はしがき
毎度お世話になってます!チームのレビューを書いたところですが、今年は個人のレビューも書いてみようと思います。なんかいろんな人がやってて楽しそうなので……
正確でないところもあると思いますが、気楽な読み物と思ってお楽しみください。
なお、データはSoccer D.B.さんからお借りしました。(アシスト数のみTransfermarktで補足)
プレータイムと編成の確認
最近いろんな所(1)(2)でプレータイムの確認が行われているので、それに倣って広島のプレータイムを見てみましょう。
(1)
(2)
今シーズンの広島は54試合(+シュツットガルト戦)、合計で約5000分を過ごしました。
ヨーロッパの大会に出ているクラブがこれくらいの試合数をこなしているらしいので、移動の負荷を考えてもそれと同程度には過酷なシーズンを過ごしたと言えそうです。
で、プレータイムを散布図にしたものがこちら。
選手の立ち位置を先行文献に倣って分類するとこんなところでしょうか。赤字はシーズン途中で加入/退団した選手です。
4000分以上(軸)・・・中野、東、大迫、佐々木
3000分以上(超主力)・・・加藤、松本泰、塩谷、荒木
2500分周辺(レギュラークラス)・・・満田、新井
2000分周辺(レギュラー争い)・・・大橋、ピエロス
1500分以下(ロールプレイヤー)・・・川辺、川村、トルガイ、越道、ドウグラス、中島、志知、マルコス、柏、ゴンサロ、松本大、川浪、細谷、田中、茶島、青山、野津田、イヨハ、井上、小原、エゼキエウ、木吹、山崎
散布図を見ても分かりますが出場時間の偏りが目につきますね。3000分周辺~それ以上出ているのが新井までの10人でシーズン途中に抜けた大橋がいて、あとは全員1500分かそれ以下という感じ。ここから前半戦は川村、後半戦は川辺とトルガイが主力組に入ってくるというイメージではありますが、にしても中心選手に出場時間が集中しすぎているように思います。
年齢的な分布で言えば佐々木と塩谷の出場時間の長さが目立ちます。彼らのプレータイムを2000分台にまで抑えつつ、4000分近く出ている選手たちも3000分くらいに減らせるのがいいかなという感覚ですかね。来季は今季途中加入組の川辺、トルガイ、ゴンサロのプレータイムは増えるでしょうが、それ以外の30歳前後の選手たちは特に出場機会を増やしたい1年になりそうです。
という訳でここからは各選手の短評です!
構成についてはこちらの個人レビューを参考にしています。
ご意見ご感想ミス指摘などありましたらこちらまでお寄せください。
以下常態。
GK
1 大迫 敬介
【スタッツ】
45試合 4050分 16クリーンシート
【短評】
俺たちの守護神は今年も元気に全試合フル出場。プレシーズンでは手術を行ったことでアジアカップには出場できずこけら落としも逃したが、シーズンにはしっかり間に合わせた。
そもそもこのスタイルのチームのGKが退場とかなくフル出場していることがかなりすごい気がする。まあ大迫は飛び出しが多いわけではなく最後まで待って止めているというイメージなので退場になりにくいというのはありそう。広島の最終ラインは本当にギリギリまでスライディングしないというイメージがあるのだが、おそらくイチかバチかで滑ってしまうよりも戻ってシュートコースを削り、大迫と連携して止めるということが徹底されているのだと思っている。
キック精度はご愛敬だがそれ以外は本当にレベルの高いGKなので、海外移籍の有無は気になるところ。本人はJリーグからでも代表でやれることを見せたい的なことを言っていたので行く気はないのかもしれないが、現実問題代表レギュラーになるには海外トップリーグでレギュラーを取るしかないだろう。そうなってくると次のW杯に向けてはもうかなりギリギリのタイミング。サポーターとしてはいてくれる方がありがたいが、キャリアを慎重に考えるタイミングが来ていそうだ。
ちなみに4月のホーム川崎戦が自責点2みたいな試合だったのだが、試合後のインタビューで切り替えないとダメっすねみたいなことを涼しい顔で言ってて良かった。煽りでも何でもなく偉大なGKにはこういうメンタルが必要なんだと思う。
21 田中 雄大
【スタッツ】
4試合360分 1クリーンシート
【短評】
