#09 落差【J1第16節 サンフレッチェ広島×川崎フロンターレ】

はしがき

どうもご無沙汰しております。やっぱ毎試合は無理ですね。はしがきで何書いてたかも思い出せなくなりました。

さぼっている間に広島は鳥栖に勝ち、松本と引き分け。松本戦はあと少しのところで3ポイントが逃げていった、という試合でした。ミッドウィーク開催の今節、相手は川崎。今シーズン1つしか負けていない難敵です。広島は中10日、川崎は中3日とやや日程に差がある状態でのゲームになりました。スタメンは以下。

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広島は大迫がスタメン復帰、あとは出場停止の野上に替わって井林がリーグ初先発となりました。川崎は馬渡、守田、家長、長谷川が前節からの変更点でしょうか。このチームは誰が出ても豪華な陣容なのでこれだけ変更があっても全く力が落ちない感じがしますね。

圧縮してスペースを消す広島

さて、試合はいきなり動きました。4分にCKから佐々木のゴールで広島が先制。森島のコメントを見るとミスキックだったそうですし、守田がボール処理をミスしたことにより生まれたゴールでもあるので、広島にとってはラッキーな先制点でしたね。これによってボールを奪いに行かずとも良いという余裕の生まれた広島は、ミドルゾーンまで下がって川崎の攻撃を受け止める選択をします。

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撤退時の広島はいつもと同じ5-4-1。ただこの試合では5と4の間をきちんと圧縮し、ライン間のスペースを使わせないようにする意志を感じました。家長や阿部が下がってきて受ける動きを見せていましたが深追いはせず、ブロックを維持することを優先していたように思います。いつもならついていってボールを奪おうとするところだと感じたので、いつもよりはスペースを守る意識の強い守備だったとも言えるかもしれません。

また、中盤の4人は中央を固め、SBにボールが出るとできるだけSHがスライドして対応していると感じました。これについては、長谷川や阿部にWBCB間を使わせないようにしたいのかな?と思いました。川崎のSHはWBCB間に立っていることがあり、ここをコンビネーションで突破するという狙いは見えたので、これを封じることには成功していたと思います。川崎がここを突破できたのは前半終了間際の井林がクリアしたシーンと、後半終了間際の長谷川のクロスのシーンくらいだったと思います。突破すれば決定機になっているというのが凄いところですけど。

また、4人が中央に圧縮することで守田や下田からのダイレクトな楔を遮断することにも成功していましたね。ボール奪取能力の高い稲垣がいたこともあって、中央からの前進は許さなかったばかりか中央でボールを奪って反撃に転じる場面もありました。

川崎の方が休息が少ないからかミスが目立ったという事情もありますが、それでもリーグ1のパスワークを封じるためのリトリートには高い集中力を要したものと思いますし、広島の選手たちは良くやっていたと思います。

ハマらない川崎のプレス

さて、広島のボール保持についてですが、川崎にとってより問題だったのはこちらだったかもしれません。ビハインドの川崎は広島のビルドアップに対してハイプレスを仕掛けるのですが、なかなかボールを奪えませんでした。

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川崎は守備時は4-4-2のような形になるので、家長と小林が先頭に立ってプレスをかけ、SHやSBが連動してスライドしてきます。そこまでは良いのですが、この時に広島のDHがフリーでボールを受ける事例が頻発しました。川崎のDHである守田と下田は広島のシャドーがいたこともあってポジションをキープ、2トップも二度追いはしてこなかったため、ぽっかり空いたスペースで広島のDHはフリーでした。

図は一例に過ぎないのですが、広島はこのスペースにボールを出してから逆サイドのWBにサイドチェンジという形を多用していました。こんな感じでサイドを変えつつ前進し、WBのクロスから生まれたのが広島の2点目でした。このシーンについてはまあクロスの精度とドウグラスの位置取りのうまさもありましたが、狙い通りのゴールではあったと思います。あと得点後のドウグラスの高音叫びが好き。

城福監督は75分までパーフェクトだったと言っていましたが、前半はほぼ川崎を抑え込むことに成功していました。その上で2点も取れたわけですから広島にとっては理想的だったと言えるでしょう。

ダミアンの強さ

後半開始から、川崎は守田に替えて山村を投入。さらに阿部と家長の位置を入れ替えます。これは守備の基準を作る役割として阿部の方が適しているということ、また家長をサイドに流せば起点が作れるという思惑もあったことでしょう。山村の投入はのちのダミアン投入を見据えた高さ要員という考えなのでしょうか?あるいは中央が封鎖されているのでサイドからの前進を考えて、中央に楔を打てる守田よりもゴール前への侵入やネガトラ対応ができそうな山村、ということかもしれません。

広島がセットプレーから3点目を奪うと、さらに56分には阿部に替えてレアンドロダミアンを投入。以下のような形になります。あ、図には後々の広島の交代も反映してます。

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これでも試合の流れに変化はなく、広島がプレスを回避してボールを回す局面が続きます。川崎の策を無力化して大勢は決したかと思いましたが、75分に小林とダミアンの素晴らしい連携からゴールが生まれます。ダミアンのポストプレーを活かした良いゴールでしたね。

この直後に川崎のプレスが強まったのですが、広島としてはこれまで通りプレス回避できると思って回しにいき、ボールを失ってしまったのが悪手でしたね。失った直後にシンプルなクロスから中央でダミアンに合わせられて2点目を献上。試合は一気に分からなくなります。

このあとの川崎の攻撃はサイドからのダミアンを目がけたクロスが中心になります。広島は空中戦に強い佐々木を失っていたので良い選択だったと思いますし、実際失点してもおかしくないシーンもありましたが、広島が何とか耐えきって3-2で逃げ切り成功となりました。

 

試合を終えて

75分まで完璧に進めていた広島でしたが、残り15分で追い詰められる展開となりました。前節のいやな記憶がよみがえる展開でしたがなんとか逃げ切りましたね。WBの質という強みを活かせるビルドアップと中央圧縮による強固な守備は見事なものだったと思います。1失点目は仕方なかったにしても、そこで安全に試合を進めて終わらせられるようになればもっと安心して見られるんですけどね。世代交代中の若いチームなので、まだこういう展開は見ることになりそうです。

川崎としてはファイナルサードの攻略もプレスもうまくいかず、厳しい内容の試合となりました。それでも2点とってくるあたりがさすがとも言えますが。疲労もあったと思いますが、大分戦でもボール奪取には苦労したと聞きますし、配置の噛み合わせの悪さに対してもっと策を打っていくほうが良いのかもしれませんね。

それではまた、次回があれば。