#06【2020J1第8節 横浜FC×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもお世話になっております。今回は横浜FC戦です。名古屋戦が中止となってしまい、1週間以上空けてのゲームとなりました。ここまで4試合勝ちなしの広島。この期間にチームを立て直せたかを占う一戦となります。一方の横浜FCも4試合勝ちなしの3連敗中と振るわない成績。両者にとって飛翔のきっかけを掴みたい一戦と言えるでしょう。そんなゲームのスタメンは以下。

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広島は大迫がスタメンに復帰、左サイドには藤井が抜擢されました。また、左シャドーに東、右サイドに森島と順足の選手を配置しているのも特徴ですね。一方の横浜FCは3-5-2の並び。2トップの皆川に懐かしさを感じます。両ワイドの推進力が高いイメージはありますが、2月のルヴァンカップも見ていないので分からないことが多いです。正直。

骨格を殴れる広島

さて前節は同じ配置のガンバを相手にボールは持ててもなかなか崩しきれなかった広島。しかし、この試合ではボールを前に進めた後の形が用意されていると感じました。

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主に青山が最終ラインに降りて佐々木と野上の両CBが2トップの脇でボールを持ちます。左サイドではこの佐々木に対してしばしばIHの松尾が出てくるので、その裏のスペースに東が降りてきてボールを受けます。東はかなり深くまで降りていったので対面のCBである田代はついて行ったとしても途中でマークを話しており、東がフリーで前を向けるシーンは何度かありました。ここから藤井へのスルーパス、流れてきたヴィエイラとのコンビネーションで崩しにかかっており、先制点は東から流れてきた森島へのパスが通ってのものでしたね。先制点のシーンでは田代が降りていった東のマークを受け渡したタイミングで森島が裏を取っており、まさに狙い通りの形だったのではないでしょうか。

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また、右サイドはより練られていたように見えました。開いた野上から茶島にボールが渡った際、森島がWBの裏のスペースに走ることで手塚を引き出し、空いたスペースに茶島がドリブルしたり、川辺や野上が入ってきてワンツーによるハーフスペース侵入を試みたりというシーンが見られました。ここでは森島に手塚がついて行った場合を図示していますが、森島がフリーになった場合はもちろん森島を使いに行くのでしょう。

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さらに、森島が引いてCBの袴田がついてきた場合はその裏のスペースに川辺が得意のロングランというパターンもありました。これはお馴染みのやつですが、やはり崩しのパターンが複数あってそのうちの一つとして使う方がより対処しにくくて良いですね。

また、東が降りていった場合も森島が裏に抜けた場合も効き足と同じサイドで起用することでスルーパスやクロスといったその後の展開につなげやすくなっていると感じます。この辺も今節の起用のポイントではないでしょうか。

総じて試合序盤の広島からは「相手を動かして様子を見て、できたスペースを使って崩していく」という意識が感じられました。「サイドのCBが2トップ脇に立つ→WBが高い位置を取れる→シャドーのポジショニングで相手を揺さぶれる」という流れは非常にロジカルで、見ていて気持ちが良いものでしたね。さらにこうして崩せている間に先制点も取れたわけで、広島にとっては理想的な形でした。

マンツー気味の広島

一方、横浜FCのボール保持に関しては早い段階で広島のプレス隊に捕まってしまっていました。

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3バックに対して広島の前線3人を当てられ、サイドと中盤もつかまっている状態。3センターなので広島の2DHに対して数的優位のはずですが、そこには度々佐々木が出てきて対応している感じです。これは神戸戦でも見た形ですね。

ほぼ全員が捕まっている中で横浜FCはGKの南を使いながら勇敢に繋ぎにかかりますが、中盤までに出しどころを失って奪われるシーンが目立ちました。この辺のデュエルではコンディションの差も影響したでしょうかね。個人的にはもう少し簡単に、相手を裏返すようなロングボールがあってもいいのかなと思いました。前線の皆川は無理がきく選手ですからね。

 

スペースは埋めたけど

さて、横浜FCとしてはボールが持てずに一方的に崩されたまま先制点まで取られてしまったという状態に。引水タイムを挟んで、5-4-1での守備に変更します。

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2トップの一角だった斎藤が左SHに入る形で、右SHを松浦が担当します。これでひとまず中央のスペースを埋めて、誰かが動かされてもカバーできる態勢は整えました。しかし前線が皆川1人という後ろに重たい陣形になってしまい、ボールホルダーにプレスがかかりづらくなります。

横浜FCとしてはひとまず応急措置はしたものの押し込まれ続ける苦しい展開は変わらず。さらにセットプレーから追加点を奪われ、このまま引きこもっていては厳しい展開になります。

3枚替えは便利

というわけでハーフタイムに3枚替えを敢行!4-3-3に移行してきました。

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4バックにすることで広島の前線3人に対して数的優位を確保、3センターで2DHに対して数的優位になるという形ですね。これによって広島のマークがぼやけてしまい、ボールを前進できるようになっていきます。

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例えば51分のシーンでは右サイドに人を集め、アンカーの手塚をフリーにしてから中に入ってきた松尾に渡してプレス回避するというシーンがありました。横浜FCのビルドアップはこのような感じでミスマッチを作りながら片方のサイドに人を集め、逆サイドに一気に展開するというシーンを作りだしたいようでした。特に右サイドでのマギーニョと藤井の1対1はよく狙われていましたね。左サイドの袴田を上げて密集を作り、右サイドのマギーニョに展開という流れは意図されたもののように感じます。

広島が高い位置からプレスをかけていればこのやり方も効果的でしたが、徐々に撤退して人海戦術での守備を選択することが多くなった広島を崩すまでには至らず、得点をあげることはできませんでした。

試合を終えて

広島は長いインターバルを活かして理論的な攻撃を仕込んできたなと感じました。相手の立ち位置に合わせて自分たちのポジションを決め、そこから相手を動かしてできたスペースを突くという論理的なボールの動かし方ができていました。こういうやり方ができてしかも結果に結びついたのは大きいと思います。こういうサッカーを毎試合見られることを期待したいですね。