リーグ戦では試合に絡めず、ACL2と天皇杯で4試合出場。クリーンシートは1試合だが、相手を考えるともう少し失点は抑えたかったかもしれない。パフォーマンスという意味でも東方戦での2失点目の抜かれ方など気になるところはあった。
29歳とGKとしてはまだまだこれからの年齢だが、2年目が終わってリーグ戦に絡めていないという事実は重くもある。契約更新が発表された来季は勝負の年だろう。
22 川浪 吾郎
【スタッツ】
5試合480分 1クリーンシート
【短評】
ルヴァンと天皇杯で5試合出場で、大迫がいない間のカップ戦を任されたのがシーズンの山場だったという形。結果的には両方とも敗退してしまったのだが、ルヴァンの一戦目での1vs1セーブなどパフォーマンス自体は悪くなかったように思う。こういうシーズンに数回しかない出番で安定した出来を披露してくれるので、2ndGKとしては非常に信頼できる存在だろう。
とはいえ大迫がいる現状で1stチョイスとなるのはかなり難しいと考えざるを得ず、今後の動向は本人が現状の立ち位置をどう考えるかによる部分も大きそうだ。雰囲気作りも含めてぜひいてほしい選手ではあるが、出場機会を求めていると言われれば引き留めることは難しいのかもしれない。
39 薄井 覇斗
【スタッツ】
0試合0分 0クリーンシート
【短評】
シュツットガルト戦でちょっとだけ出たのみで、あとはベンチ外。加入の経緯からしても大迫の海外移籍&けが人続出に備えてという感じに見えたので、ヒルの加入が決まった今役割は全うしたということだろう。
この一年のトレーニングが今後のキャリアのプラスになっていてほしい。とりあえずは所属先が見つかることを願うばかりだ。
DF
3 山﨑 大地
【スタッツ】
1試合1分 0G0A
【短評】
パリ五輪出場のためにも序盤から活躍したいシーズンだったが、第2節の後のトレーニングで前十字靭帯断裂の大けが。シーズン絶望とともにパリ五輪への道も閉ざされるあまりにもつらい春となってしまった。
こけら落としで初ゴールの起点となったロングボールのような最終ラインからのビルドアップ能力に加えて中盤でもプレーできる器用さなど独自の強みを持つ選手なだけに、早々のシーズンアウトは本人だけでなくチームにとっても大きな誤算となったと思う。
その後はinsideに登場して元気な姿を見せるなど雰囲気作りでチームに貢献。まず治療を優先しては欲しいが、最終ラインの過労っぷりを見ると来季2000分くらい稼働してほしいというのが本音で、来季の浮沈のカギを握る一人だろう。
4 荒木 隼人
【スタッツ】
37試合3000分 4G0A
【短評】
13 新井 直人
【スタッツ】
45試合2855分 6G8A
【短評】
山崎の負傷に伴う緊急補強として新潟から引き抜いてきた右SB。やることがエグ過ぎるしそもそも山崎とポジション違くない?という話はあるのだが、右WBは普通に手薄だったためしっかりとポジションを確保していた。移籍当初は期待されていたCBとしての働きはサイズと対人性能が問題となり(これは広島のCBに求められるものが高すぎるだけ)ほとんど見られなかったが、単調になりがちな右サイドのビルドアップにおいて中野と立ち位置を入れ替えつつ崩しに参加していける動きは大きな強みとなった。京都戦のハットトリックをはじめとする妙な得点能力の高さや精度の高い右足プレースキックなど、広島に絶妙に足りなかった要素を補ってくれるよい買い物だったと思う。
一方で終盤にチームがロングボール&トランジション路線に傾倒し始めてからは強みを発揮できなくなり、最後はACL2での負傷で終了となってしまい不完全燃焼感も強い。右サイドのビルドは彼に依存しているところもあると思うので、何とか強度面で首脳陣を納得させてポジション確保してほしい。
28歳といい年齢だが、広島の金払いも良くなってそうなのでよほど4バックのSBにこだわりがあるとかでなければとりあえず移籍の心配はしなくても良いだろう。
15 中野 就斗
【スタッツ】
52試合4418分 5G5A
【短評】
こうなるとどこを本職とするかという問題も出てくるが、
19 佐々木 翔
【スタッツ】
46試合4031分 5G2A
【短評】
