島がそれを嫌ってIHを中盤に留まらせれば、3バック+アンカーの4人 vs 広島の2トップとなるため、パスコースを複数作って容易に前進できます。

この日の広島は試合全体を通して名古屋のアンカー経由でのビルドアップを阻害できていませんでした。ここ数試合採用している3-1-4-2は相手を敵陣に押し込んでいる時の破壊力は高いですが、相手にボールを持たれる展開になった時どのようにビルドアップを阻害するかについては課題が多いという印象です。

ただ、名古屋は名古屋で広島のプレスを回避した後の手立てに乏しい部分がありました。カウンターの時と同様にボールを受ける選手のアクションに乏しく、出しどころを探している間に広島の選手が帰陣してきてスペースを埋められてしまう展開に。ここでも広島のトランジションの速さが生きていました。

名古屋としては広島のプレスを外したら素早く前線にボールを送る、35分辺りに見られた形をもっと増やしたかったところですが、この辺りはコンディションの影響もあったのかもしれませんね。

打ち手に乏しかった後半

後半に入って名古屋は石田を投入。スピードを生かしたカウンターに光明を見出そうとしますが、広島が押す展開は変わらずでした。トランジションから得たFKを野津田が叩き込んで先制すると、走れる永井を投入して名古屋のビルドアップを制限しに行きます。
しかしサントスがいなくなったからか前線で起点を作りづらくなり、アディショナルタイムには押し込まれましたが何とか守り切って勝利となりました。
永井は献身的にプレッシングに走れる選手ですが、単独でボールを納めるという部分についてはサントスやベンカリファと比べるとどうしても厳しい部分があります。サントスは前線での守備にやや不安がありますが、ボールが収まるというメリットも大きく、彼を起用する方がトータルでプラスが大きいと判断して先発起用されているのではないかと感じる展開でした。

一方の名古屋は後半はサイドから逆サイド大外へのクロスを増やしていることが見て取れました。確かに広島の3CBはクロス対応がかなり強いのでその外側、特に柏のところを狙うのは理に適っています。しかし前線にいるのが石田仙頭マテウスではターゲットマンとしてはやや苦しいところ。クロスを増やすのとセットで酒井が早めに出てきていたら面白かったかなと感じました。

それではまた次回。

#14 【2022J1第14節 サンフレッチェ広島×京都サンガ】

はしがき

平素よりお世話になっております。今節の相手は京都。2010シーズン以来のJ1ながらここまで勝ち点17で健闘中。リーグ戦はここ数試合勝ち星がないですが、プレー強度とウタカを中心とする攻撃でJ1でも十分にやれることを示しています。

DAZNでは紫ダービーと銘打たれていました。スタイルも似ているしダービーと言えなくもないかも。
そんな試合のスタメンは以下。

広島はここ数試合と同様に外国人2トップを起用した3-1-4-2を選択。京都も前節と同じ11人で4-1-2-3を組んできました。
強度を持ち味とする両チーム、ビルドアップ隊とプレッシング隊の配置がかみ合っているのが印象的です。

中盤の素早いサポート

さて、試合は開始早々に満田のゴールで広島が先制すると、その後も広島が京都のDFラインの背後を付いて決定機を多く作りました。
こうなった要因は広島のビルドアップが整備されていたことと、フィジカル能力に勝る2トップがいたことが原因だったと思います。

広島は3バックからWBを経由してアンカーにボールを渡す形が多く見られました。京都はWGがアンカーへのパスコースを消しながらプレスに出てきますが、アンカーを直接捕まえる選手はいなかったのでWBを経由すればボールを渡すことができます。ここ数試合の広島はサイドにボールが入った時のサポートが素早く、サイドに追い込まれてボールを失うということが少なくなっていますね。
この試合でも京都の思惑通りサイドに追い込まれたと思ったところを中央の野津田や森島に渡して回避する場面が多く見られました。京都も中盤にIHがいるのですが、広島のIHが気になって野津田のところまで出てこられなかったのかなと思います。

2トップの優位性

京都も手をこまねいていたわけではなく、24分ごろに曺監督が2DHに変更するよう指示を出しているのが見て取れます。

これによって広島のアンカーとIHに対してトップ下と2DHをかみ合わせられるようになります。盤面上は広島のビルドアップを阻害できそうに見えますが、前半の段階ではそこまで状況が好転したようには見えませんでした。
もちろんピッチ上での修正なのでなかなかすぐには切り替えられないということもあるでしょうが、大きな要因は広島の2トップと京都の2CBのマッチアップにあると感じました。

