#10 【J1第21節 サンフレッチェ広島×北海道コンサドーレ札幌】

はしがき

毎度お世話になっております。この振り返りも10回目となりました。21節なのに10回目かよ!せめて全カードでやれればと思うのですが、どうですかね。

さて今回は札幌戦。この真夏に中2日はきついですよねえ。ということでスタメンは以下。

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広島は野津田が久々の先発。あとは負傷した佐々木に代わって引き続き井林が起用されています。一方の札幌は荒野が深井にチェンジ。並びは3-4-2-1です。

ミシャ式対決の命運

さて、両チームとも表記では3-4-2-1ですが、実際には様々な配置を使い分けています。特に札幌はペトロヴィッチ監督の代名詞であるミシャ式、ボール保持時に4-1-5に近い形になるおなじみのやつが実装されています。

対する広島はどうするかと思いましたが、稲垣と川辺のどちらかが降りて4バック化する動きが頻繁に見られました。まあ札幌も3-4-2-1とあって3バックだと同数プレスを喰らう可能性があったので、そこで安全にボールを進めたいという意図はあったのでしょう。

そんなわけでミシャ式対決に近い様相となった前半ですが、札幌が決定機を量産しました。

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決定機は主にサイドから生まれていまして、クロスを中で待ってるジェイのヘッドでポストに直撃ということが2回ありました。札幌はGKのクソンユンも積極的に使ってビルドアップするため広島は人数を合わせたプレスを行えず、WBまでは割とボールを運べていたかなと思います。そこから右サイドではキレッキレのドリブル突破を持つ白井に渡してのクロスというパターン。左サイドはハイネルが結構ボールに食いついて前に出てくるので菅がその裏を狙うことが何度かあり、そのうち1回はポスト直撃の決定機につながりました。

広島としてはクロスに合わせるにしても中央のコンビネーションにしてもジェイの高さ、強さにはかなり苦しんでいるように見えました。特に何もないところから白井のドリブル、ジェイの高さでゴールに迫れるのは札幌の大きな強みと言えるでしょう。

また、広島は今節はサイドの守備でハイネルが前に出てくる様子が目立ちました。前節はきちんと我慢してSHが絞ってきてうまくいっていたので、ここはちょっとまずかったかなと思います。城福監督もしきりに修正を呼びかけていたようですし。

一方、広島のボール保持は札幌によってかなり封殺されていました。

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広島の主な攻撃ルートはハーフスペースにおけるCBからシャドーへの縦パスからの展開なのですが、札幌はシャドーの鈴木とチャナティップがCBの前に立つことでこのパスコースを封鎖、さらにCBが広島のシャドーを捕まえに出てくることで自由を与えないようにしていました。セレッソもこうしたやり方は採用していましたが、このやり方をされると攻め手がなくなるのは広島の課題ですね。

そんな中、即興っぽかったですが13分ごろにこの守備を良い形で突破するシーンがありました。

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森島のスペースを消すために出てきた進藤の裏に柏が斜めに走りこみ、裏を取ったというシーンです。相手のCBが出てくるのであればその裏を狙う、というのは相手を見てサッカーをしているという意味でとても良かったと思います。左サイドは個々が自分のタスクを理解できていると思うので、この試合のようにそれが妨害されたときにこんな感じの動きを何度も出せると良いですね。

広島は他にも解決策としてシャドーの左右を入れ替えてみたりサイドに流してみたりしていましたがそれであまり状況が良くなったということもなく、攻撃はあまり機能しないまま前半を終えました。

深さを使った解決とその後の意思統一

さて後半、前半耐えていた広島がギアを上げるかなと思って見ていると、49分に広島が先制します。

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先ほど述べた13分の柏の突破と似た形で、柏がサイドの高い位置で受けたところから森島がハーフスペースを縦に走って受けて折り返し、エリア内に入ってきた稲垣が決めるという流れでした。やはり進藤が出てきたスペースを使えており、前半から出ていた問題に対する解答がゴールという結果として現れた良いシーンだったと思います。CBが出てライン間を封殺してくるのなら深さを使っていく、というのができるかどうかは広島が今後得点を奪っていけるかどうかを分けるポイントになりそうです。

あとはやっぱりWBが高い位置で受けられないとこういうことは中々できないんですよね。柏は結構できているのですがハイネルは割とボール触りに下がってきちゃうし、ボールを持ったらドリブルしか考えてないし……という感じなので、彼の立ち位置や選択についてももうちょっと整理してみてほしいかなと思います。

で、得点を奪ったのだから広島は前節みたいにライン間を消して引いてしまうだろうと思っていたのですが、割と変えずに奪いに行ってたんですよね。ただ相変わらずGKも使ってくる札幌からはボールを奪えず、ライン間にスペースはあるしSHDH間も空いてるしで結構危ない場面を作られていました。後半は特にチャナティップがライン間で受けてスルーパスとかシュートとか危険な仕事をする場面が目立ちました。

正直言って失点しなかったのは運が良かったとしか言いようがなかったと思うんですがギリギリでしのぎきり、また札幌も交替によって攻撃に勢いを加えることはできず。1-0のまま試合は終了しました。

試合を終えて

広島としては、結構課題が出たものの勝ち点3をとれたのはラッキーでしたね。左サイドのボール保持でCBの裏を使うという動きが見られたのはポジティブなことだと思うのでそれをスムーズに出せるようにすることと、そろそろ右サイドのタスクを整理できればな、と思います。それができれば野津田ももっと持ち味を活かせると思うのですけど……