毎年のことではあるが35歳で4000分出てるのはやばい。しかも負荷の高い広島のCBでということで、コンディション管理を含めた日々の努力には脱帽と言わざるを得ない。もちろんパフォーマンスも伴っており、さすがにスピードタイプに振り切られることは増えたが前に出てのインターセプトや跳ね返しは相変わらず抜群。攻撃の起点としてもH川崎戦でのクロスなど左足の精度が高いのもグッド。今年はH名古屋戦でパスミスも出てしまったが、つなぐところと蹴るところのバランスは今くらいでお願いしたい。
あえて言うことがあるとすれば終盤は攻撃参加が増えるなど気負いが変な方に出ていた気がする。基本的に攻撃参加するより後ろでカウンターをつぶしてくれる方がリターンの大きい選手だと思うので、後方支援に徹してほしいところ。
35歳でキャプテンということもあり、ここから移籍は考えづらいだろう。できる限り今のパフォーマンスを維持して欲しいというくらいしか言うことはない。佐々木に限った話ではないがCB陣はもう少し試合中の負担と稼働時間を減らして楽させてあげたい。
27 イヨハ 理 ヘンリー
【スタッツ】
6試合263分 1G0A
【短評】
しかし熊本と京都でバリバリ出ていたCBが出られてないとなると
33 塩谷 司
【スタッツ】
47試合3686分 1G2A
【短評】
何のかんの言いつつ今季もCBとDHでほとんどフル稼働。CBでの対人性能と攻撃参加やDHでのスペース埋めなど、今までのプレーを安定して発揮しているという感じなのだが、35歳でそれが発揮できるのはまあすごい。とはいえ今シーズンは中野が本格的にCBとしての起用が増えてきており、攻撃参加の仕方という点でもポジションを引き継いだ感はあった。DHが全然いなかった関係でプレータイムを増やすことになったが、来シーズンからはクローザーとしてプレーするような運用も可能になるだろう。広島をいたく気にいってくれているようなので、去就について懸念すべきところはなさそうだ。
MF
5 松本 大弥
【スタッツ】
9試合565分 1G0A
【短評】
リーグ戦での出番はほぼなく、主にACL2でプレーした。川村がいない時期にベンチに入り、横浜FM戦で満田の退場後に出番が来たものの大きなインパクトは残せず。あの試合でインパクトを残せという方が難しいと思うが、立ち位置が厳しい選手はそれくらいしないといけないということかもしれない。
ACL2ではCCB、右CB、DHで起用されて1ゴール。ゴラッソだったし器用なところも見せたが、それぞれライバルの多いポジションなのでどうしたものか……という感じ。昨シーズンよりもプレータイムは増えており、来期は通年でACLがあるので引き続き出番もあるだろうが自身の立ち位置をどう捉えるかによって去就も変わりそう。まあ24歳なのでまだまだここからかもしれないが。
6 青山 敏弘
【スタッツ】
9試合348分 2G2A
【短評】
今シーズン限りで引退。21年に及ぶキャリアを広島一筋で走り切った。22シーズンからは流石に強度について行けない場面が目立ったが、プロ3年目から出番を掴んで15シーズンほど主力であり続けたのは凄すぎる。今シーズンはチームを盛り立てたりSNSでの発信を頑張ったりとベテランらしい働きをしていたのが印象的。
最終盤に出番を得られた札幌戦と東方戦ではめちゃくちゃ点を取りに行っていたのが面白かったが、それくらいは許される選手だろうし実際に点も取れて何よりだった。来季からはコーチとして残るっぽいので、INSIDEなどで元気な姿を見せてほしい。
個人的には最終節でも変わらずガンバサポにブーイングされてたのが良かった。最後は拍手で送り出されてたけどね。Jリーグのいいところです。
7 野津田 岳人
【スタッツ】
7試合291分 0G0A
【短評】
残念ながら出場機会を得られず夏にタイに移籍となった。まあ開幕から川村の相方が定まらないのに出場機会を得られなかった時点で信頼を得られていないのだろうなとは思ったが、なぜここまでプレーできないのかの理由は最後までよく分からなかった。川村の移籍でプレー機会も増えるのではとも思ったが、トルガイや川辺の獲得予定とか聞かされての決断だったのかもしれない。
結局広島で立ち位置を確立していたのは2022と2023のみだったということになる。技術と強度を両立した上左足にはロマンもあるという貴重な選手でありもう見られないのは寂しいが、新天地での活躍を祈りたい。移籍先のパトゥムにはティーラシンやチャナティップら日本にいたことのある選手たちがいてうまく馴染めているようだ。
