#6 【J1第11節 サンフレッチェ広島×アビスパ福岡】

はじめに

どうも!福岡戦です。評判の良いチームでしたが、それに違わぬ実力を見せてくれましたね。ということで振り返っていきます。スタメンは以下。

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広島は442。相手が442なので中盤で数的優位を取るために433で来るかなーと思っていたんですが、442で挑んできましたね。シーズン当初に回帰した感があります。
福岡は前評判通り442。J2で猛威を振るい、J1でも五分の戦績を残す練度の高さに注目です。

 

鋭かった福岡の狙い

さて、試合は8分に福岡が先制するわけなんですが、先制点につながる一連の流れの流れに福岡の狙いが良く見えていました。

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7分のシーン、福岡は左SBの志知がメンデスに縦パスを入れると、石津について出ていっていた野上の背後を取った渡にパスしてそのまま左サイド奥へ走ります。

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広島は渡に対して荒木がスライドしたためサイドに流れたメンデスには佐々木がついて行くことになり、広島のCB2人をゴール前から引きはがすことに成功します。そのスペースは野上がカバーするわけですが、その後のポジション修正に手間取る間に志知が上がってきてクロスまで持っていきました。

この攻撃の起点となった「SBから縦パスで相手SBの背後を取る」という攻撃はこの試合を通して福岡が狙っていたパターンで、福岡はビルドアップに関してはこれしかやってなかったと言っても過言ではありませんでした。

8分の先制点のシーンはもっと単純で、フリーになったサロモンソンから東の裏に走った金森にパスが通ってクロスがそのままゴールという形。

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広島は自陣で守るときにCBをゴール前から動かしたくない感じなのでSBの東が出ていったスペースは青山がカバーするべきだと思うのですが、このシーンでは距離が遠すぎてとても間に合いませんでした。
また、サロモンソンに対する森島の対応も中途半端だったかなーと。プレッシャーに行くならもっと距離を詰めてパスコースを限定するべきでしょうし、パスが蹴られるのに間に合わないのであればゴール前での守備に備えてもっと下がるべきでしょう。
森島の動きに合わせて味方も位置を決めるわけなので、サロモンソンに対してボールを取りに行くのか下がるのかという判断が遅れたことで全体として中途半端な対応となり、失点に繋がったと思います。

また、これは試合を通して言えることですが、福岡のSBに対するプレッシャーのかけ方はもう一工夫あっても良かったと思います。先に挙げた2つのシーンでは広島のSHは福岡のSBに対して内側へのパスコースを切る形で対応していて、まあそれも分かるのですが、福岡はSBから大外を縦に直線的に進むようなビルドアップを好むので内側を切っても効果は薄かったかなと思います。
それよりも、しんどいですがSBの正面に立って福岡のビルドアップを内側へと誘導し、中央で引っ掛けてカウンターを狙う方が嫌だったのではないかと思います。福岡が大外を積極的に使うのは奪われてもカウンターのリスクを抑えられるという要因は確実にあるはずなんで、こちらのほうが福岡がやりたくない展開に持ち込めたんじゃないかなーと思います。

 

広島の前進方法と442の理由

一方、442を選択した広島は高い位置を取ったSBによる数的優位をベースにビルドアップをしていこうという意思を感じました。

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広島はSHが内側に絞ってSBがそのスペースに出てくることにより、福岡のSHに対して数的優位の状況を作ります。で、福岡のSHが内に絞れば外のSBに、外のSBにつけば内側のSHにパスを通して前進します。特に広島の左サイドは積極的に上がる東、狭いスペースでボールを受けられる森島、パス精度の高い佐々木が揃っていたこともあって効果的な前進が何度も見られました。12:32に見せた浮き球のパスなど佐々木のパス技術は素晴らしいものがありますね。

ただ、前進した後どうするのかに関して言えばこの方法は難しいところもあります。中盤を突破したところで相手のSBが待ち構えているわけですからね。
できればCBポジショニングで相手のSHを引きずり出し、SBにボールが渡った時に相手のSBが対応せざるを得ないような状況を作れるとより攻めやすいのではないかと思います。