札幌にとってはアンラッキーなゲームとなってしまいました。大外からも中央からも危険な攻撃ができるというのは大きな強みで、今節については運が悪かったと割り切ってもいいかなと思います。強いて言えばジェイや白井、チャナティップのタレントに依存するところが大きいので、この試合の後半のように彼らが疲労してきたときにどう打開するかは検討の余地があるかもしれませんね。

それではまた、次回があれば。

#09 落差【J1第16節 サンフレッチェ広島×川崎フロンターレ】

はしがき

どうもご無沙汰しております。やっぱ毎試合は無理ですね。はしがきで何書いてたかも思い出せなくなりました。

さぼっている間に広島は鳥栖に勝ち、松本と引き分け。松本戦はあと少しのところで3ポイントが逃げていった、という試合でした。ミッドウィーク開催の今節、相手は川崎。今シーズン1つしか負けていない難敵です。広島は中10日、川崎は中3日とやや日程に差がある状態でのゲームになりました。スタメンは以下。

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広島は大迫がスタメン復帰、あとは出場停止の野上に替わって井林がリーグ初先発となりました。川崎は馬渡、守田、家長、長谷川が前節からの変更点でしょうか。このチームは誰が出ても豪華な陣容なのでこれだけ変更があっても全く力が落ちない感じがしますね。

圧縮してスペースを消す広島

さて、試合はいきなり動きました。4分にCKから佐々木のゴールで広島が先制。森島のコメントを見るとミスキックだったそうですし、守田がボール処理をミスしたことにより生まれたゴールでもあるので、広島にとってはラッキーな先制点でしたね。これによってボールを奪いに行かずとも良いという余裕の生まれた広島は、ミドルゾーンまで下がって川崎の攻撃を受け止める選択をします。

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撤退時の広島はいつもと同じ5-4-1。ただこの試合では5と4の間をきちんと圧縮し、ライン間のスペースを使わせないようにする意志を感じました。家長や阿部が下がってきて受ける動きを見せていましたが深追いはせず、ブロックを維持することを優先していたように思います。いつもならついていってボールを奪おうとするところだと感じたので、いつもよりはスペースを守る意識の強い守備だったとも言えるかもしれません。

また、中盤の4人は中央を固め、SBにボールが出るとできるだけSHがスライドして対応していると感じました。これについては、長谷川や阿部にWBCB間を使わせないようにしたいのかな?と思いました。川崎のSHはWBCB間に立っていることがあり、ここをコンビネーションで突破するという狙いは見えたので、これを封じることには成功していたと思います。川崎がここを突破できたのは前半終了間際の井林がクリアしたシーンと、後半終了間際の長谷川のクロスのシーンくらいだったと思います。突破すれば決定機になっているというのが凄いところですけど。

また、4人が中央に圧縮することで守田や下田からのダイレクトな楔を遮断することにも成功していましたね。ボール奪取能力の高い稲垣がいたこともあって、中央からの前進は許さなかったばかりか中央でボールを奪って反撃に転じる場面もありました。

川崎の方が休息が少ないからかミスが目立ったという事情もありますが、それでもリーグ1のパスワークを封じるためのリトリートには高い集中力を要したものと思いますし、広島の選手たちは良くやっていたと思います。

ハマらない川崎のプレス

さて、広島のボール保持についてですが、川崎にとってより問題だったのはこちらだったかもしれません。ビハインドの川崎は広島のビルドアップに対してハイプレスを仕掛けるのですが、なかなかボールを奪えませんでした。

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川崎は守備時は4-4-2のような形になるので、家長と小林が先頭に立ってプレスをかけ、SHやSBが連動してスライドしてきます。そこまでは良いのですが、この時に広島のDHがフリーでボールを受ける事例が頻発しました。川崎のDHである守田と下田は広島のシャドーがいたこともあってポジションをキープ、2トップも二度追いはしてこなかったため、ぽっかり空いたスペースで広島のDHはフリーでした。

図は一例に過ぎないのですが、広島はこのスペースにボールを出してから逆サイドのWBにサイドチェンジという形を多用していました。こんな感じでサイドを変えつつ前進し、WBのクロスから生まれたのが広島の2点目でした。このシーンについてはまあクロスの精度とドウグラスの位置取りのうまさもありましたが、狙い通りのゴールではあったと思います。あと得点後のドウグラスの高音叫びが好き。

城福監督は75分までパーフェクトだったと言っていましたが、前半はほぼ川崎を抑え込むことに成功していました。その上で2点も取れたわけですから広島にとっては理想的だったと言えるでしょう。

ダミアンの強さ

後半開始から、川崎は守田に替えて山村を投入。さらに阿部と家長の位置を入れ替えます。これは守備の基準を作る役割として阿部の方が適しているということ、また家長をサイドに流せば起点が作れるという思惑もあったことでしょう。山村の投入はのちのダミアン投入を見据えた高さ要員という考えなのでしょうか?あるいは中央が封鎖されているのでサイドからの前進を考えて、中央に楔を打てる守田よりもゴール前への侵入やネガトラ対応ができそうな山村、ということかもしれません。

