はしがき
毎度お世話になってます。今回は清水戦。広島にとっては8連戦の6試合目ということでシーズン序盤にしてなかなかしんどいところ。相手の清水は東京Vと新潟に連勝、久々のJ1で良いスタートを切っています。スタメンは以下。
広島は過密日程の中ですが塩谷→新井の1人変更。清水は中原とカピシャーバ→松崎と北爪の2人変更。広島と噛み合わせる形の3-4-2-1でスタートした。
この日の日本平は風が強く、コイントスに勝った広島が風上を選択してのキックオフとなった。
背後から低いクロスで強襲する清水
試合開始から広島のビルドアップ隊に対して強いプレスをかけてきた清水は、ボールを奪うとそのまま広島守備陣の背後を突く動きで素早くゴールに迫っていく。狙いは徹底して広島のWBと左右CBの背後で、そこを取れれば低いクロスという狙いだった。
開始早々の乾のクロスや先制点に繋がった松崎のクロスも広島のWBやCBの背後を突いて速いクロスを入れたところからだった。清水はこのスペースを狙うことが共有されており、迷いのないスピード感と高い強度で背後を突くことで広島の対応は後手に回っていたと言えるだろう。
コンビネーションとしてそんなに複雑なものではないが、空中戦に強い広島のDF陣に対してハイクロスではなく低いボールで勝負すること、DHが最終ラインに吸収されがちな広島に対してマイナスのクロスやクロスの跳ね返りを狙うことなど理に適った点の多い戦略だったと言えるだろう。
DHを上げる収支をめぐる戦い
解説の戸田さんも言及されていたように、この試合の広島はこれまでにも増して川辺を高い位置に上げるシーンが多かった。ただし、前半に関してはその選択のメリットよりもデメリットの方が強く出ていたように思う。
前半の広島は清水のプレスを受けて長いボールを蹴ることが多かった。これは川辺が高い位置を取って中盤でアンカー的になった田中が北川に消されることでパスの出しどころがなくなることによって起きていたと言える。
川辺を上げることで高い位置でのボール回収率が上がるかと思ったがそんなことはなく、むしろ宇野とブエノの2DHや乾に田中の脇でボールを受けられてカウンターの起点とされることが多発した。
正直清水に対してなぜ川辺を上げるというアプローチで臨んだのかはよくわからないのだが、清水が4-4-2スタートでもう少し簡単に田中を浮かせられると考えていたのかもしれない。とはいえロングボールをバンバンカウンターの起点にされているという現状を受けて、もう少し早めに低い位置でバランスを取るという選択があっても良かったかもしれない。川辺個人の判断というよりチームとして長いボール蹴る時にDHを上げちゃうとまずいよという合意が取れていてほしかったところだった。
ボール保持で収支をプラスに傾ける
前半は清水のペースだったと思うが、後半10分くらいになると北川にガス欠の傾向が見られて田中がフリーになり始める。この展開になると川辺を上げるメリットが強く出始めた。
田中がフリーになることで上がった川辺と降りてくるシャドーの3人で清水のDH2人に対して数的優位を確保。そこを起点に中央に縦パスを刺してゴールに迫ることができていた。ここは後半から入った塩谷が落ち着いてボールを配給できるのも大きかっただろう。ボールをもらう際の体の向きや持ち方といった個人戦術の部分もあるのだろうが、後半にCBで入ってこれだけゲームの景色を変えられるのは流石の貫禄だった。
後半の広島は相手を高い位置に押し込めるのでカウンターも食らいにくく、荒木が変わって入ったアフメドを潰せることもあって高い保持率で推移することができていた。
一方で押し込んだ後の崩しについてはやや単調だったという印象もある。押し込んだ後はDHの脇から侵入できているので中央突破を図ることが多かったが、なかなか綺麗にシュートまでたどり着けなかった。理想を言えばここでサイドに振るなどして相手をさらに揺さぶれれば良かったと思うが、この辺はまだ構築途中ということかもしれない。
今季はビルドアップをしっかり取り組んでいるという印象もあり、ファイナルサードの部分は後から仕込んでいくのかもしれないなと感じた。
雑感
広島も清水も連勝ストップ。広島としては前半の押し込まっぷりを考えるとよく後半に持ち直したと思う一方で、今季の試合展開を考えると前半に相手を走らせて後半に主導権を取るみたいなアプローチに取り組んでいるかもしれず、そう考えるとある程度想定通りの試合運びをしているのかもしれない。
とはいえこの試合の前半は想定以上に押し込まれたと思うので、いかに前半に相手を走らせつつリスクを下げるかという課題は今シーズン重要になっていくのかもしれない。
清水は追いつかれたものの強度の高さや攻撃のスピード感で十分にJ1でもやれることを示した。個人的には松崎や北爪などJ1経験者がしっかりとエース級の周りを固めているのが好印象だった。北川や乾が下がった後の出力低下は気になるところだが、ここから最適解を探っていければさらに勝ち点を見込めそうだ。
それではまた次回。
