はしがき
平素より大変お世話になっております。後編です。前編を読んでいない方はそちらを先に読んでもらうと分かりやすいかなと思います。
さて、前編ではサンフレッチェ広島の守備について2つ問題があると書きました。簡単に振り返ります。
①ボールの奪いどころが定まっていないのか突然選手が飛び出してボールホルダーに食いついてしまうことがあり、その裏のスペースを使われやすい
②WBがサイドに釣り出されてもCBはカバーに行かず、DHが最終ラインに降りてカバーすることになっている
※ちなみに前編で書き忘れてしまったのですが、DHがカバーに降りてしまうといわゆるバイタルエリアが空いてしまってマイナスのパスに弱くなるというデメリットもあります。これもけっこう問題。
失点は少ないけれど
さて、前編を読んだ方の中にはこう思った方もいるのではないでしょうか。「広島は失点少ないし、別にいいんじゃない?」と。
たしかに広島は今シーズン15試合で19失点と、失点は少ない方から数えて5番目です。試合数のばらつきもあるので正確には比較できませんが、少ない方であることは間違いないでしょう。守備の構造がおかしいのであればもっと失点するはずだと思われるかもしれませんが、僕はこの失点の少なさをDFの個人能力の高さによるものであると考えています。
つまり構造的には崩れていることも多いですが、3CBを中心としたDF陣が頑張って最後の最後で何とか食い止めている、という状態でここまで来ているのではないかということです。そういう意味では3CBを中央に残していることが生きているのかもしれませんが、それによって守備組織が崩れるのであれば本末転倒ではないでしょうか。
現状はあくまで個人能力の足し算で守っているので、それを上回る個の力で殴られたり、構造的な弱点を執拗に狙ってくる相手からゴールを守り切ることは難しくなると考えています。せっかく優秀なDF陣がいるのだから組織の決壊をぎりぎりで食い止めるような戦い方をするのではなく、組織として連動することでより安定した守備を構築してほしいと思っています。
じゃあどうすればいいのよ?という話
じゃあどうやって守るのかという話になるわけですが、やはり基本に忠実にいくべきではないでしょうか。一言で言えば味方が出ていったスペースを周囲の絞り/スライドによってカバーすることが効果的であると考えます。
①の問題点については、主にDHが突然プレスをかけてしまい、その後ろのスペースを使われることが問題となります。これを防ぐために、まずDHがどのエリアまで出ていくのかをある程度決め、DHが出ていったら周囲は中央に絞ってカバーし、スペースを消しに行くことが必要になるはずです。
DHが前に出すぎないこと、周囲の選手が絞ってくること。この2つにより、いきなりライン間を使われて失点というケースは減らせるのではないでしょうか。
また、これは最終ラインにも同じことが言えます。
もし中盤を通過されて図のようなパスが入った場合には、CBが出ていって対応することになります。最終ラインに5人いれば、CBは出ていっても後ろに4人いるので迷いなく出ることができます。これは5バックの大きなメリットの一つであるといえますね。
広島も現在このやり方でCBが出ていくシーンをよく見かけます。それは良いのですが、この時にも周囲のカバーが不十分に思えます。CBが出ていった時後ろは4人なのですから、きちんと絞ってスペースを消し、4バックに近い形に変化してスペースを消せばより安定感が生まれることと思います。
そして②の問題点については、やはりWBが出ていったスペースはCBを出してカバーすることで防ぐ方が良いと考えます。
WBが出ていったスペースをCBがカバーしたとしても、まだCB2人と逆サイドのWBが残っているはずです。彼ら3人がしっかりとスライドして中央まで戻ることで、4バックで守っているのと同じ状況を作り出すことができます。また、このやり方ならDHを最終ラインまで降ろさずに済むので、マイナスのクロスもしっかりケアすることができます。こうすることで、②の問題により空くことになったスペースをしっかり埋めることができます。
味方の選手が出ていったスペースを周りでカバーして塞ぐ、そういったスペースに注目した現代基準の守備こそが今の広島に必要なのではないでしょうか。
まとめ
味方が出ていったスペースを周囲が絞ったりスライドしたりで埋める、というのはいまや確立された守備の常識であると言えます。優秀なDF陣がいながらこうしたセオリーがないまま個人の頑張りで守っているのは非常にもったいないと感じるので、何とか改善してほしいと思っています。
人に対する意識が強いと言われることが多い広島の守備ですが、こうしたスペース管理に対する意識の希薄さによって、相対的に人に対する意識が強く見えるのではないかと書いていて感じました。
Jリーグの戦術的なレベルは上昇の一途をたどっており、今後こうした構造的な弱点はますます多くのチームに狙われることでしょう。そうした強敵たちに、サンフレッチェ広島の優秀な選手たちが連動して立ち向かっていく姿が見たいものです。
それではまた次回。