京都は広島のWBに対してSBが出てくるというアグレッシブなプレッシャーを仕掛けてきますが、これによってSBの背後には大きなスペースができます。必然的に広島の2トップと京都のCBが広いスペースで2vs2となります。

ただでさえフィジカル自慢の2トップですので、広いスペースで対峙するのはかなり困難。シンプルに長いボールで裏に抜けだしたり、2トップの片方が降りてきてワンツーしたり、加えてIHが飛び出してくることも。広島は京都のDFライン裏の広大なスペースを存分に活用して2点を奪うことができました。

IHを出すことのメリット

一方の京都もビルドアップ時にはアンカーを浮かせることで出口を見つけ出せていました。

京都のSBがボールを持った際、広島は基本的にIHを前に出してプレッシャーをかけます。これによって後方では数的優位を確保できますが、中盤では数的不利が生じます。そのため京都はアンカーやIHを経由して前進することができますね。

ただし2CBだけ残して前に出ていく京都とは異なり、広島のプレッシャーを剥がしても後方に5バックが残っていてスペースは広くありません。そのためプレスを剥がせば即チャンスにつながるというほどではなく、最終的にはウタカの突破力に頼る場面が多くなっていました。

そもそも前半の京都は広島に押し込まれてクリーンな前進の機会はあまり得られていなかったので、広島が5バックを残していたこともありチャンスはかなり限定されていました。
そんな中でもカウンターから1点を奪って1点差で折り返すことができたのは京都にとっては大きかったはず。逆転への希望をつなげた京都はハーフタイムにさらなる修正を行います。

京都の3バックによる対応

京都はハーフタイムに3枚替えして3-4-2-1へ。アピアタウィア、井上、麻田の3人で広島の2トップを抑えにかかります。

この変更により最終ラインで数的優位を保ったまま広島に対してプレッシャーを仕掛けることができます。広島のWBに対してはWBを前に出すことで対応し、背後のスペースを空けづらく。プレッシャーに出ていくときは中盤の選手を1人使って野津田もきっちりマークします。

これによって広島は前半よりも格段にビルドアップの出口を見つけにくくなりました。後半は広島のロングボールが京都のCBに回収される場面が増えましたが、前半と比較して勝算の薄いロングボールを蹴らされることになったのが原因だったと思います。

一方で、京都は3バックについては慣れてないのかな、と思う場面もちらほら。攻撃についてはカウンターかWBの突破というシンプルなものが中心でしたし(それでも白井の突破は十分脅威でしたが)、失点シーンではWBの白井が柏について行って大きなスペースを空けてしまいました。

ハーフタイムの短い時間で広島のボール保持に対して的確な修正を施した曺監督の采配はお見事でしたが、それが直接スコアに反映されるわけではないのがサッカーの面白いところ。京都からすれば前半は内容の差とは裏腹に幸運にも1点差で終えることができましたが、後半は互角だったのに不運にも1点差をつけられてしまったという印象ではないでしょうか。

3バックでのビルドアップをどうする?

一方の広島は柏戦に続き、3バックでビルドアップしてくる相手への対処に手間取る後半となりました。
3-1-4-2のまま対応しようとしますがサントスを含んだ2トップで京都の3バックを止めるのは難しく、途中からベンカリファと森島の役割を入れ替えるような形で対応します。

ベンカリファと森島の2シャドーで3バックを監視しておき、中盤に下げたサントスと野津田の2枚で相手のDHを監視しようとしますが、柏戦と同じく開いたCBに逃げられる場面が見られました。
この試合ではリードしていたので5-4-1で引いて凌ぎ切ったものの、この先の試合を考えると3バックの相手の前進を止める方法は確立しておきたいところ。3バックに対して3トップをぶつけるのが最も手っ取り早いですが、サントスを含めた1トップ2シャドーでそれができるかは微妙ですし、オールコートマンツーマンのような形になればリスクも上がります。

ここ数試合はボール保持への意識を強めている感もありますので保持の時間を増やして対応するという手もあり、今後どのように進化していくのか注目したいですね。

それではまた次回。

#13 【2022J1第13節 浦和レッズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は金曜日に行われた浦和戦。雨の中でのゲームでした。スタメンは以下。