横浜FCは序盤苦しかったものの対応は素早く、応急処置をしてから後半に反撃の手を打てるだけの引き出しの豊富さを見せました。流れの悪い時間帯に耐え切れず失点してしまうというツキの悪さもありましたが、状況を見極めて的確に対応し巻き返せるあたりさすが下平監督のチームという感じがしました。今シーズンは降格がなく交替枠も5枚あるので、戦術的な引き出しが豊富にあるチームは有利なんじゃないでしょうか。まだ発展途上かと思いますが、今後の進化が楽しみなチームですね。

それではまた次回。

#05 【2020J1第6節】ガンバ大阪×サンフレッチェ広島

はしがき

平素より大変お世話になっております。今節も書くことにしました。前節セレッソ大阪に敗れた広島は連勝中のガンバ大阪のホームに乗り込みました。スタメンは以下。

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広島はいつもの3-4-2-1ですが、茶島と柴崎が初先発。左WBには浅野が起用されています。一方のガンバは3-5-2。遠藤のアンカーはなかなか守備面が不安そうですがどうでしょうか。

 

噛み合わせの優位とドリブルの効果

さて、試合が始まってみればガンバの2トップは広島の最終ラインにさほどプレスをかけてこなかったため、広島は比較的落ち着いてボールを保持することができていました。

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広島の3バックがガンバの2トップ脇で持てるので、DHの柴崎や川辺が降りていかなくてもボールが前進できていました。また、CBがサイドに開いていたので自然とWBが高い位置を取ることも多かったように思います。そして、そこからの崩しで効果的に映ったのが右サイドの茶島によるドリブルです。

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茶島はサイドでボールを持つとしばしば中にドリブルで切れ込んでいく動きを見せました。これによってガンバの3センターが動かされ、ペレイラヴィエイラらアタッカーや逆サイドの柴崎へのパスコースができていました。

一方で、サイドを縦に突破しようとしていく動きについてはシャドーとWBの距離が近くなり過ぎておりうまくいっていませんでした。広島はボールを落ち着かせることは割とできていましたがそこからの前進には相変わらず苦労していたという印象です。

遠藤アンカーという諸刃の剣

一方のガンバは3-5-2そのままではなく、やや形を変えてビルドアップしてくることもありました。

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東口にボールを預けてCBの2人が開いてもう1人をサイドに押し上げ、WBが中に入ってくることでサイドでミスマッチを作り出します。こうすることで森島、佐々木、浅野らが誰を見ればいいか迷いやすくなるほか、アンカーの遠藤が降りていった場合にも捕まえにくくなっています。

ガンバはこうして降りていく遠藤にボールを渡し、それを起点にボールを前進させる場面が多く見られました。遠藤はブロックの外側でフリーになればサイドにも中央にも自在にパスを通せるため、それがガンバの攻撃を活かすことに繋がっていました。その後はIHの倉田やFWの宇佐美が動き回って数的優位を作ってコンビネーションによる突破を狙う、という流れになっていました。前節のセレッソのように動きが決まっているわけではありませんでしたが、強力なタレントがいるので彼らを自由にやらせるために大枠だけ決めるという形なのかもと思いました。

一方で、アンカーに遠藤で前線の選手は自由に動き回るため、ネガトラについては脆いところも数多く見られました。

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ガンバは敵陣の奥でボールを奪われた場合にWBもIHも高い位置を取っていることがしばしばあり、遠藤の脇をあっさり通過されて広島のアタッカーとCBがいきなり対峙する、という場面が見られました。この試合では三浦をはじめCB陣の対人性能と東口のセーブによって何とかしのいでいましたが、構造としてはやや不安定なものを感じました。

互いに長所と不安要素が出ている前半で、チャンスの数も互角。そんな中でガンバは41分にセットプレーから先制し、リードして前半を折り返します。

川辺の突撃とポジショニングの変化

さて、広島は後半から浅野に替えてハイネル、柴崎に替えて青山を投入。ハイネルを右サイドに入れ、茶島が左サイドに回ります。これによって広島のポジショニングが変わっていました。

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広島は青山が降りて4バック化し、ハイネルが低い位置まで降りてきます。低い位置のハイネルにボールを預けることでWBの藤春とCBのキムヨングォンを釣り出し、その裏に川辺を走らせての突破を狙います。この形を狙うためにハイネルを入れたのだとしたら納得はいきます。これ自体は普段からやっている形だし、実際うまくいけばチャンスにも繋がっていました。

しかしこの形はハイネルに要求されるプレーの難易度も高いですし、川辺の消耗も激しいはずなのであんまりこれに依存してほしくはないんですよね。しかしこれ以外のルートでビルドアップしようにも川辺と青山両方が中央から離れてしまうので前進できないという状態でした。そもそもこれだったら青山が最終ラインに落ちる必要があまりないとも思います。川辺の裏抜けと青山を経由した展開の両方を使い分けられるようになってくれればより攻撃にも迫力が増すと思います。

この試合の後半については広島がチャンスを多く作っていましたが、ボール保持で敵陣に押し込めていたかどうかは微妙なところで、半分くらいはガンバのネガトラにおける脆さを突いたカウンターからのチャンスだったように感じます。リードされた展開でカウンターからチャンスが作れていたわけなのでせめて同点にはしたかったところですが、複数あったチャンスも決められず0-1のまま終了。このあたりは連戦の疲労を感じるところでしたね。

試合を終えて

広島としては前節よりは内容の良い試合ができたと思いますが、それでもまだまだ改善点は多く、結果もついて来ないという試合になってしまいました。前半に見せた茶島のドリブルからの崩しや、後半の川辺の裏抜けには可能性を感じたのでそれらを活かす方向に向かってくれればなと思います。名古屋戦は中止が決まってしまいましたが、次の試合を気長に待ちたいところです。

一方のガンバはセットプレーの1点を守り切りしぶとく勝利。勝ってるのにカウンターを食らうなど危うさを感じる部分もありますが、三浦や東口といった守備陣の奮闘もありしのぎ切りました。前線の宇佐美、倉田、遠藤らもそうですがこうした個の強さを存分に発揮して勝ち切ってしまえるのが強みのチームといえるのかもしれませんね。

それではまた次回。

 

#04 【2020J1第5節 サンフレッチェ広島×セレッソ大阪】

はしがき

平素より大変お世話になっております。もう次の試合当日ですがセレッソ戦でございます。今季個人的に優勝を予想したセレッソですが、3勝1敗となかなか好調な滑り出しの様子。サンフレッチェはどう戦ったのでしょう。ということでスタメンは以下。