広島がセットプレーから3点目を奪うと、さらに56分には阿部に替えてレアンドロダミアンを投入。以下のような形になります。あ、図には後々の広島の交代も反映してます。

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これでも試合の流れに変化はなく、広島がプレスを回避してボールを回す局面が続きます。川崎の策を無力化して大勢は決したかと思いましたが、75分に小林とダミアンの素晴らしい連携からゴールが生まれます。ダミアンのポストプレーを活かした良いゴールでしたね。

この直後に川崎のプレスが強まったのですが、広島としてはこれまで通りプレス回避できると思って回しにいき、ボールを失ってしまったのが悪手でしたね。失った直後にシンプルなクロスから中央でダミアンに合わせられて2点目を献上。試合は一気に分からなくなります。

このあとの川崎の攻撃はサイドからのダミアンを目がけたクロスが中心になります。広島は空中戦に強い佐々木を失っていたので良い選択だったと思いますし、実際失点してもおかしくないシーンもありましたが、広島が何とか耐えきって3-2で逃げ切り成功となりました。

 

試合を終えて

75分まで完璧に進めていた広島でしたが、残り15分で追い詰められる展開となりました。前節のいやな記憶がよみがえる展開でしたがなんとか逃げ切りましたね。WBの質という強みを活かせるビルドアップと中央圧縮による強固な守備は見事なものだったと思います。1失点目は仕方なかったにしても、そこで安全に試合を進めて終わらせられるようになればもっと安心して見られるんですけどね。世代交代中の若いチームなので、まだこういう展開は見ることになりそうです。

川崎としてはファイナルサードの攻略もプレスもうまくいかず、厳しい内容の試合となりました。それでも2点とってくるあたりがさすがとも言えますが。疲労もあったと思いますが、大分戦でもボール奪取には苦労したと聞きますし、配置の噛み合わせの悪さに対してもっと策を打っていくほうが良いのかもしれませんね。

それではまた、次回があれば。

#08 意味 【J1第18節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

毎度お世話になっております。J1も折り返し地点を迎え、サンフレッチェ広島は勝ち点24。まあ去年と比べれば平凡なものですが、世代交代真っ只中であることを考えればよくやっている方だと思います。残り半分、ひとまず残留のためあと勝ち点15くらい稼ぎたいところでしょうか。

そんなリーグ後半の初戦、ホームにセレッソ大阪を迎えました。スタメンは以下。

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 広島はドウグラスヴィエイラが負傷したようで1トップにパトリックを起用。セレッソは4-4-2で、メンバーは前節と全く同じだった模様です。3月に対戦した時には3バックだった気がするのですが、どれくらい熟成されたのでしょうか。

後出しジャンケンのできるセレッソ

 ゲーム開始からボールを保持して主導権を握ったのはセレッソでした。セレッソはGKのキムジンヒョンもビルドアップに参加して最後尾から丁寧に繋いできます。そこで、前から奪いに行きたい広島はセレッソのSBにボールが入るとシャドーが出ていきます。ですが、このタイミングでSHが中央に入ってくることで広島のDHに対して数的優位を作り、DHとSHのどちらを捕まえるかの選択を迫ります。

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前半の広島はこの形でDHとWBのタスクが不明瞭になってしまい、セレッソのDHにフリーでボールを持たれてしまうことが何度もありました。

また、広島としてはシャドーがセレッソのCBにプレッシャーをかけ、SBに対してはWBが出てきて対応するという手もありましたが、その場合には出てきたWBの裏のスペースにFWを走らせることで起点を作られていました。

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実際にセレッソはこの形で抜け出したブルーノメンデスが得たFKから先制しています。セレッソのビルドアップはやや左からが多い気がしましたが、松田よりは丸橋の方がボールを配給できるタイプであること、またハイネルは縦へのスライドが遅れていることが多かった為、より多く時間を得られたことも影響しているかなと思います。このように広島の動きを観察し、後出しジャンケンのごとく裏をかくようにボールと人を動かすことで、セレッソは効果的な前進を見せていました。

広島としては、これだけ整備された配置の相手からボールを奪うには、いつものような同数プレスだけでなく、もう一工夫が必要なのかなと感じました。で、そのような工夫が見られたのがセレッソのSHです。

 

ボールを奪うために必要なこと

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セレッソは広島の3バックに対して2トップとSHの縦スライドによってプレッシングを仕掛けるのですが、この時のSHの寄せ方がうまかったという話です。前節にも森島が縦パスを受けたところから得点を生んだように、広島にとってはハーフスペースに陣取ったシャドーにパスを通すことが攻撃の一つのカギと言えます。しかし、セレッソはSHが広島のCBにプレスをかける際にシャドーへのパスコースを消すことを常に意識していました。この動きによって、サイドでは3vs2の数的不利であるはずが、有効なボール前進をさせませんでした。セレッソのSHの寄せが迅速で広島のCBに余裕を与えなかったこと、広島のWBの位置が低かったこともあって前節はうまくいっていた左サイドのビルドアップも封殺されていました。

そんなわけで、セレッソのボール前進は防げず、ボールは運べず、得点もしっかり奪われて広島としてはまるで良いところのなかった前半。このままじゃダメだということで、後半開始から変化をつけてきます。

意思統一とビルドアップの変化

広島は後半から吉野に替えて稲垣を投入。さらに川辺をDH、柴崎をシャドーに入れ替えます。前半の吉野・柴崎のDHコンビと比較してボールを狩りに行ける2人をDHに置くことで、前半に迷いが見られたDHの動きを「前から奪いに行く」で統一。プレスをかける際にDHはセレッソのDHを捕まえに行くことによってセレッソのビルドアップを制限することに成功します。後半からセレッソがプレスラインを下げたことも相まって、広島は前半よりもボールを保持できるようになります。

