【サンフレッチェ広島 2019シーズン反省会】

毎度お世話になっております。かんだ(@syukan13)です。

あけましておめでとうございます。せっかく今シーズン21試合もレビュー書いたんだから今シーズンの振り返りもやっておかねばなるまい、ということで 12月半ばになって書こうとして挫折していたこの振り返りですが、なんとか完成だけはさせようと思い、2020年になったのにこうして書いています。

 

 

今シーズン超ざっくりした振り返り

さて、今シーズンがどんな感じだったかを考えると、僕は3つの時期に分かれていたなと思いました。で、それを今シーズンの勝ち点グラフに当てはめてみたのでここに貼ります。

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図を作るのがへったくそですみません。もっとおしゃれにできれば良いのに。

それはともかく、2019シーズンは大きく分けて「堅守が武器の序盤」「自分たちのサッカーをやった中盤」「迷走した終盤」と分けられると思います。それぞれについてどういうきっかけでどういうサッカーをしていたのか、考えてみます。

なお、この勝ち点グラフを使った考察についてはちくわさん(@ckwisb)のノートでやってたのを見て良いなと思ったので勝手に真似しました。ごめんなさい。

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18シーズンの縮図となった序盤

さて、開幕戦のスタメンはこんな感じでした。

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2018シーズン最終戦を踏襲する3-4-2-1。また、林、青山らベテランの不在により大迫、川辺、松本泰志といった若手を積極的に起用した編成となりました。この試合を見る限りではボールを持って相手を押し込んでいくことができ、守備についてはほとんど崩される場面もなかったように思います。

しかし、次の磐田戦では満足にビルドアップができないままボールを握られてスコアレス。その後のセレッソ戦、大分戦もプレスからもぎ取った先制点を5-4-1ブロックで固めて守り切るという展開となり、試合の主導権を握れていたとは言い難かったと思います。再現性のある攻撃パターンも野津田が裏に走る頻度が高いというくらいで、まともにボールが前進できない試合も多かったと思います。

堅守を活かして第7節まで負けなしでしたが第8節東京戦からは5連敗。得点がまるで取れなくなった上に持ち前の堅守を活かせずに良いところのない試合が続き、2018年終盤を思わせる連敗地獄。浦和にこそ大勝したもののその次で札幌に完敗し、ここで城福監督は方針転換を決断します。

自分たちのサッカーと「ポケット」

まあいわゆる「自分たちのサッカー」への転換です。相手どうこうではなくて自分たちのやり方を貫いて勝つんじゃいという、ザックジャパン以降ちょっとどうなん?と言われている方向に舵を切っています。湘南戦の監督インタビューが象徴的ですが、

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「今回の相手対策はミニマムにした。我々の中で持っている情報の1割ぐらいしか選手に渡していない

 

というぐらい、相手のしてくることではなくて自分たちのやるべきことに目を向けに行っているようでした。

それでその自分たちのやるべきことというのが、「ポケット」を狙いに行くことでした。ポケットとは「敵陣奥深くで、ペナルティエリアとゴールエリアの間のスペース」くらいの意味だと思われます。いつかのインタビューでそう呼ばれていた記憶があるのですが、まあハーフスペースの一番奥と言っても良いかと思います。ここを起点にして相手の守備陣を攻略することに軸を置いたサッカーをしていたのがこの時期でした。

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図で言うと赤いエリアがポケットと呼ばれていると思われます。ここにシャドーを走らせてWBからパスを出します。すると相手DFは1人付いてくるしかなく、それによって空いたスペースに飛び込んできた広島のDHがフリーで合わせる、という形を狙っていました。

何でここを狙うことにしたのかはっきりとした根拠は分かりませんが、確かに3-4-2-1という並びにおいてはシャドーがこのスペースに走りこむという動きがやりやすく、相性は良かったと思います。実際にこのスペースへの裏抜けから生まれた得点が多くありますよね。

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例えばこのあたりです。柏のゴールはパスを出したWBがそのまま中央に突っ込んでくる変化型ですが、シャドーの裏抜けが起点という点では同じです。

この戦術のもとで躍動したのが森島でした。浦和戦で先発するといきなり全得点に絡み、そのままシャドーでレギュラーに定着、24試合で3得点を記録。WBがボールを持つ度にハーフスペースを縦に走るというタスクをきっちりこなすばかりか、そのスピードで強引に相手を剥がして突破もできておまけにセットプレーも蹴れるという高性能アタッカーに成長。広島の攻撃にとって欠かせないピースとなりました。これであと4~5点とってくれれば言うことないんですが、そうなるとJリーグでプレーしている場合ではなくなってしまいますね。

さらにWBに突破力があり相手が警戒せざるを得ない柏、DHに機動力がありクロスに飛び込んでいける稲垣を起用。この3人のユニットによる攻撃を中心に湘南戦からは調子を上げ6勝5分の11戦負けなしを記録。一時は優勝争いに絡むかというところまでいきました。

 

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この時期のスタメン



結果を求めたがゆえの迷走

しかし、シーズン終盤の大事な5試合で1勝2分2敗と失速。このあたりでは中盤の好調の原動力となった左サイドユニットを早めに解体し、レアンドロペレイラやハイネルといった決定力のある選手を中央に集めてゴリ押しする采配が目立ちました。リーグ戦中盤にも途中から4-4-2に変更してパワープレーをしてみたり、カップ戦やACLでもハイネルのシャドーやワントップをやっていた気はします。ただほとんどのケースで崩しがうまくいかなくなって迷走していた印象があります。まともに機能したのはアウェイのガンバ戦くらいではないでしょうか。それですらシステム変更してから失点しとるし。