広島は前節鹿島戦に引き続き野津田アンカーの3-1-4-2。ベンカリファとサントスの2トップも変わらずです。
一方の浦和は4-2-3-1。リーグ戦4試合連続の引き分け中ということで何とか勝ち点3が欲しいところです。

アンカーを入れ替える浦和

立ち上がりにボールを保持したのは浦和。2CBとDHのうち一人を中心にボールを回し、広島のプレッシングを回避していきます。浦和が4バックなので広島は配置をかみ合わせることができる……と言いたいところでしたが、この試合の広島は浦和のSBに対してIHが出ていって5-2-3のようにして戦うという方針になっていました。
CBを前に出さなくても良くなるのでこれ自体は良いのですが、これによって中央からのビルドアップを阻害できなくなる場面が多く見受けられました。

広島はIHのうち一人がサイドに出ていくため瞬間的に中盤が2人になります。ここに浦和の2DHと小泉が入ってくるため中盤が3vs2の数的不利に。そこで平野や伊藤を捕まえきれず、中央からの前進を許す場面が目立ちました。
幸いここから直接加速されてゴールに迫られるという場面は少なかったものの、前線からのプレッシャーとしてあまりうまくいってはなかったと思います。

こうした状況を受け、広島はVARがチェックを行った後くらいからベンカリファがアンカー役を監視して5-3-1-1のようになっている場面が見受けられました。
これによってアンカーを経由した前進を許す場面は減ったように見えましたが、それでも浦和はアンカー役を入れ替えてマークを外したり角度を変えながらアンカーのボールを入れたりと工夫を凝らしており、ボール保持時の振る舞いが浸透していることをうかがわせました。

また、浦和はある程度前進した後は広島のIHがスライドしきれないスペースを使ってシュートまで持ち込む場面を何度か作りました(10分のシャルクのシュートなど)。広島としては3-1-4-2はある程度前線でボールを奪えることが前提になっており、それができないことで自陣での守備でボロが出たという感じでしょうか。とはいえこの試合のIHのタスク量からすると自陣深い位置でスライドしろというのも酷な話で、前線で奪えないことの方が問題かなーと思います。

10分 シャルクのシュートシーン

FWMF間を取れる広島のボール前進

一方、広島のボール前進も上々の出来だったと言えるでしょう。鹿島戦と同様に相手のSBが出てきたときにその裏で起点を作るという動きもあったのですが、それ以上に中央を使ったボール前進が効いていました。

浦和は2トップやSHは割と前にプレッシャーをかけに来ますが、2DHはそこまで前に出てきませんでした。広島のIHが前の方に立っていて引き付けていたのもありますし、スペースを守る意識が高かったというのもあるでしょう。
広島としては浦和のこの特徴を利用してサイドからアンカーの野津田を経由して前進できていました。

もちろん浦和のプレッシャーに追い込まれることもありましたが、大迫を使って回避したり2トップへの長いボールを使ったりしていました。
大迫を組み込んだビルドアップが着々と形になっているのは素晴らしいですね。

前半から見どころの多い試合でしたが、両チームの強度が高かったこと以外にお互いのビルドアップのクオリティが高く綺麗に前進できていたことが大きかったと思います。

欧州の風を感じる広島の修正

さて、後半から広島はベンカリファに替えて松本を投入し、3-4-2-1に並びを変更します。
前半から満田森島をサイドにスライドさせることが多く、さらに引いた時中盤が空いてしまうという問題があったので、それならと中盤を分厚くした格好ですね。1トップになることでFWをサイドに流しての前進はしにくくなりますが、この試合ではそこまで見られなかったので大丈夫だろうという判断でしょう。

これによって広島は5-2-3みたいな感じで守る状況が増えます。

中央へのパスコースを遮断し、サイドに誘導して守っていました。これまでの広島は敵陣で人への意識がかなり強い守り方でしたが、これはかなりゾーン志向の強い守り方に感じました。プレミアやW杯欧州予選等で見覚えのある守り方で、ここ数年の広島からはちょっと想像しづらい変化でした。スキッベ監督はじめスタッフ陣が世界のトレンドを取り入れていることが現れているように思います。