また、ボール保持についても前半の反省を活かし、CBからシャドーへの縦パス以外のビルドアップ経路も用いるようになります。

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その一つが、セレッソのSH裏にボールを届けるパターンです。SHが出てきたことで空いたスペースにWBを経由してボールを届け、そこで起点を作ります。後半になってWBが高い位置を取るようになったため、このように降りてきてビルドアップに関わることができるようになったのかもしれません。

また、後方からパトリックに長めのボールを蹴ることもありました。

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これもアバウトにロングボールを蹴るのではなく、パトリックが収めることを狙った低めのボールが供給されていました。セレッソ守備陣がきちんと相手を捕まえてプレスをかけようとした際に、少し空いたCBとDHの間を狙って繰り出していた印象です。城福監督のコメントにパトリックの動きをハーフタイムに修正したとあったのですが、もしかするとこれのことかな、と少し思いました。

こうしてビルドアップに変化を付けた広島は、少しずつセレッソを押し込めるようになります。また、こうした変化によって当初の警戒が緩んだのか佐々木から森島に縦パスが通ることが2度ほどあり、そのうちの1回が得点に結びつきました。前節も森島への縦パスから右サイドに展開してクロスという形で得点を奪えており、やはりここを使うことを目指して攻撃を設計していくのがいいんじゃないかなと思いました。

4-4-2にする意味は

押し込まれたセレッソは77分に木本に替えて山下を投入、CBをヨニッチと山下の対人強いコンビに変更します。一方の広島は79分にハイネルに替えて皆川を投入、ここ数試合で見慣れた4-4-2に変更します。

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 この変更の直後、81分ごろに広島が約30秒間ボールを前進させられないまま最終ラインで回して林に戻し、林のロングキックがタッチラインを割ってボールを失うというしーんがありました。ここにこの4-4-2の問題点があると思っていまして、何が言いたいかというとこの4-4-2にはボールを前進させる仕組みが備わっていないのです。

当然のことながら、4-4-2同士がぶつかるとシステムが完全に噛み合ってしまい、そのままではボールを持っている選手は時間とスペースを得られません。そこでDHを最終ラインに落としたりGKを使ったりして後方で数的優位を確保する方法が良く採用されるのですが、この4-4-2にはそのどちらもありませんでした。そもそも3バックになるならもとの配置のままで良いじゃん、という話でもあるのですが。

また、システムが噛み合っているのなら1vs1が多数発生していると考えることもできるわけで、それなら対人で勝てる場所にロングボールを入れていく、という手もあります。この並びならパト皆川のツインタワーにセレッソの2CBと競り合ってもらうのが有効だと思うのですが、それもありませんでした。

敵陣に侵入することができれば前線に人数が多いのでゴールに迫ることはできていましたが、全体的にどうしても局面ごとの選手の頑張りやひらめきに依存することになってしまい、決定機を量産するには至らなかったと感じました。得点がほしい時のアプローチとして4-4-2は適切なのか、また4-4-2にした後選手たちがどのように動くのか、このあたりについて考えるべきことがまだまだ残されていると感じます。

試合を終えて

ということで1-1の引き分け。ロティーナ監督は両チームが1つずつのハーフを支配した妥当な結果と言っていましたが、まさにそんな試合でした。

セレッソは前半に素晴らしく整備されたボール保持を見せただけに、後半に守備一辺倒にならないための策が欲しかったところです。途中出場の高木のスピードをもう少し活かせる展開にしたかったという感じでしょうか。

広島としても後半に盛り返すことに成功したんですが、ボールを全く奪えなかった前半にもう少しうまく耐えられなかったか、また終盤にもっと押し込んで決定機を量産できなかったかなど、お互いに取って収穫と課題の浮かび上がるゲームだったと感じました。

 

それではまた、次回があれば。

#07 現在地 【J1第17節 鹿島アントラーズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今節でJ1も折り返しですね。鹿島とはACLを含めて3連戦になりますが、ACLは観戦環境がなくて見られませんでした。なのでこの試合だけを見て書こうと思います。ひとつよしなに。

で、スタメンは以下。

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広島は荒木リベロ、吉野と柴崎のDH、川辺のシャドーと変更点多め。鹿島は相変わらずの442ですが、若い選手の台頭が印象的なメンバーに見えます。特に左サイド。

不均衡なサイドの攻防

さて、試合は開始直後にいきなり鹿島が先制します。ボールが落ち着かない状態で入った吉野からの縦パスをカットしてカウンター、一気に中盤を通過してのクロスから最後はレアンドロという流れでした。この得点によるものかどうかは定かではありませんが、広島がボールを保持して試合を進め、鹿島が対応するという構図が明確になります。その中で、広島のボール保持および鹿島の対応は左右のサイドで大きく異なったように見えました。

まず広島の右サイドについてですが、こちらは鹿島が狙い通りにコントロールしている印象を受けました。具体的には右CBの野上がボールを持つと鹿島はSHの山口とSBの小池が縦にスライドしてアプローチしてコースを消し、さらに中央のレオシルバも連動して攻撃を封殺するという場面がたびたび見られました。これが起こった原因として、広島の右サイド陣の立ち位置が挙げられます。