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広島は永井が初先発。シャドーに入るのかと思ったらまさかの2トップで3-1-4-2でした。鳥栖戦の終盤に2トップっぽくなったこと以外では昨シーズンの川崎戦で採用して以来でしょうか。となるとハイプレスをかける気がありそうです。

一方のセレッソは4-4-2。並びについてはお馴染みのような気もしますね。都倉には嫌な思い出しかないのでお手柔らかにお願いしたいところ。

広島の想定、セレッソのポジションチェンジ

3-1-4-2を採用した広島は、おそらくセレッソの2CBを2トップで捕まえ、SBをWB、中に入ってくるSHはCBを迎撃に出すことで出所を塞ぎロングボールを蹴らせて回収しようという魂胆だったと思われます。

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と、こう書くとうまくいきそうな気もしますがセレッソのビルドアップは様々なパターンがあり、広島は対応に苦慮することとなりました。

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ちょっと1枚の図で説明するのは難しいのですが、清武が中に入ってくることで丸橋が高い位置を取り、そこに藤田が降りてくるローテーションが良く見られました。ここで清武のマークを野上から川辺に渡すと藤田が空いてしまい、そこからフリーで運ばれてしまいます。かといって野上がどこまでもついていくと今度は都倉が流れてくることもあります。そこに荒木がついて行くのか、行けば中央が大きく空いてしまう……という風に、広島がどう対応してくるか問いかけるようにポジションを変えていました。実際にはこれらのポジションチェンジが起きないことも部分的に起きることもあり、全てのパスコースをふさぐのは非常に難しい状態でした。

右サイドも2トップ脇にいるのが松田で幅を取ってくるのが坂元という違いはありますがコンセプトは似ていて、、広島の出方を見ながら大外の坂元の突破か松田のドリブルによるボール運びを使い分けているという印象でした。

そもそもセレッソ側はポジションチェンジを繰り返して様子を見ながら空いたところにパスを通してしまえばいいわけで、これを防ぐのは非常に難しくなります。ということで広島はハイプレスをあきらめて早々に撤退する場面が増え、セレッソが割と簡単にボールを運べる展開となりました。

3-5-2の弊害、ミスマッチと連携不足

こうした中で生まれたセレッソの先制点は、セレッソのビルドアップのうまさと広島の3-5-2の欠点が出たシーンだったと思います。

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セレッソの右SBである松田がボールを受けたのは5-3-2の広島にとって空きやすい場所で、ここでボールを持たれるとボールホルダーがフリーになりやすくなります。このシーンでは森島が行く意思を見せますが松田はほぼフリーで坂元にパスを通せます。いつもの5-4-1であればシャドーがいるエリアなのでもう少し圧力をかけられるのですが、今回は坂元と清水があっさりと1vs1になってしまいました。

そして、この時セレッソは中央に3人が入ってきており、佐々木はカバーに出ていくことができません。森島がカットインをケアしますが縦に抜けられてフリーでクロスを上げられての失点となりました。

清水の背後のスペースには佐々木が出ていくのか、その場合最終ラインに誰を下げるのか、あるいは清水に縦を切らせてカットインされた場合森島がカバーするという形なのか、そういったところまでは詰め切れていないのかなと感じました。城福監督はこの3-5-2の併用も考えているかもしれませんが、ハイプレスやボール保持だけでなくこういった地味な部分の対応にも注目したいと思います。

ボールを持った広島の悪癖

一方広島のボール保持について、この試合ではほぼ封じられていたと言っていいのではないでしょうか。広島は3-1-4-2なので最終ラインと中央のミスマッチを生かしつつボールを運びたいところですが、良く見られたのは以下のような現象でした。

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広島の最終ラインからWBへ早めにボールが出てしまいWBが低い位置でボールを受けることになるため、セレッソのSHがWBに対して圧力をかけることができます。その上SBもしっかり前に出てくるため、WBのパスコースはほぼなくなり、残された選択肢は中央にパスを入れて難しいコンビネーションによる突破を試みるくらいです。

さらにこうした現象が続くことで、広島の悪癖である列移動が頻発してしまいます。

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相手の守備基準を狂わせるために列を移動することは効果的なのですが、広島のそれは単に数的優位を確保するために行われることが多く、結果的に相手にとってボールを受けられると怖いゾーンから人がいなくなってしまうことが良くあります。

この試合でも青山が最終ラインに降りたり川辺、森島が降りていって中盤に人が全然いないことがしばしばありました。これだとセレッソは怖くないし、全体をスライドさせることで簡単に押し上げることができます。ただでさえボールを進められない広島はこれによって自らの首を絞める結果になっているという印象でした。

それでもペレイラのキープ力や中盤でのコンビネーションによって前進できることはありましたが、安定してボールを運べている状態ではなかったと言えるでしょう。広島はいい形をほとんど出せず、ビハインドのまま折り返すことになります。

ポジショニング修正という希望

さて、後半に入って早々広島が自陣でのミスから失点、直後にPKを得て追いすがるという慌ただしい展開になりました。それとはあまり関係ないのですが、後半は広島側にポジショニングの変化が見られたことが気になりました。

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46分のシーンですが、野上から川辺、荒木、佐々木を飛ばして藤井までリズミカルにパスが繋がり藤井が松田と1vs1になったシーンを取り上げます。このシーンでは森島がデサバトと坂元の間に位置することによって坂元の注意を引き、藤井が高い位置で松田と1vs1になれる状況を演出できました。荒木から佐々木を飛ばして直接藤井に繋がったのも良かったですね。

もちろんリードしたセレッソが引き気味に構えたこともあるでしょうが、後半はこのようにサイドの選手が高い位置を取れる局面が増えたと感じました。ここでは突破できませんでしたが、こういう形を繰り返し作れれば藤井が森島やヴィエイラとの連携から突破するといった形も狙いやすくなります。

この後のPKに繋がった場面でも森島は中央でデサバトと入れ替わっていますし、やはりライン間にいてなんぼの選手なのかなと感じます。森島は藤井に対してさかんに高い位置を取るようなジェスチャーが見られましたし、自分のポジショニングによって起こせる変化を理解してプレーしているのではないか?と感じました。柏がいない今、攻撃面で彼にかかる期待は大きくなるばかりです。