8 川村 拓夢
【スタッツ】
15試合1268分 3G0A
【短評】
今季も開幕から主軸として活躍し、6月代表ウィーク後の東京V戦をもってザルツブルクに旅立った。プレータイムも6月まででケガによる離脱もあったうえで1200分越えなので、いるときはほとんど試合に出ていたということになる。まあ昨シーズン後半からは2020~2021年あたりの川辺を彷彿とさせる何でもできるスーパーマン状態だったので、海外移籍は時間の問題だった。
ラストマッチの東京V戦は試合が終わったと思ったら急に泣き出したり写真を取り出したりして移籍か……!?と思ったところにチーム離脱のリリースが出るという斬新なものだったが、移籍する選手をあんなにがっちり試合に使って大丈夫なのかよと思った。
移籍後すぐに負傷してしまい出遅れたが、無事にデビューを果たしたそうでここからが正念場。現実的にW杯出られるチャンスがある位置にいると思うので、ぜひチームでポジションを確保してほしい。オーストリアはウィンターブレイクがあって日本に戻ってきているらしいけど。
14 松本 泰志
【スタッツ】
49試合3777分 4G4A
【短評】
個人的今季MVP。22年、23年はロールプレイヤーの域に留まっていたが、今季の働きぶりは誰がどう見ても主軸のものだった。
前半戦は川村の相方としてファーストチョイスとなってプレータイムを稼ぎつつ、中盤でシャドーでの起用もあったことでプレーの幅を広げ、連勝時期の立ち位置を入れ替えつつゴールに迫る保持型サッカーの原動力となった。これまでは3列目からの飛び出しがフォーカスされがちだったが、今季はそれに加えてシャドーから降りてくることで起点を作るような動きができるようになっていたのが印象的。シャドーとDHのどちらでも高いレベルでプレーできる選手は少なく、来季も変えの利かない存在となりそうだ。もうちょっとだけシュートが入るようになったら本当に国内有数の中盤だと思うのだが……シュートそのものはかなりうまいのになぜか入っていないというイメージがある。
海外移籍というほどの派手なパフォーマンスではないが、国内引き抜きとかは全然ありそうなので主力なりの待遇を用意してあげてほしい。地元の浦和とか怖いよ。
【追記】
浦和に完全移籍となった。どうしてこんなことに。でも地元だしな!頑張って!
16 志知 孝明
19試合799分 0G2A
【短評】
H鳥栖戦の4点目みたいな大外から斜めにHS突撃していく動きは面
来季は菅の加入も決まりさらなる苦境が予想される。
17 エゼキエウ
【スタッツ】
11試合157分 1G1A
【短評】
とにかくプレータイムが伸びなかった。後半から出てくるジョーカー的な使い方をベースに、コンディションが良ければスタメンでの起用も増えてくるというイメージだが、今季はそもそもケガがちで出場機会を増やせず、ジョーカーとしての出番でも目立った活躍はできなかった(これは活躍する方が難しいのだが)。
シャドーでプレーできる選手も増えてきたということで、ブラジルに帰っていたこのタイミングで契約満了。
スピードタイプなので今からがまさにピークというところ、しっかり活躍できるクラブを選んでほしい。
18 柏 好文
15試合605分 1G2A
11年在籍した偉大なサイドアタッカーも今シーズンで退団。年齢とプレータイムを見るとまあやむなしとは思うが、シーズンの過ごし方にはプロの矜持を感じた。高い強度が求められるチームにあって序盤は出番がなかったもののACL2の出場機会を通じて信頼を勝ち得ていき、優勝のかかったリーグ最終節でちゃんと戦力としてベンチ入り。そればかりか出場して短い時間でアシストも決めてしまうのだから、まだ現役続行しますという決断にも納得するしかない。
さすがにフル稼働は厳しいと思うが、ジョーカーとしてなら欲しいクラブはJ1にだってあるだろう。妙な得点感覚の持ち主でもあるので、どこか国内クラブのハイライトで点を取っている姿を見せてほしい。「相変わらず点取れるなあ」と思わされる場面が目に浮かぶ。
24 東 俊希
【スタッツ】
48試合4098分 4G9A
【短評】