後半の広島はカウンターによる被決定機こそ増えていたものの、浦和のボール保持からクリーンな前進を許す場面は減っていたように思います。

また、松本の投入はボール保持時にも効いていたと思います。松本はサイドにボールが出たタイミングで中央のスペースに顔を出すのが抜群に上手く、この試合の浦和が中央を空けやすいこともあって彼の特徴は存分に出ていました(69分松本のミドルシュート、79分柏の決定機など)。
磐田戦で多く見せたハーフスペースへの抜け出しや鹿島戦でアンカーに入った時の守備など、彼の持ち味が発揮される場面がどんどん増えているのは喜ばしいですね。彼が中盤で輝けるようになれば塩谷をCBで起用できるようになるなどバリエーションが増えるので、今後も期待したいと思います。

今後に向けて

0-0で終わったゲームですが、戦術的にはとても見どころの多い試合でした。改善の余地があるとすれば両チームともフィニッシュの部分でしょうか。
浦和は綺麗な前進ができてもミドルシュートで終わる場面が多く、相手を崩していくコンビネーションというかパターンに乏しいのが課題でしょうか。アタッカー陣の質はJでも随一なだけに単独でもチャンスは作り出せますが、より確率の高い決定機を再現良く作り出すところが課題といった印象です。
一方の広島はサントスの振る舞いが気になるところ。中央にいてたくさんシュートを打ってくれる分には全然良いのですが、1トップの時にサイドに流れてくるのはカウンターの起点になりかねないので微妙だと思います。彼の動きを制御できれば得点も増えるんじゃないかなーと思っているのですが……彼の自由さも含めて、揺らぎというか不確実性に期待して起用されているところもあるかもしれませんね。爆発に期待したいところです。

それではまた次回。

#12 【2022J1第12節 サンフレッチェ広島×鹿島アントラーズ】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は鹿島戦。GW3連戦の3戦目です。スタメンは以下。



広島は野津田アンカーの3-1-4-2。スタメン発表時や開始直後の並びから4バック説も囁かれましたが、ベンカリファとサントスの2トップで3-1-4-2でしたね。とはいえ開始直後の明らかに4バックにしか見えない並びや順番がおかしな公式Twitterのスタメン発表、事前に中国新聞にフォーメーション変更の記事も出ていないなど、情報操作をしている雰囲気はかなり感じました。
一方の鹿島は伝統の4-4-2。鈴木優磨が下がってチャンスメイクしているというのが面白いですね。

明らかに順番が操作されている

 

設定されたサイドの出口

さて、ここ数試合広島のビルドアップにおける問題点として、「WBとシャドー両方下がってきてしまう問題」を挙げていました。3-4-2-1で左右のCBがボールを持った際にWBとシャドーが両方ボールを受けに下がってきてしまうことで相手のプレッシャーをもろに受けてしまい、ボールを前進させにくくなるし高い位置で奪われてピンチを招きやすいという現象が起きていました。
この試合でも割とWBが下がってくるのは同じだったんですが、2トップが裏に抜けて深さを作る役割を担っているのが特徴でした。サントスとベンカリファの片方がSBの裏に走ることでサイドからのボール前進がかなりスムーズになっていました。

3-4-2-1の1トップであるサントスがサイドに流れると中央に人がいなくなってしまって微妙なんですが、この日は2トップなので1人サイドに流しても中央にまだ1人フィニッシャーがいるという理屈ですね。サイドに流れてのプレーを好むサントスは特に持ち味を出しやすいタスクを与えられることになったと言えるでしょう。まあ2人そろってサイドに流れていることもありましたが……

これによって鹿島がSHとSBを上げてプレッシャーをかけに来た場合に裏返してSBの裏で起点を作ることができます。前半の途中から鹿島のプレッシングが弱まって広島が最終ラインから野津田森島経由でボールを前進させられるようになりましたが、2トップ裏抜けによる前進が効いていたなーと思います。先制点もベンカリファがサイドで競り勝ったところから生まれましたしね。
この試合で広島が得た決定機の多くは鹿島のSBの裏を突く形で起点を作って最終ラインをスライドさせ、逆サイドに展開することで時間とスペースを得ることで作り出されていました(柏の2ゴールや55分のベンカリファのヘディングなど)。鹿島の4バックが原則通りきちんとスライドしていることの証左でもあるのですが、きちんとチームの問題点や相手の特徴と向き合い、最適な戦略を提示してきたのが素晴らしかったですね。しかも中3日で。