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DHの吉野は鹿島のFWとMFライン間を使おうとするのですが、ここにシャドーの川辺も降りてきてしまい、使いたいスペースが被ってしまっていたんですね。もともとDHということもあってか川辺は列を降りる動きをかなり頻繁に行っており、裏抜けは少なかったため攻撃に深さを作ることができていませんでした。ハイネルもボールに触りたいのか低いポジションを取っていることが多く、広島の右サイドは狭いエリアに3人が密集しているような状態になっていました。こうなると鹿島のDF陣は狙いどころを絞りやすく、結果として右からの前進はほとんど見られませんでした。

一方、広島の左サイドは何度か効果的な前進を見せていました。こちら側はレアンドロが出てこないので佐々木が比較的自由にボールを持てたという事情もあるのですが、何より利いていたのは森島の位置取りでした。

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常にDFとMFの間でボールを受けようと動き続け、時にはシンプルにDFラインの裏へ抜けようとする動きも織り交ぜることで、鹿島のDF陣には簡単に前に出て行けないように、またレアンドロが簡単に外に出て行けないようにピンどめすることに成功していました。この動きによって柏は大外、柴崎はFWとMFの間と各々の使うスペースもきちんと分担でき、佐々木は常に選択肢を持ってプレーできたのではないかと感じました。

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また、柏にボールが渡った際には必ずと言っていいほどCBSB間に走っており、柏がカットインしたり柴崎が出てきたりとその後の展開につなげるための動きも怠りませんでした。実際に広島の同点ゴールもこの形で、ボールを受けた森島が鹿島のCBを釣りだしてから柏にはたいたことで柴崎が時間とスペースを得ることができ、そこから逆サイドのハイネルに展開できました。左サイドでの整備された動きによって鹿島の圧縮守備を崩すことができた、広島にとっては狙い通りの同点弾であったと言えそうです。

ボールを保持する鹿島

同点になったことで、鹿島もボールを保持する姿勢を見せ始めます。ボール保持の際にはDHを落として3バック化していました。鹿島が4-4-2のままであれば、広島はシャドーがSBを、WBがSHを捕まえれば前方からプレスをかけ、CBは後方で攻撃に備えることができました。しかし、鹿島が3バックになったことでシャドーがCB、WBはSBを捕まえなければならなくなったためCBも前方にスライドする判断を迫られるようになります。この一連のスライドがうまくいかないことが何度かあり、鹿島はそこを突いて裏抜けや土居の間受けによってチャンスを作り出していました。

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後半に入ってからは広島は自陣に引いてブロックを構えることが多くなり、鹿島は攻めあぐねることが多くなります。広島は広島で相手のハイプレスが弱くなってきたから落ち着いてボールは持てるけどDHSH間が前半よりも閉められていて使えず……といった感じでやや試合が膠着する様相を見せます。そんな中でセットプレーから小池のゴラッソによって鹿島が勝ち越し。広島は再び得点を奪いに行くための変化を余儀なくされます。

4-4-2の是非

追い詰められた広島は川辺に替えてパトリックを投入し、4-4-2に変更します。

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高さのある2トップを鹿島の2CBにぶつけ、2人いるサイドからクロスを多用して攻めようということなのだと思いますが、この試合に関していえばほぼ機能していなかったという印象です。SBとSHがクロスを上げるという以前にそこまでボールを運ぶことができず、高い位置で潰されてカウンターを受ける場面が目立ちました。4-4-2同士のぶつかり合いとなったことで鹿島としても捕まえる相手がはっきりして守備がしやすくなり、得意のショートカウンターが決まりやすい展開になったものと思われます。個人的には2トップにしたいなら3-1-4-2のような形の方が、この試合の鹿島相手ならボールを前に運びやすくなってチャンスが増やせたんじゃないかなあと思いました。

いよいよ終盤になり、なりふり構っていられなくなった広島は後方から2トップへのロングボールも用い始めます。すると2トップが守備陣に対して脅威を与えられるようになり、終了間際にロングスローから2トップがヘディングで繋いでからの柏のゴールで同点に追いつきました。鹿島としては目に見えて疲労していたレアンドロが自陣まで戻ってこられず、最後の最後で人数が足りなくなってしまいました。後半はおおむねゲームを支配できていただけに勿体ない失点という感じが強いですね。

試合を終えて

なんとか勝ち点1は取れた広島ですが、J1も半分が終わり、現時点での立ち位置が良く表れているような内容だったかなと感じます。左サイドは自分のタスクを理解している柏と森島、さらに機転の利く柴崎がいてよく機能していた一方、右サイドは決まり事らしきものが観測できず、かなり危うい状態でした。また、ボールを保持された場合に相手の配置に対応して主体的に奪いに行くことは得意ではなく、撤退してしのぐ姿勢が今日も見られました。撤退守備自体は悪いことではないのですが、失点してしまった後に出してきたプランBがあれだけ機能していなかったことを考えると、撤退してロングカウンターに懸けるよりは相手からボールを取り上げる仕組みを実装して当初の3-4-2-1で戦う時間を増やした方がいいんじゃないか、とは思いました。