昨シーズンも素晴らしかったが、今シーズンは通年フル稼働した上でパフォーマンスが落ちなかったということで一つ上のレベルに上がった感のあるシーズンだった。左足からの高精度クロスはもちろんのこと、今季はサイドに流れてきたシャドーと入れ替わって中央に入っていくことで攻撃のアクセントとなる場面も多く、広島のボール保持にとって欠かすことのできない選手だったと言える。サイドの守備者としてはやや物足りない部分もあるが、5バックだったのであまり目立ってはいなかったように思う。あと直接FKもうちょっと蹴ってみてほしいんだけど、あんまり蹴る気ないんですかね。CKはあれだけ正確なのを蹴ってるんだから、FKであと年間2点くらい増やせそう。
24歳でこれだけやれるということでもちろん海外移籍は気になるが、世界に出るならSBということでやはり対人性能の部分は気になる。中野と同じくE-1を目指してみて、そこで試してみるというのがいいのではないか。もちろん広島が4バックにしてくれてもいいのだが。
25 茶島 雄介
【スタッツ】
9試合359分 0G0A
【短評】
中野に加えて新井という強力なライバルが出てきたことで厳しい1年となった。立ち位置を調整して周囲との連携で状況を打開していくタイプの茶島にとって新井はタイプもろ被りの選手であり、その新井が出られているなら出場時間が短いのはまあ当然ではある。加えてWBは越道もいてカップ戦でもまとまった出場機会がないのがつらいところ。現時点でリリースが出ていないので満了ではないのかもしれないが、正直移籍先を探していない方が不自然という状況だと思う。
30 トルガイ アルスラン
【スタッツ】
21試合1196分 10G1A
【短評】
31 木吹 翔太
【スタッツ】
1試合45分 0G0A
【短評】
ACL2カヤFC戦での45分のみ!まだユースなのでしょうがない。CBで使う強度が出ないからなのかDHでプレーしていたが、ゆっくりプレーして味方に時間とスペースを配っていてそういう感じなんだ、と驚いた記憶がある。
フィジカル的にも慎重に起用した方が良さそうなので、まずは中盤でというのはいい選択肢かもしれない。
32 越道 草太
【スタッツ】
29試合1123分 1G0A
【短評】
なかなか苦労の多い2年目だったと言えるだろう。リーグ序盤戦は中野が最終ラインで起用されていたことによりWBで出場機会を増やしH名古屋戦では初ゴールも決めたが、新井の台頭により徐々に出番を失っていき、ルヴァン名古屋戦でのオウンゴールなどつらい夏を過ごすこととなった。非保持での対応が厳しいとみられたかACL2では右CBでの出場が増加。カヤFCの堀越にちぎられまくるという荒療治を経験していた。
A横浜FM戦では途中から出てきて押し込まれながらも宮市と互角の勝負を見せるなど決して悪くなかったと思うのだが、やはり今の広島のWBに求められるタスクと折り合いが悪いというのはあるかもしれない。本人的には高い位置でボールを受けてクロスというウイング仕事の方が向いていると思うが、今の広島のWBは積極的にビルドアップへの関与が求められる状態。そのあたりの器用さで新井に見劣りするのはキャラクター的にも経験的にも致し方ない部分だろう。
とはいえ2年目の20歳で1000分越えは上出来の部類だろう。点が欲しい時のクロッサーとしては既に有力候補で、左でのプレーも経験してジョーカーとしての起用は十分計算できる。菅もライバルになるだろうが、来季はこの立ち位置からリーグ戦への出場を増やしたい。
34 細谷 航平
【スタッツ】
6試合464分 0G0A
【短評】
リーグ戦の出場はなく、カップ戦とACL2で研鑽の日々だった。中盤より前の選手が多いため最終ラインでの出場は多かったが、左足からのフィードは正確で落ち着いてボールを持ち、運べる点は長所。一方でさすがにフィジカルでは苦戦し、A東方戦ではロングボール一発でちぎられて失点という苦い経験も。1年目で本職でなさそうな最終ラインでの出場が多かったというのは不運だが、大卒ルーキーなので満田や中野ほどではないにしてもリーグ戦に絡みたかったのは確かだろう。
来季は愛媛へのレンタルが決定済み。中盤なのか最終ラインなのかは分からないが、早めにフィットしてプレータイムを延ばすことが帰還の最低条件だろう。
35 中島 洋太朗
【スタッツ】
23試合893分 2G0A
【短評】
40 小原 基樹
【スタッツ】
9試合194分 3G2A
【短評】
