#17 【J1第18節 アビスパ福岡×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもお世話になっております。今回は福岡戦です。夏の連戦でお互いに中2日ということで、選手たちのコンディションが気になるところです。スタメンは以下。

広島は天皇杯からサントス→松本の1人のみの変更。勝っているチームは変えないという判断でしょうか。一方の福岡はなじみの4-4-2でなくミラーとなる3-4-2-1。天皇杯からメンバーも大幅に変更して万全の態勢で臨みます。

サントスがいないときの崩し方

久しぶりに3-4-2-1を採用した広島はサントスが不在となります。福岡は引いてくることが予想されるのでサントスによる裏抜けが効きづらいとの判断なのか天皇杯で2ゴールを挙げた松本を起用したかったのかは分かりませんが、結果的に広島はショートパスによる前進が増えることになります。

ショートパスの前進でビルドアップの出口となったのは2シャドー、特に森島のところでした。広島は野津田が中盤でフリーダムに動いて福岡の2DHを引き付けて中盤にスペースを作り、2シャドーがそこに入ってきます。福岡は広島と配置をかみ合わせては来ましたが前から来る姿勢はあまりなく、特に左右のCBはポジションをキープすることが多かったためシャドーはフリーになれることが度々ありましたね。

また、ショートパスで前進した後も福岡の堅い守備ブロックを崩す必要があるわけで、そこでは3-4-2-1ならではの工夫が見られました。

DH出張の是非

10分の東のシュートシーンなどが典型ですが、松本がサイドに流れたのをトリガーに東が中央に入ったり森島がサイドに流れたりと、WB・DH・シャドーの3人が役割を交換するような動きで相手のマークを外して崩しにかかる動きが見られました。
こうした列とレーンの移動を同時に伴う動きをすると守備側は近くにいる選手について行くか受け渡すかの判断を迷いやすく、フリーな選手を作りやすくなりますね。東はDHで先発していたこともあるくらいなので中央に入っても問題なくプレーできるわけで、ここは中盤もできる東をWBで起用している大きな利点だと思います。逆にサイドでの突破を武器にしている藤井がいる右サイドではこういうポジション交換はほとんど見られませんでした。

一方、この崩しの弱点としては中央から人がいなくなってしまうタイミングがあることです。
ビルドアップ時に野津田が自由に動き回るのに加えて松本がコンビネーションの起点としてサイドまで出張していくと、ボールを奪われたときに中央で相手のカウンターに備える選手がいなくなってしまいます。より計画的にポジションチェンジを行うならこのトランジション時の備えも含めて設計する必要がありますが、広島はまだそこまでは実践できていないようで、中央にできたスペースを突かれて一気に前線のフアンマまで運ばれてしまうケースが何度か見られましたね。

前半の広島はこうした崩しによってだけではなく非保持で相手をサイドに追い込んだ際にもDHが過剰にサイドに寄ってしまうことがあり、それでボールを奪えることもありましたが失点シーンのように外されて一気にクロスまで行かれてしまうこともありました。リスクを冒してボールを奪いに行くか、まずはスペースを埋めて安全に守るかの選択で、この辺りのバランスは難しいところですね。

福岡のプレスによる広島の意識変化

1-1で折り返した後半、広島はベンカリファに替えてドウグラスヴィエイラを投入。福岡は交替こそありませんでしたが、戦い方に変化を施してきます。

福岡は1トップ2シャドーが広島のビルドアップ隊に高い位置からプレッシャーをかけるようになり、それに伴ってCBの奈良と宮が広島のシャドーまで潰しに出てくるようになります。広島は序盤こそこの激しいプレスに苦しめられますが、次第にシャドーや1トップのヴィエイラが前に出てきたCBの裏を取る形が増え、長いボールでの前進が増えていきました。勝ち越しのシーンなどはその典型で、森島が高い位置まで出てきた奈良をギリギリまで引き付けてパスを出すことで背後にスペースを作り出すことに成功しました。
福岡のプレスに対して受け身になって全体が下がっていくのではなく、しっかりとその背後を突くという対応にスムーズに移行できたのは素晴らしかったです。磐田戦など、過去の試合での反省が生きていることを感じられますね。

また、後半は前進した後に松本が高い位置まで飛び出していくシーンが減っているのも見て取れました。長いボールで直接前進できるので松本が飛び出さなくてもチャンスを作れるというのもあるかもしれませんが、前半にカウンターを何度か浴びたことを受けて中央に留まるように役割を変えたという側面もあると思います。後半の広島は危険なカウンターを受ける場面を確実に減らしていました。

じわじわと敵陣でのプレー機会を増やした広島はヴィエイラの裏抜けとPKで2点を奪って勝利。福岡の出方をつぶさに観察し、即座に対応する姿勢が光りました。C大阪戦、横浜FC戦、福岡戦とほぼ同じメンバーで戦っているだけに、好調を維持できるかは選手たちのコンディション次第でしょうか。試合の翌日を休みにするなどマネジメントには気を使っている様子は見えますが、どこまで強度を維持できるでしょうか。

一方の福岡はリーグ戦では連続となる3失点。得点が少ないチームなだけにまずは持ち前の堅守を立て直したいところですが、この試合のように複数の並びを使い分けていくのか、原点の4-4-2を突き詰めるのかの選択が問われそうですね。

それではまた次回。