鹿島の方は前半は広島のボール保持にやや苦しめられたものの、失点以降はあっさりボール保持に切り替えて見せ、それが手詰まりになりかけるとセットプレーから1点もぎとっちゃうという展開が見覚えあってなんというか鹿島だなあと思いました。膠着した試合がセットプレーで動くのを見るたびにギャレス・サウスゲイトの正しさを思い知るというか、サッカーで大事なことは案外そのあたりなのかもなあということがよぎる試合でした。

それではまた、次回があれば。

#06 克己 【J1第15節 サンフレッチェ広島×湘南ベルマーレ】

はしがき

えーどうもお久しぶりです。毎試合やるとか言っておいてすぐにさぼりだしてしまいました。まあライフイベントというやつの関係でできなかったという事情なので、勘弁してください。ここからはぼちぼちやっていく予定です。

という訳で湘南戦。スタメンは以下。

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広島は代表招集のため大迫、泰志が不在。代わりに中林、稲垣が入っています。他にも吉野の復帰、ハイネル初スタメンなど色々といじってきました。湘南も杉岡が代表でいないようですが、このチームはスタメンが普段からいろいろ変わっていて正直よくわかりません。両チームとも3-4-2-1の並びなので、何もしなければミラーゲームになることは予想できますが。

落ち着かない序盤

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さて、システムが噛み合っていることもあり序盤はお互いにボールを落ち着かせることができず、トランジションが連続する展開となりました。特に湘南は広島のボール保持に対して5-3-2のような形で守りながらも後ろの選手がどんどん前に出て迎撃するアグレッシブな守備を見せ、広島に時間を与えませんでした。実際序盤に限っては湘南がカウンターからいくつかチャンスを作り出し、思惑通りに試合を進めている感がありました。

一方、時間を奪われた広島の振る舞いとして印象的だったのは中林に下げてからのロングボールでした。DHを最終ラインに下げて数的優位を確保しようとするのではなく、おとなしくGKを使っていたのは個人的には好印象でした。Dhを下げてもスペースが確保できずに湘南のプレスに捕まっていたでしょうし、前線にはドウグラスと渡がいるのでそれなりに勝算もあります。

そんなところで、強度の高いプレスを持続するのはなかなか難しいという事情とロングボールでプレスが空転したという展開もあり、20分過ぎからは広島がボール保持できるようになっていきました。

噛み合う狙いとウィークポイント

で、広島がボールを保持して湘南が撤退した際、湘南側が徹底していたのが、「3CBはゴール前から離れない」というルールでした。サイドからクロスを上げて中央のドウグラスか渡に合わせる、というのが広島の強い得点パターンなので、ゴール前に3人配置して何としても跳ね返す!という意思を感じました。実際、単純なハイクロスはほぼ跳ね返せていたように思います。ただ、この方針によって空いてしまうスペースがあり、広島はここを使った攻撃も多く取り入れていましたね。

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それが図に示すCBとWBの間で、柏に2人マークを付けてCB3人をゴール前に配置するため、その間には結構なスペースが空いてました。広島は神戸戦や浦和戦でもこういうスペースに川辺を走らせて崩しているなどもともとここの攻略をチームとして狙っている節があり、しかもこの試合は稲垣も起用されていたのでここに選手が入り込んでいく動きが盛んに見られました。広島の狙いと湘南の構造上空くスペースが噛み合ったことで危険な崩しを繰り返すことになりました。例えば森島が深い位置まで走りこんだり、稲垣が低い位置で受けて柏とワンツーしたり、ここの崩しについては多彩なパターンを見せた広島。後半からは右サイドでもこういう崩しを行うようになり、後半開始から20分くらいはほぼずっと俺のターン状態でした。

押し込み続けた結果として森島がPKをゲットして広島が先制。トーンダウンした広島は試合をコントロールしつつカウンターでチャンスを作り、最後に森島の突破から稲垣が2点目決めてゲームエンドという試合になりました。

試合を終えて

 広島は相手のプレスが厳しいと見るやロングボールでプレス回避したり、ハーフスペースが空いてるからDHを突撃させてみたり、右サイドでうまくいったから左サイドでもやってみたりと、相手に合わせて対応してるやん!と言えそうな試合をしていて好印象でした。もっとも、城福監督はこの試合に際して選手にスカウティングの情報はほぼ伝えていなかったようなので、試合中の修正はともかく試合前にどこまで想定していたのかは定かではありませんが。ともかく、この次には相手ががっつり中央~ハーフスペースを封鎖してきた場合にどう動かしていくか、という課題が立ちはだかってくると思うので、そのあたりを見てみたいところです。

湘南は序盤にいい形を見せたものの、トランジションゲームができなくなってからうまく機能しなかったのが厳しかった感じですかね。撤退守備の時にもうちょい頑張ってスライドして封鎖するとかあれば良かったのかもしれませんが、それはそれでカウンターの威力が削がれそうですし……とすれば、やっぱり序盤のようなプレスを持続できるような形を築いていくのが近道なのかもな、と思いました。

それではまた、次回があれば。

#05 熟成【J1第9節 名古屋グランパス×サンフレッチェ広島】

はしがき

えー平素より大変お世話になっております。今節も書きたいと思います。

この試合も見に行きました。なんでも平成最後のJリーグだとかでキャンペーンがあったそうで無料チケットをもらえたので。ありがたい話です。豊田スタジアムは名古屋からも最寄り駅からもやや遠いのがネックでしたが、道中様々なイベントをやっていて飽きさせない工夫があり良かったですね。