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スクランブル4-4-2

特に印象的だったのはアウェイ川崎戦で、前半先に失点こそしたものの左サイドの崩しはそれなりに相手を苦しめ、鬼木監督も手を焼いている印象がありました。ところが後半の頭からうまくいっていた左サイドを解体して3-1-4-2にし、ハイプレスとパワープレーが軸の殴り合いに移行していきます。相手のミスから追いついたものの直後に失点。ある程度通用していた左サイドというこれまで培ってきた武器を捨てて結果も出ないという、リーグ戦終盤の迷走具合を象徴する試合でした。

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川崎戦後半の3-1-4-2



優勝するためにこの試合は勝つしかなく、そのためには得点が必要で、得点を取るためには異物感のある選手が必要というのは分かります。しかし、そこで積み上げてきたものにあっさりと背を向けてしまうのは、これまでやってきたことが無駄だったように感じられて個人的には残念でした。

 

そもそもの目標と今シーズンの反省

さて、ここまで書いて気になったのは「そもそも今シーズンの目標は何だったのか?」ということです。

僕は「ボール保持の局面を重視するアグレッシブなサッカー」くらいに捉えていたのですが、どうも城福監督のインタビューなどを読んでいると違うように思えてきました。シーズン終了後に行われた城福監督の総括会見から引用しますが、

 

そうはいっても実際に開幕すると、負けるわけにはいかなくなる。負けからスタートすると、チーム作りではないストレスや、いろんなものがかかってきます。そういった意味では、3バックの中で、いかに去年から積み上げた守備をしっかりと継続していくかに多少、重きを置いた自分がいます」

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とあり、まずは守備を重視して負けないことを優先する、という方針だったものと思われます。シーズン開幕前の城福監督のインタビュー(TSSサンフレッチェ広島に掲載)にも「まずは守備を取り戻したい」という発言があった一方、攻撃についてはセットプレーを強調しており、ボール保持攻撃をどうしていくかについては明言されていませんでした。

これらのことから、2019シーズンは「まずは堅い守備を構築して負けないチームを作ってシーズン序盤を乗り切り、そこから攻撃に着手していく」というような方針だったものと思われます。この方針そのものは2018シーズンとそんなに変わっていないですよね。2018シーズンは堅守がうまくいきすぎてそのまま行って後から手詰まりになった、というようなイメージがあります。

この方針が良いか悪いかではなく、城福監督がこういうタイプの監督であるという話なのかなと思います。チーム作りをする上では選手のモチベーションやチーム内の雰囲気もありますので、そこが崩れないように序盤は負けないことを重視する、というのは理に適った思想であると思います。哲学に殉じてコンビネーション熟成のためにシーズン序盤はある程度負けてもOK、というやり方も好きですけどね僕は。

そういった意味では、シーズン序盤の方針転換はある意味予定通りだったといえるかもしれません。序盤で守備から入って勝ち点と自信をチームにもたらし、そこから攻撃に着手していくというのは実際に行われていましたね。5連敗があったのは誤算だったかもしれませんが。2018シーズンは攻撃に着手できずズルズルいってしまった印象があるので、そこは成長したところだったと思います。

ただシーズン終盤に迷走したのはやっぱり残念ですね……あそこで中盤までのような攻撃を我慢強く続けられていればラスト5試合がもっと良い内容の試合になったと思いますし、結果だってついてきたかもしれません。

来シーズンに向けて

とりあえずは今シーズン中盤のようなサッカーをやってほしい!ということに尽きます。チームが連動してハーフスペースを攻略していくやり方は分かっていても止めるのが難しく、実に多くのチームに効いていたと思います。もちろんそのままではダメなので、裏抜けしたシャドーがそのまま高速クロスを上げるとか、よりバリエーション豊かにして行かなければならないでしょうが。

で、そのためにもうちょっと立ち位置の整備をしてほしい。今シーズンもポケットを使って攻略するという目的はあったものの、そのためにWBが高い位置取るとか、CBがドリブルで剥がして持ち上がるとかディテールは詰められていませんでした。ボール保持以外でも、カウンター対応は3バックの対人能力に任せきりだったり、自陣に引いたのに守備ブロックに急に大穴が空いたりと、ポジショニングを意識して欲しい場面が多数ありました。そのあたりがどう解決されるかを見ていきたいですね。

ただ城福監督は「アドリブが重要」という発言をしているなど、あんまり細かいこと決めたがらない監督という印象があるのでもしかしたらそのままかもしれませんが……

まあその辺はまた来シーズン見ていきたいと思います。

おわりに

ということで5000文字近い文章になってしまいました。ここまでお読みいただいた方がいましたら、お付き合いありがとうございました。

今シーズンから始めたレビューブログでしたが、やっていくうちに少しは選手、監督のやりたいことに迫れていたような気がします。ぼんやり見ているだけでは何が起きているか分からないサッカーというスポーツですが、そこには勝つための何らかの意図が隠されており、それを読み解くことでお互いの駆け引きを楽しむことができると思っています。これを読んでいる広島サポの方もそうでない方も(そんな方がいればですが)、少しでも戦術の面白さに気付いてもらえるといいな、と思います。

今シーズンはリーグ戦21試合しかできませんでしたが、来シーズンはリーグ戦全試合を目標にしていきたいと思います!

それではまた、2月末にお会いできますように。