個人的にはこうしたポジショニングで相手を揺さぶる攻撃が見たかったのですが、森島も途中で野津田に交代、ハイネルを中央に入れるなどどちらかといえばパワーのある選手を残すことで圧力をかけ続けるという選択になりました。そうしたパワーにモノを言わせてチャンスを作ることもできてはいましたが結局はセレッソにしのぎ切られ、広島は今シーズン2敗目を喫することとなりました。

試合を終えて

チームとしての完成度に大きく差があることを実感させられる試合だったのではないでしょうか。スコアこそ1点差ですが、10回やったら6~7回は負ける内容なんじゃないかなと感じてしまいました。まだ今日のシステムは発展途上であるとはいえ、これまでの課題も継続して出ており、根本的に変えなければならない部分も多いなと感じます。まずは今日のガンバ戦、何か変化が見られるか期待したいと思います。

一方セレッソとしては大筋では狙い通りの試合ができたのではないでしょうか。やはりチームの熟練度は高く、選手、監督、スタッフによる準備の質が高いことがうかがえます。個人的にはこういった理詰めで相手を揺さぶっていくサッカーは大好物なので、前節の鳥栖同様ぜひ好成績を収めてほしいと思います。

それではまた次回。

#03【2020J1第4節 サガン鳥栖×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。2020年は全試合やりたいとか言ってたのにもう1試合飛ばしてしまいましたね。まあこの過密日程ですし……一応Twitterに簡単な図をあげたのでセーフということにしたいところです。

さて今回は鳥栖戦です。鳥栖は未だ勝ちなしかつ無得点と苦しい状況のようですが、どのような試合だったか振り返りたいと思います。スタメンは以下。

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鳥栖は4-2-3-1。原川にやられた記憶ばかりがあると思っていたらベンチスタートなんですね。一方の広島は前節から3人変更。連戦のさなかですがDF陣はそのままで来るあたり信頼が表れています。

鳥栖の広島対策?

さて、この試合では広島がボールを持った際の鳥栖の追い込み方に対策が垣間見えました。

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広島は3バックの中央である荒木がボールを持った際に豊田が強烈なプレッシャーをかけてサイドに逃げさせます。サイドのCBには鳥栖のSHがプレッシャーをかけ、WBにはSBが出てくることでボールの前進を阻害します。

広島はもともとWBにボールを預けてから展開するビルドアップを多用するため、そのルートを潰しに来たのだと思われます。広島としては鳥栖のSBが出てきた裏を使いたいところですが、鳥栖がきっちりスライドしてくるため中々それも難しかったものと思われます。

ただ、サイドがふさがれている分中央のシャドーに簡単に縦パスが入ることもありましたし、GKの林を使って数的優位を確保してプレス回避していることもありました。こういうのをアドリブの単発で終わらせるのではなく、試合中に狙いどころを共有して修正できるようになってもらえると頼もしいなと思います。

正確さと個の強さ

GKをビルドアップに使うという点で言えば鳥栖はより積極的に行っていましたね。

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CBが開いてGKが中央に位置することで3バックのような形になり、SBが高い位置を取ります。広島の3トップが同数プレスをかけられる形ですが、ここで行ってしまうと中央の数的優位を活かされたり最終ラインで1vs1の勝負を仕掛けられる局面が発生するため迂闊にプレスをかけられません。鳥栖としてはプレッシャーが来れば前に蹴ってアタッカーを走らせればよく、プレッシャーが来なければ中盤と連携しながら落ち着いて前進を図れるという理想的な二択を迫りながら試合を進められていたのではないでしょうか。

ただ前進したとして、鳥栖のアタッカーは対人に絶対の自信を持つ広島のCBと1vs1で戦うことになります。ここがなかなか突破できなかったことが鳥栖の攻撃が最後にうまくいかない要因だったのではないでしょうか。

正確なポジションチェンジ

そうした中で輝きを放っていたのが鳥栖の左サイドでのポジションチェンジです。左SBの内田と小屋松はどちらかが外に開けばどちらかが中央に絞るというポジショニングの基本を押さえつつ、さらにそこからのポジションチェンジで崩しにかかるという連動性を見せました。53分のシーンを例に出します。

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ここからさらに内田が中に入ってリターンを受け、本田は裏に走る

サイドでボールを持った内田に対して、インサイドに位置していた小屋松が外に開きながらの裏抜けで野上を引っ張ってパスコースを作り、そこにトップ下の本田が降りてきます。荒木は中央で豊田とマッチアップなのでここは青山が見ていますが、さらに内田が中央に入ってきてリターンを受けることができます。

この一連のシーンにおいて広島は東が近くにいたのですが、対面の選手がいない状態だったので見ているだけになってしまいました。広島の守備は人意識が強いだけに、自分の対面の選手が遠くにいる場合はこういった状況が起きやすくなるかもしれませんね。

このシーンでは内田に頑張ってついて行ったハイネルがボールを奪うのですが、すぐさま松岡と内田に囲まれてボールを失います。こういった切り替えの際の松岡や梁の迅速な対応もこの試合光っていたと思います。広島は試合の終盤に速い攻撃から立て続けに決定機を迎えるのですが、梁がいなくなったことと無関係であるとは思えません。

鳥栖はDHの2人が瞬時に中央のスペースを消してしまうため、広島側が横パスを1~2本繋ごうものならすぐにカウンターが封じられてしまいます。ボールを失った際の対応も行き届いている鳥栖のクオリティに驚くと同時に、広島はカウンターの時にまずどこを目指すのか、チームとして明確な基準が欲しいなと感じました。

終盤のカウンター攻撃も決まらず試合は0-0のまま終了しました。

試合を終えて

いやあ、鳥栖が大変良いチームで驚きました。鳥栖戦は地味な試合になることも多かったので今回も固められて塩試合かと侮っていました。申し訳ありません。このチームが得点ゼロの2分け2敗というのはちょっと信じがたいものがあります。ただ点を取るというのはアタッカーの個人勝負みたいなところもありますからね……豊田が今シーズン初先発だったのも、その辺の事情があるのでしょうか。

さて広島のブログなのにまた広島のことを全然書きませんでしたね…… 正直前節の大分戦からは特に個人の能力とひらめきに依存している部分が多いように感じられます。柏のケガによって去年チームをけん引した左サイド攻撃が機能不全に陥っているのも大きな要因でしょう。