試合の話になりますが、スタメンは以下の通りです。

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 名古屋はシャビエルが欠場となり、右サイドには前田直輝が入りました。その他はいつもと同じ4-4-2のようです。対する広島は前節と全く同じメンバーを組んできました。渡1トップということはクロスへの入り方を修正してきていると信じたいですね。

基準の見つからない広島、恐れずに繋ぐ名古屋

さて、この試合では開始から名古屋がボールを持つ展開となりました。名古屋は神戸と同じように2CB+2DHのボックス型でビルドアップを図っていました。特にシミッチは厄介で、渡や柴崎を引き付けて時間を作ってからの吉田への展開をはじめ、前線に時間とスペースの貯金を渡す、というビルドアップの原則を体現しているようなプレーでした。

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これに対し、広島は撤退守備を強いられる状況となります。渡が1人でボックスの4人を見ないといけないような状態になりますが当然止められず、主にシミッチを通じて左サイドに展開されて殴られ続ける展開。広島は名古屋の右サイドでボールを奪いたかったようで、中谷にボールが渡った瞬間に野津田と柏が縦にスライドしていくことが何度かありました。しかし左サイドではこうした動きはほとんどなく柴崎はポジションを守ったため、吉田まで容易につながれて突破されかかっていました。これが例えば攻撃を右サイドに誘導してそこで奪うという設計ならまだ分かるのですが、渡は誘導するわけではなく戸惑っているように見えてしまい、単にたまたま右サイドにボールが来た時に奪いに行ってるだけなのかなあ、と感じました。

例えば渡がマンツーマン気味にシミッチにつく、とかやっていれば左サイド攻撃の威力を削りつつボールを奪いに行けていたのでは?と思いますが、実際には左サイドから容易に前進されてなんとか持ちこたえている、という状態でした。奪いどころが定まらないためカウンターも繰り出しづらく、奪ったボールもすぐ回収されていました。

持ち前のブロックの堅さで持ちこたえていた広島でしたが、37分に右サイドを起点に中央を破られ失点。右にいた川辺がボールを奪いに前に出たところ、その裏を使われての失点という形でした。プレスを恐れずに繋ぐシミッチの技術とジョーの動き出しが光る見事な得点ではありましたが、広島がチームとして奪いどころを明確にしていれば空かなかった穴ではないかとも思える失点でした。

前半の広島はボールを持てないため攻撃する場面もほぼなし。名古屋はラインが高いためその裏のスペースを突こうという長いボールでチャンスになりかけることもありましたが、それで1点とれるほど甘くはなく。厳しい状態で前半を終えることになります。

広島の左サイドを活かす術は

さて後半、広島がボール保持できる時間が増えます。名古屋がリードして即時奪回の意識が弱まったことと、ジョーにボールが収まらなくなってきたことが原因ではないでしょうか。

そんな広島が使ったのは主に左サイド。ボールを奪いに来た名古屋のSH裏で野津田が受けるパターンを初め、左サイドをビルドアップの出口にしていることが多かったですね。で、この日の攻撃は主に柏にボールを渡したところから始まっていました。

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柏に渡ると野津田がCBSB間に走るのはいつも通りですが、野津田が空けたスペースにDHが入ってきて使えていたのは良かったですね。ここは成長を感じました。ここで川辺が受ければ勝負のスルーパスなんかも入れられるわけで、彼の得意な展開ですよね。55分、59分当たりのチャンスはこの展開から生まれていました。こうした動きはぜひ継続してほしいと思います。

また、この展開をすると名古屋は吉田が中央まで絞り、和泉が引くのでその前が空くんですよね。ここで野上がボールを受けてひとしきり迷ってからエミルに渡して手詰まり、みたいな場面もあったのでそこはどうするか詰めておいてほしいなあと思います。個人的にはここに1vs1を仕掛けていける選手がいるといいなあと思うので、そういう意味ではハイネルに期待したいと思います。もうちょっとコンディション上がらないと無理だと思うけど。 

そんな感じである程度狙いを持って攻撃できたとは思いますが、何度かあった決定機を決めることはできず0-1のまま試合終了となりました。

雑感

名古屋強かったですね。特に前半、ボールを持っているときのパフォーマンスは圧巻。相手を引き付けてからパス出して時間とスペースの貯金を作る、というプレーの連続からはボール保持攻撃経験の差を感じました。どこからでも点が取れるその様はまさしく最強の矛であると言えそうです。

広島としては、前半0-0でもいい雰囲気かと思いきやボール奪いに行って失点したのはちょっともったいなかったですね。後半からはある程度きちんと攻撃の形を作っていただけに得点はほしかった。前半にボールを奪う策が不足していたことと、後半に右サイドが手詰まり気味だったのが良くなかったところですかね。ボールが全く奪えないのは神戸戦でも出ていた課題なので何とかしてほしいところ。どこで奪うかをチームで共有できればおのずと誘導すべき場所も定まり、個々のタスクも決まってくると思います。

それではまた、次回があれば。

#04 意図 【J1第8節 サンフレッチェ広島×FC東京】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今節も短いですがやりますので、お付き合いいただけると幸いです。

さて、首位決戦です。無敗同士の対決ということで今シーズン序盤の山場といっても良いのではないでしょうか。とはいえまだ8試合目、この試合の結果がタイトルの行方を大きく左右するというわけでもないため、あくまで34分の1という扱いで見ればいいのかなと思います。負けたから言ってるわけではなくて。そんな試合のスタメンは以下。