また、広島がこの試合でも442を選択した理由に関しては、おそらくボール保持時によりポジションを入れ替えながら攻撃したいからかなと。2トップであればFWの片方がサイドに流れてももう片方を中央に残してフィニッシャーを確保できますからね。広島の得点シーンでも浅野がサイドに流れることによって東が中央に入っていく余地が生まれたと思いますし、やりたいことと選択した配置は合ってると思います。

スペースの埋め方について

あと気になったのは広島の2失点目シーンの配置について。佐々木のロングボールが跳ね返されたところから失点になっているわけですが、ロングボール一発跳ね返されただけであっさりサイドの深くまで侵入を許してるのが引っかかりました。

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佐々木がロングボールを蹴った段階でSBの東が高い位置を取っていて森島が内に絞っているのはいいんですが、川辺が逆サイド寄りにいるので中央に広島の選手がおらず、佐々木のパスコースはできないしカウンターの備えもできない、というバランスの悪い配置になってしまっています。福岡はここに前がいたのでスムーズにこぼれ球を回収できて攻撃につなげられた、という形。
広島は奪われたときのことを考えた配置にはなってなかったけど、福岡はそうなっていたというのが大きな要因なのではないでしょうか。
そのあとの対応はまあそこまで間違ってなかったと思いますけどね~。前にシュートを撃たれたペナルティアーク付近はゴール前に比べると優先度が低いわけなので空きやすい。ビルドアップの時点で最終ラインに降りていた青山がそのまま最終ラインに入っていたことを考えると森島と川辺になんとか埋めてほしかったところではあります。
まあ広島も同じような形から78分に野上の惜しいシュートが出ているように、やっぱりサイドを深くえぐられた後のペナルティアーク付近は空きやすいんだと思います。後は前のシュートがうまかった。

 

サロモンソンという選手について

これは余談になりますが、広島が今季から4バックに戻したということもあってサロモンソンがいれば、という声が各所から聞こえてきましたし、自分もそう思っていました。
しかし、この試合を見ているとサロモンソンが今の広島にいてもそんなに評価高くないのではとも思えてきました。彼が得意とするのはサイドからの正確な配球や大外を駆け上がってのクロスといった、キックの精度を活かしてビルドアップの始点となるプレーです。

しかし、今の広島でSBに求められているのは東のように高い位置を取り、時にはゴール前まで入っていくような、より中央の選手に近いプレーです。これはまあどっちが良いとかではなくスタイルの問題ですが。そうなると、サロモンソンのような大外レーンを主戦場とする選手は活きづらいように思えます。逆に、福岡のようにサイドバックを起点に大外を縦に攻めていくようなチームは彼の持ち味が最も活きる場所ではないでしょうか。何ならサロモンソンの能力を起点にチームが組み立てられているような気さえします。

優秀な選手が自身の持ち味を発揮して輝いているのを見られるのもサッカーの楽しさですよね。広島を自身にとって特別なチームと呼び、スタンドに挨拶に来てくれた律儀な男、サロモンソン。彼がさらに活躍してくれることを願わずにはいられません。

おわりに

福岡は噂に違わぬ良いチームでしたね。
ちなみにこの試合のゴール期待値は0.9 vs 0.34。

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実際にはクロスが惜しくも合わなかったが触れば1点というようなシーンもあったので両チームとももっと高いかな?とは思いますが、そうは言っても2点取られたのはややアンラッキーかなーという気がします。

とはいえ試合を振り返っていくとチームの完成度としては福岡に分があったように思います。負けが妥当とまでは言いませんが、負けても何らおかしくない試合だったのではないでしょうか。

ビルドアップの方法、相手の崩し方、トランジションへの備えなど、課題はまだまだ多い広島。12試合で17ポイントなので悪くないとは思いますが、ここ4試合で1分3敗、16位の清水との勝ち点差は6。チームの完成度を高めるのに使える時間は思ったより短いかもしれません。

ここから戦術的な進化が見られるか、守備陣とアタッカーの能力を軸にとだましだまし勝ち点を拾いに行くのか。今後の動向を注視したいですね。

それではまた次回。