#25【2025J1第30節 サンフレッチェ広島×ヴィッセル神戸】

はしがき

毎度お世話になってます!今回は神戸戦。ミッドウィークですが同一勝ち点のライバルということで優勝争いのため極めて重要な一戦です。スタメンは以下。

神戸は前節から鍬先大迫汰木が変更。前節佐々木が負傷交代してしまったところでエース大迫の帰還が間に合った形。広島は前節勝利したガンバ戦のメンバーから変更なし。

スムーズな立ち位置変更で侵入する神戸

広島がハイプレスを敢行することもあり神戸の前進はロングボールが主体。特に前川からのロングボールが多かった。ターゲットが大迫になるのは当然だが、その大迫が移動した後のスペースを周りがどう使うかが整備されており、スムーズな連動が印象的だった。

大迫が低い位置でロングボールを競りに行って荒木がついて行くと、エリキと汰木の両WGがその背後を狙う。さらにIHの宮代や井手口がWGのいなくなったサイドのスペースに飛び出していくというのがよくある形だった。広島ももちろん対面の選手がついて行くのだが、誰がどこを使うか明確になっている神戸の侵入に対して一歩遅れる場面が目立った印象。

遅れがわずかであっても後ろに人が少ない以上ピンチにはつながりやすく、広島は前半多くのシュートを浴びることになった。

 

ライン間に人を配置したい

一方の広島もロングボール主体で前進を行うがこちらの成果は今一つ。左サイドは中村が本多のカバーから逃れて前を向くシーンが多かったが、右サイドは裏抜けを狙う前田の動きがトゥーレルに潰されることが多く、ほとんど前進できていなかった。

右サイドは中野が高い位置を取るので永戸を押し込みやすいが、そこで前田が背後を狙っても永戸のカバーにやってきたトゥーレルに潰されやすくなってしまう。後半に入って48分に前田が降りてきて塩谷からのパスを受けるシーンがあったが、ここはうまくCBの対応から逃れられた場面だと思う。

高い位置を取った中野が永戸を押し込んで本多もジャメのケアをしなければならないので、低い位置に降りて行った前田がフリーになった形だ。
こういう形で最終ラインからのボールを引き取る姿勢が前半はほとんど見られず、最終ラインでボールを持った時に前線の3人が3人とも背後を狙っていた。それはそれで徹底していていいのだが、神戸のように強度を武器にするチームが相手だとロングボール一辺倒ではなかなか攻略が難しい。このように試合を落ち着かせるというアプローチも取ってほしいところだ。

功を奏したミドルプレス

さて、53分に神戸のロングボールへの対応から自陣でパスミスが発生、佐々木が退場になってしまう。広島は押し込まれる展開になるかと思ったが、予想とは違う光景が繰り広げられた。

広島は5-2-2のような形で木下と中村が鍬先と同じラインに並び、片方がCBに寄せながらWBがSBに出て行くという形。これに対して神戸はCBやSBが割と素直にロングボールを蹴ってきたため、広島としては木下中村の2人で神戸の2CBとアンカーを監視できているという状況になった。結果的に広島の最終ラインと神戸の前線が同数になり、前半と図式があまり変わらないという状況が発生していた。さらにここで荒木や塩谷、デビュー戦となったジュソンが対人の強さを発揮した結果広島は、前半よりもむしろボールを拾えるようになっていた。

広島のパフォーマンスの高さもあるが、神戸の最終ラインが数的優位をほとんど活かせていなかったのは気になるところだった。広島のプレスを誘発してからGKに戻すとか、CBが運んでみるとか、いろいろできることはあったと思うのだが使い慣れたロングボールに終始し、得た数的優位をあまり活かせていなかったという印象。
数的優位なのにCBのショートパスやドリブルのようなリスクがあることをやりたくないということかもしれないが、単にCBから繋げないとすると明確な課題だろう。

雑感・試合を終えて

退場者を出してからの広島は得点もあるかもというパフォーマンスを見せていたがさすがに終盤は足が止まり、神戸がセットプレーからの得点で押し切って勝利。前半は広島のロングボールが上手くいかず、後半は神戸のロングボールが上手くいかず、最後に数的優位があまり関係ないセットプレーで決着がつくという不思議な試合だった。

広島としては前半のロングボール頼みが厳しかった。退場者が出たことで選択せざるを得なくなったミドルプレスが功を奏したように、戦い方を変えることで戦局を大きく変えられることはある。強度で押し切れる試合ももちろんあるが、そうでないやり方を主体的に選択できるようになってほしい。現代サッカーで安定した成績を残せるのは恐らくそういうチームだろう。

神戸はロングボールの使い方に一日の長を感じさせたものの、後半にその姿勢にこだわったことで立場を危うくしていた。やはり連敗中だったことで自信を失っていた面もあるのかもしれず、そういう意味ではこの勝利がひとつ薬になるかもしれない。

それではまた次回。