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広島は柴崎が復帰し、前節2得点の渡が1トップに入りました。一方の東京は今シーズンいよいよ頭角を現してきた久保が不在で、右SHには大森が入っています。おおむねいつも通り、今シーズンここまでの成果をぶつけあう形となりました。

広島のライン突破、その先の計画

さて、この両チームは共にボール保持はそれほど得意としないイメージがありますが、始まってみると広島がボールを保持していました。東京側が割とロングボールを多めに使っていたことが原因かなと思います。

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で、ボール保持時の広島は泰志を最終ラインに降ろして4バック。東京は2トップが中央のパスコースを制限し、サイドまでボールが出たらSHが寄せる、という設計で奪おうとしていたのだと思われます。この仕組みを利用して呼吸していたのが野津田。東京の右SH大森が佐々木に対してプレスをかけようとしたタイミングでその裏に入ってボールを受けることでビルドアップの出口となっていました。ただ、野津田が受けて柏に渡したけど仕掛けられなくて戻す、というシーンが何度か見られたように、最終ラインを、特にこの固い4-4-2をどう突破するのかはあまり練られていない感じでしたね。

さらにせっかくサイドまで運んでクロスを上げても全員が深い位置まで飛び込んでしまい、マイナスのクロスに誰も合わせられないという問題も生じていました。渡を1トップに据えたことで前節までマイナスの位置に入っていた選手がいなくなって起きたことだと思われます。

東京の安全地帯と何か起こせそうな2トップ

さて、東京が持った場合、広島は積極的にプレスをかけに行かず自陣に撤退していました。いつものように同数プレスをかけると2トップに長いボールを蹴られて危ないからだと思われます。これを見た東京は広島のSHまでボールを運び、そこからWBの裏を狙ったり2トップへのミドルパスを狙ったりしていました。

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結局のところ得点の気配が一番するのはディエゴと永井の2トップで、ミドルパスでもカウンターでもゴールに迫るシーンを作り出していました。ただこれは2トップの能力の高さのみならず、まずは2トップを見るという意思統一がなされていたことが要因のように感じました。

たださすがに広島も守備は固く、エリア内では攻撃陣に自由を許さずスコアレスのまま前半を終えます。

広島のプランBの是非

さて、後半に入っても試合は動かず、70分ごろに東京は永井outジャエルin、広島は柴崎out皆川inと両チームが動き、さてどうなるかと思っていたら71分に佐々木のクリアミスをディエゴが見逃さず東京が先制。広島のサイドで起点を作ってから髙萩のミドルパスという形で、形としてはなんてことのないミスからのゴールですが、2トップをしつこく狙っていればこういうこともあるわけで、狙い通りといえば狙い通りなのかもしれません。

で、失点直後から広島は配置を入れ替えてきまして、左シャドーに渡、右シャドーに野津田、1トップに皆川とします。これだけではよくわからなかったのですが、さらにエミルout清水inとしたあたりで狙いが見え始めます。

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 一言でいうとシャドーとWBのポジションチェンジです。清水が中に入り、野津田が外に出ます。で、東京のSHとSBの対応をぼやかしてフリーになった方を使ってクロス、もしくは大外への展開を狙います。ちょっとの間逆サイドの柏と渡もポジションを入れ替えていたんですが、渡がクロス上げて柏が中で待つの意味わからんなと思っていたところ柏out東俊希inとなってから入れ替わりがなくなったので安心しました。右サイドでポジションチェンジして、東は左サイドで待ち、渡は中央で合わせる担当という風に分担をしていたと思われます。

ただ……東京の守備を破れるかというとあんまりという感じでした。中で待っているのがパトリックならともかく皆川と渡なので、森重とチャンヒョンスに勝てる見込みは薄かったかなと思います。城福監督も前線からのプレスを期待して皆川を入れたところはあると思うので、交代直後に失点したのは不運だったかな、とは感じます。

一応東のクロスのこぼれ球を渡がボレー、ポスト直撃というチャンスがあるにはありましたがあれを決めろというのはなかなか厳しいというか、あれを決めていればまだ首位だったとかそういう問題ではないんだろうな、とは感じました。

雑感

悔しくないとはいいませんが、まあ正直いつかこの負け方はするだろうなと感じてはいました。むしろ前節の神戸戦がレアケースで、先制されてしまうと引きこもった相手を崩す手段に乏しい、というのが現状の課題でしょう。個人的にはクロス爆撃だけでなく、サイドでパスを交換してSBCB間をDHやシャドーが突いていく神戸戦のような攻撃の精度を上げてほしいのですが、なんにせよボール保持攻撃の熟成にはまだまだ時間が必要になりそうです。それと、渡1トップは考え直した方が良いかな……と感じます。1トップの選手には守備ができる選手を起用したいのは分かりますが、渡がいないことでクロス攻撃の威力が激減してしまいました。チームとしてクロスへの入り方を整備するか1トップを皆川やパトリックにするか、あるいはその両方が必要だと思います。

一方の東京は、割り切ったチームかと思いきやサイドからコンビネーションでボールを前進させる場面もそれなりにあり、2トップを活かしたカウンターもあり、非常にバランスの取れたソリッドなチームであると感じました。まだシーズン全体のことを言うには早いと思いますが、今シーズンを引っ張っていくチームの一つになりそうなのは間違いないと思います。

それではまた、次回があれば。