ここまではカウンターからうまく点を取れましたが、今日みたいにきちんと対応してくるチームだとカウンターすらも個人能力依存では厳しくなってきます。チームとしてどういう形で守り、ボールを奪って得点するのか、そうした意図を共有できるかが試される時期が来ているのかもしれませんね。

ではでは

#02 【2020J1第2節 ヴィッセル神戸×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもご無沙汰しております。開幕戦から早4カ月、J1もようやく再開となりましたね。まあ中断してる間にいろいろあったわけですが言葉はいらないでしょう。サッカーがある日常に感謝するのみでございます。

さて広島の再開初戦、相手はヴィッセル神戸。昨年度はシーズンダブルを決めるなど、相性の良さを感じさせる相手です。スタメンは以下。

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広島はいつもの3-4-2-1で、開幕戦と同じメンバーとなりました。一方の神戸は3-1-4-2。4バックを採用しているという話もありましたが、昨シーズンの対戦時と同じ並びを採用してきたことになります。

神戸が上手だったビルドアップ

さて、試合開始から神戸がボールを握る局面が多く見られました。これはどちらかの意思でそうなったというより、両チームのビルドアップの練度やプレスのかけ方の違いによるものという印象を受けました。

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神戸が最終ラインでボールを持った際、広島の1トップ2シャドーはミドルゾーンに待機。中央のペレイラがアンカーであるサンペールへのパスコースを遮断します。

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で、サンペール番を後ろの青山か川辺に受け渡してから大崎にプレス。左右のCBにパスが出たらシャドーが寄せ、そこからサイドへの展開はWBが、IHやFWへの縦パスはCBが潰すという仕組みです。神戸の3センターに対して広島の2DHは数的不利となるわけですが、プレスをかける前はサンペールをペレイラが、プレスをかけた際は山口に対して佐々木が出ていくことで配置を噛み合わせていることが多かったように思います。

ただ広島のプレスは実際にはそこまで強いものではなく、CBに寄せていったペレイラがドリブルであっさり剥がされたり、前線3人がうまく連動してサイドに追い込んだのにWBの位置が低くてサイドで余裕を持って受けられたりという場面も見受けられました。

イニエスタやサンペールに良いパスが入らなければOKということなのかもしれませんが、もうちょっとプレス強度を上げればショートカウンターを仕掛けられる場面も増えるかもなあと思ったのは確かです。

一方広島がボールを持った時ですが、この時も佐々木と山口のマッチアップが発生していました。

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神戸の2トップは広島の3Cbに対して数的不利なので、山口を前に出して佐々木にプレッシャーをかけてもらうことで同数プレスを実現。2DHはサンペールとイニエスタで監視します。しかしこうなると山口が出ていった裏のスペースが空くので、底に降りてきた森島がボールを受けてプレス回避するシーンが何度か見られましたね。

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が、しばらくするとこれをダンクレーか潰してくるようになったので広島はビルドアップの出口を失い、ボールを縦に蹴っ飛ばすしかなくなっていきます。柏がケガしちゃう直前のシーンみたいにうまく前進できることもあったんですが、あれその場のノリでやってそうだよなあ……という気もします。やっぱりCBがもっとサイドに開いたりドリブルで1枚剥がせたりするとだいぶ選択肢も広がると思うので、そういったところに今後期待したいですね。

そんな具合でボールを手放すことが多かった広島。決定的なパスは入らないにせよ、神戸がボールを握る時間が増えていきます。

ボールは持てるけど

しかし、神戸が問題だったのはここからでした。5-4-1でセットして自陣に引いた広島を全くと言っていいほど崩せなかったのです。

おそらく神戸がやりたかったのは22分のシーンのようにFWの列を降りる動きで広島のDHと2vs1を作り、そこにパスを通していく攻撃だったと思われます。

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このエリアでイニエスタや古橋、ドウグラスが前を向ければ決定機につながる可能性が高いです。

しかし、実際には広島のCBがFWの降りる動きについてきて潰してしまうことがほとんどだったように思います。

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そうなるとCBが出ていった裏のスペースに誰かが走ってくれればいいのですが、この試合の神戸にはその動きがほとんど見られませんでした。本来そういった動きが得意なはずの古橋や山口までもが列を降りる動きを意識しすぎてしまい、最も怖い裏へのランニングが減ったのかもしれません。こうなると神戸は広島の守備陣が密集する中央をなんとか突破しようとあがくことになり、それはさすがのイニエスタやサンペールでも困難を極めます。

43分に神戸が迎えた決定機では佐々木を前に釣り出してから裏に抜けた山口がイニエスタからダイレクトのパスを受けてゴール前に侵入していましたが、こういったシーンを多く作れれば広島側も対応するのが難しかっただろうと思います。

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中央からの攻撃がうまくいかないと見たイニエスタが左サイドの底まで降りて来たり、古橋がサイドで幅を取って酒井が中に入ってくるポジションチェンジをしたりと工夫も見られました。が、広島からすれば最も怖い選手がいてほしくない場所から離れてくれているわけなので、これは逆効果だったんじゃないかなあと感じました。

日本っぽい?神戸

後半開始早々に広島がリードを2点に広げると、神戸は渡部を下げて小川を投入。4-2-3-1へと変更します。

広島のゴールをこんなあっさり流していいのかとは思うんですが、セットプレーとセットプレーの流れからのカウンターなので正直あんまり書くことがないんですよね……2点目の川辺のパスは本当に素晴らしかったと思いますが。

で、4バックになった神戸はSBの西と酒井が高い位置を取るようになります。

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これによってサイドにいた小川と古橋が中央に入ってくることになり、ただでさえ混雑していた中盤にさらに人があふれることになりました。広島がラインを下げて裏のスペースを消し始めたこともあり、神戸の選手たちはより密になった中央で動きにくそうにする場面が多発。イニエスタドウグラスのワンツーで打開する場面なんかもあるにはありましたが、基本的には4バック変更はあまりハマっていなかったかなと思います。

唯一可能性を感じられたのは右サイドの西のところ。柏に代わって入った浅野は守備面での対応に難があり、純粋な1vs1で西が突破してチャンスにつながるシーンが多くありました。ある意味中央に人を集めているからこそサイドでこうした1vs1ができるわけで、これは狙い通りだったのかもしれません。浅野はゴールという結果こそ出しましたが、あれくらい1vs1であっさり抜かれているとちょっと厳しいかもな、と感じます。