3-1-4-2の優位性

また、広島が3-1-4-2を採用することで清水戦で苦戦した4-4-2によるボール前進への回答となっているのも印象的でした。

広島の前線6人が鹿島のビルドアップ隊とかみ合っていることでプレッシャーをかけやすくなります。清水戦では広島のDHのうち片方が相手のDHを捕まえるために前に出て行ってしまい、その空いたスペースを狙われるという展開を作られていましたが、この試合では広島は鹿島のSBに対してWBが出ていくパターンとIHが出ていくパターンを使い分けて対応しており、どちらの状況でも相手にパスコースを与えない守備ができていました。

鹿島はDHを最終ラインに降ろしたり鈴木が中盤に降りたりしてボール前進を試みますが、DH落ちには広島のIHをマークにつけて対応し、鈴木へのコースも前線と中盤でコースを消してうまく対応できていたのが素晴らしかったと思います。最終的には鹿島のビルドアップ隊にロングボールを蹴らせてCBに回収するか、強度の高い守備で引っ掛けてカウンターという広島の得意な展開に持ち込んでリードを奪うことに成功しましたね。

3-1-4-2はボールを保持し続けて4-4-2に対して優位を取る配置というイメージがありましたが、非保持でもここまで機能するのが個人的には驚きでした。

今後に向けて

前半に狙い通りのサイド前進から先制した広島は後半にカウンターから2点を追加する理想的な展開に持ち込みました。2-0とした後はベンカリファを中盤に下げた5-4-1でブロックを作る対応も見せ、完勝だったのではないでしょうか。

この試合で見せた3-1-4-2は今後の広島にとって選択肢の一つとなれるだけのクオリティだったと思います。特にプレッシングの貢献度に難があり、なおかつサイドに流れる癖のあるジュニオールサントスを綺麗に戦術に組み込んだのが素晴らしかった。4-4-2あるいは4-2-3-1がベースの相手に対しては今日の3-1-4-2で戦うことになるんじゃないかな、と感じました。

一方の鹿島の見せ場は前半の最初に見せたカウンターくらいでほとんど良いところが出せず。プレッシングに出ても裏返されて広島のCFにキープされ、ボール保持でも落ち着ける場所を見つけられませんでした。鹿島も広島と同じくプレッシングに出た裏のスペースをCBの強さでカバーできるチームだと思いますが、そこで勝てなかったのが大きな誤算のように感じました。

それではまた次回。

#11 【2022J1第11節 サンフレッチェ広島×柏レイソル】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今回は柏戦。ゴールデンウィークということで僕も久々にエディスタに行きました。付き合ってくれた友人に感謝。

思い返してみたところエディスタに行くのは初優勝した2012シーズン以来なので10年ぶりでした。まあ広島に住んでないからね……

前回参戦がこれなので本当にちょうど10年ぶり

移動制限のない連休ということで観客数も1万人超えと上々でした。そんな柏戦、スタメンは以下。

広島はいつも通りの3-4-2-1。野津田と塩谷がスタメンに復帰しました。柏は3-1-4-2に見えました。序盤は中村と椎橋の2DHで3-4-2-1っぽかったのですが、徐々に3-1-4-2にシフトしていったのでこのように表記しています。

プレス対策を仕込んできた柏

さて、この試合でも広島は前線からのプレッシングを敢行します。アンカーの椎橋をサントスがマークしつつ、森島と満田の2シャドーで柏の3バックにプレッシャーをかけるというのが狙いに見えました。これで柏のビルドアップをサイドに誘導して奪うという算段だったかと思いますが、柏はしっかり対策を施してきました。

WBの選手が高い位置を取ることで広島のWBを押し下げ、その空いたスペースに左右のCBが進出してくるという方法です。札幌戦でルーカスフェルナンデスがやってきたやつですね。
ここに進出できれば2トップにくさびを入れるなり広島の中盤がスライドしてきたところの逆を取って横断するなりいろいろできます。

また、これを嫌って広島のWBとCBが縦にスライドしてきた場合は前に出てきたCBの裏が空くのでそこに長いボールを蹴って2トップを走らせます。アンジェロッティと細谷はキープ力があるためこの形でも十分前進できる可能性はありますね。

