#8 【2025J1第9節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

毎度お世話になってます!今回はセレッソ戦。ここ数年の広島にとっては相性のいい相手ですね。スタメンは以下。

広島は鹿島戦の後半に引き続き中野をCBに起用。前線は新加入トリオが引き続き起用された。
セレッソはGKがキムジンヒョンになったこととCBが畠中→西尾になったのが変更点。キムジンヒョンは前節途中出場しているが何があったのだろうか……

曖昧だった広島のプレス

鹿島戦とは異なり、広島は試合開始から積極的にセレッソのビルドアップ隊にプレスを仕掛けていった。しかし、その出来はセレッソのビルドアップに適応する準備が出来ていたとは言えないものだった。

セレッソは中盤の3人が広島のDHに対して数的優位となるためここを活かすのが基本的な前進方法となるが、広島はここをどう潰すかがあまり共有されていなかった。

シャドーのうち1人がDHをマークするとかWBが絞ってくるとか具体的な手段に乏しく、対面となる川辺や田中も戸惑いながら寄せているようでプレッシャーが弱く、北野や中島がストレスなくパスを出せる場面が多かった。3CBの迎撃も鹿島戦と比べると弱めで、全体的にプレスに行くかどうか迷っているように見受けられた。

もしかすると鹿島戦と同様ミドルプレスのつもりだったがセレッソが思いのほかGKも含めてつないでくるため、プレスに人数をかけることになってしまい、後ろも引き出されてその背後をWGに攻略されていったのかもしれない。失点シーンは川辺と中野のマーク受け渡しが上手くいかないことも重なりほぼ完璧に崩されていた。

サイドでの数的優位を生かせない広島

また、前半の広島はボール保持においても良さを出せていなかった。

左右のCBとWB、シャドーがいることでサイドで数的優位を取れる広島はセレッソのWGとSBを釣り出してその背後をシャドーで取ろうとしていた。しかし左サイドはルーカスと奥田の素早いプレスで佐々木と菅に時間を与えず、右サイドは中野を放置して引き気味に構えることで背後のスペースを空けないようにしていた。中野は余裕があるのでドリブルで運んで相手を引き付けてから背後を突けるとよかったが、すぐに新井に渡してしまって背後が空かなかったり、川辺や前田が前方にいるのに飛び出していったりと今ひとつチームの狙いと振る舞いが噛み合っていないように見えた。

前半の広島の保持が唯一狙い通りに行ったと言えるのが新井の得点シーンで、菅が上手く時間を作れたことで奥田を引き出した上で背後にボールを届けることができ、さらにカバーにやってきた西尾をジャーメインがかわせたため逆サイドの新井をフリーにできた。ここをものにできたのは素晴らしかったが、それ以外にはほとんどいい所のない前半で、1-1で折り返せたのは体を張った守備陣と幸運のおかげだろう。

交代で狙いをはっきりと

後半から広島は新井に替えて塩谷、ジェルマンに替えて中村を送り出し、中野をWBに上げる。この交替とハーフタイムでの修正によってしっかりとチームで狙いが共有されたように見えた。

まず保持については塩谷がしっかりと相手のWGを引きつけるようになり、SBの奥が取りやすくなった。後半早々に中村が右サイド奥に流れてくる動きを見せるなどチームとしてここを狙うことは整理されていたように思う。中野を上げたのは新井の負傷という背景もあったろうが、サイドへのロングボールの的にするという狙いでもあっただろう。

また、非保持では前線も最終ラインも人に強く行くことが共有された感があった。前線は中村と加藤がセレッソの中盤やSBなどプレスの間に合っていないところを素早い判断でカバー。3バックは対面の選手に対して迎撃で出ていく範囲を広げることでセレッソのビルドアップを阻害していた。

セレッソも登里と中野のマッチアップが不利と見るやすぐに高橋を投入するなど素早く対策を打ち、試合は膠着状態に。最後はロングスローという武器を増やした広島が試合を動かして競り勝つという形になった。

雑感

鹿島戦で見せたロングカウンターは見られなかったが、広島らしい強度の高さで巻き返したのが印象的なゲームだった。とはいえ前半の不本意な出来は要反省で、そもそもチーム内でどのようなプランで行くのか意思疎通が取れていなかったように思える。次の岡山はまた違ったスタイルのチームで、どういう態度で試合に入るかはしっかりと整理しておくべきだろう。

セレッソは苦手な広島にまたしても煮え湯を飲まされることになった。前半のプレス回避は見事だったが強度を問われる展開だと脆さを見せるのはこれまでと共通しているように見えた。中盤の起用的にもボール保持で押し切るしかないように見えるので、それができない時の振る舞いは今後も問われることになるだろう。

それではまた次回。