裏に走る選手がいなくなって選手が中央に集まった結果中央が渋滞し、自分たちでどんどんスペースをなくしてしまうという光景はアジアカップの日本代表を思い起こさせました。アジアカップだけでなく度々日本代表の悪い点として挙げられる現象ですが、イニエスタを擁し欧州化を目指している神戸でもこういう状況に陥るんだなあとフットボールの難しさを感じた次第です。

結局神戸は広島のゴールをこじ開けられず、逆に広島がカウンターからペレイラの2点目で3-0として勝負あり。広島が同一カード3連勝を果たしました。

課題は先送りかも

開幕戦に引き続き先制してからカウンターで加点して3-0という展開に持ち込むことに成功した広島。戦術面にあまり触れませんでしたが、我慢強い試合運びと勝負所を逃さない狡猾さが光る試合であったと思います。一方で、今日の試合も見られたようなビルドアップの不安点に関してはいったん先送りされたという印象です。この先必ず先制されて追いかけなければならない状況があるはずなので、その時にどういった振る舞いを見せてくれるか注目したいです。同じような状況で課題を抱えたまま失速していった2年前の二の舞にならないことを願っています。

最後に今日良いなと思った攻撃の形を紹介したいと思います。

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20分のシーンです。ハイネルがサイドでボールを受けたところで、川辺が対面のイニエスタを置き去りにするロングランで渡部の裏まで走ってペレイラのシュートに繋がりました。こういった大胆なランニングが川辺の持ち味ですし、彼がこういった動きをすることでペレイラヴィエイラが良い形でフィニッシュに持ち込めるのではないかと思います。DHの位置からここまで走るのはきついと思いますが、隙があれば狙っていってほしいと思います。

それではまた次回。ミッドウィークの試合もやれるかは怪しいですが……

#01 【2020J1第1節 サンフレッチェ広島×鹿島アントラーズ】

はじめに

ご無沙汰しております。今シーズンもサンフレッチェ広島のリーグ戦についてレビューを書いていこうと思いますので、良ければお付き合いのほどよろしくお願いいたします。今シーズンの目標はリーグ戦全試合やることですかね。何かいきなり日程がずれてますが……

さて今シーズン初戦は鹿島戦。ショートカウンターを今季のキーワードに掲げ、変革を目指す鹿島と戦ったわけですが、早速振り返りたいと思います。スタメンは以下。

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広島は昨シーズン同様の3-4-2-1で、先週のルヴァンカップからの変更はなし。一方の鹿島はこちらも昨シーズン同様というか伝統とも言えそうな4-4-2でのスタートとなりました。

 

前がかり過ぎたDH

さて、試合は序盤から激しいプレスの応酬となりましたが、前半2分に鹿島がいきなり決定機を迎えました。DFラインの裏に抜けたアラーノのシュートがポスト、こぼれに詰めた和泉のシュートもポスト。得点にこそなりませんでしたが、このシーンをはじめ序盤の広島は中盤を簡単に通過されるシーンがいくつか見受けられました。

その主な要因が川辺と青山の2DHのポジショニングだと感じました。例えば先ほどのピンチ直前のシーンでは柏にボールが入ったタイミングで青山と森島が同じようにSBの裏のスペースにランニングを開始。カットされたボールが中央で数的不利となったゾーンに繋がり、簡単に通過されてしまいました。

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また、このプレーの前にもロングボールの競り合いからDHが2人とも置き去りにされる場面があったりと、DHが前寄りのポジションを取ることで置き去りにされ、中盤が空洞化してしまうことが何度かありました。森島と青山が同じようなスペースを狙っていたことも含めて、誰がどこに立っておくのか明確な決まりごとはあんまり無いように感じました。

鹿島のプレッシャー

一方で、鹿島は広島のビルドアップルートをきちんと洗い出して対策をしてきたように思います。

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広島のビルドアップはCBから直接、もしくはDHを経由してWBに渡すという形をとっています。そこでCBにはSHが、WBにはSBが列を上がる形でプレッシャーをかけます。まあ単純ですが効果的な形で、DHどうしがマッチアップしていることもありこのプレスで広島のWBからボールを回収できていました。

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これを回避するためにシャドーがSBの裏に走るというシーンもありましたが、まあ数は多くなかったです。全体として広島は鹿島のプレスに対する準備ができていないのでは?と感じるシーンが多く見られました。こういうプレスのかけ方は昨シーズンもやってくるチームいたと思うので、なんとか対策してほしいなと思います。シャドーが裏に走る意識を持つだけでかなり変わるはずなので。

 

鹿島のビルドアップ

さて、鹿島のビルドアップについては、ミスも見受けられましたが狙いも何となく分かりました。

SB、もしくはサイドの底に降りたDHがボールを持った所からスタート。そこで広島のWBが出てきた場合にはその裏に走りこんだSHにボールを通します。

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また、広島のWBが出てこずにシャドーが寄せてきた場合にもSHが開き、広島のCBがついて来なければサイドに出すしついてくればCFにくさびを打ち込む、という前進方法を取ります。

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ここからDHに落としてシュートでもいいし、逆サイドに展開もできます。

この辺はうまく回避されてんなーという感じで、広島はどういう風にビルドアップを抑え込むのかが明確ではなかったように思います。例えばDHがもっとスライドしてきて中央のパスコースを遮断するなど策はあると思いますが、プレッシャーをかけるために陣形が間延びしていたのでそれも難しかったでしょう。おそらく先制点がなければそのうちプレスをあきらめて撤退するという選択になっていたと思います。

という感じで、前半20分までどちらかといえば鹿島が優勢、広島はやりたいことや良さが出せない展開となります。

脈絡のないゴール、広島の撤退

しかしご存知の通り、鹿島の自陣深い位置でのミスをレアンドロが奪ってドウグラスが流し込み20分に広島先制。さらに25分には大迫の正確なロングパスからの疑似カウンターでレアンドロが2点目を奪います。サッカーの理不尽さが詰まったような5分間で、鹿島は2点のビハインドを背負うことになります。

こうなると堅いのが広島。5-4-1で撤退してスペースを消しにかかります。鹿島はボールを持ったは良いもののスペースがないため序盤のようなコンビネーションも通用しなくなり、攻め手を失っていきます。

