#19 【2024J1第20節 サンフレッチェ広島×アルビレックス新潟】

はしがき

毎度お世話になっております!今回は新潟戦。連戦の真っただ中ですがリーグ戦もついに折り返し地点です。スタメンは以下。

広島はピエロス大橋加藤の前線に戻し、DHには東を起用。満田がルーキー時代を思わせる左WBでの先発となった。
新潟はGKの小島を筆頭に5人の入れ替え。小島や舞行龍、奥村は先発も多かったが疲労を考慮した形だろうか。

プレスに高速で適応する新潟

試合の序盤は広島がハイプレスによって新潟のビルドアップ隊を追い詰める場面がいくつか見られた。

広島は大橋やピエロスが中央へのパスコースを切りながらサイドに誘導する形でCBにプレスをかけ、脱出ルートであるSBとSHはそれぞれWBとCBが監視するという状況を作っていた。これによって広島は高い位置でボールを奪うことができており、4分には大橋の決定機に繋がっている。

これに対して、新潟はGKの阿部をビルドアップに組み込んでCBの距離を広げることで対応してきた。

これによって阿部から稲村やトーマスにパスが出た際に大橋やピエロスのプレスが間に合わず、CBが持ち上がっていく場面を作ることに成功していた。
また、こうして得た時間の間に小見と長谷川が位置を入れ替える、SBが内側に入ってくるなどポジションの移動を組み合わせており、広島にとっては捕まえづらい状況となっていた。
特にDHの東は小見と長谷川の移動に対してどこまでついて行くか迷っているようで、中央でボールを受けられてしまう場面が見られた。先制点はまさにそうした形で、降りてきた小見を東が捕まえられなかったところから世にも美しい形での崩しが生まれることになった。
もっとも新潟が広島のプレスに対する立ち位置を修正したのが8分くらいのことで、先制点は10分なので広島の守備陣からすると訳の分からないうちにやられてしまったという感じだろう。広島のプレスを受けてわずか8分で適切な対応を見つけて得点に結びつけてしまう新潟の保持のクオリティには脱帽という序盤だった。

改善された中央ルートの保持

しかし、先制点を許した後は広島が保持から流れを引き戻す展開となった。きっかけは柏戦ではまったく見られなかった中央からのビルドアップである。

柏戦ではDHの片方が早い段階で前線に出て行ってしまうことでパスの出しどころがなくなる事態が頻発していたが、この試合では松本泰と東が横並びになるような形で最終ラインのサポートに入っており、3CBからのパスコースを豊富に用意できていた。新潟はトップの小見が中野に対して割と寄せてくるので、2DHが長谷川に対して数的優位を作れるという点でもこの形はうまく機能していた。
また、17分や19分のように東と松本が縦関係になることもあったが、その場合には加藤や大橋が降りてきてIHのように振舞って出口を作っていたのもよかった。広島は新潟のプレスをかわすことは比較的簡単にできていたので、敵陣に押し込んでゲームを進めることができていたのがこの時間だった。ここで追いつけたのは広島にとっては大きかっただろう。

柏戦から移動も伴う中2日でDHも変わっているにもかかわらず、ボール前進がここまで改善されていることには驚いた。東はこの先もDHをやる機会が増えそうだが、最終ラインへのサポートを粘り強くこなしてほしい。

ボールを運んだその先は

一方で、ボールを前方に運んだあとに早いタイミングでボールをゴール前に入れてしまう場面が多いことは気になった。特に満田や新井は早めにクロスを上げてしまうことが多かったのだが、この試合に関して言えばもっとボールを戻してやり直しても良かったと思う。

もちろん相手の背後への早いクロスは通ればチャンスになるが、失敗する確率も高い。失敗すればせっかく運んだボールを失うことになり、新潟の得意な保持局面からの再開となってしまう。広島が蹴っている早いクロスは、どちらかといえばボールを早めに捨てて新潟が一息つく時間を与えるという効果の方が大きかったと思う。この試合に関して言えば広島がボールを持っている間新潟はできることが少なそうだったので、ボールを持つ時間をもう少し長くことで新潟の持ち味を出させないというゲーム運びはアリだろうと感じた。

とはいえプレッシングが広島の持ち味で立ち返る場所でもあるので、それを捨てる(捨てるは言い過ぎだが、優先度を下げる)というのも難しい判断だろう。現にこの試合でも苦しみつつプレッシングを続け、オープンになった70分以降にドウグラスやマルコス、エゼキエウで刺すというプラン通りの展開を手繰り寄せている。
試合に勝つ、タイトルを取るという意味では時にスタイルとは違う戦い方を選択する必要もあり、個人的には新潟はそういったアプローチを採用するに値する難敵だと思うが、この試合でプレッシングを続けて一定の成果を得たことはチームの自信にもつながるはずだ。

このあたりはマネジメントの領域にも入ってくるので難しい問題だし多分政界もないと思うが、次節の川崎戦も系統としては似たような相手になるはずなので、どのようなスタンスで臨むかを楽しみにしたい。

雑感・次節に向けて

広島としては上位が揃って引き分ける中で3ポイント積みたい一戦ではあったが、引き分けに文句を言うほどの内容ではなかったとも感じる。柏戦からの改善には目を見張るものがあり、連戦の中でこれだけのパフォーマンスが見られることは頼もしい。

新潟はボール保持で言えばおそらく日本一うまいチームだと思うが、非保持局面やオープンな展開では苦しさを感じさせた。この試合の広島は真っ向勝負に付き合ってくれたが、そうでない相手も多くなってくる中でどのように弱点を覆い隠すかが上位進出への肝になりそうだ。

それではまた次回。