#23 【2022J1第23節 サンフレッチェ広島×FC東京】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は代表ウィーク明けの東京戦。代表に6人招集されていた広島にとってはややきつい日程という説もありますね。スタメンは以下。

広島は野津田がお休みで川村が起用された3-4-2-1。代表組あと5人は元気に先発です。

東京は前節から3人変更の4-1-2-3。コロナの影響もあるかもしれませんね。どこも大変だ……

中盤に人を補充してくる東京

さて、対4-1-2-3ということで広島のプレッシング方法はほぼこれまでと同じでした。

1トップ2シャドーで東京の2CB+アンカーを監視し、WBがSBに、DHがIHに出ていく形ですね。3バックは3トップとの数的同数を受け入れます。
シーズン序盤にやっていたサントスが1トップの形ではアンカーにべったりでしたが、この試合ではナッシムがアンカーをマークしながらも、状況に応じて2シャドーにマークを渡してCBまでプレスに出て行っていました。マリノス戦でもこんな感じでしたね。序盤はマークの受け渡しに苦労していましたが、時間が経つにつれてマークの受け渡しが整理されて早くなっていきました。

さて、ほとんどマンツーマンの形でパスコースを削られた東京は長いボールで打開を試みるかと思いましたが、この日の両翼は三田と紺野ということで推進力という点ではいまいち(レアンドロアダイウトンに比べれば、ですけども)。ということで、広島のビルドアップに対して配置で対抗していくすべを用意してきていました。

特に効果的だったのが長友が内に入ってきてずらすパターンとディエゴが広島DHの裏に降りてくるパターンです。

前者は長友が大外ではなく内側に入ってくることで東の守備基準を狂わせます。広島のWBはプレッシング時には大外レーンで下がるか出ていくか、の判断が基本なので急に対面の相手が内側に入ってくるとついていくか迷うというやつですね。逆サイドの佳史扶は内側に入ってくることはあんまりなかったので長友の特殊技能なのかもしれません。年齢を重ねてもプレーの幅を広げられることが感じられて素晴らしいですね。

そして後者は広島のDHが出ていったスペースにディエゴを降ろして長いボールを納めさせるパターン。マッチアップの荒木は対人J最強クラスですが、スペースがあるのでディエゴは比較的プレーしやすかったかもしれません。また、荒木としても中央を空けてディエゴにどこまでもついていく!というのは抵抗あるでしょう。

この2つの方法については広島の守備陣にどこまでついていくか?という迷いを与えることに成功しており、東京の前進に一役買っていました。WGが降りて受けるパターンもあったのですが、それは佐々木と塩谷がどこまでもついていって潰すという判断をしていたのであんまり効いていない感じでしたね。

アウェイでの対戦時は広島のプレッシングに対してひたすらロングボール!という解決をしていた東京でしたが、配置を操作して脱出を図ってくるあたりにアルベル監督の哲学の浸透が垣間見えました。

ハーフスペース突撃とボールの失い方

広島がボールを持った際にはサイドに展開してからハーフスペースを裏抜けする選手を使って攻略していくといういつもの光景が見られました。これ自体はとても効果的なのですが、広島はこの裏抜けに色々な選手を使ってくるという特徴があります。特に左サイドはシャドーだけでなくDHの松本や、時には佐々木が上がってくることもあります。これは相手のマークを分散させてフリーになりやすくする一方、ボールを失ったときに一気にピンチを招きやすくなるという側面もあります。
それが分かりやすい形で出たのが67分の同点ゴールの場面。

佐々木が敵陣深くまで上がっていったところでボールを失うと、そのままプレスをかけられずに佐々木がいない左サイド奥深くにアダイウトンに走られています。このシーンでは佐々木が上がってくることで前線に人数が多くなり、ボールを失った際に誰がプレスに行くのか分かりにくくなっているような印象を受けました。そしてそのまま佐々木がいない分スペースの大きい背後へ流されて前進を許した形です。

普段であれば失ったときに誰が誰にプレッシャーをかけるか決まっているか、決まっていなかったとしても後ろに3CBが残っているので凌げているのですが、このシーンではそのどちらでもないように見えました。要するに想定していないボールの失い方をしたので一気にピンチになった、ということだと思います。

これは2失点目にも言えることだと思いますが、広島はプレッシング時やネガトラ時に後方の数的同数を受け入れるというスタイルなので、中途半端にボールを失うと一気にスペースにボールを運ばれて大ピンチになってしまいます。後方が同数でも凌げるのはボールを失った際に前線の選手たちがすぐにパスコースを制限しているという前提があってのことなので、それがなくなるといかに広島のCB陣でも厳しいです。

CBの攻撃参加をやめるとか、CBが裏抜けした時には多少無理やりでもそこにボールを出すとか、想定外の失い方をしないための仕組みづくりがあっても良いのかなーと感じました。

お互いの今後の課題は……

広島については想定外の失い方をしないというのも課題ですが、あとはもっと得点が取れないと厳しいと感じる試合が増えてきましたね。やっぱりJ1レベルのアタッカー相手に後方を同数にして90分凌ぐのはきついと思います。というか、1失点くらいは仕方ないと割り切って前に出ていると考える方がしっくりきますね。

なので、勝つには最低でも2点以上取らないと厳しいはずです。早くゴールに迫る場面が欲しいというのはマリノス戦の時にも書きましたが、せっかく高い位置で奪っても味方の上がりを待つことで相手が戻ってきてスペースが消えてしまう場面が目立ちます。それはそれでネガトラでボールを回収しやすいというメリットもありますが……
前方のスペースを活かして素早くカウンターを完結させるというのは今のスタイルとあっていると思いますので、そういう場面が増えることに期待したいと思います。

東京については課題というか、ここからどうするんだろうという疑問がありますね。保持で相手を走らせた後にアダイウトンなりレアンドロなりを投入して走らせるというのはとても理に適っていますしかなり効率よく勝ち点が稼げると思います。しかしアルベル監督がやりたいのはそういうことなのかどうか?という疑問です。
今のスタイルで勝ち点を稼いでいくのか、アダイウトンレアンドロの強みを捨ててまでポジショナルを追い求めるのか、理想と現実のバランスをどうとっていくのかが気になるところです。戦力的には優勝争いしても何もおかしくないレベルなだけに、どこに落ち着くのかはとっても興味深いなあと思います。

それではまた次回。