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それでもSHがDFラインの間から抜け出すシーンなんかもありましたが、攻め手としてはかなり乏しくなり、決定機を全くと言っていいほど作りだせませんでした。鹿島の反省点があるとすればここでしょうか。ただ5-4-1でぎっちり引いた相手を崩して得点するというのはそう簡単なことでもないのですが……

鹿島はこの後和泉をSBに置いてみたり交代で入った荒木が活きの良いプレーを見せたりしたものの目立った見せ場は作れず、逆に84分に再び自陣でのボールロストから森島に3点目を奪われてゲームエンド。開幕戦は広島の勝利で幕を閉じました。

試合を終えて

鹿島としては序盤良い試合をしてたのにもったいない、という感じでしょうか。何か評判を聞いてると今年はずっとこんな感じみたいですね。ボールの動かし方やプレスのかけ方からを見る限りは別に出来が悪いわけではないように見えたのですが……鹿島の強さは言語化できないようなところにあるのかもなあと対戦するたびに感じますね。

一方の広島は序盤かなり厳しかったもののうまいこと2点取れてその後も塩漬けに成功。ルヴァンカップと合わせて連勝スタートとなりました。ただ内容面ではビルドアップが満足に行えず、キャンプで取り組んだショートカウンターも結果にはつながりましたがまだまだ改善点が多いように思えました。また、この試合ではビルドアップできなかったことと早めに撤退したことであまり見られませんでしたが、昨シーズンから取り組んできたポケットを取りに行く攻撃の出来についても気になるところです。

シーズンがしばらく中断するわけですし、勝って兜の緒を締めよということでさらなる質の向上を望みたいと思います。

【サンフレッチェ広島 2019シーズン反省会】

毎度お世話になっております。かんだ(@syukan13)です。

あけましておめでとうございます。せっかく今シーズン21試合もレビュー書いたんだから今シーズンの振り返りもやっておかねばなるまい、ということで 12月半ばになって書こうとして挫折していたこの振り返りですが、なんとか完成だけはさせようと思い、2020年になったのにこうして書いています。

 

 

今シーズン超ざっくりした振り返り

さて、今シーズンがどんな感じだったかを考えると、僕は3つの時期に分かれていたなと思いました。で、それを今シーズンの勝ち点グラフに当てはめてみたのでここに貼ります。

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図を作るのがへったくそですみません。もっとおしゃれにできれば良いのに。

それはともかく、2019シーズンは大きく分けて「堅守が武器の序盤」「自分たちのサッカーをやった中盤」「迷走した終盤」と分けられると思います。それぞれについてどういうきっかけでどういうサッカーをしていたのか、考えてみます。

なお、この勝ち点グラフを使った考察についてはちくわさん(@ckwisb)のノートでやってたのを見て良いなと思ったので勝手に真似しました。ごめんなさい。

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18シーズンの縮図となった序盤

さて、開幕戦のスタメンはこんな感じでした。

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2018シーズン最終戦を踏襲する3-4-2-1。また、林、青山らベテランの不在により大迫、川辺、松本泰志といった若手を積極的に起用した編成となりました。この試合を見る限りではボールを持って相手を押し込んでいくことができ、守備についてはほとんど崩される場面もなかったように思います。

しかし、次の磐田戦では満足にビルドアップができないままボールを握られてスコアレス。その後のセレッソ戦、大分戦もプレスからもぎ取った先制点を5-4-1ブロックで固めて守り切るという展開となり、試合の主導権を握れていたとは言い難かったと思います。再現性のある攻撃パターンも野津田が裏に走る頻度が高いというくらいで、まともにボールが前進できない試合も多かったと思います。

堅守を活かして第7節まで負けなしでしたが第8節東京戦からは5連敗。得点がまるで取れなくなった上に持ち前の堅守を活かせずに良いところのない試合が続き、2018年終盤を思わせる連敗地獄。浦和にこそ大勝したもののその次で札幌に完敗し、ここで城福監督は方針転換を決断します。

自分たちのサッカーと「ポケット」

まあいわゆる「自分たちのサッカー」への転換です。相手どうこうではなくて自分たちのやり方を貫いて勝つんじゃいという、ザックジャパン以降ちょっとどうなん?と言われている方向に舵を切っています。湘南戦の監督インタビューが象徴的ですが、

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「今回の相手対策はミニマムにした。我々の中で持っている情報の1割ぐらいしか選手に渡していない

 

というぐらい、相手のしてくることではなくて自分たちのやるべきことに目を向けに行っているようでした。

それでその自分たちのやるべきことというのが、「ポケット」を狙いに行くことでした。ポケットとは「敵陣奥深くで、ペナルティエリアとゴールエリアの間のスペース」くらいの意味だと思われます。いつかのインタビューでそう呼ばれていた記憶があるのですが、まあハーフスペースの一番奥と言っても良いかと思います。ここを起点にして相手の守備陣を攻略することに軸を置いたサッカーをしていたのがこの時期でした。

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図で言うと赤いエリアがポケットと呼ばれていると思われます。ここにシャドーを走らせてWBからパスを出します。すると相手DFは1人付いてくるしかなく、それによって空いたスペースに飛び込んできた広島のDHがフリーで合わせる、という形を狙っていました。

何でここを狙うことにしたのかはっきりとした根拠は分かりませんが、確かに3-4-2-1という並びにおいてはシャドーがこのスペースに走りこむという動きがやりやすく、相性は良かったと思います。実際にこのスペースへの裏抜けから生まれた得点が多くありますよね。

www.youtube.com

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例えばこのあたりです。柏のゴールはパスを出したWBがそのまま中央に突っ込んでくる変化型ですが、シャドーの裏抜けが起点という点では同じです。

この戦術のもとで躍動したのが森島でした。浦和戦で先発するといきなり全得点に絡み、そのままシャドーでレギュラーに定着、24試合で3得点を記録。WBがボールを持つ度にハーフスペースを縦に走るというタスクをきっちりこなすばかりか、そのスピードで強引に相手を剥がして突破もできておまけにセットプレーも蹴れるという高性能アタッカーに成長。広島の攻撃にとって欠かせないピースとなりました。これであと4~5点とってくれれば言うことないんですが、そうなるとJリーグでプレーしている場合ではなくなってしまいますね。