このように柏は広島の対応を観察しながら後出しで前進ルートを選択するだけの準備をしっかりと行ってきました。こうなった以上柏の前進ルートを完全に遮断するのは難しいので、広島が狙うべきは素早いプレッシングで柏のビルドアップ隊から時間とスペースを奪うこと。ボールホルダーに圧力をかけ続けて判断ミスを誘い、高い位置でボールを奪うというのが目指すべき展開のように思います。

その観点で不満だったのがWBのプレッシング強度です。柏のボール前進はサイドに開いたCBからのボールが生命線なので、広島のWBが縦へのパスコースを遮断しつつ素早くプレスをかけられればボールを奪える可能性は上がります。
しかしこのゲームでは広島のWBはボールホルダーに寄せていくものの距離が遠く、自由なパスを許してしまうという場面が何度もありました。
縦に長いボールを蹴らせてしまうだけでなく、WBとCBのワンツーで剥がされてしまう場面もあり、柏のビルドアップ隊は比較的自由にプレーできていたと思います。

こうした状況が続き、後半になると上がってきた柏のCBについて広島のシャドーは下がる場面が増えていきます。そうなるとCBには誰がプレスに行くのか、アンカーは誰が消すのか等が曖昧になってしまいますね。

それが最も顕著に出た場面の一つが同点ゴールのシーン。森島が高橋について下がったことでCBがフリーになり、そこにサントスがプレッシャーをかけに行ったことでアンカーの椎橋がフリーとなり、2トップまでのパスコースが空いてしまいました。
小屋松を野上が捕まえる形にはなっていたので野津田が出ていければ良かったですが、野津田が本来捕まえる選手ではないので瞬時に判断するのは厳しいものがあったでしょう。そこを逃さなかった椎橋の判断が光るゴールでした。
前半から再三前に出てきた広島の裏を取り続けることで広島のプレッシングを躊躇させ、空いた中盤を使う。柏が前半からやり続けてきたことが実った得点でした。

サイドの攻略方法

一方広島のボール保持についてはこれまで見られたのと同じような問題が見て取れました。

3バックから野津田塩谷へうまくボールを渡せたときは良いのですが、中央へのコースがふさがれたときにサイドのWBとシャドーが両方ボールを受けに下がってきてしまうことが多々ありました。こうなるとパスコースがないので裏に蹴るか、WBに当てて中央へ振り向きざまのパスを送るくらいしか手がありません。
この状況から裏へのロングボールでサントスへ、というシーンもありましたがその後どのようにボールと人をゴール前に送り込むかの設計まではされていないように見えました。このあたりは柏との設計の差を感じましたね。

また、87分の失点はサイドでのパスミスを奪われてそのままカウンターでやられたものですが、このシーンもWBとCBにプレッシャーがかかった状態でした(シャドーの浅野は気づいて裏に走ろうとしていますが……)。サイドからの前進ルートのなさが失点を招いたとまでは言えませんが、柏のように高い位置でCBをフリーにできていればサイドでのミスが即ピンチに繋がりにくくなったのかもしれません。

ちなみにサイドからの前進という意味では柴崎の投入に可能性を感じました。

相手のWB裏に走ることでCBをサイドに引き出し、WBやDHの追い越しを促します。また、CBが潰しに出られなくなるので中央へのパスコースも空けることができますね。左利きの野津田や東と組むとクロスが上げやすくなるのでさらにグッド。ある程度高い位置まで運んでからでないと効果を発揮しませんが、福岡戦やこの柏戦のような得点の欲しいタイミングでは今後も目にすることになるのではないかと思います。

今後に向けて

広島としては強みのプレッシングが空転し、ビルドアップでもなかなか活路を見出せない苦しい試合でした。勝ち点1取れれば御の字のところでミスからの失点で敗れましたが、まあ文句は言えないでしょう。プレッシングでは強度と意思統一が足りず、ビルドアップでは立ち位置で相手を動かすという設計が足りず。まだまだ課題がたくさんあることに気づけましたね。

柏は連敗をストップして自信になる一勝。この試合だけ見るとなんで3連敗してたのか分からないくらいちゃんとしたチームでした。森海渡という新星も現れて点を取れる選手が豊富にそろっており、今後も上位争いに加わっていけるだけのポテンシャルを感じました。

それではまた次回。

あと何回来られるだろうか