怪我に泣かされた1年だった。前半戦はジョーカー枠としてリーグ戦にもシャドー、WBでたびたび出場。ドリブルはJ1でも通用するレベルであることを見せていたが結果が出せない日々が続く。天皇杯ではハットトリックも達成したものの試合に絡めたのはその翌週のA柏戦まででその後はベンチ外、夏には足の骨折で全治3~4か月となりそのままシーズンが終わってしまった。
プレーを見ているとちょっとドリブル一辺倒すぎるというのが正直な印象で、囲まれてしまうとどうにもならないというシーンが目についた。J2で得点を重ねていた実績もあるので、もうちょっとフィニッシャーとしての姿も見てみたいところ。WBで高い位置に置いて思う存分仕掛けてもらったり、逆サイドからのクロスに合わせるのが良さそうな気がしているがどうだろうか。
今季は万全でなかったということもありすぐに放出されることはないだろうが、左WBもシャドーも人が多いポジションなので強みを出せずにいると移籍がちらつきだすだろう。
66 川辺 駿
【スタッツ】
19試合1312分 0G1A
【短評】
川村の移籍を受けて電撃復帰すると直後のC大阪戦で即先発、シーズン後半にかけて試合に出続けた。2021年までは中盤でのデュエルの強さと3列目からの飛び出し、シュート精度の高さが印象的だったが、加入当初はヨーロッパの経験を経てよりバランス型にシフトしているという印象だった。
しかし監督からはもっと前に出て行けというオーダーがあったようで、A鹿島戦の逆転ゴールなど前線に出ていく動きが増えた。まあ川村の後に来た選手なのでそういう役割を求められるのも分かるが、その仕事は松本泰もできるから別にやらなくていいと思う。DHが+1として出ていくのは相手を押し込んでからやることで、ビルドアップの出口にDH飛び出しを使うのは違うやろというのが僕の考えです。とはいえ監督の求められるプレーをしないと出場機会は減っていくわけで難しいところ。
終盤戦ではビハインド時に60分で替えられるなど、ちょっと信頼されてないのか?と感じる場面もあった。難しい立場だが、なんとか出続けてバランスを維持してほしい。青山の引退セレモニーでは6番を譲り受け、来年は名実ともに主軸になっていくことが期待される。
FW
9 ドウグラス ヴィエイラ
【スタッツ】
31試合997分 6G1A
【短評】
CFの多いスカッドで37歳ということで、さすがに出場機会を減らしたシーズンとなった。それでも夏場などピエロスとプレータイムを分け合う形でリーグ戦にも出場して安定したポストプレーや最終局面への顔出しを披露し、A柏戦では決勝ゴールも決めて見せた。
今シーズン限りで契約満了となったが、状態さえよければ常に安定したパフォーマンスを見せてくれて年に何点かは確実に取ってくれるあたり助っ人としては非常に助かる存在だった。早めに満了となったということは、今後は母国に戻るのだろうか。日本での暮らしも長いし、カテゴリーを下げれば欲しがるチームはありそうだが。
10 マルコス ジュニオール
【スタッツ】
19試合723分 5G2A
【短評】
なかなか稼働率の上がらないシーズンとなった。リーグ戦ではときどき思い出したように先発に名を連ね、あとは終盤で点が欲しい時に出てくるかベンチ外かの繰り返し。やはりコンディション維持に難を抱えているようで、出てきたときのオンザボールでは違いを見せられていた。A柏戦では慣れないDH起用に苦しむ加藤を見かねてポジションを変更し器用なゲームメイクを見せるなど経験値もさすが。
一方のオフザボールではアジリティはあるものの広島のシャドーとして求められるプレッシングや切り替えができていたかというと微妙な所。常にケガのリスクを抱えているため100%を出せずに苦しんでいるという印象だ。チームが保持に取り組んでいたタイミングで離脱していたのが不運だったという見方もできるが、不在の間にトルガイや中島の存在感が増してきて立場的には苦しい状況。来季もACLがあるのでプレータイムは確保できるだろうが、挑戦者の立場になりそうだ。
余談だが京都戦だったかで出てきたときにめちゃめちゃごつくなっていた気がする。肉体改造に取り組んでいるのかもしれない。
11 満田 誠
【スタッツ】
50試合2935分 6G8A
【短評】
