はしがき
平素より大変お世話になっております。今節も短いですがやりますので、お付き合いいただけると幸いです。
さて、首位決戦です。無敗同士の対決ということで今シーズン序盤の山場といっても良いのではないでしょうか。とはいえまだ8試合目、この試合の結果がタイトルの行方を大きく左右するというわけでもないため、あくまで34分の1という扱いで見ればいいのかなと思います。負けたから言ってるわけではなくて。そんな試合のスタメンは以下。
広島は柴崎が復帰し、前節2得点の渡が1トップに入りました。一方の東京は今シーズンいよいよ頭角を現してきた久保が不在で、右SHには大森が入っています。おおむねいつも通り、今シーズンここまでの成果をぶつけあう形となりました。
広島のライン突破、その先の計画
さて、この両チームは共にボール保持はそれほど得意としないイメージがありますが、始まってみると広島がボールを保持していました。東京側が割とロングボールを多めに使っていたことが原因かなと思います。
で、ボール保持時の広島は泰志を最終ラインに降ろして4バック。東京は2トップが中央のパスコースを制限し、サイドまでボールが出たらSHが寄せる、という設計で奪おうとしていたのだと思われます。この仕組みを利用して呼吸していたのが野津田。東京の右SH大森が佐々木に対してプレスをかけようとしたタイミングでその裏に入ってボールを受けることでビルドアップの出口となっていました。ただ、野津田が受けて柏に渡したけど仕掛けられなくて戻す、というシーンが何度か見られたように、最終ラインを、特にこの固い4-4-2をどう突破するのかはあまり練られていない感じでしたね。
さらにせっかくサイドまで運んでクロスを上げても全員が深い位置まで飛び込んでしまい、マイナスのクロスに誰も合わせられないという問題も生じていました。渡を1トップに据えたことで前節までマイナスの位置に入っていた選手がいなくなって起きたことだと思われます。
東京の安全地帯と何か起こせそうな2トップ
さて、東京が持った場合、広島は積極的にプレスをかけに行かず自陣に撤退していました。いつものように同数プレスをかけると2トップに長いボールを蹴られて危ないからだと思われます。これを見た東京は広島のSHまでボールを運び、そこからWBの裏を狙ったり2トップへのミドルパスを狙ったりしていました。
結局のところ得点の気配が一番するのはディエゴと永井の2トップで、ミドルパスでもカウンターでもゴールに迫るシーンを作り出していました。ただこれは2トップの能力の高さのみならず、まずは2トップを見るという意思統一がなされていたことが要因のように感じました。
たださすがに広島も守備は固く、エリア内では攻撃陣に自由を許さずスコアレスのまま前半を終えます。
広島のプランBの是非
さて、後半に入っても試合は動かず、70分ごろに東京は永井outジャエルin、広島は柴崎out皆川inと両チームが動き、さてどうなるかと思っていたら71分に佐々木のクリアミスをディエゴが見逃さず東京が先制。広島のサイドで起点を作ってから髙萩のミドルパスという形で、形としてはなんてことのないミスからのゴールですが、2トップをしつこく狙っていればこういうこともあるわけで、狙い通りといえば狙い通りなのかもしれません。
で、失点直後から広島は配置を入れ替えてきまして、左シャドーに渡、右シャドーに野津田、1トップに皆川とします。これだけではよくわからなかったのですが、さらにエミルout清水inとしたあたりで狙いが見え始めます。
一言でいうとシャドーとWBのポジションチェンジです。清水が中に入り、野津田が外に出ます。で、東京のSHとSBの対応をぼやかしてフリーになった方を使ってクロス、もしくは大外への展開を狙います。ちょっとの間逆サイドの柏と渡もポジションを入れ替えていたんですが、渡がクロス上げて柏が中で待つの意味わからんなと思っていたところ柏out東俊希inとなってから入れ替わりがなくなったので安心しました。右サイドでポジションチェンジして、東は左サイドで待ち、渡は中央で合わせる担当という風に分担をしていたと思われます。
ただ……東京の守備を破れるかというとあんまりという感じでした。中で待っているのがパトリックならともかく皆川と渡なので、森重とチャンヒョンスに勝てる見込みは薄かったかなと思います。城福監督も前線からのプレスを期待して皆川を入れたところはあると思うので、交代直後に失点したのは不運だったかな、とは感じます。
一応東のクロスのこぼれ球を渡がボレー、ポスト直撃というチャンスがあるにはありましたがあれを決めろというのはなかなか厳しいというか、あれを決めていればまだ首位だったとかそういう問題ではないんだろうな、とは感じました。
雑感
悔しくないとはいいませんが、まあ正直いつかこの負け方はするだろうなと感じてはいました。むしろ前節の神戸戦がレアケースで、先制されてしまうと引きこもった相手を崩す手段に乏しい、というのが現状の課題でしょう。個人的にはクロス爆撃だけでなく、サイドでパスを交換してSBCB間をDHやシャドーが突いていく神戸戦のような攻撃の精度を上げてほしいのですが、なんにせよボール保持攻撃の熟成にはまだまだ時間が必要になりそうです。それと、渡1トップは考え直した方が良いかな……と感じます。1トップの選手には守備ができる選手を起用したいのは分かりますが、渡がいないことでクロス攻撃の威力が激減してしまいました。チームとしてクロスへの入り方を整備するか1トップを皆川やパトリックにするか、あるいはその両方が必要だと思います。
一方の東京は、割り切ったチームかと思いきやサイドからコンビネーションでボールを前進させる場面もそれなりにあり、2トップを活かしたカウンターもあり、非常にバランスの取れたソリッドなチームであると感じました。まだシーズン全体のことを言うには早いと思いますが、今シーズンを引っ張っていくチームの一つになりそうなのは間違いないと思います。
それではまた、次回があれば。