さらにWBに突破力があり相手が警戒せざるを得ない柏、DHに機動力がありクロスに飛び込んでいける稲垣を起用。この3人のユニットによる攻撃を中心に湘南戦からは調子を上げ6勝5分の11戦負けなしを記録。一時は優勝争いに絡むかというところまでいきました。

 

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この時期のスタメン



結果を求めたがゆえの迷走

しかし、シーズン終盤の大事な5試合で1勝2分2敗と失速。このあたりでは中盤の好調の原動力となった左サイドユニットを早めに解体し、レアンドロペレイラやハイネルといった決定力のある選手を中央に集めてゴリ押しする采配が目立ちました。リーグ戦中盤にも途中から4-4-2に変更してパワープレーをしてみたり、カップ戦やACLでもハイネルのシャドーやワントップをやっていた気はします。ただほとんどのケースで崩しがうまくいかなくなって迷走していた印象があります。まともに機能したのはアウェイのガンバ戦くらいではないでしょうか。それですらシステム変更してから失点しとるし。

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スクランブル4-4-2

特に印象的だったのはアウェイ川崎戦で、前半先に失点こそしたものの左サイドの崩しはそれなりに相手を苦しめ、鬼木監督も手を焼いている印象がありました。ところが後半の頭からうまくいっていた左サイドを解体して3-1-4-2にし、ハイプレスとパワープレーが軸の殴り合いに移行していきます。相手のミスから追いついたものの直後に失点。ある程度通用していた左サイドというこれまで培ってきた武器を捨てて結果も出ないという、リーグ戦終盤の迷走具合を象徴する試合でした。

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川崎戦後半の3-1-4-2



優勝するためにこの試合は勝つしかなく、そのためには得点が必要で、得点を取るためには異物感のある選手が必要というのは分かります。しかし、そこで積み上げてきたものにあっさりと背を向けてしまうのは、これまでやってきたことが無駄だったように感じられて個人的には残念でした。

 

そもそもの目標と今シーズンの反省

さて、ここまで書いて気になったのは「そもそも今シーズンの目標は何だったのか?」ということです。

僕は「ボール保持の局面を重視するアグレッシブなサッカー」くらいに捉えていたのですが、どうも城福監督のインタビューなどを読んでいると違うように思えてきました。シーズン終了後に行われた城福監督の総括会見から引用しますが、

 

そうはいっても実際に開幕すると、負けるわけにはいかなくなる。負けからスタートすると、チーム作りではないストレスや、いろんなものがかかってきます。そういった意味では、3バックの中で、いかに去年から積み上げた守備をしっかりと継続していくかに多少、重きを置いた自分がいます」

www.sanfrecce.co.jp

とあり、まずは守備を重視して負けないことを優先する、という方針だったものと思われます。シーズン開幕前の城福監督のインタビュー(TSSサンフレッチェ広島に掲載)にも「まずは守備を取り戻したい」という発言があった一方、攻撃についてはセットプレーを強調しており、ボール保持攻撃をどうしていくかについては明言されていませんでした。

これらのことから、2019シーズンは「まずは堅い守備を構築して負けないチームを作ってシーズン序盤を乗り切り、そこから攻撃に着手していく」というような方針だったものと思われます。この方針そのものは2018シーズンとそんなに変わっていないですよね。2018シーズンは堅守がうまくいきすぎてそのまま行って後から手詰まりになった、というようなイメージがあります。

この方針が良いか悪いかではなく、城福監督がこういうタイプの監督であるという話なのかなと思います。チーム作りをする上では選手のモチベーションやチーム内の雰囲気もありますので、そこが崩れないように序盤は負けないことを重視する、というのは理に適った思想であると思います。哲学に殉じてコンビネーション熟成のためにシーズン序盤はある程度負けてもOK、というやり方も好きですけどね僕は。

そういった意味では、シーズン序盤の方針転換はある意味予定通りだったといえるかもしれません。序盤で守備から入って勝ち点と自信をチームにもたらし、そこから攻撃に着手していくというのは実際に行われていましたね。5連敗があったのは誤算だったかもしれませんが。2018シーズンは攻撃に着手できずズルズルいってしまった印象があるので、そこは成長したところだったと思います。

ただシーズン終盤に迷走したのはやっぱり残念ですね……あそこで中盤までのような攻撃を我慢強く続けられていればラスト5試合がもっと良い内容の試合になったと思いますし、結果だってついてきたかもしれません。

来シーズンに向けて

とりあえずは今シーズン中盤のようなサッカーをやってほしい!ということに尽きます。チームが連動してハーフスペースを攻略していくやり方は分かっていても止めるのが難しく、実に多くのチームに効いていたと思います。もちろんそのままではダメなので、裏抜けしたシャドーがそのまま高速クロスを上げるとか、よりバリエーション豊かにして行かなければならないでしょうが。

で、そのためにもうちょっと立ち位置の整備をしてほしい。今シーズンもポケットを使って攻略するという目的はあったものの、そのためにWBが高い位置取るとか、CBがドリブルで剥がして持ち上がるとかディテールは詰められていませんでした。ボール保持以外でも、カウンター対応は3バックの対人能力に任せきりだったり、自陣に引いたのに守備ブロックに急に大穴が空いたりと、ポジショニングを意識して欲しい場面が多数ありました。そのあたりがどう解決されるかを見ていきたいですね。

ただ城福監督は「アドリブが重要」という発言をしているなど、あんまり細かいこと決めたがらない監督という印象があるのでもしかしたらそのままかもしれませんが……

まあその辺はまた来シーズン見ていきたいと思います。

おわりに

ということで5000文字近い文章になってしまいました。ここまでお読みいただいた方がいましたら、お付き合いありがとうございました。

今シーズンから始めたレビューブログでしたが、やっていくうちに少しは選手、監督のやりたいことに迫れていたような気がします。ぼんやり見ているだけでは何が起きているか分からないサッカーというスポーツですが、そこには勝つための何らかの意図が隠されており、それを読み解くことでお互いの駆け引きを楽しむことができると思っています。これを読んでいる広島サポの方もそうでない方も(そんな方がいればですが)、少しでも戦術の面白さに気付いてもらえるといいな、と思います。

今シーズンはリーグ戦21試合しかできませんでしたが、来シーズンはリーグ戦全試合を目標にしていきたいと思います!

それではまた、2月末にお会いできますように。