出場時間と結果からイメージされるほど良いシーズンではなかったかもしれない。前半戦は川村の相方として出場時間を重ねてH鳥栖戦など保持面で賢さを見せていたが、横浜FM戦での退場など非保持では不安定な部分が露呈。川村の移籍後もDHで出ていたが、やはり厳しいということで川辺とトルガイの加入後はシャドーでの出場機会を増やした。が、この辺りで数字がついて来ず、ゴンサロの稼働率が上がって加藤がシャドーに下がったあおりを受けてベンチスタートが増加。シーズン終盤はACL2でプレーしつつリーグ戦では点が欲しい時限定の起用に留まった。
シーズンの結論としては、やはりシャドーで起用してあげたいということになりそうだ。DHの位置から前に出て行くプレーは監督の理想とするところだし展開力もキック精度もあるが、さすがに非保持が不安定になってしまう。必要のないところでプレスに出て行って中盤に穴をあけてしまったり、不用意なパスミスからピンチを招くことは何度もあった。A新潟戦の失点につながったプレーなど、リスク管理の感覚が攻撃の選手なのだと感じさせられた。
そういう意味ではシャドーでの起用が増えた時期に絶対的なパフォーマンスを見せられなかったのが痛かった。昨シーズンも少し思ったが、2022シーズンのフリーで脚を振れば高確率でゴールになるシュート精度に陰りが見えているのが心配なところ。彼の強みはプレッシングの強度もそうだがとにかく得点に繋がる働きができるところだと思うので、そこがなくなってしまうとサイズもないし起用が減ってきてしまうのもやむを得ない。感覚的な部分なので難しいだろうが、来季はここを戻して2桁得点を狙ってほしい。シャドーとしてはトルガイ、松本とは違う色を出せる選手なので必ず出番があるはずだ。
20 ピエロス ソティリウ
【スタッツ】
35試合1577分 11G4A
【短評】
キプロス代表と二足のわらじは流石に厳しかったか。序盤戦はスタメンで出ていたものの、夏前から負傷が相次いでまとまった出場ができず。10月以降は代表活動もあってリーグもACLもスーパーサブという位置づけとなり、リーグのスタメンで起用されたのは最終節のG大阪戦のみとなった。
この人も出場すればボールは収まるしスピードあってプレスにも参加してくれるし点も取れるしでクオリティは問題なし。開幕戦では大橋からPKを奪っておいて外すなどやや締まらない印象が昨シーズンからあったが、調子を上げるにつれて決定率も向上。とにかく稼働率だけが課題となるシーズンだった。
去就が注目されたが今シーズン限りで契約満了。家族の意思という話も伝え聞くので、母国に戻るのかもしれない。来年はW杯予選もあることだし、ヨーロッパでプレーしている方がいいだろう。
もう少しプレーを見たかった気もするが、チーム初のカップタイトルをもたらした存在としてその名は語り継がれるに違いない。
36 井上 愛簾
【スタッツ】
6試合221分 1G2A
【短評】
トップチームへの自己紹介は済ませたと言える。開幕からちょくちょくリーグ戦に帯同しつつもユースでのプレーがメインという状況だったが、8月のC大阪戦で快速を活かして2アシスト。ピエロスの稼働率が上がらない状況の中で希望を抱かせるには十分な出来だった。
結局ゴンサロの加入もあってリーグ戦ではそれほど出番がなかったが、ACL2ではフル出場を経験し初ゴールもマーク。プロ入り前のシーズンとしては十分すぎる成果を得た。
背後への抜け出しとコントロールには非凡なものを感じさせるし、前線からのひたむきなチェイシングも含めてトップチームのFWとしては独自の立ち位置を築けそうな予感。来季もゴンサロ、ジャーメイン、加藤が立ちはだかっており壁は高いが、限られた時間でも結果を出した今季の経験を糧に挑んでもらいたい。
51 加藤 陸次樹
【スタッツ】
49試合3857分 15G8A
【短評】
もはやこの人がいないチームは考えられない。序盤戦はゴールがなく苦しんだもののプレッシング強度もポストプレーも崩し関与もなんでもござれの器用さを発揮して出番を失わず。H川崎戦での初ゴール以降もDH起用、夏場の1トップなど様々な起用で期待に応え続けた(DH起用は全然失敗だったが)。
ただし夏場の連戦でも出突っ張りとなり、サイドに流れての崩しやプレスの二度追いなど戦術的に高い負荷がかかっていたこともあり、最終盤にはさすがに疲労が目立つ出来となった。A浦和戦で完璧な抜け出しからのシュートが2回とも枠外に飛んでしまったのを見たときにさすがにこの人も限界なんだなと思ってしまったが、あれだけ走っていればそれはそうだろう。
何でもできて点も取ってくれる上にクラブ愛も抜群ということでついつい頼りたくなってしまうが、そこはフィニッシュに集中させてあげてほしい。
27歳で海外移籍などは考えにくい年齢となってきたが、大橋の例もありまだまだ分からない。とりあえずE-1で代表入りを目指してみてはどうだろうか。
77 大橋 祐紀
【スタッツ】
27試合2214分 16G3A
【短評】
怒涛の活躍で海外に旅立ち代表入りも果たす充実の1年だった。広島が冬の再注目株の争奪戦を制すというまさかの展開で獲得に成功した。海外志向が強い選手で海外移籍時の特約が決め手だったという話もあるが真相は不明。稼働率に不安があるという話だったが蓋を開けてみれば誰よりも元気に毎試合走り続けた。
得点能力は折り紙付きだったが驚かされたのはその万能さ。プレスの2度追いもやってくれるし苦し紛れのロングボールも収まるしサイドで崩しに関与する仕事もできる。開幕から得点を重ねたこともあり、瞬く間にチームの顔となった。
なったはいいのだがブラックバーンから目を付けられてA鳥栖戦を最後に移籍。28歳の選手が引き抜かれるのはJ全体でも珍しく、改めてJリーグの特殊な立ち位置を感じる移籍劇となった。ブラックバーンでも開幕から得点を重ねておりシーズン2桁もありうる状況。英2部となればステップアップも現実的だし、代表活動と合わせてさらなる飛躍を期待したい。
99 ゴンサロ パシエンシア
【スタッツ】
13試合590分 4G0A
【短評】
フィットにやや苦しんだが能力の片鱗は見せた。大橋の移籍もあってFWをさがしていたところ、ちょうどフリーだったということで獲得してきた元ポルトガル代表。ポルトやフランクフルト在籍という経歴で、プレーを見れば確かに規格外だった。何と言ってもシュートが上手い。初ゴールとなった鹿島戦のヘディングやACL2カヤFC戦など、日本ではなかなか体感できない威力で高精度のシュートを叩き込めるのが魅力だ。
コンディションが上がっていなかったのかもしれないがプレースタイルとしてはボックスストライカーという感じで、崩しへの関与やプレスへの参加は控えめ。状態を上げていくところと戦術への適用という意味ではややてこずっているかもしれない。
ピエロスとドウグラスの退団もあり、来季はFWの軸としての活躍が求められる状況。体が仕上がった時にどれくらい走れるのかが気になるところだ。
監督
ミヒャエル・スキッベ
【スタッツ】
54試合32勝12分10敗 120得点58失点
【短評】
戦力不足に苦しみながらうまく舵取りをしていたが、最後に哲学と現実のバランスを失ったか。
シーズン序盤は川村の相方が定まらず、DHを補強したと思ったら今度はストライカーがいないという状況で、なかなか理想とするスカッドの組めない1年だったかもしれない。その中でもピエロス大橋を並べるロングボール主体のサッカーから中盤を流動的に動かすサッカーに転換したあたりの舵取りはお見事。ACL2も若手のプレー機会として活用しつつ成果を上げ、すべてのコンペティションでそれなりの結果を残した点は素晴らしかった。
一方で最終盤にフォーカスしたはずのリーグ戦で調子を落とし、タイトルを逃したのは反省材料。特定の選手に負荷がかかっていた点もそうだが、中盤に勝てていたポゼッション濃度濃いめのスタイルを前半戦のオープンなスタイルに戻していったのが解せなかった。もしかすると路線変更しようとしてやっていたわけではないのかもしれないが、自身が志向するサッカーに戻そうとした結果失敗したような印象もあり、来季に向けて気になるところだ。
ここまでの3年間で強度の高いプレッシングを軸としたスタイルを確立した功績は大きいが、今年の後半戦で分かるように既にそれだけで勝てる時期は過ぎている。今シーズン中盤に見せたような引き出しの多さが求められる段階に来ているが、あとどれだけ変身を見せられるだろうか。
クラブとしても明確に強化への投資を増やしており、そろそろ結果が求められるところ。ポジティブな雰囲気を作るこれまでの良さは維持しつつ直すべきところは直していかないといけないということで、より難しいかじ取りを迫られそうだ。
以上!また来年!